2018 Volume 104 Issue 5 Pages 243-252
The reduction of CO2 emission from the ironmaking process is important issue from the view of environmental problems typified by global warming in recent years. Low RAR (reducing agent rate) operation of the blast furnace is one of effective measures for reducing CO2 emission. Injection of HRA (hydrogenous reducing agents) from the tuyere (where is the lower part of blast furnace) is also effective measure. In this study, the influence of HRA injection point on combustion and gasification efficiency of pulverized coal (PC) in the case of simultaneous injection of HRA and PC from double-channel lance was examined by small scale combustion furnace and three-dimensional numerical simulation for improvement permeability in blast furnace. Combustion experimental conditions were in three cases, case1: injected HRA from outer side and PC from inner side of double-channel lance, case2: injected HRA from inner side and PC from outer side of double-channel lance and case3: injected HRA and PC premixed. As a result, the combustion and gasification efficiency was increase in the order of case3, case2 and case1. The rate of combustion and gasification of PC was investigated in case1. Not only the oxidation reaction was also accelerated CO2 and H2O gasification reaction in the case of simultaneous injection HRA and PC. A three-dimensional numerical simulation of the experimental furnace was conducted, we confirmed the increase of combustion temperature, the acceleration of oxygen consumption and gasification reaction as with the experimental results in the case of simultaneous injection HRA and PC.
近年,製銑工程においては,地球温暖化に代表される環境問題対応としてCO2発生量の削減が喫緊の課題となっている。また生産の効率化,合理化追求およびコークス炉の老朽化対応の観点から各社,各高炉において高出銑比,低還元材比(Reducing agent rate:RAR)下での高微粉炭比(Pulverized coal rate:PCR)操業が志向されているのが現状である。
高出銑比,低RAR・高PCR操業下での安定操業に向けては,高炉内の熱バランス調整に加えて,通気性を確保することが重要である。従来,高炉での通気性確保の手段としては,原料の高温性状改善1–4)や,径方向の鉱石とコークスの粒度調整や層厚調整5,6),また鉱石層へのコークス混合装入等の装入物分布制御7–10)が挙げられるが,高PCR操業時は特に微粉炭の燃焼性が低下するため11,12),通気性確保に向けては燃焼性改善が有効である。
微粉炭の燃焼性に及ぼす因子としては,微粉炭性状(揮発分量,粒径)13–16)や送風諸元(送風酸素濃度,送風温度,水蒸気添加等)14,17–19),ランス構造,配置20–22)等,従来から種々の基礎研究により微粉炭燃焼性に及ぼす各因子の影響が調査された。1990年代以降は,多くの高炉において高PCR操業が志向され23–25),国内高炉における微粉炭吹き込み量の平均値は1998年の130 kg/tに対して,2012年は161 kg/tに到達している26)。
更なる高PCRという点では,試験操業でPCR 250 kg/tを超えた実績があり27,28),福山3高炉では燃焼性改善策として微粉炭周囲の酸素分圧を向上させる目的でランスからの酸素吹き込みが行われており,実操業で適用された例もある29,30)。
一方,CO2発生量削減の観点からは,水素含有量の高い気体還元材吹込みが有効であり31),微粉炭燃焼性に及ぼす影響も基礎実験や実操業,数値解析モデルにより調査されつつある32–35)が,同一ランスからの吹込み時の微粉炭と気体還元材吹込み位置が燃焼ガス化に及ぼす影響について検討された例は少ない。
本論文では,今後重要になると考えられる低RAR下での高PCR操業に向けて微粉炭燃焼性の更なる向上を目的として,微粉炭燃焼ガス化特性に及ぼす気体還元材吹込み位置の影響について燃焼実験と数値解析により調査した。
Fig.1に燃焼実験に用いた小型燃焼炉(ホットモデル)の模式図を示す。本装置は高炉羽口部を模擬しており,ブローパイプ,羽口,コークス充填層から構成されている。ブローパイプ内径は90 mmΦ,羽口内径は65 mmΦ,コークス充填層部は,幅400 mm,奥行1000 mm,高さ1450 mmである。熱風はLPGの燃焼ガスに酸素を混合し,所定の温度および組成になるように調整し,微粉炭,水素系還元材の同時吹き込み試験を行った。水素系還元材として,ここでは天然ガスの主成分であるCH4ガスを使用した。吹き込みは2重管構造のシングルランスで行い,微粉炭とCH4ガス同時吹き込みとした。
Schematic illustration of experimental apparatus.
試験条件をTable 1に示す。送風温度は1200°C,羽口先流速は150 m/sの一定条件とした。酸素過剰率(送風中の酸素量と全吹き込み還元材を完全燃焼させるのに必要な酸素量との比)は1.27とした。Fig.2に今回の実験で用いた2重管ランスの寸法,各水準における微粉炭およびCH4の吹込み位置,流路面積を示す。燃焼性に及ぼす吹込み速度の影響を除外するため,微粉炭,CH4の流路面積は各水準でほぼ同等となるように設定した。
Blast temperature | 1200 (°C) |
O2 enrichment | 5.5 (%) |
PCR | 100 (kg/t) |
LNG (CH4) Rate | 10 (kg/t) |
Excess O2 ratio | 1.27 (–) |
Injection methods of pulverized coal and CH4.
試験中にブローパイプ部に設置された3か所の観察窓において二色温度計による温度測定とランス先端から250,400 mmの位置において燃焼ガスと未燃チャーのサンプリングを実施した。未燃チャーについては,画像解析ソフトを用いてチャー内空隙率の定量評価を実施した。
2・2 実験結果および考察Fig.3に二色温度計による温度測定結果を示す。ランス先端からの距離の増加に伴い,微粉炭燃焼の進行による温度上昇が確認された。微粉炭単独吹込みであるbaseに対して,CH4同時吹込み条件であるcase1,case2,case3では,この順に燃焼温度が増加した。特にcase3ではランス先端近傍から温度が大きく上昇した。Fig.4にガスサンプリング結果を示す。ランス先端からの距離の増加に伴い,酸素が低下,二酸化炭素が増加した。baseに対してcase1,case2,case3の順に酸素の消費量が増加した。またbaseに対してcase1~3では二酸化炭素の発生量が増加し,さらに矢印で示される燃焼焦点(CO2ピーク位置)がランス先端寄りに変化した。各水準において,酸素の消費はランス先端からの距離250 mm以降で飽和し,二酸化炭素はピークを迎えた後,減少に転じた。これは微粉炭周囲の酸素が不足し,二酸化炭素による微粉炭のガス化が促進したためと考えられる。
Relationship between distance from lance tip and temperature.
Relationship between distance from lance tip and gas composition.
Fig.5にガスと共にサンプリングした未燃チャーの画像解析手順を示す。元画像からチャー形状の認識を行い,2値化後,白色部を未燃部,灰色部を燃焼部と定義し,その面積比からチャー内の空隙率を算出した。
Definition of porosity of unburnt char by image analysis.
Fig.6に各水準におけるチャー内空隙率を示す。チャー内空隙率は,水準毎に樹脂埋めしたサンプル内で5視野を撮影し,視野内に存在するすべてのチャーの空隙率を算出し,平均値とした。baseに対して,case1,case2,case3の順に空隙率が増加し,Fig.3に示した温度と同様の上昇傾向を示した。
Effects of CH4 injection point on porosity of the char.
微粉炭の燃焼性に及ぼす分散性の影響については従来から知見がある21,22)が,本研究では,CH4同時吹込み,また同時吹込み時のCH4吹込み位置が微粉炭分散性に及ぼす影響について調査した。羽口後方から高速度ビデオカメラを用いてブローパイプ内に吹き込まれた微粉炭の分散性について画像解析を実施した。Table 2に画像解析の条件を示す。Fig.7に羽口後方から撮影したブローパイプ内の元画像と画像解析ソフトによる256階調への輝度分割画像を示す。解析手法は,Satoら22)の方法と同様に,微粉炭未燃部(A)と微粉炭の燃焼を伴う輝炎部(B)に分類し,微粉炭主流全体の面積(A+B)を分散性を示す指数と定義した。Fig.8に各水準の処理画像例を示し,Fig.9に1例としてbase条件のA+Bの経時変化を示す。破線で示す時間平均値に対して,1割程度変動しているのが分かる。この変動を燃焼の安定性を示す指標として標準偏差で評価した。Fig.10に各水準のA+B,A,Bの平均値と標準偏差を示す。平均値についてA+Bはbaseに対して,case1,case2,case3の順に増加した。Aは,baseに対して,case1,case2,case3の順に低下しcase3ではほとんど未燃部が見られなかったため,燃焼の促進が示唆された。Bは,baseに対してcase1,case2,case3の順に増加した。CH4同時吹込みにより分散性の改善,輝炎部面積の大幅な増加が確認された。CH4吹込み位置による影響も定量的に確認され,燃焼温度の傾向と一致した。標準偏差については,A+B,A,Bともcase1ではbaseに対して高位となったが,case2,case3ではbaseと同等であった。A部については,case2,case3では非常に低位であり安定した燃焼状況と推定される。
Flame speed | 10000 (fps) |
Pixel size | 768 × 768 (–) |
Sampling time | 200 (ms) |
Definition of dispersibility of pulverized coal in combustion area by image analysis.
Typical examples of processed image of combustion area in each cases.
Change of dispersibility of pulverized coal in the base condition.
Effects of CH4 injection point on dispersibility of pulverized coal.
ここで,case2については,他の3水準と比較して微粉炭の吹込み位置が異なるため,分散性に及ぼす微粉炭吹込み位置の影響を調査した。Fig.11に吹込み条件を示す。case2’として,内管から吹き込むCH4をN2に置換した水準とした。Fig.12にFig.8同様,各水準の羽口後方から撮影したブローパイプ内の処理画像を示す。baseに対してcase2’では外管から微粉炭を吹き込む影響で未燃部が縮小しているのが分かる。Fig.13にA+Bの時間平均値と標準偏差を示す。標準偏差は3水準ともほぼ同等の値であった。時間平均値についてcase2’はbaseとcase2の中間の値であり,baseとcase2’の差が微粉炭吹込み位置の影響,case2’とcase2の差がCH4同時吹込みの影響と考えられ,CH4の同時吹込みにより微粉炭の分散性が向上することが示唆された。
Injection methods of pulverized coal and CH4.
Typical example of processed image of combustion area in case 2’.
Effect of pulverized coal injection point on dispersibility of pulverized coal.
以上,燃焼温度,酸素の消費速度,燃焼焦点変化,チャー内空隙率変化からbaseに対してcase1,case2,case3の順に燃焼性が向上したと考えられる。燃焼性向上の理由としては,同時に吹き込んだCH4燃焼による微粉炭粒子の昇温促進32,33)に加えて,微粉炭分散性改善影響が考えられる。CH4同時吹込みによる微粉炭の分散性改善については,現時点では,CH4燃焼に伴う急速なガス量,および温度増加によるガスの拡散促進効果と推定されるが,今後更なる検討が必要と考えられる。
Fig.3およびFig.4に示すように,baseに対して微粉炭燃焼場へCH4を添加したcase1,case2およびcase3においては,燃焼場の温度増加,酸素の消費速度増加および二酸化炭素のピーク位置で表される燃焼焦点位置の上流側への移行が確認された。微粉炭と比較して燃焼速度が大きいCH4が早期に燃焼する影響で酸素消費が早く,燃焼温度およびCO2発生量が増加したためと考えられるが,一方で微粉炭に供給される酸素量の低下による微粉炭の燃焼量変化,CO2およびH2Oによるガス化反応量の変化に関する知見はないため,ここではブローパイプ内の径方向サンプリングによる燃焼場のガス分布を調査し,下記(1)−(3)式に示される反応の割合について定量評価し,微粉炭燃焼場へのCH4添加時の反応メカニズムを検討した。
(1) |
(2) |
(3) |
燃焼実験は2章と同様に,Fig.1に示すホットモデルを用いた。吹込みランスの水準は,Table 2に示すbaseとcase1とした。実験条件,および吹込み条件をTable 3に示す。微粉炭比は150 kg/t相当,CH4比は10 kg/t相当とし,酸素富化率は,CH4吹込みの有無で理論燃焼温度(TFT:Theoretical Flame Temperature)が2208°C一定となるように調整した。Fig.14に燃焼場径方向ガスサンプリングゾンデの概略を示す。ブローパイプの側面から高さ方向の中心レベルに水冷プローブを挿入し,ランス先端から0.05 m,0.3 mの位置において,径方向にプローブを移動させて燃焼場の所定位置のガスサンプリングを行った。
base | case1 | |
---|---|---|
Blast temperature | 1200 (°C) | |
PCR | 150 (kg/t) | |
LNG (CH4) Rate | 0 (kg/t) | 10 (kg/t) |
O2 enrichment | 3.7 (%) | 4.8 (%) |
TFT | 2208 (°C) | |
Excess O2 ratio | 1.07 (–) | 0.99 (–) |
Schematic view of sampling probe.
Fig.15にガスサンプリング結果を示す。ランス先端から0.05 m,0.3 mそれぞれの位置におけるO2,CO+CO2,H2の分布を示す。r/Rは無次元半径であり,サンプリング位置をブローパイプ径で除して規格化した。0.05 mではbase,case1の両水準でほとんど差が無いのに対し,0.3 mではcase1の方が径方向全域に渡って酸素の消費が進んでおり,一方で,CO+CO2で示される炭素の酸化が促進している。特に無次元半径r/R=0.4近傍が顕著である。この位置ではH2の濃度も高いことから,2重管外側からのCH4吹込みによりcase1では各反応が促進したと考えられる。
Effect of CH4 injection into pulverized coal combustion field on radial gas distribution in blow pipe.
Fig.16に(1)−(3)式の各C反応率およびCH4の反応率とランス先端からの距離の関係を示す。(1)−(3)式によるC反応率をそれぞれR1,R2,R3と定義し,以下の手順で算出した。径方向ガスサンプリングにより得られる各サンプリング位置でのガス濃度C(vol%)と各サンプリング位置のガス流通面積A(m2),ガス流速v(m/s)から(4)式によりCO,CO2,H2各成分のガス流量V(m3/s)を算出し,(5)−(7)式で示されるマクロバランスからR3,R2,R1の順に算出した。
Effect of CH4 injection into pulverized coal combustion field on carbon and CH4 reaction rate.
ここで,熱風発生バーナーのLPG(C3H8)とランスから吹き込んだCH4はサンプリング結果からも完全燃焼していることが確認されたため,発生するCO2,H2Oはマクロバランス上,入側条件として考慮した。
(4) |
ここで,j:ガス種CO,CO2,H2,i:サンプリング位置
(5) |
(6) |
(7) |
ここで,Wc:微粉炭中のC量(kg/s)
ランス先0.05 mではcase1はCH4添加により酸素との反応率が低下した。Fig.16に示すようにCH4の反応率は,ランス先0.05 mの位置で100%に到達していることから,ランスから吹き込まれた直後は燃焼性が高いCH4が優先的に酸素と反応し,微粉炭と酸素の反応が阻害されたと考えられる。ランス先0.3 mでは,case1の方がR1,R2,R3とも増加した。Fig.17にbaseとcase1のC反応率と各反応率の内訳を示す。Cの反応率は,baseに対してcase1では11.6%向上した。各反応率の内訳はR1は55.0→59.6%と4.6%増加,R2は2.1→4.1%と2.0%増加,R3は0.7→5.7%と5.0%増加し,酸化反応だけでなく,H2Oによるガス化反応の促進量が大きいことが確認された。Fig.3,Fig.4からcase1ではCH4燃焼による雰囲気温度上昇により燃焼初期の酸化反応が促進し,その後,燃焼温度上昇効果と酸素分圧低下効果によりガス化反応が促進したと考えられる。
Comparison of each reaction ratio of C in pulverized coal.
メタン吹込み時の微粉炭の燃焼ガス化挙動を検証するため,Fig.1に示す燃焼実験炉のブローパイプ部を再現した3次元数値解析モデルを作成し,Euler-Lagrange法に基づいた微粉炭燃焼シミュレーションを実施した。ブローパイプ内の乱流モデルにRealizable k-ε二方程式モデルを用いて乱流流れを表現した。微粉炭の反応モデルをTable 4にまとめて示す。元素分析値を厳密に反映し,微粉炭の熱分解により組成がCαHβOγの揮発分を放出し,チャーが生成するとした。生成するチャーの不均一反応として部分酸化反応に加え,CO2とH2Oによるガス化反応を考慮した。均一反応として,揮発分,CO,H2とCH4の酸化反応を考慮した。熱分解速度は昇温速度100,000 K/sを仮定し,PC Coal Lab®のFLASHCHAIN®を用いて1次反応で評価した。チャーの不均一反応はすべて熱天秤を用いた実験結果をフィッティングし,容積反応モデルを用いて表現した。均一反応速度は乱流燃焼場であることから渦消散モデルを用いて推算した。ふく射伝熱モデルとしてP1 Approximation法を採用し,ふく射物性としてガスと粒子の放射を考慮した。二重管の外側からメタンを吹き込まない場合(Base)と吹き込む場合(Case 1)を対象に微粉炭燃焼とふく射伝熱の連成解析を実施し,反復計算を実施することで収束解を求めた。
Devolatilization | ||
Coal | → VM (CHON) + Char (+ Ash) | (r1) |
Heterogeneous reactions | ||
Char + 0.5O2 | → CO | (r2) |
Char + CO2 | → 2CO | (r3) |
Char + H2O | → CO + H2 | (r4) |
Homogeneous reactions | ||
VM (CHONS) + αO2 | → βCO + γH2O + δN2 + τSO2 | (r5) |
CO + 0.5O2 | → CO2 | (r6) |
H2 + 0.5O2 | → H2O | (r7) |
CH4 + 2O2 | → CO2 + 2H2O | (r8) |
Fig.18にランス先端からの距離に対するブローパイプの中心軸上のガス温度を示す。解析結果はFig.3に示す測定結果とほぼ一致しており,位置によらず,メタンを吹き込む場合(Case 1)は,吹き込まない場合(Base)と比較してガスの温度は高い。これはメタンの燃焼により燃焼場の温度が上昇して,微粉炭の燃焼が促進されたためであると考えられる。
Comparison between experimental measurements and numerical values for mean gas temperature along the axial direction.
Fig.19にランス先端から0.05 m,0.3 mそれぞれの位置におけるブローパイプ半径方向のO2とCO2+COの体積分率分布を示す。Fig.15と同様に,r/Rは無次元半径であり,サンプリング位置をブローパイプ径で除して規格化した。
Comparison between experimental measurements and numerical solutions for mean volumes fractions of chemical species along the radial direction.
プロットがFig.15に示した測定結果を示し,実線が解析結果である。メタン吹き込みの有無によらず,解析結果は下流(x=0.3 m)の特に壁近傍(r/R=0.8−1.0)において酸素の体積分率を過大に見積もり,CO2+COの体積分率を過小に見積もっている。これは乱流モデルが壁近傍における乱れを過小に見積った結果,この乱れによる燃料と酸化剤の混合を表現できなかったためであると考えられ,今後の課題である。しかしながら,メタンを吹き込む場合(Case 1)は,メタンを吹き込まない場合(Base)と比較して,解析結果の酸素の体積分率が低く,CO2+COの体積分率が高い。この傾向は測定結果と定性的に一致している。そのため,メタンの吹き込みにより,燃焼が促進される傾向を示した結果と考える。
Fig.20にランス先端からの距離に対する微粉炭チャーが受けた部分酸化反応およびCO2とH2Oガス化反応の割合について微粉炭粒子径108 μmの場合の結果を示す。メタン吹き込みの有無にかかわらず,上流では部分酸化反応が支配的であり,下流ではガス化反応の比率が増加している。これは上流では酸素が存在するため,活性化エネルギーの低い部分酸化反応が選択的に生じるものの,下流では酸素濃度が低いため,部分酸化反応に加えてガス化反応が生じるためである。また,この傾向はメタンを吹き込んだ場合の方が顕著である。これは,メタンを吹き込むことによりメタン燃焼反応で反応場の酸素濃度が低下し,温度が上昇することでガス化反応が促進したためであると考えられ,Fig.16,17に示した実験結果と同様の傾向である。以上より,微粉炭の燃焼ガス化挙動に及ぼすメタン吹込みの影響について,燃焼実験と数値解析で定性的には方向性が一致することが確認された。
Changes of the proportion of each heterogeneous reaction rate of char to the sum of reaction rates of the heterogeneous reactions.
高炉における高出銑比,低還元材比,高微粉炭比での安定操業達成のために,微粉炭燃焼性改善に向けて,同一ランスからの微粉炭,気体還元材吹込み時の吹込み位置が微粉炭の燃焼ガス化特性に及ぼす影響について燃焼実験と数値解析により調査し,以下の結論を得た。
(1)同一ランスからの微粉炭,CH4吹込み時の微粉炭燃焼性を燃焼温度,燃焼場ガス組成,未燃チャー空隙率の変化から評価した結果,いずれのCH4吹込み位置でも微粉炭単独吹込み時(base)に比較して微粉炭燃焼性は上昇した。CH4の吹込み位置影響については,2重管外側(case1),2重管内側(case2),事前混合(case3)の順に微粉炭の燃焼性が向上した。
(2)微粉炭主流部の画像解析により,CH4吹込み時は微粉炭単独吹込み時(base)に比較してbase,case1,case2,case3の順に微粉炭の分散性が向上した。燃焼性向上の傾向と一致するため,CH4同時吹込みによる分散性向上が燃焼性向上の一因と示唆された。
(3)燃焼場の径方向のガスサンプリングにより,CH4同時吹込み時の微粉炭C反応率に及ぼす酸化反応率(R1),CO2ガス化反応率(R2),H2Oガス化反応率(R3)の影響を調査した結果,CH4同時吹込みにより,R1は55.0→59.6%と4.6%増加,R2は2.1→4.1%と2.0%増加,R3は0.7→5.7%と5.0%増加し,酸化反応だけでなく,H2Oによるガス化反応の促進量が大きいことが確認された。
(4)燃焼実験炉のブローパイプ部を再現したシミュレーションモデルを作成し,数値解析した結果,メタン吹込み時はガス温度の上昇,酸素消費の促進,ガス化反応の促進といった実験結果と同様の傾向が確認された。