2018 Volume 104 Issue 5 Pages 253-257
Return fines of sinter were agglomerated with binder material such as cement and fine powder of blast furnace slag in order to use the agglomerates as raw materials in blast furnace. Reduction tests of the agglomerates were carried out to investigate high temperature properties of the agglomerates. Then, the following findings were obtained. The agglomerates have lower RDI (RDI < 20%) than sinter because brittle sinter were bonded discretely by using soft materials as binder and size degradation during reduction was hindered. The agglomerates have high RI (DI > 70%) than sinter because abundance ratio of fine pore in the agglomerates were high. The agglomerates have equal to or more strength after reduction at 700 and 900 °C because solid phase sintering was promoted by added ultra fine powder of iron oxide. Therefore, the agglomerates of return fines of sinter have more excellent properties in permeability and reducibility than sinter for blast furnace raw materials, and this concept is effective for utilizing sinter fines for blast furnace raw materials in a high pulverized coal ratio and low coke ratio operation.
焼結プロセスでは,鉄鉱石や石灰石といったいわゆる新原料を主原料とし,凝結材と焼結工程において発生する粉焼結(返し鉱)とを配合して原料として使用している。返し鉱は,プロセスの歩留まり低下1),さらには再焼成に伴うエネルギーロスや凝結材増加による二酸化炭素の排出増加を引き起こすため,配合比率は低い方が好ましいが,現状では新原料に対して10~20%程度の配合比率となっている。
このような課題に対して,1~5 mmの小粒焼結鉱を分級し,高炉で直接使用することで焼結鉱の歩留まりを向上させる操業2–4)が行われおり,Nakajimaら3)は,主原料中20%前後の多量使用により,焼結鉱の歩留りが10%向上すると報告している。しかしながら,小粒焼結鉱使用は炉内の通気抵抗を増加させるため,その多量使用には通気性に余裕のある条件が必要である。近年の高炉で志向されている高微粉炭比・低コークス比操業においては従来に比べて通気抵抗が増加するため,小粒焼結鉱多量使用の操業は行われていない。
これに対して本研究では,返し鉱を冷間で塊成化することで,高炉の通気性を阻害することなく原料として直接使用できるプロセスについて検討した。
高炉原料の冷間での非焼成塊成化については1970年代から検討が進められており,砂鉄や粉鉱石とともに銑鋼ダストを添加した微粉の原料や,8 mmアンダーの比較的粒度の粗い粉鉱石原料を,セメントバインダーで塊成化したコールドボンドペレット鉱の高炉使用試験5,6)が行われた。さらに,鉱石と炭材の近接配置による還元,ガス化反応の高速化を目的とした非焼成含炭塊成鉱の高炉での多量配合試験7,8)が行われている。非焼成含炭塊成鉱は製鉄所ダストを主原料としており,粒径や配合比といった塊成化条件の最適化についての検討9)が報告されている。しかしながら,これまで返し鉱を主原料とした冷間での塊成化条件については検討事例がない。また,返し鉱を用いた塊成化物の高炉原料としての特性についても評価する必要がある。そこで,返し鉱の冷間での塊成化方法について検討するとともに,塊成化物の高温性状について調査し,プロセスの有用性について評価を行った。
返し鉱を用いた新プロセスの概略をFig.1に示す。多量製造に対応した塊成化プロセスとしては,ペレット製造で実績のあるパンペレタイザーによる造粒が適切と考えられるが,返し鉱のような比較的粗粒で,単独での造粒が困難な原料を塊成化できるかが課題となる。また,過去に粉鉱石を用いた造粒の報告はあるが,返し鉱は鉱石よりも水との濡れ性が悪く,造粒性に劣る。これらの返し鉱の造粒性に対する不利な条件に対して,粗粒の返し鉱に細粒原料を添加して,原料の粒度分布を調整して空隙率を最適化することにより,原料粒子間に働くバインダーの効果を高める方法について検討した。返し鉱と細粒原料の配合を調整して細密充填とするために,Andreasenが提案した(1)式10)を用いて,目標の粒度分布を求めた。
(1) |
P(%):累積体積比率
D(m):最大粒子径
d(m):粒子径
q:定数(=0.25)
Schematic illustration of new agglomeration process flow. (Online version in color.)
(1)式に基づく粒度分布により塊成化物の強度が向上するかを調査した。アルミナセメントを10%添加し,0.15 mmアンダーの原料のみを用いて造粒した場合と,4 mmアンダーの原料を(1)式に基づく粒度分布にて造粒した場合とで,1日養生後の冷間強度を比較した。結果をFig.2に示す。(1)式に基づく粒度分布にて造粒した場合は,1日養生後の冷間強度が50 kgf/pieceとなり,0.15 mmアンダーの原料のみを用いて造粒した場合の15 kgf/pieceに対して3倍以上の強度となった。
Effect of controlling size distribution on strength of agglomerates.
(1)式に基づく目標の粒度分布を形成させるために,返し鉱に添加する細粒原料としては,一般的な鉄原料であるペレットフィードを用いた。さらに,固相焼結による熱間強度向上を狙い,酸化鉄の超微粉の配合を試みた。各原料の粒度分布をFig.3に示す。ペレットフィードと比較して,返し鉱は2桁近く粒子径が大きい粗粒であり,酸化鉄粉は1桁近く粒子径が小さい超微粉であることがわかる。返し鉱,ペレットフィード,酸化鉄粉それぞれの粒度分布から,(1)式に基づく目標粒度分布を満たす配合率を算出した。返し鉱を79%,ペレットフィードを14%,酸化鉄粉を7%配合した原料の粒度分布を目標の粒度分布とともにFig.3に示す。この配合率で原料を混合し,後述のバインダーを加えてΦ1200 mmのペレタイザーで造粒を行った。
Size distribution of raw materials for agglomerates of return fines.
超微粉の酸化鉄粒子の添加は,充填率増加の効果に加えて,固相焼結による熱間強度向上が期待される。Fig.4に熱処理温度と塊成化物の強度指数との関係を示す。本プロセスでは,経済性および高炉プロセスへの影響の面から,バインダーとしてセメントおよび高炉スラグ微粉を用いたが,酸化鉄粉無しの条件では熱処理温度の増加とともにセメント結合が分解して強度低下する。酸化鉄粉を配合すると熱処理温度が600°C以上の高温での強度低下が緩慢となり,800°C以上では上昇に転じる傾向が確認された。これは,超微粉の酸化鉄粒子を介した固相焼結による強度発現と考えられ,これにより低温から高温までの広い範囲で高強度をもつ塊成化物を作製することができた。
Influence of treatment temperature on strength of agglomerates of return fines.
2章に示す塊成化方法により得られた塊成化物(以下返し鉱塊成鉱と称す)のJIS-RDI,RI値,およびCO-CO2雰囲気における還元試験後の圧壊強度を測定した。試験に供した塊成化物の原料構成をTable 1に示す。コスト,スラグ比上昇抑止の観点から,スラグ微粉とセメントをあわせて4%,8%としたものについて,高温性状を評価した。なお,RI試験においては,セメントの水和反応に由来する塊成化物中の結合水の影響を排除するため,JIS-RI試験により得られた重量減少量から,JIS-RI試験と同一の温度,流量条件でN2ガスを導入した際の重量減少量を差し引いて還元率を算出した。
Sinter fines | Pellet feed | Iron oxide | Cement | BF Slag | |
---|---|---|---|---|---|
Composition 1 (Binder: 4 mass%) |
76.2% | 13.6% | 6.3% | 1.0% | 3.0% |
Composition 2 (Binder: 8 mass%) |
73.0% | 13.0% | 6.0% | 2.0% | 6.0% |
返し鉱塊成鉱のJIS-RDI,RI値を他の高炉原料と合わせてFig.5に示す。返し鉱塊成鉱は,その原料とした焼結鉱に対して高RIかつ低RDIとなっており,その他の焼結鉱と比較しても同様の傾向が見受けられる。これらの特性は高炉原料としては望ましいと言え,返し鉱塊成鉱の主原料となる焼結鉱に対して,大幅に高温性状が改質されたと言える。
Comparison of high temperature property between agglomerates of return fines and other raw materials for blast furnace.
JIS-RDI試験における還元率とJIS-RDI値の関係をFig.6に示す。焼結鉱では,還元の進行に伴いRDIが高くなり,被還元性が低い場合は低RDIとなる傾向がある。一方,返し鉱塊成鉱は,焼結鉱より還元が進行しているにもかかわらず,RDIが低くなっていることがわかる。返し鉱塊成鉱のRDIが低位となっていることの一因として,還元が進行しても粉化しにくい微粉の酸化鉄とペレットフィードを原料として用いていることが挙げられる。ただし,酸化鉄とペレットフィードの使用比率は合計20%程度であり,仮に酸化鉄とペレットフィードが全く粉化しない影響でRDIが変化したとしても,返し鉱の原料となる焼結鉱のJIS-RDI値の40%に対して32%までにしか低減しないと推定される。しかしながら,返し鉱塊成鉱のJIS-RDI値は20%に低減しており,冷間での塊成化による構造変化に起因する返し鉱のRDI低減の寄与が高いと考えられる。
Relationship between reduction degree and RDI in JIS-RDI test.
次に,原料成分のRDIに及ぼす影響について調査した。焼結鉱成分のRDIに及ぼす影響としては,脈石成分が多くなると,被還元性の低下によりRDIが低下することが知られている11)。また,焼結鉱中のAl2O3濃度が増加すると,融液生成量が低下し,粗大な気孔が増加し12),さらにはAl2O3を固溶したヘマタイトが粒内に微小亀裂を発生させる13)ため,RDIが低下することが知られている。これらの知見に基づき,原料中の(%CaO)+(%SiO2)+(%MgO)−(%Al2O3)とJIS-RDI値との相関を調べた。結果をFig.7に示す。焼結鉱,返し鉱塊成鉱ともに(%CaO)+(%SiO2)+(%MgO)−(%Al2O3)の増加に伴いRDIが減少する傾向が示された。また,返し鉱塊成鉱の方が,同一の(%CaO)+(%SiO2)+(%MgO)−(%Al2O3)に対して,焼結鉱よりもRDIが低位であった。返し鉱塊成鉱は非焼成で製造しており,返し鉱塊成鉱中の脈石はバインダーとしての結合組織を形成する役割も果たしているため,前出の焼結鉱のRDIに及ぼす脈石成分の影響とはメカニズムが異なるが,返し鉱塊成鉱と同等の脈石量を持つ焼結鉱と比較すると,返し鉱塊成鉱の方が低RDIの特徴を有すると言える。
Relationship between composition of raw material and RDI.
上述したような返し鉱塊成鉱の還元粉化性改善のメカニズムを調査するために,焼結鉱と返し鉱塊成鉱の550°Cでの還元前後の組織を観察し,比較した。還元は,高炉炉上部のガス雰囲気を想定し,25%CO-25%CO2-50%N2混合ガスを用い,550°Cで30分間保持して行った。結果をFig.8に示す。焼結鉱は,還元前が主にヘマタイトとカルシウムフェライトで構成されており,550°Cでの還元後はマトリックス(ガラス質珪酸塩)全体に亀裂が伝播していることがわかる。これに対し返し鉱塊成鉱は,還元前は焼結鉱と同様の組織を持つ微細な焼結鉱(すなわち,返し鉱)がバインダーにて結合されており,還元後は返し鉱内には亀裂が発生しているものの,マトリックス(バインダー)には亀裂の伝播が無いことがわかる。Sakamotoら14)は焼結鉱組織のクラック伝搬に関して確率論的な解析を行い,溶融組織のガラス質スラグはクラック伝搬距離が長く破壊しやすい組織であるとの知見を得ている。返し鉱塊成鉱では,ガラス質珪酸塩を主体とする脆性的な焼結鉱が離散的に配置され,バインダーで結合されているため,マクロ的な特性としては脆性的では無くなったことが推察される。
Comparison of mineral structure between agglomerates of return fines and sinter. (Online version in color.)
返し鉱部とバインダー部の脆性について評価するため,還元前の返し鉱塊成鉱の断面にビッカース試験機で印加した圧痕を観察した。結果をFig.9に示す。返し鉱部内の圧痕からの亀裂の伝播は認められるが,バインダー部内の圧痕からの亀裂の伝播は認められない。また,返し鉱部内の圧痕の対角線長さが38~40 μmであるのに対し,バインダー部内の圧痕の対角線長さは99~110 μmとなっており,バインダー部内の圧痕面積の方が大きくなっている。対角線長さからビッカース硬度を算出し,バインダー部と返し鉱部で比較すると,バインダー部のビッカース硬度は返し鉱部のビッカース硬度の0.15倍であり,軟らかい性状となっていることがわかる。これらの実験結果から,返し鉱塊成鉱では,ガラス質珪酸塩を主体とする脆性的な焼結鉱が小粒子として分散され,軟質のバインダーによって結合されており,マクロ的には脆性的では無くなった結果,還元粉化領域における亀裂の伝搬が妨げられ,RDI値が低位になったと考えられる。
Mineral structure of agglomerates of return fines after Vickers hardness test. (Online version in color.)
返し鉱塊成鉱のRIが焼結鉱よりも高位であった要因について調査するため,返し鉱塊成鉱と焼結の気孔径分布を調査した。結果をFig.10に示す。返し鉱塊成鉱の15 μm以下の微細気孔の比率が,焼結鉱と比較して高位となっていることがわかる。Yamaguchiら15,16)は,焼結鉱や鉱石,ペレットのJIS-RI,1000°Cにおける到達還元率(R1000)について調査し,15 μm以下の微細気孔量が多くなると,比表面積の急激な増加により固相還元が促進され,JIS-RIやR1000が増加すると報告している。このことから,返し鉱塊成鉱は,細粒化されて比表面性が増加した焼結鉱により構成されることに加えて,粒子全体としても15 μm以下の微細気孔の割合が高いことが被還元性改善の要因と推定された。
Distribution of pore diameter in agglomerates of return fines and sinter.
焼結鉱および返し鉱塊成鉱をCO:CO2:N2=0.25:0.25:0.5の還元ガス組成で,700°Cおよび900°Cにて30分間還元させた後の圧壊強度をFig.11に示す。還元率は,RIの測定と同様に,バインダーの重量減少量を差し引いた重量減少量から算出した。焼結鉱および新塊成化原料ともに900°Cでの還元後は700°Cでの還元後よりも還元率が上昇し,かつ強度が上昇する結果となった。これは,Fig.3で示されたような超微粉の酸化鉄粒子を介した固相焼結による強度増加が,還元雰囲気下においても発現したためと考えられる。また,新塊成化原料の方が焼結鉱と比べて,同一温度での還元条件においても還元率が増加し,還元後強度が増加するとの結果が得られた。これは,前出の気孔径分布の調査結果が示すように,微細気孔の割合が高いことで被還元性が改善されたことに起因すると考えられる。
Strength of agglomerates of return fines and sinter after reduction test.
焼結返し鉱をセメントおよび高炉スラグ微粉末をバインダーとして冷間塊成化した返し鉱塊成鉱の還元試験を行い,以下の特性を確認した。
焼結鉱と比較して低RDI(RDI<20%)の高温特性が得られた。低RDIは,軟質のバインダーの添加により脆性的な焼結鉱が分散されて結合された結果,マクロ的には脆性的ではなくなり,還元粉化領域でのクラック伝搬が妨げられたことに起因すると考えられる。
焼結鉱と比較して高RI(RI>70%)の高温特性が得られた。高RIは,焼結鉱の細粒化に加え,粒子全体としても微細気孔の割合が高いことに起因すると考えられる。
700,900°Cでは,焼結鉱と同等以上の還元後強度が得られた。これは,配合原料として添加した超微粉の酸化鉄粒子の固相焼結による強度増加によるものと考えられる。