Tetsu-to-Hagane
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Steelmaking
Critical Condition for Formation of Accretion at Gas-Injection Nozzle Tip and Cooling Capacity of Gas
Tsuyoshi YamazakiYuji OgawaMasayuki AraiShin-Ya KitamuraTooru Matsumiya
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2018 Volume 104 Issue 8 Pages 409-416

Details
Synopsis:

A study has been made on the formation of accretion at the nozzle tip during submerged gas injection into Fe-C liquid metal. Experiments in 1 ton heating furnace were carried out to obtain data required for the initiation of the accretion and the followings were resulted: The inner diameter of gas injection nozzle and the solidus temperature of Fe-C were found to be determining factors for the critical condition for the formation of the accretion. By using Ohguchi’s heat balance equation for the stability of the accretion, transfer coefficient of the heat from hot metal to the accretion was estimated to be 63 ε ˙ 0.3 . Furthermore, by using modified Ohguchi’s heat balance equation including reaction heat term, the effective rate of reaction heat was obtained, which is 0.03 for CO2 and 0.4~1 for C3H8. Plant scale experiments were also conducted in 270 LD convertor at Muroran Works in order to examine the effect of the blowing of CO2-C3H8 gas mixture on the cooling for the protection of bottom nozzle and it was found that almost all of the reaction heat of C3H8 is contributed to the cooling, which supports the above mentioned result of 1 ton scale experiments.

1. 緒言

精錬装置におけるガス吹き込みによる鉄浴の撹拌は,熱・物質移動を促進させ,反応速度を増大,制御する手段として積極的に活用されている。特に転炉では,多量の撹拌ガスによる強い撹拌が指向され,ステンレス製等の金属製の管を使用したガスの吹き込みが行われているが,高温鉄浴へのガス吹き込みのため,管の先端部にガスの冷却能により溶鉄浴を凝固させ,管の保護層を形成させることで,管,および,管近傍の耐火物の損耗の抑制を図っている。この凝固鉄は断面形状の特徴からマッシュルームと称され,マッシュルームの形成,および,形成に関するガス種の影響について,これまでに多数の報告がある。

Ohguchiら1)は,ポーラス状のマッシュルーム形成について伝熱モデルによる解析を行い,ガス流量やスーパーヒートがマッシュルーム形状に与える影響を示した。また,マッシュルーム表面での溶鉄浴とガスの熱伝達に関する簡易モデルを考案し,計算結果が伝熱モデルと良い一致を示すことを示した。Komataniら2)は,5 ton規模でのガス吹き込み実験でのマッシュルーム生成限界をOhguchiらの簡易モデルを使用して解析し,マッシュルーム径をマッシュルーム生成限界の指数として評価できることを示した。

Kishimotoら3)は,酸素底吹き2重管ノズル先端部に形成するマッシュルームの熱バランスをモデル化し,マッシュルームのマクロな成長挙動は外管の冷却能と溶鋼からマッシュルームへの対流熱伝達のバランスでほぼ決まっているとしている。

ガス種による冷却能の違いについては,Ishibashiら4)が2重管羽口において,内管のガスを酸素,外管のガスをアルゴン(Ar),あるいは,プロパン(C3H8)とした吹き込み実験を行い,羽口の溶損状況からC3H8の分解熱の約1/30が羽口冷却に寄与すると報告している。但し,羽口溶損長を指標とし,溶損長の小さい条件から分解熱の寄与率を見積もっているため,寄与率の値は曖昧である。また,Nozakiら5,6)は2重管羽口における外管の炭化水素吹き込みによる鋼中水素の上昇を抑えるためにCO2吹き込みを行い,C3H8を冷却ガスとして使用した場合と同様のマッシュルーム生成を確認している。但し,メタル浴中にCが過剰にある場合は,CO2+C=2COの吸熱反応が進むが,Cが少ない吹錬末期の高温のメタル浴では,吸熱反応はもはや起こらず,CO2の顕熱しか期待できないとも述べている。一方,Sakurayaら7)は,CO2は酸化性ガスであり,吹錬末期に羽口近傍に多量のFeOが生成する現象を抑制し得ず,羽口耐火物の化学的損傷が著しい欠点を有しているとし,COガスによる羽口保護効果を報告している。Ibarakiら8)は170TのLD-CBにおいて吹錬中期に底吹きガスをCO2からN2への変更を行い,ガス種によるマッシュルーム冷却力の差を伝熱解析と羽口耐火物の温度推移から評価し,マッシュルーム冷却力はCO2,N2,Arの順に強いと報告している。Isoら9)は,170TのLD-CB炉において底吹きガスをAr,CO2とした吹き込み試験を行い,マッシュルームの生成有無についてマッシュルーム形成の伝熱解析を行い,ガス顕熱から計算される条件と良い一致を示すと報告している。

このようにマッシュルーム形成に関するガス種の影響の検討は多数為されてはいるものの,反応熱の寄与については不明な点が多く,羽口冷却能を制御する上で,ガスの有効な冷却能を定量的に評価する必要があると考えられる。そこで本研究では,ガス種を変えてマッシュルームの生成限界を調査し,Ohguchiらのモデル式にガス反応熱項を加えた式を使用し,マッシュルーム生成限界条件でのガス種毎の反応熱の寄与率を見積もった。

2. 実験方法

1 ton規模の誘導溶解炉を使用して炉の底部に設置したステンレス製の底吹きノズルからガスを吹き込み,ノズル先端部のマッシュルーム生成挙動を調査した。実験では底吹き実験を行う炉とは別の炉にて溶鉄を作成し,溶鉄用の鍋状容器にて,一旦,溶鉄を受けた後,底吹き実験を行う炉に溶鉄を装入した。底吹き実験に使用した誘導溶解炉の模式図をFig.1に,溶鉄の成分をTable 1に示す。誘導溶解炉に溶鉄を装入後,各種ガスを所定の流量に設定し,誘導加熱により溶鉄の温度を溶鉄のスーパーヒート(溶鉄温度とFe-C系の固相線温度の差)が150~350 K程度になるように溶鉄温度を1668~1845 Kに調整した。マッシュルームの形成状態が安定した条件での評価とするため,所定の温度で,底吹きノズルの供給圧力がほぼ一定となる状態で10分間保持した。その後,溶解炉内の溶鉄を排出し,炉底部のノズル先端部の状況を確認した。マッシュルームの生成有無は,溶鉄排出後の炉底部の観察に加え,実験中のノズル供給圧力の変動状態からも判断した。

Fig. 1.

Schematic diagram of experimental apparatus.

Table 1. Composition of liquid iron (mass%).
C Si Mn P S
0.89-2.79 0.12-0.25 0.6-0.91 0.042-0.052 0.006-0.017

実験条件をTable 2に示す。ステンレス製ノズルは,材質がSUS304でノズル径の異なる3種類を使用した。ノズル径は,内径2 mm−外径4 mm,内径3 mm−外径5 mm,内径4 mm−外径7 mmである。ガス種としては,Arガス,CO2ガス,C3H8ガスの3種を使用し,ArガスとCO2ガスはそれぞれ単体で吹き込んだが,C3H8ガスはArガスと混合して吹き込んだ。これは,C3H8ガスの冷却能が高いため,単体で吹き込むと,マッシュルームの生成限界でのC3H8ガス流量が,溶鉄がノズル内に侵入する限界ガス流量よりも小さくなり,マッシュルーム生成限界での実験が困難となるからである。なお,少量のC3H8ガスの流量調整を安定して行うため,Ar-C3H8混合条件では底吹き羽口耐火物にノズルを3本設置して総流量を増大させて実験を行った。

Table 2. Experimental Conditions for 1 ton-scale hot metal experiments.
Capacity (Depth) 1.5 ton (0.8 m)
Nozzle inner diameter/outer diameter 2/4, 3/5, 4/7 mm
Nozzle length 0.33 m
Gas species/Flow rate Ar gas/ 0.60-9.87 Nm3/h
CO2 gas/ 0.78-3.20 Nm3/h
C3H8 gas/ 0.07-0.10 Nm3/h

さらに,CO2ガス,C3H8ガスの底吹き羽口の冷却特性への影響を実機規模で評価するため,新日鐵住金(株)室蘭製鉄所の270 ton上底吹き転炉(LD-CB)を用いて,底吹きガス種をCO2ガスのみ,および,CO2ガスとC3H8ガスの混合ガスで溶鉄への吹込み試験を行い,底吹き羽口の損耗性に対するガス冷却力の影響を評価した。LD-CBは溶鋼の攪拌を強化する上底吹き法の一つで,底吹き羽口はステンレス製小径鋼管の集合体からなり,吹込みガス流量の変更幅を大きく取れる特色がある。Table 3に試験条件を示す。CO2ガスへのC3H8ガスの混合は,CO2単独の条件とガスの冷却力が同等と推定される条件を以下の要領にて推定し,推定した等冷却力条件の近傍の条件を設定した。ガス冷却力の試算には,1 ton規模実験で求めた反応熱の寄与率を使用し,転炉吹錬末期の条件(溶鉄温度を1670°C,C濃度を0.1%とした)でのマッシュルーム生成限界流量をCO2ガス単独,C3H8ガス単独のそれぞれの条件について求め,求めた各ガスでのマッシュルーム生成限界流量の比率から等冷却力の混合比を計算した。

Table 3. Experimental Conditions for 270 ton LD converter at Muroran Works.
Capacity 270 ton
Bottom Blowing Conditions Tuyere CB-Type
Number of tuyeres 2
Gas species CO2, C3H8
Gas Flow Rate CO2 0~0.0148 Nm3/min/ton
C3H8 0~0.0025 Nm3/min/ton

3. 実験結果

Arガス単独で吹き込んだ条件での結果をFig.2Fig.3に示す。図中,凡例のMRはマッシュルームを意味し,●,▲,■はマッシュルームの生成が確認された条件を,○,△,□はマッシュルームの生成が確認されなかった条件である。マッシュルームは,ガス流量が多い程,生成し易い。また,マッシュルーム生成は溶鉄の凝固現象であるため,同一ガス流量では,凝固温度と溶鉄温度の差が大きい程,マッシュルームが生成しにくいと考えられる。そこで,マッシュルームの生成有無を整理するため,横軸にArガス流量QArを取り,縦軸に溶鉄温度TMとマッシュルーム生成限界温度Tmの差(スーパーヒート)を取った。マッシュルーム生成限界温度については,Fe-C系の液相線温度Tl,および,固相線温度TSの2つの基準で検討し,Tm=Tl,あるいは,Tm=TSとして整理した。マッシュルームが生成しない条件は図中左上の領域(ガス流量が少なく,且つ,スーパーヒートが大きい条件)に分布し,マッシュルームが生成する条件は図中右下の領域(ガス流量が多く,且つ,スーパーヒートが小さい条件)に分布するため,この領域の境界をノズル径毎に示した。Fig.2の液相線温度をマッシュルーム生成限界温度とした場合では,ノズル内径が4 mmの条件でスーパーヒートが同一でも,ガス流量の多い方がマッシュルームは生成しない条件になっているが,Fig.3の固相線温度をマッシュルーム生成限界温度とした場合は,このような逆転は起きておらず,マッシュルーム生成限界温度としては固相線温度を選択した方が,マッシュルーム生成限界条件の評価には適していると考えられる。

Fig. 2.

Effect of superheat and Ar gas flow rate on accretion formation. Liquidus temperature of Fe-C alloy is used as Tm.

Fig. 3.

Effect of superheat and Ar gas flow rate on accretion formation. Solidus temperature of Fe-C alloy is used as Tm.

CO2ガス単独で吹き込んだ条件での実験結果をFig.4に示す。Arガスを吹き込んだ場合と同様に,固相線温度をマッシュルーム生成限界温度として整理した。ノズル内径が2 mmの場合の結果をArガス吹き込み時の結果と比較すると,Arガスの場合,マッシュルーム生成限界の境界線がガス流量1 Nm3/hでスーパーヒート250 K程度であるが,CO2ガスの場合,ガス流量1 Nm3/hでスーパーヒート400 K程度である。CO2ガスの方が,より高温でもマッシュルームが生成しており,CO2ガスの冷却力がArガスの冷却力より大きいことを示している。

Fig. 4.

Effect of superheat and CO2 gas flow rate on accretion formation.

ノズルへの溶鉄の差込みを抑制するため,実験可能なガス流量には下限がある。冷却力の大きいC3H8ガスを単独で吹き込む場合,差し込みを抑制できるガス流量でマッシュルーム生成限界条件を評価するには,溶鉄温度をより高温にする設定する必要があるが,設備制約から困難であるため,Arガスに少量のC3H8ガスを混合することで冷却力を落として実験を行った。ArガスとC3H8ガスの混合ガスを吹き込んだ条件での実験結果をFig.5に示す。溶鉄温度が1753 Kの場合,Arガス流量が1.00~1.33 Nm3/h,C3H8ガス流量が0.10 Nm3/hの条件ではマッシュルームの生成が観察され,Arガス流量が1.00 Nm3/h,C3H8ガス流量が0.07 Nm3/hの条件においてもマッシュルームの生成が観察された。一方で,溶鉄温度が1841 Kの場合,Arガス流量が0.60~0.80 Nm3/h,C3H8ガス流量が0.10 Nm3/hの条件ではマッシュルームの生成が観察されなかった。なお,溶鉄温度が1753 Kの場合,スーパーヒートは331~334 K,溶鉄温度が1841 Kの場合,スーパーヒートは417~425 Kであった。

Fig. 5.

Effect of Ar-C3H8 mixed gas flow rate on accretion formation.

室蘭270 ton転炉を用いてCO2ガスとC3H8ガスの混合ガスを吹き込んだ条件での底吹き羽口の損耗性評価結果をFig.6に示す。底吹き羽口の損耗速度はレーザー応用プロフィル測定装置を使用して測定し,CO2ガス単独の通常操業条件での底吹き羽口の損耗速度と比較した。図中の点線は,CO2ガス流量が0.015 Nm3/min/tの条件と同等の冷却力と推定されるCO2ガスとC3H8ガスの混合条件である。冷却力の推定については考察で後述する。CO2ガス流量を通常操業条件(0.0148 Nm3/min/t)の半分の流量とした場合,C3H8ガスの流量が0.0011 Nm3/min/t以上の条件では底吹き羽口の損耗速度は通常操業条件よりも小さい傾向を示したが,C3H8ガスの流量が0.0010 Nm3/min/t以下の条件では,底吹き羽口の損耗速度は通常操業よりも大きい傾向を示した。

Fig. 6.

Relation between gas mixing conditions and erosion level.

4. 考察

マッシュルームの生成限界条件において,溶鉄からの受熱量とガスの冷却力の間の熱バランスを考察することにより,ガス毎の冷却力の評価を行った。Komataniら2)はOguchiらの簡易モデル式(1)1)を元に,マッシュルームの生成限界を評価している。

  
2 π r 2 h ( T M T m ) = C p ( T m T g ) Q (1)

ここで,r:マッシュルーム半径(m),h:液体金属とマッシュルーム間の熱伝達係数(kJ/m2/s/K),TM:液体金属の温度(K),Tm:液体金属の融点(K),Cp:ガスの比熱(J/Nm3/K),Q:ノズルから吹き込まれるガス量(Nm3/s),Tg:ガス温度(K)である。

Komataniらはマッシュルーム生成限界温度としてFe-Cの液相線温度を使用し,マッシュルームの生成限界条件についてマッシュルーム径rを指標として整理した。この整理ではr≧2 cmの条件にてマッシュルーム生成としているが,ノズル直径2~3 mmであることに対し,rは2 cmと相対的に大きな条件である。

実験結果のFig.2Fig.3より,マッシュルーム生成限界温度としてFe-C系の液相線温度より固相線温度を基準として採用した方が,マッシュルームの生成限界を定量的に評価できることが分かった。底吹きノズル先端近傍では,吹き込むガスによる流動や底吹きガスの後退現象により流動性が高い状態となっている。なお,底吹きガスの後退現象とは,液中に吹き込まれたガス(液中ジェット)の破断現象に伴い液中ジェットが吹き込む方向とは逆方向に吹き戻される現象である10)。Shibutaniら11)の報告にあるように二相共存条件では固相率が高い状態でも流動性を呈することから,ガスにより溶鉄が冷却されても流動性が低い状態にまで冷却されないと生成した凝固鉄がノズル先端部に付着し留まることができないと考えられる。従って,マッシュルームの生成限界の評価では,高固相率条件を考慮した固相線温度を基準に取るべきと考えられる。そこで,Ohguchiらの簡易モデル式(1)において,マッシュルーム生成限界温度をFe-C系の固相線温度とし,式左辺の溶鉄とマッシュルーム生成限界温度との温度差をTM-TSとし,式右辺の温度差であるマッシュルーム生成限界温度と吹き込むガス温度の差をTS-Tgとして,Arガスを吹き込んだ場合の実験結果を考察した。ここでマッシュルームの半径は,マッシュルームの生成限界を評価するため,吹き込みノズルの半径を限界のマッシュルーム半径とした。また,Ohguchiらの式では,溶鉄とマッシュルーム間の熱伝達係数を一定値として扱っているが,流動状態によって熱伝達量が変化すると考え,Isobeら12)の扱いと同様に,熱伝達係数が攪拌動力密度の0.3乗に比例すると仮定し,その比例定数をαとして(1)式を(2)式で表した。なお,攪拌動力密度 ε ˙ にはSanoら13)の式を使用した。攪拌動力密度の計算では,CO2の場合,C+CO2→2COの反応によりガスが2倍になると仮定し,C3H8の場合,C3H8→3C+4H2の反応によりガスが4倍になるとして,反応の影響を考慮した。

  
2 π r c 2 ( α ϵ ˙ 0.3 ) ( T M T s ) = C p ( T s T g ) Q (2)

ここで,rc:マッシュルーム生成限界半径(=ノズル半径)(m),α:熱伝達係数の比例定数(−), ε ˙ :撹拌動力密度(W/t),TM:溶鉄温度(K),TS:マッシュルーム生成限界温度(=Fe-C系固相線温度)(K),Cp:ガス比熱(J/Nm3/K),Tg:ガス温度(K),Q:ガス流量(Nm3/s)である。

熱量計算に使用したガスの物性値をTable 4に示す。比熱の値は,いずれのガスも化学便覧14)の値を使用し,後述するように温度依存性のあるCO2とC3H8については比熱を温度の関数として標準状態から評価温度であるFe-C系の固相線温度の範囲で積分することによりエンタルピー変化を計算した。反応熱については,CO2の場合,C+CO2=2COとし,製鋼反応の推奨平衡値15)に記載の式から求めた標準状態での値である6460 kJ/Nm3に,評価温度であるFe-C系の固相線温度での温度補正を,生成系であるCO,Cと反応系であるCO2のエンタルピー差(−361~−267 kJ/Nm3)より行い,6099~6193 kJ/Nm3とした。また,C3H8ガスの場合は,熱分解反応をC3H8=3C+4H2とし,化学便覧14)に記載の標準状態での値である4636 kJ/Nm3に,CO2の場合と同様に評価温度であるFe-C系の固相線温度での温度補正を,生成系であるC,H2と反応系であるC3H8のエンタルピー差(1159 kJ/Nm3)より行い,5795 kJ/Nm3とした。

Table 4. Physical properties used to heat balance estimation.
Specific heat (kJ/Nm3/K) Heat of Decomposition (kJ/Nm3)
Ar 0.929
CO2 1.660 ~ 2.642 6099 ~ 6193
C3H8 3.277 ~ 9.024 5795

Arガスの実験結果について横軸に(2)式左辺のα以外の量を,縦軸に右辺のガス冷却量をとり,マッシュルーム生成有無の限界(境界)条件を検討するとともに,境界線の勾配から熱伝達係数である α ε ˙ 0.3 の係数αの値を求めた。なお,マッシュルーム生成限界半径をノズル半径としたが,マッシュルーム生成限界半径rcをノズルの内径diの半分とした場合の結果をFig.7に,外径dOの半分とした場合の結果をFig.8に示す。ここで,di:ノズル内径(m),dO:ノズル外径(m)である。マッシュルーム直径をノズルの内径とした条件の方が,生成有無の境界を明瞭に分けることができている。マッシュルーム生成の起点はガスに最も近い管内壁の角であり,マッシュルーム生成限界直径としては,ノズル内径とすることが適当であると考えられる。

Fig. 7.

Heat balance on the surface of accretion (Ar gas). Inner nozzle diameter is used as accretion diameter.

Fig. 8.

Heat balance on the surface of accretion (Ar gas). Outer nozzle diameter is used as accretion diameter.

Fig.7の限界線の勾配から比例定数であるαを求めるとα=63である。熱伝達係数に相当する63 ε ˙ 0.3 の値を,今回の実験条件から計算すると213~421 kJ/m2/s/K(5.1~10.1 cal/cm2/s/K)であり,熱伝達係数としては大きな値となった。一般的に,これほど大きな値は凝縮熱伝達で見られるが,マッシュルーム生成限界条件での熱伝達であり,凝固現象を伴う現象であるため妥当であると考えられる。凝縮熱伝達は,気体−液体間の相変態を伴う熱伝達であるため熱伝達率が大きく,水蒸気での滴状凝縮熱伝達率では200~400 kJ/m2/s/K程度の大きさを示す16)。マッシュルーム生成は液体−固体間の相変態を伴う熱伝達であるが,相変態を伴うため界面では潜熱分の移動があり,凝縮熱伝達のように熱伝達率が大きくなると考えられる。Komataniらは熱伝達係数を8.4 kJ/m2/s/K(0.2 cal/cm2/s/K)と今回の結果と比べ小さい値を使用しているが,マッシュルーム指標(限界半径)rを2 cmと大きく見積もっており,熱伝達面であるマッシュルーム表面積が大きい条件で熱バランスをとったためと考えられる。

次に反応を伴うガスであるCO2ガスとC3H8ガスについて,反応熱がマッシュルーム生成に及ぼす影響を評価するため式(2)に反応熱項を加えた式(3)を使用して反応熱の寄与率を評価した。なお,CO2ガスやC3H8ガスの場合,比熱が温度依存性を有するためガスの顕熱量は積分形とし,反応熱の温度補正を(4)式として評価を行った。

  
2 π r c 2 ( α ϵ ˙ 0.3 ) ( T M T s ) = ( T g T S C p dT ) Q + β qQ (3)
  
q = q 0 + T g T S Δ C p dT (4)

ここで,β:反応熱の寄与率(−),q:実験温度での反応熱(J/Nm3),q0:標準状態での反応熱(J/Nm3),ΔCp:生成系と反応系の比熱差(J/Nm3/K)である。

CO2ガスを吹き込んだ場合の実験結果について横軸に右辺第二項のガスの反応熱qQをとり,縦軸に左辺第一項の受熱項と右辺第一項のガスの顕熱項の差を取ったものをFig.9に示す。内径2 mm,および,内径3 mmのノズルを使用した場合,縦軸の値は0~0.1 kJ/sにあることに対し,横軸の反応吸熱量は1.5~3.5 kJ/sであるにも関わらず,マッシュルールが生成していないことから考えると,CO2の溶鉄中Cとの反応熱の寄与はほほ無いと見積もられる。また,内径4 mmのデータも考慮し,内径3 mmでマッシュルーム生成が認められなかった条件と内径4 mmでマッシュルーム生成が認められた条件の近傍をマッシュルーム生成限界と仮定しても,推定される反応熱の寄与率は高々0.03程度である。CO2ガスの場合,溶鉄中のCとの反応(C+CO2→2CO)であるため,ノズル先端では一部のCO2しか反応せず,その結果,寄与率が小さくなっていると考えられる。

Fig. 9.

Heat balance on the surface of accretion (CO2 gas).

次にArガスとC3H8ガスの混合条件での実験結果を使用してC3H8ガスの反応熱の寄与率を見積もった。横軸にC3H8ガスの分解反応熱をとり,縦軸にマッシュルーム受熱量とArガス,および,C3H8ガスの顕熱増加量の差をとったものをFig.10に示す。マッシュルームの生成限界近傍の実験点が少ないことから,反応熱の寄与率は境界の範囲として求めた。最大値は,マッシュルームが生成しなかった条件のうち冷却に対し熱負荷の最も小さい条件と原点とを結んだ線の勾配からβ=1とし,最小値は,マッシュルームが生成した条件のうち冷却に対し熱負荷の最も大きい条件と原点とを結んだ線の勾配からβ=0.4として,寄与率をβ=0.4~1の範囲と推定した。C3H8ガスの熱分解反応は800°C程度で生じるが,ノズル先端近傍は高温であることからノズル先端部近傍でC3H8の熱分解反応が速やかに起こり,その結果,寄与率が大きいと考えられる。

Fig. 10.

Heat balance on the surface of accretion (Ar-C3H8 mixed gas).

室蘭製鉄所の転炉にて行った試験結果について底吹きガスの冷却能と底吹き羽口の損耗性の関係を考察した。転炉吹錬終了時の溶鉄温度,および,溶鉄中C濃度を用いて,CO2ガス単独,および,C3H8ガス単独吹き込み条件でのマッシュルーム生成限界ガス流量を(3),(4)式を用いて求め,その限界ガス流量の比をガス冷却能比Rcとして求めた。CO2ガス単独吹き込み条件でのマッシュルーム生成限界流量をQCO2,L,C3H8ガス単独吹き込み条件でのマッシュルーム生成限界流量をQC3H8,LとするとRc=QCO2,L/QC3H8,Lである。ガス冷却能比RcはC3H8ガスの反応熱寄与率βを0.4とした場合,Rc=4.7,C3H8ガスの反応熱寄与率βを1とした場合,Rc=6.5となる。このガス冷却能比を使用して,通常操業時のCO2ガス流量と同等の冷却能を有するCO2ガスとC3H8ガスの混合条件を求めFig.6に図示した。図示した等冷却能線より上方の範囲は通常操業と比較してガスの冷却能が高い領域である。試験で観察された底吹き羽口の損耗性はβ=1.0の等冷却能線より上方の範囲で通常条件より低下する傾向を示しており,生成する殆どのC3H8ガスの反応熱は底吹き羽口の冷却に寄与しているものと考えられる。1 ton規模の底吹き実験から評価したガス冷却能は妥当であると言える。実機転炉では本実験の底吹きガス攪拌力より強い攪拌条件の場合もあり,実験で評価した熱伝達係数より大きな値となることも想定される。今後,実機底吹きの強攪拌条件下での熱伝達について,検討を加えていく必要があると考えられる。

5. 結言

溶鉄中へのガス吹き込みにおいて,ガス吹き込みノズル先端部に形成される凝固鉄(マッシュルーム)の生成限界実験を1 ton規模溶解炉にて行い,以下の結果を得た。

(1)マッシュルーム生成限界は,マッシュルーム径をガス吹き込みノズルの内径とし,また,凝固鉄温度をFe-C系の固相線温度とすることで評価できる。

(2)Ohguchiらの式を使用してマッシュルーム限界における熱伝達係数を,熱伝達係数を α ε ˙ 0.3 としてArガスでの実験結果を元に見積もると,α=63となった。

(3)反応熱のあるCO2ガスやC3H8ガスについての実験結果を,Ohguchiらの式に反応熱の項を加えた式にて評価した結果,CO2ガスの反応熱の寄与はほとんど無く,C3H8ガスの反応熱の寄与率は0.4~1と見積もられた。

(4)室蘭製鉄所の270 ton上底吹き転炉にて,CO2ガスとC3H8ガスの混合条件でのガス吹き込み試験を行い,底吹き羽口へのガス冷却能の影響を評価した結果,殆どのC3H8ガス反応熱は底吹き羽口の冷却に寄与しており,1 ton規模実験にて評価したガス冷却能は妥当であると考えられる。

謝辞

本研究を行うにあたり,転炉での試験に協力頂いた佐々木英彰氏(故人,新日鐵住金室蘭製鉄所)に感謝の意を表します。

記号

QAr:Flowrate of Ar gas(Nm3/s)

QCO2:Flowrate of CO2 gas(Nm3/s)

QC3H8:Flowrate of C3H8 gas(Nm3/s)

TM:Temperature of liquid metal(K)

Tm:Temperature of the critical condition for the formation of the accretion(K)

Tl:Liquidus temperature of F-C alloy(K)

TS:Solidus temperature of F-C alloy(K)

Tg:Temperature of gas(K)

r:Radius of accresion(m)

rc:Critical radius of accresion(=radius of tyuere)(m)

di:Inner diameter of tyuere(m)

do:Outer diameter of tyuere(m)

h:heat-transfer coefficient between accretion and liquid metal(W/m2/K)

Cp:Specific heat of gas(J/Nm3/K)

ΔCp:Specific heat difference between before and after the reaction(J/Nm3/K)

q0:Heat of gas reaction in the standard state(J/Nm3)

q:Heat of gas reaction(J/Nm3)

α:Proportionality factor of heat-transfer(−)

β:Effect rate of reaction(−)

Rc:Gas cooling capacity ratio

QCO2,L:CO2 gas flowrate of the critical condition for the formation of the accretion(Nm3/s)

QC3H8,L:C3H8 gas flowrate of the critical condition for the formation of the accretion(Nm3/s)

Appendix

ガス冷却能比Rcの求め方について

CO2ガス単独吹き込み条件でのマッシュルーム生成限界流量をQCO2,L,C3H8ガス単独吹き込み条件でのマッシュルーム生成限界流量をQC3H8,Lとし,限界ガス流量の比をガス冷却能比Rc=QCO2,L/QC3H8,Lとして求めた。攪拌動力密度 ε ˙ は,ガス流量Q,溶鉄温度TM,溶鉄密度ρ,溶鉄浴深さh,ガス温度Tgの関数であるが,ガス流量Q以外はガス条件に依存せず,また,(3)式左辺の ε ˙ 以外はガス条件に依存しないため, ε ˙ ∝Qよりガス流量Q以外の値をAとすると,(3)式の左辺は(A1)式で,(3)式の右辺は(4)式より(A2)式で表されることから,マッシュルーム生成限界流量は(A3)式で表される。

  
2 π r c 2 ( α ϵ ˙ 0.3 ) ( T M T s ) = A Q 0.3 (A1)
  
( T g T S C p dT ) Q + β qQ= { T g T S C p dT+ β ( q 0 + T g T S Δ C p dT ) } Q (A2)
  
Q= [ A { T g T S C p dT+ β ( q 0 + T g T S Δ C p dT ) } ] 10 7 (A3)

CO2の比熱をCp,CO2,反応熱をq0,CO2,比熱差をΔCp,CO2とし,C3H8の比熱をCp,C3H8,反応熱をq0,C3H8,比熱差をΔCp,C3H8とすると,CO2ガス単独吹き込み条件でのマッシュルーム生成限界流量QCO2,Lは(A4)式で,C3H8ガス単独吹き込み条件でのマッシュルーム生成限界流量QC3H8,Lは(A5)式で表されることから,ガス冷却能比Rcは(A6)式で表される。

  
Q C O 2 , L = [ A { T g T S C p , CO 2 dT+ β ( q 0 , CO 2 + T g T S Δ C p , CO 2 dT ) } ] 10 7 (A4)
  
Q C 3 H 8 , L = [ A { T g T S C p , C 3 H 8 dT+ β ( q 0 , C 3 H 8 + T g T S Δ C p , C 3 H 8 dT ) } ] 10 7 (A5)
  
R C = Q C O 2 , L Q C 3 H 8 , L = [ T g T S C p , C 3 H 8 dT+ β ( q 0 , C 3 H 8 + T g T S Δ C p , C 3 H 8 dT ) T g T S C p , CO 2 dT+ β ( q 0 , CO 2 + T g T S Δ C p , CO 2 dT ) ] 10 7 (A6)
文献
 
© 2018 The Iron and Steel Institute of Japan
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