Tetsu-to-Hagane
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Preface
Preface to the Special Issue “Heterogeneous Structure Control: Towards Innovative Development of Metallic Structural Materials”
Masaharu Kato
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2019 Volume 105 Issue 2 Pages 123

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平成22年度から10年間の予定で,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)において,産学共創基礎基盤研究プログラムが進行中です。このプログラムは,産業界で共通する技術的課題「技術テーマ」の解決に資する学や官による基盤研究を推進するものです。技術テーマとは,①日本の産業競争力を強化するために解決すべきテーマ,②企業では対応できない,大学・公的研究機関などによる基礎的な研究による基盤技術の創出が必要なテーマ,③産業界の前競争領域・非競争領域にあるテーマ,を指します。

「革新的構造用金属材料創製を目指したヘテロ構造制御に基づく新指導原理の構築」(以下「ヘテロ構造制御」)はこの技術テーマの一つで,日本鉄鋼協会,日本アルミニウム協会,日本チタン協会に属する産業界からの公募提案を受けてJSTが採択したものです。金属材料中の様々な不均一性(ヘテロ構造)を積極的に利用し,構造用金属材料に要請される諸性質の飛躍的な改善,さらには,従来は両立が困難であった複数の機能を同時に向上させるような革新的な材料設計・開発思想を確立しようというものです。今までの金属学,材料工学の知識の延長線上での取り組みを超えた新たな学術的,技術的な指導原理を構築することを目的としています。1件の課題の研究期間は当初は2年間で,研究者の意向および中間審査の結果によっては最大5年間の期間が与えられます。今までに5回の研究課題公募を行い,合計23件の課題が採択されました。

産学共創基礎基盤研究プログラムの特徴として,「産学共創の場」の開催が挙げられます。各研究課題の研究者は,さまざまな産学共創の場を通じて,産業界の視点や意見・要望を聞き,それらを研究にフィードバックすることで,技術テーマの解決を加速します。そのため,研究者は研究遂行中に,適宜,研究計画の変更や追加を行います。本プログラムの詳細や採択研究課題については,ホームページhttp://www.jst.go.jp/kyousou/theme/h22theme01.htmlをご覧ください。

ヘテロ構造制御プログラムの立案者でもある日本鉄鋼協会には,当初からこのプログラムをご支援いただいており,産学共創の場の運営や,2年ごとの公開シンポジウムの開催等にも多大なご協力をいただいております。さらに,このプログラムの活動内容を「ふぇらむ」誌(2012年,Vo.17,No.11,No.12)に特集していただいたことで,このプログラムが会員の皆様に広く知られるようになりました。この場をお借りして感謝の意を表させていただきます。

この「鉄と鋼」特集号も,日本鉄鋼協会編集委員会のご提案によって実現しました。投稿方法や審査方法は通常号と同様ですが,ヘテロ構造制御プログラムに採択された研究に絞って,通常号では「鉄と鋼」の範疇外と思われる金属・合金に関する研究成果も特別に掲載を許可していただきました。ヘテロ構造制御プログラムで得られた,あるいは得られつつある多くの研究成果を,ぜひ日本鉄鋼協会の会員各位や読者各位に纏まった形で知っていただきたいと思います。本特集号を可能にしてくださった日本鉄鋼協会と編集委員会の皆様に,心から厚く御礼申し上げます。

 
© 2019 The Iron and Steel Institute of Japan

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