2019 Volume 105 Issue 9 Pages 864-870
To achieve low RAR operation by coke mixed charging, it is important to control coke segregation behavior in mixed layer at blast furnace top. In this study, a numerical simulator based on screening layer model was developed to estimate the distribution of mixed coke ratio in mixed layer. The results are summarized as follows:
(1) The parameters required for the screening layer model to estimate the segregation behavior of the burden materials were determined by PIV test and numerical fitting.
(2) The screening layer model containing parameters obtained by experiments and fittings was taken into the blast furnace burden distribution simulator. The simulation results showed that the distribution of mixed coke ratio of the small coke in the ore can be accurately estimated under the charging conditions of the actual furnace.
(3) The influence of the difference in tilting direction of the rotating chute on the distribution of mixed coke ratio was evaluated. In the reverse tilting, the radial distribution of the mixed coke ratio became more uniform as compared with the forward tilting charging. Therefore, it is considered that reverse tilting is more effective for carrying out coke mixed charging.
近年では地球温暖化防止の観点からCO2排出量の削減は重要課題であり,鉄鋼業界における今後の高炉操業では低還元材比および低コークス比操業の一層の推進が求められている。還元材比の低減には塊コークスの優先的な削減が要求されるが,この場合原料である鉱石とコークスの存在比(O/C)が上昇するため,高炉操業においては鉱石の還元停滞や融着層の肥大化による炉内の通気性の低下といった問題が生じる。このような鉱石の高重量比率時の操業改善策の一つとして,鉱石層中へのコークスの混合装入が知られている。混合装入は当初余剰な小塊コークスを用いることによるエネルギーソースの拡大を意図して新日鉄広畑において実施され1),次いで新日鉄君津において溶銑1 tあたり28 kg2),新日鉄大分で50 kgの小塊コークスが混合され3)炉下部通気性と還元効率の向上が報告されている。コークスの混合による通気性の改善も従来報告されており,例えばWatakabeら4)は融着層の通気性がコークスの混合により著しく向上することを荷重軟化試験により確認している。また通気性の改善に加え,混合装入ではコークスのガス化開始温度の低下による還元効率の向上が期待される。これは,ガス化開始温度を低下させ熱保存帯温度を低下させればFeO-Feの還元平衡点の制御が可能になるという原理に基づく5)。
コークスの混合装入による効果を最大限に得るためには,混合するコークスの通気性を始めとする高炉への影響評価6)に加え,鉱石とコークスという粒径と密度の異なる装入物の混合性を高度に制御する技術が要求される。これは装入物は粉粒体であるため,粒径差や密度差に起因する偏析により鉱石とコークスが分離することによる。偏析を定量化しようとする試みは従来からなされており,例えばOkunoら7)は実験および高炉内の測定値から装入物の堆積に伴い生じる粒度偏析の変化を考慮したモデルを開発している。これとは別に近年では計算機能力の向上もあり,離散要素法(Discrete element method)を用いた数値シミュレーションによる装入物の偏析を定量化するモデルの開発も試みられている8–10)。離散要素法は粉粒体中の個々の粒子の軌跡を運動方程式に基づき計算する手法であり,粉粒体特有の動的挙動を再現することが可能であるため非常に有望な手法であると考えられる。しかしながら本手法は粉粒体中の全粒子を計算対象とするため計算負荷が高く,装入物の偏析挙動を迅速に推定し早期に高炉操業に反映するという点で課題が残ると言える。
以上の点を踏まえ,本報では鉱石中に混合される小塊コークスの鉱石層からの偏析現象を推定し,混合層中の小塊コークスの高炉半径方向における混合率分布を簡便に計算可能なモデルを開発した。また,開発したモデルを用いて小塊コークスの有効活用による操業の高効率化に取り組んだので報告する。
本論文では鉱石中のコークスの偏析挙動を推定するにあたり,Shinohara11)により提案された篩層モデルを用いた。前述のとおり粉粒体の偏析現象は粒子間の粒径差により生じる粒度偏析と密度差に起因する密度偏析に大別されるが,本モデルはこれらを統一的に扱うことが可能である。以下では篩層モデルの概要について説明する。
粒径・密度等の物性が異なる粒子が混合された粉粒体を堆積面上に供給した場合,一定の安息角を構成しながら堆積面上を流下する。偏析はこの流下中の層内で流動時に生じ,流動性の劣る着目粒子(小粒子)は流下層内上部から下部へ通過し,下部の堆積面に達した後に上層部に引きずられながら上層部に遅れて流下する。この時Fig.1に示すように,流下層(Flowing layer)内には偏析粒子(大粒子)による残留層(Remained layer),大粒子と小粒子の混合成分から構成される偏析層(Segregating layer)および混合成分から小粒子が分離した分離層(Separated layer)が生成すると考えられる。また,分離層に移動した小粒子は更に下層の静止層(Static layer)内に充填されるとする。偏析層から分離層への小粒子の垂直方向における単位断面積当りの移動速度をQ[m3/(m2·s)],小粒子の分離層からさらに下部の静止層への垂直方向における単位断面積当りの移動速度をP[m3/(m2·s)]とし各層における小粒子の物質収支を取ると以下の式(1),(2),(3)および(4)のようになる11)。
| (1) |
| (2) |
| (3) |
| (4) |

Concept of screening layer model. (Online version in color.)
式(1),(2),(3)および(4)においてhは各層の厚み[m],tは時間[s],vは各層における堆積面に沿った粒子の流下速度[m/s],xは粒子の供給点から堆積面に沿った距離[m],Miは初期の小粒子の体積基準の混合率[−],εは各層の空隙率[−],φはコークスおよび鉱石粒子の混合粉粒体の安息角[rad]を表す。添え字r,rs,sおよびspはそれぞれ残留層,偏析層,分離層および静止層を表す。式(1),(2),(3)および(4)を解くにあたり以下の仮定を行う。まず,粉粒体が斜面を流下中に形成される安息角φは一定であるため,これを保つために流下層は常に均一の厚さhtで流下するとする12)。また,分離層と偏析層の粒子速度の比をRとした場合,Rは粒子の物性値に直接対応し,実験における操作条件に無関係と考えられるため13),コークスおよび鉱石の2成分系である本実験条件下では一定であると仮定する。すなわち,以下の式(5),(6)および(7)を考慮する。
| (5) |
| (6) |
| (7) |
式(1),(2),(3)を辺々加えかつ式(5),(6),(7)および静止層への小粒子の移動速度が0(P=0)とすると,式 (1),(2)および(3)は以下のようにまとめられる。
| (8) |
なお,粉粒体が流下中は各層の空隙率は一定と仮定し14),各層の空隙率はεr=0.4,εrs=0.35,εs=0.4とした14)。
式(8)を差分化し数値解析的に解くことにより任意の時間における粉粒体の流下方向における各層の厚みが算出され,体積基準の着目粒子の混合率分布が推定可能となる。しかしながら式(8)において分離層と偏析層の粒子速度の比Rと鉱石の移動速度Qは不明な値であるため,何らかの方法により決定する必要がある。コークスを鉱石中に混合装入するに当たっては小塊コークスに加えて塊コークス4)を混合する場合も想定されるため,RおよびQは粒径の変化に対応可能な値であることが望ましい。以下ではRおよびQの決定手順について説明する。
2・2 PIVを用いた速度比Rの測定 2・2・1 実験方法流下する粉粒体層内の分離層と偏析層の速度比Rは従来パラメーターとして扱われていたが,本論文では層内の粒子の運動を直接観察することにより測定した。Fig.2に実験装置の概略図を示す。試料には実高炉で実際に使用されている焼結鉱と,コークスを模擬した軽石(以下,コークス)を用いた。Table 1に各試料の粒径を示す。焼結鉱の粒径は一定としコークス粒径を変化させ,コークスおよび焼結鉱の粒径比Dp,Coke/Dp,Sinterの変化が速度比Rに及ぼす影響を検討した。なおDp,CokeおよびDp,Sinterはそれぞれコークスおよび焼結鉱の算術平均径とした。実験は,まず奥行き50 mm,幅300 mmの寸法を有するアクリル製の矩形容器に対して,容器端部に焼結鉱とコークスをそれぞれ515 g/sおよび22 g/sの速度で容器上部から同時に装入した。次に,装入中に堆積層の表層を流下する焼結鉱とコークスの挙動をハイスピードカメラを用いて撮影速度500 fpsで撮影した。ハイスピードカメラで撮影した装入中の動画に対してPIV(Particle Image Velocimetry)処理を施し,堆積層が形成され装入物の運動が定常状態に達した際の堆積面表層における粒子の速度分布を算出した。なお定常状態は,堆積層の裾野に形成される角度(Fig.2の角度φ)が一定値に収斂した時点とした。定常状態に到達後から70 flame分の速度分布を測定し,それらの平均値をTable 1の各水準(Case 1,2,3)における速度分布とした。また,速度分布の測定位置は定常状態到達時の堆積層裾野位置と装入物落下位置の中点の堆積層表層とし,測定方向は堆積層斜面に対して垂直方向とした。得られた速度分布から分離層と偏析層の速度を求め,これらの比をRとした。

Schematic diagram of experimental apparatus. (Online version in color.)
| Case 1 | Case 2 | Case 3 | ||
|---|---|---|---|---|
| Particle diameter [mm] | Sinter | 0.8-1.4 | ||
| Coke | 1.4-1.7 | 2.4-2.8 | 3.3-4.0 | |
| Particle diameter ratio [–] | 1.4 | 2.4 | 3.3 | |
Fig.3に試料装入時の撮影動画に対するPIV処理画像の一例を示す。PIV処理を施すことより堆積層表層における装入物の速度分布が推定されることを確認した。Fig.4にTable 1の各水準における堆積層表層の装入物の速度分布を示す。各水準において層上部から層下部に向かうにしたがい試料の速度は低下した。また,各水準における装入物の速度を同一層高さ位置で比較した場合,粒径比の上昇に伴い速度は上昇した。Fig.4のいずれの水準においても層内の速度分布には類似する傾向が確認された。すなわちFig.5に示す模式図のように,装入物速度は層の最上部から下部に向かい一定の勾配で低下し(領域AB),途中変曲点(点B)を経て更に一定の勾配で低下する領域(領域BC)を形成した。そこで本論文では鉱石とコークスが分離後の残留層と偏析層はFig.5中の領域AB,主として鉱石粒子から構成される分離層は領域BCに相当するものとした。そして,各領域における速度の平均値を式(1)および(3)におけるvrおよびvsとし式(7)に示す速度比Rを算出した。Fig.6にTable 1の各水準において算出された速度比Rを示す。粒径比の上昇に伴い速度比Rは低下した。斜面上を転動し流下する粒子の回転角速度は粒径の拡大に伴い上昇するため15),粒径比の上昇すなわち大粒子側の粒径の拡大に伴い大粒子側の移動速度が上昇したことが理由と考えられる。Fig.6から粒径比と速度比Rの間には線形性が認められたため,Table 1に示す各粒径比の値およびFig.6の結果から,最小二乗法を用いて速度比Rを以下の式(9)のように粒径比の関数とした。
| (9) |

Image of PIV analysis. (Online version in color.)

Distribution of velocity of burden materials in the height direction of deposition layer.

Definition of high and low speed area in layer.

Velocity ratio of separated layer to segregating layer for each particle diameter ratio.
次に,式(8)における偏析層からの鉱石の移動速度Qを決定した。本パラメータは以下で説明する模型実験と同様の条件で後述するモデルによるシミュレーションを行い,シミュレーションによる結果が実験結果により近い値となるように試行錯誤的に求められた。実験はベルレス高炉の装入系統を模擬した高炉装入模型装置(縮尺比:福山第5高炉の1/17.8)を用いて行った。実験装置の模式図および実験条件をFig.7およびTable 2に示す。実験条件や試料粒径は装入装置の縮尺比に応じて決定した16)。実験はまず,装入物を落下させるコークス堆積層の斜面角度をあらかじめ30°に設定した。次に,異なるバンカーに充填された鉱石とコークスを,コークス堆積層面に旋回シュートを介して同時に装入した。鉱石およびコークス装入時の旋回シュートと炉中心の角度(以下,傾動角度)は52°で一定とし,旋回数は8回とした。次に,装入完了後に装入物堆積層半径方向の各位置におけるコークス混合率を測定した。堆積層半径方向に対して内径がφ30 mmの円管を堆積面上から挿入し,円管内の鉱石とコークスを回収した。回収後,鉱石とコークスをヨウ化ナトリウム水溶液を用いて比重分離し,それぞれの重量を測定した。コークス混合率は以下の式(10)で定義し,得られた重量から半径方向の各位置における混合率を算出した。
| (10) |

Schematic diagram of experimental apparatus. (Online version in color.)
| Angle of burden surface | [º] | 30 |
| Particle diameter ratio | [–] | 0.3, 0.8, 1.7, 3.4 |
| Tilting angle of rotating chute | [º] | 52 |
| The number of rotation | [–] | 8 |
| Rotation speed | [rpm] | 42 |
| Charged sinter weight | [kg] | 10 |
| Charged mixed coke weight | [kg] | 0.44 |
式(10)においてWCoke,iおよびWSinter,iは半径方向の各サンプリング点i(i=1,2,3,…,6)におけるコークスおよび鉱石重量[kg]をそれぞれ表す。なお式(10)の定義によると,本実験におけるコークス混合率の設定値はTable 2よりコークスの総重量が0.44 kg,鉱石の総重量が10 kgであるため0.44/(10+0.44)=0.042となる。
次に,実験により得られた半径方向のコークス混合率分布に対してモデルによるフィッティングを行い,式(8)中における鉱石の移動速度Qを決定した。前述の実験により得られた式(9)に示される速度比Rを鉱石とコークスの粒径比の関数として式(8)に代入し,式(8)を差分化し半径方向のコークス混合率分布を算出するサブルーチンを既存の装入物分布予測モデル17)に新たに組み込んだ。本モデルはベルレス高炉における装入物の旋回シュートからの落下軌跡および炉内堆積時の高炉半径方向における鉱石,コークスの層厚ならびに粒径分布を推定可能なモデルである。本モデルを用いて実験と同様の条件でシミュレーションを行い,実験による測定結果との比較を行った。
2・3・2 測定および計算結果Fig.8に実験により得られた鉱石堆積層の半径方向におけるコークス混合率分布を示す。本実験では傾動角が一定まま装入しているため装入物の落下位置は一定(r/R0≒0.7)であり,落下位置を頂点として落下位置よりも中心側および周辺側(壁側)に裾野を有しながら堆積形状は形成される。そのため落下位置からの半径方向における距離が増加するほどコークスは偏析し,コークス混合率は上昇した。また,粒径比の低下に伴いコークスの偏析は抑制され分布は均一化し,設定値(0.042)に近づいた。次に,Fig.9に装入物分布シミュレーターによる半径方向のコークス混合率分布の計算結果を示す。シミュレーターによる計算結果は実験結果に対して粒径比毎に分離速度Qをフィッティングした結果を示している。Fig.9の結果から明らかなように,本シミュレーターによる計算結果は,落下位置からの距離の増加に伴いコークスが偏析しコークス混合率が上昇するという実験結果を表現できていることが分かる。Fig.10にフィッティングにより決定した分離速度Qの各粒径比における値を示す。粒径比の上昇に伴いフィッティングされた分離速度Qは上昇し,大粒子であるコークスと小粒子である焼結鉱は分離しやすくなることが分かる。本論文ではフィッティングにより求めた分離速度Qを装入物分布シミュレーターに導入するために,Fig.10の結果から以下の式(11)に示すようにQを大粒子と小粒子の粒径比の関数とした。
| (11) |

Radial distribution of mixed coke ratio (Experiment). (Online version in color.)

Radial distribution of mixed coke ratio (Calculation).

Fitted penetration rate of segregating component for each particle diameter ratio.
実験とフィッティングにより決定した速度比Rおよび分離速度Qを装入物分布シミュレーターに導入し,開発したモデルによる鉱石中の小塊コークスの混合率分布の推定精度の検証を行った。まず,前節と同様にベルレス高炉を模擬した高炉装入装置模型を用いて実高炉の装入物の装入パターンと同様に試料を装入し,炉口部半径方向の小塊コークスの混合率分布を測定した。Table 3に実験に使用した各試料の装入量および装入時間を示す。鉱石およびコークスはそれぞれ全量を2回に分割し,最初にコークスを2回,次に鉱石を2回装入し,これを1チャージとし合計3チャージ装入を行った。Table 3には各装入時(コークス装入時:Coke 1,2,鉱石装入時:Ore 1,2)の鉱石,コークスおよび鉱石中に混合されている小塊コークス(Small coke 1,2)の装入量と装入時間が示されている。旋回シュートの旋回速度は前述と同様に42 rpmである。Fig.11に実験に用いた各試料の粒度分布を示す。各試料の粒度は実炉で使用するコークスおよび焼結鉱の粒度分布に対して模型と同じ縮尺比で調整した。旋回シュートの傾動角度は操業に応じて旋回中に逐次調整されるが,本論文では所定の装入パターンにおいて鉱石装入時に角度θが徐々に低下し,半径方向周辺側から中心側にかけて装入する場合(Case 1:順傾動装入)および角度θが徐々に上昇し,中心側から周辺側にかけて装入する場合(Case 2:逆傾動装入)の2ケースについて実験および装入物分布シミュレーターによる計算を行った。なお,Case 1およびCase 2のいずれの場合においても旋回シュートの傾動範囲は28.5°から50°とした。また各旋回時の装入において,装入完了後に次の旋回による装入までに同一堆積面では試料の流下および偏析が完了していることを目視で確認している。
| Charging weight [kg] | Charging time [s] | |
|---|---|---|
| Coke 1 | 2.4 | 17 |
| Coke 2 | 2.4 | 24 |
| Ore 1 | 19.2 | 23 |
| Small coke 1 | 0.8 | 23 |
| Ore 2 | 10.3 | 13 |
| Small coke 2 | 0.43 | 13 |

Particle size distribution of sinter, coke and small coke.
Fig.12に炉頂堆積面における半径方向の小塊コークス混合率の実験結果および装入物分布シミュレーターによる計算結果を示す。Case 1およびCase 2共にシミュレーターによる計算結果は実験結果を良好に再現している。これにより,篩層モデルを導入した本シミュレーターは実炉の装入条件下においても小塊コークスの混合率分布を高精度に推定可能であり,また順傾動から逆傾動のように装入条件が大幅に変更となる場合においても対応可能であることを確認した。

Experimental and calculation results of mixed coke ratio. (Online version in color.)
実験および計算結果において,Case 1の順傾動装入時は小塊コークス混合率は中心部で上昇した。これは順傾動装入の場合装入物は半径方向の周辺部側から中心部側へと装入されるため中心部へ装入物が流れ込み,その結果焼結鉱と比較して粒径の大きな小塊コークスが偏析し中心部に集中したことが原因である。一方Case 2の逆傾動装入時は中心部の小塊コークス混合率が低下し,無次元半径0.2以下で設定値(67 kg/t)に近い値を示し,Case 1の順傾動装入と比較して比較的均一な分布を示した。これは逆傾動装入の場合装入物は中心側から周辺側へと装入されるため,装入中の鉱石の中心側への流れ込みが抑制され偏析が生じにくくなったためである。小塊コークス混合率分布の均一化と中心部での低下には通気性の改善等の効果が見込まれるため18),混合装入による効果をより効率的に発現させるには逆傾動装入が有効であると考えられる。
小塊コークス混合装入による低還元材比操業を確立するため,鉱石層中における混合コークスの混合率分布を高精度に推定可能なモデルの開発を行った。得られた知見を以下に要約する。
(1)粉粒体の偏析挙動を推定するための篩層モデルに必要なパラメーターをPIVを用いた模型実験およびフィッティングにより決定した。
(2)実験およびフィッティングにより得られたパラメーターを含む篩層モデルを装入物分布シミュレーターに導入することで,実炉の装入条件下において鉱石中の小塊コークスの混合率分布を高精度に推定可能であることを確認した。
(3)装入シュートの傾動方向の違い(順傾動装入,逆傾動装入)が小塊コークス混合率分布におよぼす影響を評価した。逆傾動装入では順傾動装入と比較して半径方向の小塊コークス混合率分布は均一化し中心部においては低下するため,混合装入を実施するに当たっては逆傾動装入がより効果的であると推定された。