Tetsu-to-Hagane
Online ISSN : 1883-2954
Print ISSN : 0021-1575
ISSN-L : 0021-1575
Instrumentation, Control and System Engineering
Tracking Technique of Burden Materials for Blast Furnace with Bell-less Top by using RFID
Yoshito Isei Kaoru NakanoTakuya NatsuiTatsuo KobayashiKenta WatanabeTomoyasu KishinoMinoru Saito
Author information
JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2020 Volume 106 Issue 1 Pages 12-19

Details
Abstract

In recent years, in order to reduce CO2 emission and keep productivity in ironmaking process, high gas permeability and high reaction efficiency with maintaining stable operation are required in a blast furnace. To meet these requirements, it is important to control the burden material distribution and material mixed ratio accurately. A new tracking technique of burden materials in charging process by using RFID (Radio Frequency IDentification) tags that are characterized by non-contact ID code recognition has been developed. In this technique, the active RFID tags, built in the durable case imitating coke or ore particles, are putted on the charged materials and detected their ID code at several points on the way of charging route. Their tracking accuracy and detection success rate were evaluated at the actual blast furnaces. As a result, the nut coke imitated tag’s detection ratio on the time series was good agreement with the nut coke mixed ratio measured by sampling at the nut coke mixed charging. By considering the RSSI (Received Signal Strength Indicator), the passing timing of the tag could be estimated accurately within 1.3 s (one sigma) on the belt-conveyor. In the top collection hopper, tags were detected at just passing and its detection success ratio was over 83% of all putted tags. These results indicated that the developed tracking technique of burden materials would be useful for controlling the burden material distribution accurately and improving the blast furnace operation.

1. 緒言

今日の高炉操業においては,安定操業の確保,良質原料の価格高騰への対応および,CO2排出抑制の要求から,高炉内での通気性確保と反応効率向上の両立は重要な課題となっている。これら課題への対応には,原料である焼結鉱やコークスの強度,反応性を改善することも手段の一つであるが,高炉半径方向の原料の堆積状態,すなわち,装入物分布を適切に制御することも有効な手段である。装入物分布制御による効果的な手法として,通常のコークス・鉱石の層状装入に加えて,高炉半径方向の粒度分布を配向させる粒度分布制御や,鉱石層内に小塊コークスを混合させる混合装入が行われている。

近年,高炉への原料装入には,従来のベル式装入装置に比べ自由度の高いベルレス装入装置が導入されている。ベルレス装入装置において装入物分布を制御する方法として,分配シュートの傾動角の変更に加え,高炉炉頂に原料を運搬する装入コンベア上への原料切り出し順序を変化させる方法がとられる。装入コンベア上に切り出された原料は炉頂バンカーに一旦蓄えられた後に,集合ホッパーを通して分配シュートから排出される。しかしながら,炉頂バンカーへの原料装入において原料が転がり,粒度偏析や密度偏析が生じることにくわえて,原料をバンカーから排出する際には排出口直上部の流下速度が大きく,側壁部近辺では遅くなるファンネルフローと呼ばれる流れのむらが生じ,排出順序が大きく入れかわる。このことは,原料を装入したい順序に装入コンベア上に切り出しただけでは,狙いどおりの装入物分布状態に制御ができないことを示している。特に,鉱石層内に小塊コークスを混合させる混合装入においては,鉱石とコークスの比重の差が大きいために小塊コークスの偏析が大きくなり,狙い通りに装入物分布を制御することが難しい。

この問題を解決するために,オフラインでのミニチュアモデルによるバンカー排出特性調査13)や,離散要素法DEM(Discrete Element Method)による計算機シミュレーション4,5)を用いて,実機の排出特性を推定する方法が行われている。しかし,ミニチュアモデルや計算機シミュレーションでは定性的な傾向は把握できるが,実高炉での状況を定量的に把握できない。また,実機における原料サンプリング調査については,高炉稼働中の調査が困難であり,手間や時間を要する等の欠点があった。一方,高炉内にセンサーを挿入して炉内に落下した原料の粒度や,コークスと鉱石の混合度を測定する方法68)も提案されているが,炉内での原料状態計測では,コンベア上への原料切り出し順序との直接の対応関係を把握することができず,狙い通りの装入物分布を得るためには試行錯誤にならざるを得ない。

そこで,装入コンベア上への原料切り出し順序と炉頂バンカーから排出される原料の粒度や原料混合度の時間変化との関係を把握する手法として,非接触でID認証が可能なRFID(Radio Frequency Identification)タグをトレーサーとして原料中に混入させて,高炉内までの搬送途中にてID検出することを考えた。本報告では,主として混合装入時の小塊コークスのトラッキングを対象として,RFIDを用いた高炉原料トラッキングの原理と課題,原料を模擬したRFIDタグの内容と,実高炉における性能評価結果について報告する。

2. 測定原理と技術開発課題

2・1 RFIDを用いた原料トラッキングの原理

近年,RFIDと呼ばれる電波による非接触通信とICチップを利用した認証技術が普及してきている9,10)Fig.1にRFIDシステムの構成を示す。RFIDはタグやラベル状に加工されたRFIFタグと呼ばれるパターンアンテナ付のICチップを人や物に付与し,そこに記憶された情報をタグリーダーと呼ばれる装置により非接触で読み取ることで,物体認識や個人認証などを行う。従来からあるバーコードによるID認識と比べると,汚れに強く,対象から離れて認識や認証を行うことができる点で優れている。RFIDタグを内蔵した模擬原料を作成して,原料と同時に装入し,装入経路の途中で検出することができれば,稼働中の高炉においても適用可能な原料トラッキング技術を実現できる。

Fig. 1.

Configuration of RFID system.

Fig.2にダイレクト装入方式における原料装入装置とRFIDによる原料トラッキング原理を示す。原料槽から直接装入ベルトコンベア(以下,BC)上へ切り出された原料は,装入BCにより炉頂に運ばれ炉頂バンカーに一旦蓄えられた後に,集合ホッパーを通って分配シュートから炉内へ排出される。ここで,原料槽出側BC上を流れる原料中に一定間隔でRFIDタグを投入することを考える。装入BC上と集合ホッパーにアンテナを設置してIDを検出することにより,炉頂バンカーでの偏析,ファンネルフローの影響を把握した上で,炉内への装入タイミングを的確に把握することができる。

Fig. 2.

Burden material tracking by using RFID for direct charge type.

2・2 技術開発課題

原料が原料層から排出されてから高炉頂上で炉内へ装入されるまでの輸送過程において,RFIDタグも原料と混合されて同様な環境を経験することとなる。炉頂バンカーや集合ホッパー内埋没時においては原料からの荷重が加わり,炉頂バンカーやホッパーでの装入,排出時において無数の衝撃が加わるため,RFIDタグには強度と耐衝撃性が要求される。また,炉頂集合ホッパー内部は100°C以上の高温となるため,高温下での安定性も要求される。このような環境下において,RFIDタグの故障を最小限に抑えて,原料トラッキング調査を有効とするだけの検出成功率を確保することが必要である。さらに,炉頂上までたどり着いた後においてもトラッキング対象原料と同様な偏析状態を維持し,正確な通過タイミングでIDが検出される必要がある。これらのことを考慮し,RFIDタグを用いた高炉装入原料トラッキング技術を実現するための技術開発課題は以下の3項目とした。

(1)トラッキング対象原料と同様な偏析挙動を示し,正確な通過タイミングで検出できて,現場サンプリングと良好な対応を得ること。

(2)稼働中の高炉において,ベルトコンベアの搬送中,集合ホッパーの通過時において正確な通過タイミングで検出できること。

(3)原料ベルトコンベア上へ投入されてから高炉炉内に排出されるまで故障なくタグを保護して,投入したタグ個数内80%以上を集合ホッパー部において検出できること。

3. 原料を模擬したRFIDタグ

3・1 原料トラッキングに使用するRFIDシステムの選定

Fig.3に現在実用化されている主なRFIDシステムのキャリア周波数と検出可能の距離を示している。RFIDには,パッシブ方式とアクティブ方式の2方式が存在する。パッシブ方式は,タグリーダーからの電波をエネルギー源として動作するRFIDタグであり,電池を内蔵する必要がなく,保守なしにほぼ恒久的に動作するメリットがあるが,検出距離を確保するためには強力な電波放出を必要とする。一方,アクティブ方式は,電池を内蔵したRFIDタグであり,自ら電波を発して一定周期でIDを送信する。このため,小さい電波出力でも通信距離が比較的長く取れるメリットがある。今回は,電波出力が小さく周辺設備への影響が少ないこと,数m以上の通信距離を取れることから,アクティブ方式のRFIDシステムを採用した。アクティブ型方式のタグのサイズは,電池の大きさ,送信アンテナのサイズに依存しており,市販のタグで20 mm~30 mm程度であり,模擬対象の原料の大きさにも近く,原料の特性を模擬しやすいと考えた。また,アンテナ選択の自由度も高く鉄鋼現場への適用時にも障害が少ない。

Fig. 3.

Carrier frequency and identification distance of RFID systems.

使用したアクティブRFIDシステムの仕様をTable 1に示す。日本国内の電波法上無免許で使用可能な微弱無線局である周波数322 MHz以下,強度500 μV/m以下に該当するシステムを使用した。使用したタグは,基板サイズは使用したボタン電池の大きさにより決まり,24 mm×34 mmである。0.5秒間隔で16進数7桁のIDを発信する。このID発信周期について,ホッパーから排出され落下する途中のわずかな時間でタグのIDを読み取れるように短くすべきだが,短くしすぎると電池寿命が短くなる。実際に試験を行う際の準備期間を考慮して,電池寿命は約1か月を確保可能な発信周期0.5秒とした。使用最高温度60°Cは内蔵するICチップの安定性により決まり,高炉内に装入される直前までは検出可能と考えられる。検出アンテナとしては,検出感度が高く,指向性の低いダイポールアンテナを使用した。使用したリーダーは,1秒間あたり最大40IDを読み取ることができ,ID検出と同時に受信信号強度RSSI(Received Signal Strength Indicator)を検出できる。

Table 1. Specification of evaluated RFID system.
ItemSpecification
SystemTypeActive type (Battery operation)
Carrier frequency300 MHz band
Output power< 500 μV/m
TagSubstrate size24 mm × 34 mm
Operating temperature0 to 60°C
ID sending duration time0.5 s
ReaderAntennaDipole type
Modulation methodASK (Amplitude Shift Keying)
ID codeHexadecimal, 7 digits
Recognition ability40 IDs/s

3・2 RFIDタグの基礎特性評価

Fig.4にアンテナの向きとRFIDタグ基板の向きを変えて,距離ごとの受信強度RSSIを調査した結果を示す。受信強度にはばらつきが見られるが,距離が遠ざかるにつれて,受信強度は低下する傾向にある。使用したリーダーのID検出下限は-55 dBであるので,最大15 m程度までID検出が可能である。また,アンテナの置かれた方向に対して,RFIDタグ基板が垂直に配置される場合にRSSIが小さくなる傾向にある。遮蔽物の無い長い距離を運搬されるコンベア上においては,30 m以上にわたってタグが検出されることになるが,タグの向きや原料の積載形状が変わらなければ,受信電波強度RSSIを同時にモニターすることにより,最もアンテナに近い位置をタグが通過するタイミングを正確に検出できる可能性がある。

Fig. 4.

Influence of distance between RFID tag and antenna on RSSI.

Fig.5に示すようにRFIDタグを厚み15 cmの原料に埋没して,1.8 m離れた外部からの検出可否を調査した。焼結鉱,鉱石中では検知可能だったが,コークス中ではIDを検知できなかった。これは,鉄鉱石,焼結鉱の主成分であるFe2O3の導電率は1.3×10-3 S/mと絶縁体であるのに対し,コークスの主成分であるカーボンの導電率は3.0×104 S/mと導電体であることが原因と推定される。コークスに埋没されたRFIDタグから放出された電波は,タグを囲っているコークスにより遮蔽されてしまう。コークスバッチにおいてトラッキング調査を行うときは,コークス表層にRFIDタグを配置するか,原料間の空隙が大きくなるホッパーやバンカーからの原料排出部にアンテナを設置する方がよいと考えられる。

Fig. 5.

Influence of material on ID detectability.

3・3 原料模擬タグケースの設計

RFID基板単体では,実機の高炉においては原料が炉内に装入されるまでに加わる衝撃に対する耐久性を確保できず,また,形状や比重の差により原料と異なる偏析挙動となりトラッキング精度を確保できない。そこで,原料の挙動を模擬できる比重と粒径を備えて,かつ,耐久性能に優れた原料模擬タグケースを製作することを考えた。

RFID基板を保護するケースを複数の条件で試作して,コークス強度試験用のドラム試験器11)により耐久性を評価し,500回転以上の振動を加えても故障しない保護ケースの条件を探索した。最終的に採用した保護ケースの材質は電波の透過性を考慮してプラスチック製として,RFID基板と電池はケース内部に固定し,保護ケース表面は傷つき抑制のため厚めのテープによりテーピングを施した。

高炉装入原料は,コークス,鉱石,焼結鉱で構成される多数の密度,粒径の異なった粒子の集合体と見ることができる。数多くの粒子内に存在する1粒子の偏析挙動に着目すると,周辺粒子に比べて密度が大きく,粒径が小さいほど,下に沈みやすく転がりにくい傾向にある。この偏析挙動は,粒度偏析と密度偏析で説明でき,両者が互いにキャンセルする粒径と密度の条件が存在する12)。実原料と同様な偏析挙動を模擬するためには,RFIDタグの粒径と比重を実原料と同じにする,もしくは,この条件に従い見かけ上偏析挙動が同じになるように粒径と比重を調整する必要がある。コークス模擬タグには実際のコークスに近い比重のプラスチックを選定して保護ケースを作成し,鉱石類模擬タグではプラスチックで作成した保護ケースに鉄製のおもりをつけることで比重を実原料に近づけた。一方,粒径については,RFID基板サイズの制約により20 mm以下は再現できないので,見かけ上の偏析挙動が同じになるように,おもりを付加して意図的に比重を大きくすることで対応した。Fig.6に作成した5種類のRFIDタグを内蔵した模擬粒子(原料模擬タグ)を示す。コークス模擬タグは,粒径10 mm,23 mm,45 mm,55 mmの小塊コークスを模擬しており,それぞれの名称はC-10,C-23,C-45,C-55とした。また,鉱石模擬タグは,粒径10 mmの鉱石を模擬しており,名称はO-10とした。鉱石模擬タグは,例えば,ベルトコンベア上の同じポイントに鉱石模擬タグとコークス模擬タグを投入することにより,鉱石がコークスに対して,相対的にどのように偏析するのかを把握すること等を目的として製作した。

Fig. 6.

RFID particles imitating burden materials.

4. 実高炉における性能評価結果

4・1 炉内サンプリング調査による追従性評価

火入れ前高炉において,填充調査の一項目として,炉内原料サンプリング結果との比較による原料模擬タグの原料追従性能の検証を実施した。追従性評価に使用した高炉はダイレクト装入方式を採用している。炉頂バンカーでの偏析挙動と原料排出挙動を調査するため,Fig.2に示したように炉頂バンカーを挟んで原料装入BCトップと集合ホッパーの2箇所にダイポールアンテナを設置した。追従性の評価は,鉱石層への小塊コークス混合装入のタイミングにおいて,装入BC上へ原料を排出した後にコークス模擬タグを投入し,バンカー排出部でID検出することで実施した。装入BC上に排出された原料の配置とコークス模擬タグの投入位置をFig.7に示す。原料をBC上に排出した後に,装入BCを停止させて,コークス模擬タグ3種類(C-10,C-23,C-45)を,焼結鉱の前に1か所,BC上のコークス表面4か所へ投入した。焼結鉱の前に投入された模擬タグは装入原料の先頭を検知するための目印として使用する。次に,装入BCを起動して通常の装入と同様に炉頂バンカー内に一時的に蓄積した。バンカーからの排出時おいて,バンカー下の集合ホッパーにて模擬タグのIDを検出しつつ,回転シュート1旋回毎にバンカーの排出を停止し,炉内に落下した原料のサンプリングを行った。Fig.8に集合ホッパーでのコークス模擬タグIDの検出状況を示す。内部に蓄積された模擬タグの電波は,バンカーの鉄皮に遮蔽されて外部に漏れないため,IDが最初に検出されたタイミングを見ることで,集合ホッパー内へ原料模擬タグが侵入したタイミングを正確に判断できた。焼結鉱の前投入された模擬タグ①は原料装入開始の最初に検出されるため,検出開始タイミングを回転シュート1旋回目として時間合わせを行った。BC上のコークス表面に投入した模擬タグ②~⑤について,Fig.9にコークス模擬タグ検出頻度と原料サンプリングにより実測した小塊コークス混合比率の比較を示す。両者は一致した傾向にあり,比重の低いコークスがバンカーでの蓄積と排出の際に偏析し,排出の後期に集中していることがわかる。このことよりRFIDを用いたコークス模擬タグの追従性が良好であることを確認できた。

Fig. 7.

RFID particle put position on the raw materials.

Fig. 8.

RFID detection time chart at collection hopper.

Fig. 9.

RFID detection ratio and nut coke ratio measured by sampling.

4・2 稼働高炉による検出タイミングの精度評価

稼働高炉における検出タイミングの精度評価を目的として,稼動高炉でのRFIDを用いた装入原料トラッキング試験を実施した。対象とした高炉はダイレクト装入方式であり,アンテナの設置位置は追従性評価試験と同様にFig.2のとおりだが,稼動高炉であるので集合ホッパー内は高温・高圧の完全な密封空間となる。そこで,集合ホッパー側面にBNCシールコネクタを設置して,集合ホッパー内アンテナの電気信号を取り出すこととした。数ヶ月程度の短期間の試験だったこともあり,問題なく集合ホッパーを通過するRFIDタグの信号を検出することができた。

検出タイミングの精度評価は,鉱石層へのコークス混合装入のタイミングにおいて,装入BC上へ原料を切り出した後にコークス模擬タグを投入し,装入BC頂上および炉頂バンカー排出部でID検出することで実施した。稼働高炉であるので,装入BCを流れるコークス上へ5秒ピッチで3個の小塊コークス模擬タグ(C-10,C-23,C-45)を投入した。

Fig.10に装入BC頂上でのタグ検出結果を示す。装入BC頂上では,平均して22秒間の長い時間に渡りタグが検出されており,実際の通過タイミングを把握することが難しいことがわかる。Fig.11は投入時間を5秒ずらして投入されたタグ3個の装入BC頂上での検出強度変化を示している。強度ばらつきはあるものの,極大となるタイミングは約5秒ずつ移動しており,RSSIを利用することで,通過タイミング判定の高精度化を期待できる。通過タイミングの推定方法として,1)検出時間の平均値,2)検出開始から検出消失までの中間時間,3)RSSIが強度最大値となる時間,4)信号消失時間について,タグ投入からの遅れ平均時間,通過推定時間ばらつき,装入BCの搬送速度をもとに換算した検出位置ばらつきをTable 2に示す。もっとも時間ばらつきが小さかったのは,4)信号消失時間でありσ=1.1秒であった。これは,アンテナ設置位置が装入BC頂上でありBC終端に近く,原料模擬タグはアンテナ直近を通過すると直ぐに炉頂バンカーに排出されるためである。炉頂バンカー内の電波は遮蔽されて外部に漏れないため,炉頂バンカー内に侵入するタイミングを正確に反映している。一方,RSSI最大時を通過タイミングとする場合,通過推定時間のばらつきはσ=1.3秒であった。これは1)検出時間の平均値,2)検出開始から検出消失までの中間時間により算出する方法と比べると精度がよく,今回の炉頂バンカー内に排出されるように,電波を遮蔽する空間が近くにない場合に,最も精度が良いと推定される。

Fig. 10.

RFID detection time chart at charging BC top.

Fig. 11.

RSSI of RFID detection at charging BC top.

Table 2. Evaluation result of RFID pass timing estimation.
Estimation methodAverage (s) (Delay time)Standard deviation 1σ
Time (s)Position (m)
1) Mean time23.6 s1.7 s3.7 m
2) Median time22.0 s1.6 s3.5 m
3) Maximum RSSI time27.4 s1.3 s2.8 m
4) Lost time33.1 s1.1 s2.4 m

Fig.12に集合ホッパーでの各タグの検出タイミングチャートを示す。投入したコークス模擬タグ24個中,23個が検出されている。今回,耐熱温度60°CのRFIDタグを用いたにもかかわらず安定してID検出が可能だったのは,高温部の通過時間が短く,保護ケースの断熱により内部まで温度上昇しなかったためと考えられる。検出できなかった1個については,装入BC頂上では検出されているので,バンカー内に残留したか,集合ホッパーでの通過時間が短く検出できなかったと推定される。集合ホッパー内は鉄皮で覆われた閉ざされた空間である上に,集合ホッパー内を瞬時にタグが通過していくため,集合ホッパー内で一時的に停滞したと思われる3個(11C1,11BF,11EB)を除けば検出平均時間は0.84秒と短く,正確な通過タイミングを判定可能であった。これらの状況から,集合ホッパーで停滞した3個についてもIDが検出されなくなったタイミングを集合ホッパーから炉内に排出されたタイミングとすることで高精度に通過タイミングを判定できる。

Fig. 12.

RFID detection time chart at collection hopper.

4・3 稼働高炉での検出成功率の評価

Table 3に稼働高炉にて実施されたRFIDを用いた原料トラッキング試験での各検出アンテナのタグ検出成功率を示す。高炉Aはダイレクト装入方式,高炉BはFig.13に示すような一時的に原料を保持するホッパーを経由するサージホッパー方式である。鉱石装入バッチとコークス装入バッチに分けて,各アンテナ設置場所における投入タグ数に対する検出したタグ数の割合を示している。サージホッパー方式の高炉Bの場合,サージホッパーにおいても原料偏析が生じる。この対策として,サージホッパー入側の原料BC上にも検出アンテナを設置し,装入BC頂上での検出順序と比較することすることにより,サージホッパーでの偏析挙動を把握できる構成とした。

Table 3. Detection success ratio of RFID.
Target furnace (Charge type)BatchCollection hopperCharging BC topRaw material BC
Blast furnace A
(Direct type)
Ore189%100%
Coke96%100%
Ore297%99%
Blast furnace B
(Surge hopper type)
Ore196%96%100%
Ore2100%99%100%
Coke87%45%100%
Ore383%83%96%
Fig. 13.

Burden material tracking for surge hopper charge type.

ダイレクト装入方式の高炉Aについては先述の通り,装入BC頂上,集合ホッパーのいずれも89%以上の検出成功率を確保できている。一方,サージホッパー方式の高炉Bについては,コークス装入バッチにおいて,装入BC上での検出率が45%と低くなっている。これはサージホッパーから装入BC上へ切り出された際にコークス山内に多くのタグが埋没してしまい,送信電波が導体であるコークスに遮断されてしまったためと推定される。一方,集合ホッパーにおいては,炉頂バンカー排出時に原料が散らばって,原料間の間隔が広くなることで,電波が透過しやすくなるため,検出成功率は87%まで改善している。

集合ホッパーでのタグ検出成功率は平均92%であり,原料模擬タグの耐久性と検出性能が確保できた結果と考えられる。検出成功率がもっとも小さい場合でも83%を確保できており,目標であった原料トラッキングに必要な検出成功率80%以上を達成していることを確認できた。

5. 結言

ベルレス高炉における装入物分布制御の高精度化を目的として,非接触ID認証技術RFIDを用いた新しい高炉装入原料のトラッキング技術を開発した。本技術は,アクティブ方式のRFIDタグを内蔵したコークスまたは鉱石の模擬粒子を装入原料に投入して,高炉内への装入経路上でIDを検出することが特徴である。今回,実高炉において追従性能,検出タイミング精度および検出成功率の評価を行った。その結果,コークス混合装入バッチにおけるコークス模擬タグ検出比率の時系列変化は,原料サンプリングによるコークス混合率と合致しており,追従性は良好であった。タグ検出時のRSSIを利用することで,走行する装入ベルトコンベア上のタグを高い時間精度で検出でき,その精度は1.3秒以内(1σ)であった。高炉内へ装入される直前の集合ホッパーにおいてもホッパー内部の通過タイミングを正確に検出でき,全投入タグに対する検出成功率は83%以上であった。これらの結果より,開発した高炉装入原料のトラッキング技術は,高炉における装入物分布制御を高精度化し,高炉操業を改善するうえで有効である。

文献
 
© 2020 The Iron and Steel Institute of Japan

This article is licensed under a Creative Commons [Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International] license.
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
feedback
Top