Tetsu-to-Hagane
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Ironmaking
In-situ Evaluation Method for Crack Generation and Propagation Behaviors of Iron Ore Burden during Low Temperature Reduction by Applying Acoustic Emission Method
Moritoshi Mizutani Tsunehisa NishimuraTakashi OrimotoKenichi HiguchiSeiji NomuraKoji SaitoEiki Kasai
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2020 Volume 106 Issue 10 Pages 719-726

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Abstract

In the field of ironmaking, there are few in-situ non-destructive techniques for systematically evaluating the reduction behaviors of blast furnace (BF) burden materials. The standard method for the evaluation of the reduction disintegration index (RDI) includes low temperature reduction with a constant gas composition at a constant temperature followed by a cold strength test after cooling. During the reduction of iron ore burden in the BF, reduction disintegration proceeds in the course of increasing temperature through crack generation and propagation caused by volume expansion due to the reduction from hematite to magnetite. Acoustic emission (AE) method is an in-situ non-destructive technique to evaluate the crack generation and propagation phenomena in various fields. In this study, we first attempted to apply AE method for a detailed in-situ observation of BF burden materials by a combinational experiment of reduction disintegration. In the case of single-particle reduction, it was possible to detect AEs without friction between the sample and the waveguide giving rise to noise. Although a large number of AEs were measured during cooling of both sinter and pellet, the AE energy of the sinter was larger than that of the pellet. Furthermore, a significant number of AEs were also detected during heating of lump ore containing larger amount of combined water indicating possibility to evaluate the decrepitation behavior of such ores.

By the packed bed reduction tests, which could evaluate average properties of iron ore burden, it was found that the AE energy attributed to thermal stress observed during cooling was higher than that to reduction degradation. These results suggest that it will be possible to eliminate the influence of crack generation within the iron ore burdens in the cooling stage by applying the in-situ non-destructive evaluation method developed in this study. It is also expected to apply for the quantitative estimation of the reduction disintegration behavior of burdens in the working BF.

1. 緒言

高炉内の低温領域において,ヘマタイトからマグネタイトへの還元による体積膨張を起因とするき裂生成により,酸化鉄装入物の還元粉化が進行する1)。装入物はさらに高炉内を降下する過程で衝撃を受ける2)。これに対して,JISやISOで規定されるオフラインの還元粉化挙動の評価試験では,一定の温度とガス組成 (例えば550°C,30%CO-70%N2)で試料を還元し,室温まで冷却した試料の冷間強度試験後に篩分けを実施し,試料全質量中の3.15mmの篩目を通過した質量割合である還元粉化指数RDIを操業管理の指標としている。従って,オフライン試験では,還元反応に伴う反応劣化に加えて,実炉では生じない冷却過程の熱応力によるき裂生成が生じ,実炉の粉化挙動との乖離が想定される。

上記の観点から,還元過程に衝撃または荷重を負荷した試験方法が提案されている。例えば,リンダー試験は還元過程の熱間タンブラー試験としてよく知られている3)。Jomotoらは高炉のシャフト部での荷重を負荷した還元試験装置を考案した4)。Machidaらは高炉内の粉化挙動を模擬するため,熱間で圧縮とせん断応力を付与できる還元粉化シミュレーターを開発した5)。しかしながら,いずれの手法も冷却工程が含まれるため,冷却過程の熱応力によるき裂生成を除外することができない。そのため,還元粉化挙動のメカニズム解明のためには,還元粉化挙動のin-situ評価技術を確立する必要がある。

酸化鉄の還元過程のき裂生成のその場観察に関する研究事例もある。KimらはシンクロトンX線CTの透過画像により,600°Cで還元した焼結鉱の還元挙動を観察しているが,本手法では100 μm以下の気孔やき裂の観察が難しい6)。レーザー顕微鏡による酸化鉄の還元挙動のその場観察では試料内部のき裂生成の評価が困難である7)。さらに,X線透過観察やレーザー顕微鏡では,粒子一つ一つの品質バラつきが大きい実際の焼結鉱,ペレット,塊鉱石のバルクサンプルのき裂生成と伝播挙動を評価することは困難である。

一方,日本のCO2排出量の約14%が鉄鋼業から排出されており8),そのうち製銑プロセスのCO2排出割合は70%を占めている9)。CO2排出量を削減するために,高炉還元材比(RAR)の低減と高炉へのH2利用技術の開発が推進されている1017)。しかしながら,前者の場合は投入エネルギーの減少,後者は吸熱反応量の増加により,高炉内の温度は低下する。どちらも550°C付近の低温領域の拡大に繋がり,焼結鉱,ペレットおよび塊鉱石の還元粉化を助長させ,粒子径とかさ密度の減少を通じて高炉上部の通気性を低下させ,生産性の低下の原因となる。しかしながら,CO還元に関する還元粉化に関する研究は数多くあるものの,H2還元時の鉄鉱石塊成鉱の還元粉化挙動は十分に理解されていない1,2,18)。そのため,H2が還元粉化挙動に及ぼす影響についてはまだ議論の余地がある。著者らは,高H2雰囲気下での還元粉化挙動が温度やガス組成条件によって決定される反応様式に強く依存することを報告し,焼結鉱とペレットの還元粉化挙動と応力計算により導出されたき裂面積との関係を評価した19)。しかしながら,実高炉とラボテストの還元条件に差異があると共に,炉内の鉄鉱石塊成鉱から粉が生成する挙動は,熱割れや還元粉化挙動の影響を受ける2022)。それにもかかわらず,H2雰囲気下での熱割れと還元粉化の影響の定量的評価に関する報告はほとんどない。

最近,材料中のき裂や欠陥のラボレベル解析にAcoustic Emission(AE)法が適用されている2326)。AEはき裂の生成と伝播に伴って発生する弾性波として知られている。AE法は1950年代に導入され,以降多くの研究が報告されている。近年,コンピューターの処理速度とデータ保存料が著しく向上し,さまざまな処理能力を備えた解析ソフトウェアが開発されている。そのため,以前は困難と考えられていた解析を短時間で実行できるため,き裂をin-situで評価できる有用な測定手法としてAE法が注目されている。さらに,測定技術の改善により,AE法は以前では適用されてこなかった分野にまで拡張している26)。これらの背景が動機となり,AE法を使用した還元中の高炉装入物の還元粉化挙動をin-situで評価することを試みた。

2. 実験方法

試験装置の模式図をFig.1に示す。本試験装置は,一般的な還元用電気炉に加えて,AEセンサー,AE測定システムと解析用PCを有している。通常,AE センサーは測定対象に直接接触させる必要がある23)。しかしながら,センサー内の圧電素子(例えば,ジルコン酸チタン酸鉛;PZT)のキュリー点は350°C程度であり,キュリー点以上の温度帯ではセンサーの機能が失われてしまうため,高炉内のような高温環境下において直接測定することができない。そこで,炉内で発生したAEを伝搬するアルミナ製の導波棒を用いる間接的な測定方法を採用した27)。ISO4696-2試験等の酸化鉄装入物の還元とAE測定を組み合わせた実験を実施した。本研究で使用した試料の化学分析をTable 1に示す。成分の異なる2種類の焼結鉱,3種類のペレットおよび結合水(CW: Combined Water)の異なる2種類の塊鉱石を供した。試料は還元前に10-15 mmに整粒した。本実験では,単一粒子の還元過程を対象とするAE発生挙動の評価試験と,500±1 gの粒子充填固定層の還元過程を対象とするAE発生挙動の評価試験を実施した。また,導波棒と試料の接触性を改善するため,単一粒子の還元試験では試料上下面を研磨し,高さを10 mmに調整した。粒子充填固定層の還元試験では,試料をランダムに選択し,かさ密度が一定となるように還元炉に装入した。具体的には,焼結鉱は1750 kg/m3,ペレットは2000 kg/m3,塊鉱石Aは1750 kg/m3,塊鉱石Bは2750 kg/m3にそれぞれ設定した。

Fig. 1.

Schematic of the apparatus used for the reduction experiments with the AE measurement system.

Table 1. Chemical composition of samples.
SampleT.Fe (mass%)FeO (mass%)SiO2 (mass%)Al2O3 (mass%)CaO (mass%)MgO (mass%)CW (mass%)C/S (–)
Sinter A57.628.745.411.6010.391.011.92
Sinter B58.016.085.231.829.360.931.96
Pellet A63.881.626.430.380.480.660.07
Pellet B63.390.573.450.391.101.150.32
Pellet C65.930.662.360.542.620.011.11
Lump A57.370.104.542.520.300.0410.230.07
Lump B61.170.188.622.730.100.030.430.01

試料は15Nl/minのN2ガス雰囲気で550°Cまで昇温した後に,10分間保持した。ガスはCO-CO2-H2-N2混合ガス15.0 NL/minに切り替え,30 minの還元実験を実施した。その後,N2ガス15 NL/minで373 Kまで冷却した。

同時に,AE発生挙動と還元粉化挙動の関係を評価するために試験中のAEを測定した。導波棒に設置したAEセンサーを用いることで,AE波形が検出される。AE検出の定義として,振幅閾値を40 dB(77.5V)),Rearm Timeを400 µs,離散時間を200 µsとして設定した。AE波形を高速フーリエ変換(FFT; Fast Fourier Transform)することで,周波数スペクトルが得られる。窓関数と平均化方法はハミング窓と二乗平均平方根(RMS)をそれぞれ採用した。Fig.2に示すように,AEの評価指標として,例えばカウント数C,持続時間td,振幅A,AEエネルギーEおよび周波数Fの重心値CoG(Center of Gravity)28)などのAE 特性を記録した。AEエネルギーは周波数スペクトルのピーク面積である。AEの周波数はマトリックスの性状,AEエネルギーはき裂面積と相関関係があることが知られている。

Fig. 2.

AE characteristic parameter in an AE hit: a) AE waveform; b) AE frequency spectrum.

充填層の還元試験では,還元後の試料に対して,ISO4696-2に準じた130 mmφタンブルドラムを使用し,30 rpmで30分間の粉化試験を実行した。試料は3 mmメッシュで篩分けされ,3 mm以上の重量割合を測定し,以下の式よりRDIを導出した。

  
RDI=(1m1m0)×100(1)

ここで,m0は還元試験後の試料重量,m1は3 mm以上の試料重量を示す。

3. 実験結果と考察

3・1 単一粒子の還元実験中に発生するAE測定

Fig.3に773 Kで3.6 ks,COガス条件での各単一粒子のAE測定結果の一例を示す。ブランク試験ではAEはほとんど検出されなかったことから,本試験系では振動や摩擦によるノイズ相当のAEが検出されないことが確認された。また,焼結鉱,ペレットおよび塊鉱石の低温還元時にAEが測定されたが,それらの周波数帯域は異なっており,焼結鉱は50-120 kHz,ペレットは80-140 kHz,塊鉱石Aは75-100 kHおよび塊鉱石Bは80-120 kHzであった。一方,焼結鉱は冷却時にも多数のAEが測定され,焼結鉱のAEエネルギーはペレットに比して大きかった。さらに,CWが高い塊鉱石Aの昇温時に,多数のAEが検出され,その周波数帯は70-120 kHzと還元過程に検出したAEに比べて高い。一般的に,塊鉱石中の水酸化鉄は昇温過程で分解され,生成した水蒸気は破壊に必要な力として作用することが知られており,これが塊鉱石の熱割れの原因として解釈される。このため,CWの高い高密度塊鉱石は熱割れ指数が高いことが知られている20,22)。本試験結果は,本評価手法が高炉の酸化鉄装入物の還元粉化の評価だけでなく,熱割れの評価にも適用できることを示した。

Fig. 3.

Examples of CoG of frequency of AE during reduction of a single particle at 773 K for 3.6 ks with CO gas. a) Blank test, b) Sinter A, c) Sinter B, d) Pellet A, e) Lump A, f) Lump B. (Online version in color.)

破壊科学の研究分野では,破壊における物質内の大小き裂の生成には,相似則(フラクタル)が成立する29)。フラクタルは地震をはじめ破壊現象に伴う一般的なき裂生成挙動においても確認されており,破壊メカニズムとき裂生成挙動のフラクタル性について,数多くの報告がある3035)。また,岩石破壊時のき裂分布とAEの振幅分布のフラクタル性にも相関関係があることが知られている33)。これらを考慮すると,AEの振幅分布は式(39)のべき乗式で表わされる。

  
f(A)=CAm(2)
  
log10(A)=mlog10A+log10C(3)

ここで,Aは振幅(V),mはフラクタル次元(-),Cは係数を表わす。

両対数グラフでは,式(3)のように傾き-mの直線関係が得られ,mが大きいほど,そのき裂サイズは広い分布を持つことを意味する。フラクタル次元は高強度かつ不均一な材料で,その値が増加することが知られている35)

Fig.4にAEの振幅分布の両対数グラフを示す。本試験でも,振幅分布の両対数には直線関係が得られた。これらのことから,焼結鉱およびペレットの低温還元反応に伴い生成するき裂も,AEと同様にフラクタル性を有することが示唆される。

Fig. 4.

AE wave amplitude distribution.

Fig.5にCO還元およびH2還元時の焼結鉱とペレットのAEエネルギーとフラクタル次元を示す。ペレットに比べて,焼結鉱の還元過程に発生するAEのフラクタル次元は小さく,そのエネルギーは大きい。低フラクタル次元かつ高エネルギーなAEであるほど,粗大なき裂が生成しやすい。また,焼結鉱およびペレットともにCO還元に比べて,H2還元に伴い発生するAEは高エネルギーかつ高フラクタル次元であった。これは,H2還元時には,サイズが異なる大小さまざまなき裂が多数生成していることが示唆している。

Fig. 5.

AE and fractal dimension of sinter and pellet during reduction at 773 K for 3.6 ks, with CO gas and H2 gas.

過去の研究18)において,焼結鉱およびペレットのCO還元後の組織観察から,CO還元に比べ,H2還元時にき裂の生成量が多く,その形状も複雑である。これはAE発生挙動から類推されるき裂生成挙動と矛盾せず,AE測定により,低温還元反応に伴うき裂生成メカニズムが類推できることを示唆する。約10%の低い気孔率の塊鉱石Bのフラクタル次元は,この研究で使用されたすべてのサンプルの中で最も低い。塊鉱石Bはき裂伝播を抑制する細孔の数と体積が小さいため,粗大なき裂が生成しやすく,フラクタル次元が低いと推定される。

3・2 充填層還元におけるAE特性と還元粉化挙動

Fig.6に充填層の還元粉化試験中に測定したAEエネルギーEとAEカウントCの推移図を示す。N2昇温条件では,AEは100カウント以下であり,そのエネルギーは低位であった。一方,550°CのCO還元時ではN2昇温試験の100倍以上のAEエネルギーを検出し,さらにN2昇温時には検出されなかった冷却過程にも多数のAEを検出した。

Fig. 6.

Trends in AE counts and AE energy during reduction disintegration tests: a) N2 keeping and b) CO reduction. (Online version in color.)

Fig.7にCO還元過程および冷却過程のAEの周波数スペクトルの一例を示す。CO還元過程では,約100 kHzの周波数のAEが発生した。これに対して,N2冷却過程では,60 kHz以下の特異的な周波数を検出するなど,各段階で発生するAEの周波数帯が異なることが明らかとなった。

Fig. 7.

Examples of AE waveform generated a) during CO reduction and b) during N2 cooling after reduction.

試験中に発生したAE の重心周波数の一例をFig.8に示す。65-95 kHz,95 kHz以上および65 kHz以下の周波数帯の異なる3種のAEが検出された。65-95 kHzの周波数帯は実験を通してN2雰囲気でも検出されたことから,熱膨張により試料と導波棒が摩擦したことで発生した弾性波と推定され,還元粉化には寄与しないものと推定される (摩擦AE)。95 kHz以上の還元過程に発生するAEはヘマタイトからマグネタイトへの還元による体積膨張に伴う「還元劣化AE」と定義する。一方,冷却段階の低周波数帯のAEは冷却による熱応力により生成したき裂に起因するものである(熱応力AE)。還元過程と冷却過程でAEの周波数帯が異なった理由として,き裂の生成モードが異なることが原因と推定される。Ohtsuらは平均周波数とRA値(Rise timeと最大振幅の比)を用いて,破壊モードを分類しており,引張破壊型き裂は高周波数,せん断破壊型き裂は低周波数になることを報告している35)。これは,還元過程の体積膨張により引張破壊型き裂が,冷却過程の体積収縮によりせん断破壊型き裂がそれぞれ生成していることを示唆している。

Fig. 8.

Examples of CoG of frequency of AE during reduction tests: a) sinter kept N2 atmosphere, b) sinter reduced at 773 K for 3.6 ks with CO gas. (Online version in color.)

Fig.9に「還元劣化」と「熱応力」それぞれに起因するAE エネルギーの関係を示す。熱応力はラボ試験特有の現象で,実炉の粉化と関係しないものと考えられるが,そのエネルギーは「還元劣化」に起因するAEに比較して高い。特に,焼結鉱はペレットに比較して熱応力の寄与が高い。これらの結果は,還元後に冷却して強度を測定する従来の還元粉化の管理指標では,実炉の粉化現象と関係がない冷却過程のき裂生成の影響を受けることを示唆する。

Fig. 9.

Relation between the AE energy of reduction degree and thermal stress.

Fig.10に「還元劣化」および「熱応力」に起因するAEエネルギーの総和と,焼結鉱およびペレットのRDIの関係を示す。AEエネルギーが上昇するとRDIも上昇することが認められる。これらの結果は,今回開発したin-situ評価手法により,冷却過程のき裂生成の影響を排除することで,高炉内の還元粉化挙動の定量的評価できることを示唆している。

Fig. 10.

Relation between the AE energy and reduction disintegration index (RDI).

上記の結果は,単一粒子の還元試験はノイズに相当する試料と導波棒の摩擦に関連するAEを最小化できることを示しており,AEの解析精度の向上や還元粉化のメカニズム解明に優れている。一方,高炉に使用される焼結鉱やペレットの品質のばらつきが大きい。そのため,平均的な焼結鉱やペレットの特性を評価できる充填層の還元試験も重要である。

4. 結言

本研究では,低温還元過程の高炉の酸化鉄装入物のき裂生成と伝播挙動のin-situ評価にAE法を適用した。発生したAEを伝播する導波棒を用いることで,酸化鉄装入物の還元過程に多数のAEが検出された。AE法によるin-situ評価は,高H2雰囲気下での焼結鉱およびペレットの還元粉化挙動のメカニズム解明に役立つと期待される。さらに,特徴的なAEパラメーターが還元粉化挙動を定量的に反映することが確認された。本研究で得られた結果を以下のように要約する。

(1)焼結鉱およびペレット単一粒子の還元過程においては,試料と導波棒の摩擦に起因するノイズを排除してき裂生成に伴うAEの検出が可能である。冷却過程には,熱応力に起因する多くのAEが検出され,特に焼結鉱のおいてその傾向が顕著であった。

(2)結晶水(CW)含有量の高い塊鉱石の昇温過程においては,多くのAEが検出された。この結果は,本評価手法が塊鉱石の熱割れの評価に適用できる可能性を示唆する。

(3)焼結鉱,ペレットおよび塊鉱石の還元過程に発生するAEはフラクタル性を有する。焼結鉱と塊鉱のフラクタル指数はペレットよりも低く,これは焼結鉱や塊鉱石に生成するき裂がさまざまなサイズを有することを示す。さらに,H2還元時は,CO還元時に比較してのAEのエネルギーおよびフラクタル指数が大きい。

(4)充填層試料の還元試験では,試料と導波棒の摩擦,還元過程の体積膨張によるき裂生成,冷却過程の熱応力によるき裂生成,それぞれに特徴的な周波数を有するAEが検出される。また,焼結鉱の還元過程におけるAEの周波数はペレットよりも高い。これらの観点から,周波数解析により,還元,冷却の各段階に発生するAEの分離と定量的評価が可能であることを示した。

(5)還元に伴う体積膨張および冷却過程の熱応力に起因するAEエネルギーの和とRDI値には相関が認められる。これらの結果は,本研究で開発したin-situ評価手法を適用することで,焼結鉱,ペレットおよび塊鉱石の冷却過程のき裂生成の影響を排除することが可能であると示唆する。さらに,実高炉内の装入物の還元粉化挙動の定量的評価への適用も期待される。

文献
 
© 2020 The Iron and Steel Institute of Japan

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