Tetsu-to-Hagane
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Ironmaking
Effect of Large Amount of Co-injected Gaseous Reducing Agent on Combustibility of Pulverized Coal Analyzed with Non-Contact Measurement
Kota Moriya Koichi TakahashiAkinori MuraoTakeshi SatoKiyoshi Fukada
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2021 Volume 107 Issue 3 Pages 194-201

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Abstract

Nowadays, reduction of amounts of CO2 from ironmaking process is important from the aspect of prevention of the global warming. COURSE50 is Japanese national project which aims to reduce the amount of CO2 emission from ironmaking process by 30% by 2050. In COURSE50, we try to reduce iron oxide with H2 to decrease amounts of carbon use, by injecting large amount of gas containing H2 and pulverized coal (PC) from tuyere. In that case, PC combustibility can be different from that in general blast furnace condition, due to high co-injected reducing gas ratio. Though a large number of researches about PC combustion around tuyere of blast furnace has been carried out, the effect of large amounts of co-injected reducing gas on PC combustibility was hardly investigated. To evaluate that, we conducted experiments with two experimental furnaces equipped with various non-contact measurement apparatus and found that;

1) The larger amounts of co-injected reducing gas were, the faster O2 and CO2 consumption, and CO and H2 generation in the raceway.

2) The amounts of co-injected reducing gas should be optimized for higher PC combustibility.

3) Co-injected reducing gas activated PC combustion by raising PC temperature, and that resulted in acceleration of PC.

4) Trade-off relationship between rapid heating effect and O2 consumption of co-injected reducing gas could determine the optimum amounts of reducing gas.

Consequently, we elucidated how we could co-inject reducing gas with PC as reducing agents without deteriorating PC combustibility.

1. 諸言

近年世界では,あらゆる業界において地球温暖化問題への対応が強く要請されている。とりわけ我が国においては,鉄鋼業からのCO2排出量が国全体のおよそ14%を占めており1),その削減が急務となっている。そのため,日本の高炉メーカー各社は,製鉄所,ことに製銑プロセスからのCO2排出量削減に向けて,「革新的製鉄プロセス技術開発(CO2 Ultimate Reduction System for Cool Earth 50, COURSE50)」なる国家プロジェクトを立ち上げ,技術開発に取り組んできた24)。その一環として,水素還元の利用により高炉からのCO2排出量を削減するため,コークスの代替還元材として高炉羽口部から水素を含む気体還元材を炉内へ多量に吹込む技術の開発を進めている3)

高炉羽口部における代替還元材吹込みとしては,オイルショック以前は重油を用いる操業が主であったが,オイルショック以降は高騰した重油の代わりに微粉炭を吹込み,コークス比削減を狙う操業が一般的となった5)。高炉へ微粉炭を吹込む操業ではレースウェイと呼ばれる羽口近傍の領域において燃焼条件が変化するため,燃焼条件の変化が炉況へ及ぼす影響に関して,数多くの研究がなされてきた6)

また,微粉炭を吹き込む際は,炉内通気性の阻害要因となる微粉炭の未燃残渣を炉内に蓄積させないことが肝要である。そのため,吹き込んだ微粉炭を効率よく燃焼させるための技術開発が広く実施されてきた。その例として,燃焼性の異なる微粉炭の混合7)や,微粉炭と酸素8,9),あるいは気体還元材10,11)の同一ランスからの吹込みがあげられる。しかし,COURSE50高炉にて試みるような多量の微粉炭および気体還元材の同一ランスからの吹込みに関しては,検討された例がほとんどない。

また,微粉炭を吹き込むランスの本数やその位置,形状を調整することにより微粉炭の分散性を向上させ,微粉炭燃焼性を向上させた報告も数多くなされている8,1214)。微粉炭粒子の分散性に関わる速度をはじめとした力学的パラメータについては,他分野においてはレーザー計測等を用いて実測されている15,16)。一方で高炉条件下においては,計算による検討例や8,9),燃焼試験にて撮影した微粉炭燃焼場の画像を複数の領域に分割し,微粉炭の分散性を解析した例13)はあるが,粒子の力学的パラメータを実測した検討例はほとんどない。

そこで本研究では,高炉羽口部を模した燃焼炉を作製し,微粉炭比(溶銑1 tあたりの微粉炭吹込み量)150 kg/t,かつ気体還元材比(同気体還元材吹込み量)95 Nm3/tといった,前例のない高微粉炭比かつ高気体還元材比条件で燃焼試験を実施した。その試験を通じて,超高気体還元材比条件が微粉炭燃焼性へ及ぼす影響を評価した。さらに,その影響が現れた要因を,空塔燃焼炉における微粉炭燃焼試験を通じて解析した。

2. 気体還元材の同時吹込みが微粉炭燃焼率に及ぼす影響

2・1 実験装置・実験条件

実験装置の模式図をFig.1に示す。実験装置は高炉の羽口部を模した形状をしており,主にコークス,微粉炭および気体還元材供給装置,還元材吹込み用のランス,LPGバーナーとコークス充填槽にて構成される。LPGバーナーにおいて生成した所定流量,温度の熱風を,羽口を通じてコークス充填槽へ吹込み,燃焼試験を行った。コークス充填槽上部に配置したコークス供給装置よりコークスを装入した。そして,バーナーとコークス充填層の境界付近にランスを挿入し,微粉炭と気体還元材を吹込んだ際の燃焼挙動の変化を評価した。

Fig. 1.

A schematic diagram of one of the experimental furnaces.

実験水準をTable 1に示す。実験水準は全4水準で,還元材を吹込まないCase0, 微粉炭のみを吹込むCase1, さらに気体還元材を吹込むCase2, 3を実施し,気体還元材の吹込み有無,および気体還元材の種類が微粉炭燃焼性へ及ぼす影響を評価した。Case1, 2, 3における送風酸素濃度は,実高炉条件で仮想出銑量と理論燃焼温度(TTF)が一定となるように設定した。微粉炭吹込みがレースウェイにおける反応へ及ぼす影響を同じ送風条件下で評価するため,Case0の送風酸素濃度はCase1と同等の条件とした。ところで,本実験では送風の加熱にLPGバーナーを用いている都合上,熱風炉を用いる実高炉とは異なり,送風中にCO2やH2Oが数%オーダーで含まれる。送風中のCO2, H2Oはレースウェイにおいて吸熱反応を起こすためTTF低下の要因となる。各CaseでLPG流量が異なるため,送風中のCO2, H2Oの存在比率が変化し,実験におけるTTFはCase毎に異なる値となった。

Table 1. Experimental conditions (Case 0-3).
UnitCaseOCaselCase2Case3
Blast volumeNm3/h270270210150
Blast temp.K1273127312731273
Blast O2%27273749
PCkg/h0353535
PC carrier (N2)Nm3/h15151515
Lance gasN2N2COGCOG
+BFG’
Nm3/h10102260

微粉炭および気体還元材の吹込みに使用したランスの断面図と,各流路の吹込み還元材をFig.2に示す。ランスは3重管構造で,最中心の管からキャリアN2とともに微粉炭を吹込み,最外殻の流路から気体還元材を吹込んだ。また,中間の流路やCase1における最外殻の流路など,微粉炭や気体還元材の吹込みに使用しない流路に関しては,ランス溶損防止のため冷却用のN2を流通した。なお,気体還元材の噴出流速を高めることでランス溶損を防止する目的で,Case2のみ最外殻の流路が狭いランスを使用した。

Fig. 2.

A cross-sectional view of the lance used for the injection of PC and gaseous RA.

試験に使用したコークス,微粉炭の粒度と工業分析値,化学分析値をTable 2に,および気体還元材のガス組成をTable 3に示す。気体還元材としては,Case2ではコークス炉ガス(COG)を模した混合ガス,Case3ではCO2を除去した改質高炉ガス(BFG’)とCOGとの混合ガスを模擬したガスを使用した。

Table 2. Size and proximate analysis of coke and PC.
UnitCokePC
Size15 − 25 mm−74 μm 80%
Fixed
Carbon
wt%87.380.6
Volatile matterwt%0.711.4
Ashwt%12.08.0
Table 3. Compositions of the gaseous RAs.
UnitCOGCOG+BFG’
CH4vol%3714
COvol%1233
H2vol%4826
N2vol%327

炉内現象の測定に関しては,コークス消費量の測定と,炉内温度およびガス組成分布の測定を実施した。コークス充填槽上部には,充填槽内部のコークス充填高さを測定するためのサウジング装置を設置した。実験中は,燃焼ガス化反応によるコークス消費量に対するコークス装入量の過不足によって,コークス充填高さが変化した。そこで,コークス充填高さを一定レベルに保持した際のコークス装入量からコークスの消費量を測定した。また,測定および試料採取用のゾンデの挿入孔をコークス充填槽とバーナーとの接続部の反対側に設け,羽口先端からの距離に対する炉内温度とガス組成の分布を評価した。

2・2 実験結果と考察

吹込み条件が炉内(充填層内)の温度分布,O2, CO2濃度分布へ及ぼす影響をFig.3に示す。CO2濃度が最高となる点は燃焼焦点と呼ばれるが11,17),羽口先端から燃焼焦点までの距離はCase1では200 mmであったのに対し,Case2, 3では150 mmであり,気体還元材の吹込みにより短くなった。これらの結果は,既往の知見17)と同様に,羽口からの吹込み還元材の増加に伴い,送風中の酸素消費が加速されたことが原因であると推定される。還元性ガスの吹込量が最も多かったCase3においては,送風がレースウェイに到達する前に酸素がほぼ消費される結果となった。また,各水準のTTFFig.3中に示す。TTFの計算においては,流入熱量とボッシュガス顕熱のバランスを考慮した。流入熱量は,コークスや吹込み還元材の燃焼熱と,送風,吹込み還元材,コークスの顕熱の和とした。レースウェイに流入するコークスの温度は,Rammの推定に従い下記のように仮定した18)

  
Tcoke[K]=0.75(TTF[K]273)+273
Fig. 3.

(a)-(d) Effect of co-injection on temperature and gas distribution along with the distance from the tuyere tip in the packed bed, (a) Case 0, (b) Case 1, (c) Case 2, (d) Case 3.

ボッシュガス顕熱の計算にあたっては,ボッシュガスの組成をN2, H2, COと仮定した。TTFは実験により測定された炉内最高温度と概ね一致し,Case2, 3では酸素富化率が高いためCase1より炉内温度が高くなる傾向が見られた。

次に,各水準における微粉炭燃焼率ηPCについて,計算手法の模式図をFig.4に示す。微粉炭等の吹込み還元材を吹込まない条件,および吹き込んだ条件において測定したコークス消費量の差から,吹込み還元材によるコークス消費量の減少量を算出し,コークスの化学分析値から,前記減少量を炭素換算の減少量CAllに換算した。気体還元材はすべてコークスに先んじて酸素を消費しH2, CO, N2となると仮定して,気体還元材によるコークス消費量の減少量Cgasを計算した。CAllからCgasを減じ,微粉炭によるコークス消費量の減少量CPCを計算した。微粉炭の炭素換算吹込み量MPCに対するCPCの比の百分率を微粉炭燃焼率として定義した。以上をまとめると,ηPCの計算式は次の式(1)の通りである。

  
ηPC=CPCMPC=CAllCgasMPC(1)
Fig. 4.

A schematic diagram of the calculation method for ηPC.

前記の方法に基づいて計算した,各水準における微粉炭燃焼率をFig.5に示す。微粉炭燃焼率は,微粉炭のみ吹込んだCase1に比して,微粉炭と気体還元材を吹込んだCase2では上昇したが,Case2からCase3へ気体還元材の種類,および吹込み量を増加させると逆に低下する結果となった。この結果から,気体還元材の吹込みにより微粉炭の燃焼性は向上することが明らかとなった。一方で微粉炭燃焼率がCase2において最大値をとり,気体還元材の吹込み量を増加させたCase3ではCase2だけではなく気体還元材を吹込まなかったCase1に比しても微粉炭燃焼率が低下したことから,微粉炭燃焼率を最大限に向上させるための気体還元材の選択,および吹込み量に最適点が存在することが示唆された。また,微粉炭性状も気体還元材の最適な吹込み量に影響を及ぼすものと考えられる。たとえば,揮発分量の少ない,燃焼性に乏しい微粉炭を使用した場合は,より多くの気体還元材の吹込みが必要になると推定される7)。微粉炭性状に応じた気体還元材の最適吹込み条件に関しては,今後の検討課題である。

Fig. 5.

ηPC in each case.

3. 気体還元材吹込みが微粉炭燃焼挙動へ及ぼす影響の評価

3・1 実験方法

実験に用いた空塔燃焼炉をFig.6に示す。空塔燃焼炉は主に微粉炭および気体還元材供給装置,還元材吹込み用のランス,LPGバーナーとブローパイプにて構成される。LPGバーナーにおいて所定流量,温度の熱風を生成した。LPGバーナー下流側に設置したランスから熱風中に還元材を吹込み,ブローパイプ内で燃焼させた。ブローパイプの側面と上面にはそれぞれ3つの窓を設置し,上面の窓は後述の速度測定の際に使用するレーザーの入射孔として,側面の窓を通じて炉内現象を観察,測定し,気体還元材吹込みが微粉炭燃焼挙動へ及ぼす影響を評価した。

Fig. 6.

A schematic diagram of the other experimental furnace.

実験水準をTable 4に示す。実験水準はCase4, 5, 6の全3水準で,それぞれ前章のCase1, 2, 3に準じた条件とした。すなわち,微粉炭のみを吹込むCase4, さらに気体還元材を吹込むCase5, 6を実施した。

Table 4. Experimental conditions (Case 4-6).
UnitCase4Case5Case6
Blast volumeNm3/h270210150
Blast temp.K147314731473
Blast O2%273449
PCkg/h353535
PC carrier (N2)Nm3/h151515
Lance gasN2COGCOG+BFG’
Nm3/h102260

各種還元材の吹込みに使用したランスと,ランス各流路から吹き込んだ還元材は2章と同様で,Fig.2に示した通り,3重管ランスの中心の流路からキャリアN2と微粉炭,最外殻の流路から気体還元材を吹込んだ。また,実験に使用した微粉炭の性状,および気体還元材のガス組成に関しても2章と同様で,Table 2, 3に示した通りである。

炉内現象の測定に関しては,粒子画像流速測定法(PIV)による微粉炭粒子速度の測定と,2色放射温度計による微粉炭粒子温度の測定を実施した。PIVによる微粉炭粒子速度測定の概要をFig.7に示す。PIVはレーザーとPIVカメラで構成した。ブローパイプ上面の窓からブローパイプ内に波長532 nmのレーザーを照射し,微粉炭粒子によるレーザーの散乱光をPIVカメラにより撮影した。微粉炭燃焼場を2次元断面で切り出すため,スリットを通じてレーザーをシート状にし,ブローパイプ内流路の中心軸を通るように照射した。ブローパイプ内耐火物や微粉炭燃焼場は強い輻射光を発するため,PIVカメラに波長532 nmの光のみを通すフィルタを取り付けることで,輻射光の影響を排除し微粉炭粒子を撮影した。撮影された微粉炭粒子の画像をその前後に撮影した画像と比較し,微粉炭粒子の位置の経時変化から粒子の速度を算出した。2色放射温度計による測温に関しては,微粉炭流の脈動による温度の変動が大きかった。そのため,30秒間で測定された温度の平均温度を粒子温度として定義した。

Fig. 7.

A schematic diagram of PIV measurement.

3・2 実験結果

PIVによる微粉炭粒子の測定結果の例をFig.8に示す。このように,PIV測定により微粉炭粒子速度の2次元分布が得られる。ここで,実験に用いた燃焼炉は,Fig.6の通り炉内に設けられた羽口部で流路が狭小化した構造となっている。すなわち,炉内のガス流速が羽口部において局所的に上昇する構造となっている。また,各水準における送風量が異なるため,空塔燃焼炉内を流れる熱風の流速が水準により異なり,それに伴い微粉炭粒子速度も変化することが懸念される。

Fig. 8.

An example of the measurement results of velocity of PC particles by PIV.

そこで,PIVによる粒子速度の測定結果から微粉炭の燃焼性を評価するため,羽口部でのガス流速上昇,および各水準における送風流量差が微粉炭粒子速度へ及ぼす影響の補正を試みた。具体的には,粒子速度をガス速度で除算した値を相対速度として定義し,その相対速度を用いて微粉炭燃焼性の評価を実施した。なお,ガス速度としては,時間当たりの熱風送風量を噴流断面積で除算した値を用いた。ここで,噴流断面は円と仮定した。噴流断面積を求めるにあたり,噴流径rをランス先端からの距離d,微粉炭流広がり角θを用いて式(2)のように定義した。

  
r[mm]=65+2 (d100)tan(θ/2)(2)

θはϕ65 mmの羽口先端からϕ100 mmの流路にガスが噴出した際の角度で,PIVの測定結果から算出した。その算出方法の模式図をFig.9に示す。まず,測定した2次元粒子速度分布を用い,高さ方向の各位置における平均粒子速度を算出した。次に,高さ方向の各位置における平均粒子速度の流れ方向,高さ方向成分から,流れ方向に対する粒子の進行角度を算出した。算出された角度は,測定視野の上半分では上向き,下半分では下向きとなった。そこで,測定視野上半分,下半分における最大角度smax, tmaxを選出し,その和をθとした。以上の定義から,本報では噴流断面積の計算に加え,吹込まれた微粉炭の分散性評価にもθを活用した。

Fig. 9.

A schematic diagram of the calculation method for θ.

還元材の吹込み方式がθへ及ぼす影響をFig.10に示す。ランスから微粉炭のみを吹き込むCase4と比較すると,気体還元材を同時に吹き込むCase5, 6では広がり角が拡大した。この結果から,気体還元材の同時吹込みにより,ランス近傍における微粉炭の分散性が向上したことが示唆される。これは,気体還元材の早期燃焼によりガス温度が急激に上昇してガス体積が膨張し,微粉炭粒子に流路径方向の力が加わったことが原因で発現した現象であると考えられる。また,各水準におけるランス先端からの距離に対するθの推移をFig.11に示す。ランス先端から400 mmの位置において広がり角は半分以下まで小さくなり,ランス先端から600 mmの位置においてはほぼ0となった。この結果は,ランス先端から400 mmの位置では,噴流径が流路径のϕ100 mmにほぼ到達したことを示唆している。このことから,各水準における燃焼場中微粉炭粒子の相対速度の計算にはランス先端から200 mmの位置のθを使用した。

Fig. 10.

Effect of the injection of PC and gaseous RA on the spreading angle θ at 200 mm from the lance tips.

Fig. 11.

Change of θ with respect to the distance from the lance tips in each case.

還元材の吹込み方式が微粉炭粒子の相対速度へ及ぼす影響をFig.12に示す。相対速度は全水準で1.0よりも高く,吹き込まれた還元材の燃焼によるガスや粒子の加速が示唆された。さらに水準間を比較すると,Case4ではランス先端400~600 mmで粒子が減速した一方,Case5, 6では加速した。粒子速度は燃焼による昇温やガス生成に伴うガス体積の膨張に起因して上昇すると考えられるため,この結果は気体還元材の吹込みに伴う燃焼反応の活発化を示唆している。Case6における相対速度がCase5と比較して高かったのは,送風量に対する気体還元材の吹込み量がより多く,送風に吹込み還元材が加わった際のガス量増加率が高かったことが原因であると推測される。Case4における粒子速度の低下の原因は,微粉炭の燃焼反応に伴う発熱量と比較して,観察窓へのパージ窒素や,炉体冷却に伴う抜熱量の方が多く,雰囲気温度が低下してガス体積が縮小したことにあると考えられる。

Fig. 12.

Effect of the co-injection of gaseous RA on the relative velocities of PC particles.

還元材の吹込み方式が微粉炭粒子の温度へ及ぼす影響をFig.13に示す。気体還元材を吹き込まないCase4では,微粉炭粒子温度は1000°C以下で推移したのに対し,気体還元材を吹き込んだCase5, 6では,微粉炭粒子温度は2000°C以上まで上昇した。これは,気体還元材が熱風中に吹き込まれ,微粉炭に先んじて燃焼したためであると考えられる。また,Case5, 6を比較すると,Case6では気体還元材の吹込み量が増加したにもかかわらず,微粉炭粒子温度はCase5と同程度であった。

Fig. 13.

Effect of the co-injection of gaseous RA on the temperature of PC.

3・3 考察

前項にて述べた結果から,COURSE50条件における,過去に類を見ない多量の気体還元材の同時吹込みが微粉炭燃焼挙動へ及ぼす効果として,微粉炭粒子の分散性向上効果,昇温促進効果の2つの効果があることが判明した。微粉炭分散性の向上は,微粉炭の燃焼性を向上させることが既往の研究において報告されている13)。また,微粉炭粒子の昇温促進が,微粉炭の燃焼性を向上させることに関しても,過去に多数の報告がある10,11)

一方で,気体還元材の同時吹込みにより,微粉炭の燃焼に必要な酸素が気体還元材の燃焼で消費されることも事実である。COURSE50条件のような多量の気体還元材吹込み条件においては,酸素消費量が過大になり,微粉炭の燃焼を阻害する可能性がある。

そこで,気体還元材の酸素消費量に着目し,組成と流量の異なる気体還元材吹込みが微粉炭燃焼性へ及ぼす影響の定量評価を試みた。Case1, 2, 3について,気体還元材の酸素消費量が微粉炭燃焼性へ及ぼす影響をFig.14に示す。気体還元材の吹込量,すなわち気体還元材による酸素消費量が少ない条件では,気体還元材の燃焼による微粉炭昇温効果により,微粉炭燃焼性が向上すると考えられる。しかし,気体還元材の吹込量増大に伴い,Fig.13に示した通り微粉炭の昇温効果は飽和する。その一方で気体還元材による酸素消費量は増大するため,微粉炭周囲の酸素濃度が低下し,微粉炭燃焼率が低下することが推定される。以上より,微粉炭燃焼性が最大となる気体還元材の吹込量が存在することが示唆された。最適な気体還元材の吹込量の定量評価は今後の課題である。

Fig. 14.

Effect of oxygen consumption of gaseous RA on ηPC .

4. 結言

本研究では,過去に例のない高微粉炭比かつ高気体還元材比条件下での燃焼試験を通じて,COURSE50高炉における気体還元材比条件が微粉炭燃焼性へ及ぼす影響を評価した。さらに,その影響が現れた要因を,空塔燃焼炉における微粉炭燃焼試験を通じて解析した。その結果,下記の知見を得た。

(1)コークス充填槽での微粉炭燃焼試験の結果,気体還元材吹込量の増大に伴い,燃焼焦点が羽口に接近することが分かった。また,微粉炭燃焼率を最大化するための気体還元材吹込量の最適値が存在することが示唆された。

(2)空塔燃焼炉での微粉炭燃焼試験の結果,微粉炭粒子速度,粒子温度の観点から,気体還元材吹込量の増大により燃焼反応は活性化するが,粒子温度の上昇に関しては一定の気体還元材吹込量で飽和することが示唆された。

(3)コークス充填槽,空塔燃焼炉での試験結果から,微粉炭燃焼率を最大化するために気体還元材吹込量に最適値が存在する理由として,気体還元材燃焼に伴う微粉炭粒子昇温加速,および粒子分散性の強化による燃焼率上昇効果と,気体還元材反応量増大に伴う酸素消費量増加による燃焼率低下効果がトレードオフの関係となっていることが推定された。

謝辞

本研究成果は,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務である「環境調和型プロセス技術の開発/水素還元等プロセス技術の開発(フェーズI-STEP2)」の結果として得られたものである。

文献
 
© 2021 The Iron and Steel Institute of Japan

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https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
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