Tetsu-to-Hagane
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Ironmaking
Reaction Behaviors of Mixed Burdens Consisting of Pellets and Sintered Ores in an Experimental Blast Furnace
Kenichi Higuchi Tsunehisa NishimuraTetsuya ShiodaMikael PetterssonPeter Sikström
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2021 Volume 107 Issue 5 Pages 336-344

Details
Abstract

Low-MgO sintered ores have developed into dominant burden materials for large blast furnaces operating under high pulverized coal injection in Japan, because of their low gangue content and high strength. Mixing MgO-bearing burdens with low-MgO sintered ores is an effective approach to satisfy the MgO requirement of blast furnaces. Therefore, a basket-evaluation test was performed in an experimental blast furnace (EBF) to investigate the reduction behavior of olivine pellets mixed with low-MgO sintered ores. The reduction behavior with lime-fluxed pellets was also evaluated as a reference. Softening-melting tests were also conducted under the same mixing conditions as those in the EBF tests. Olivine pellets exhibited smaller pores and contained finer hematite grains before reduction. These microstructural features influenced their reduction behavior, with low size disintegration observed in the lumpy zone in the EBF. Numerous cohesive masses with slag formed at the interface between sintered ores and lime-fluxed pellets in the EBF, facilitating their melting. In contrast, a small amount of slag was found at the interface between sintered ores and olivine pellets. The results of the softening-melting tests also revealed the superiority of olivine pellets during melting. Despite the low temperature of the initial melt formation during reduction, olivine pellets exhibited lower liquid ratios at high temperatures, resulting in a decrease in exuded slag when mixed with low-MgO sintered ores. This work proposes a general mechanism for the melting behaviors of mixed burden materials for blast furnaces.

1. 緒言

我が国では,高炉の高微粉炭比操業への移行に伴って,炉内通気性を改善する低スラグ焼結鉱の製造が志向されてきた。一方で,大型高炉のシャフト部の通気性確保のために,焼結鉱の強度も求められている。そこで,MgOを1.2 wt%以下まで低減した,低MgO焼結鉱1)が主流となり,現在国内では8割の高炉が低MgO焼結鉱を使用している。しかしMgOは,高炉スラグの流動性確保とスラグ外販時の成分設計上,必要な成分である。現状は,塊状のMgO副原料が主に使用されているが,オリビンペレットのようなMgOを含有する鉄原料の活用も有効である。

オリビンペレットの高炉内還元挙動の優劣は,焼結鉱と酸性ペレットの中間に位置する24)。MgOを含有するペレットの比較では,オリビンペレットはドロマイトペレットよりは劣ると報告されている5,6)。しかし,これらの評価の多くは,単味使用時のものである。混合使用時の還元挙動に関する知見の方が,実機の高炉操業を考える上では重要である。混合使用に関して,異種ペレットの混合時6,7)や,塊鉱石と焼結鉱の混合時8)の反応挙動が詳細に検討されている。しかし,我が国の主要な高炉原料である焼結鉱に,ペレットを混合した際の混合挙動に関する知見は限定される9,10)。特に,1999年から我が国の主流となっている低MgO焼結鉱とオリビンペレットの混合時の評価に関する知見は少ない。多くの報告で,混合による軟化融着挙動への相互作用が指摘されている。その機構は,物理的な充填構造変化と,化学的な拡散および液相組成変化に大別されるが8),軟化融着挙動への影響が大きいMgOや塩基度に大きな傾斜がある場合の相互作用は不明である。低MgO・高塩基度の焼結鉱と,高MgO・低塩基度のペレットの組み合わせは,均一化する過程での液相組成に大きな変化をもたらして,軟化融着挙動が改善される可能性がある。

また近年,試験高炉(EBF)を用いた高炉の操業評価が鋭意進められている。その結果の一部として,装入物の融着開始温度が,EBF内の融着帯の位置に対応し,操業に影響を与えると報告されている11)。さらに,バスケット評価試験により,装入物の炉内挙動の詳細が得られている12)。この評価は,EBFの急冷前に評価対象試料を封入したバスケットを投入し,冷却後に採取して行われる。

そこで,低MgO焼結鉱と数種のペレットの混合試料からなる試料のバスケットを作成し,バスケット評価試験で,これらの高炉内での還元挙動を調査した。さらに,同一装入条件での荷重軟化試験も実施し,異種原料混合時の高炉内融着挙動を考察した。

2. 試験方法

2・1 試験高炉による解析

LKAB社(Luossavaara-Liirunavaara AB)のEBF(内容積8.2 m3)を用いた。EBFの急冷前は,オリビンペレット100%操業を3日間実施した。その操業は安定しており,RAR 560 kg/t-HM,PC比130 kg/t-HM,生産率1.55 kg/hであった。試験操業の終了直前に,試料を装入したバスケット10式を炉頂から装入し,2週間冷却後に炉内から採取した。試料は,3種の高炉原料(低MgO焼結鉱,Lime-fluxedペレット(LFペレット),オリビンペレット)を用いた。いずれも実機で製造されたものであり,焼結鉱は10-15 mmに,ペレットは10-12.5 mmに,それぞれ整粒したものを用いた。バスケットは金網製であり,直径65 mm,長さ200 mmのものを3個直列に連結して一式とした。なお,バスケットによる内部試料の保護効果が想定されるが,試料間の相対的な比較は可能と考えた。3つのバスケットには,それぞれ650 gの,(A)焼結鉱100%,(B)焼結鉱50%+LFぺレット50%,(C)焼結鉱50%+オリビンペレット50%,を封入した。2種原料が混合されるバスケット(B, C)は,均一となるように封入した。それぞれでCaO/SiO2とMgO/SiO2が異なるが,基礎的知見を得るために成分調整をせずに評価した。

還元前の焼結鉱とペレットの気孔率を,2種の方法(2 mm以下の気孔率(水法,JIS K2151)と全気孔率(表面の入り江を含む)13))で測定した。さらに,2.8-6.3 mmに粉砕した試料を用いて,水銀圧入ポロシメータで200 µm以下の気孔量と気孔径分布を測定した。さらに,光学顕微鏡による組織観察を実施した。EBFのバスケット内から得られた試料は,外観で焼結鉱,ペレット,融着物に選別後,それぞれの粒度分布,圧壊強度(12粒の平均値),還元率,<10 µm気孔量を測定し,組織を観察した。

2・2 荷重軟化試験

EBFでのバスケット評価結果の検証として,小型荷重軟化試験装置14)を用いて,混合原料の還元挙動を解析した。10-12.5 mmに整粒後の試料を,120 g用いた。試料は,黒鉛坩堝内に,粒径9-13 mmのコークス層間に設置した。試料の還元条件を,Fig.1に示す。加熱中の排ガス組成,試料高さ,圧損を測定した。

Fig. 1.

Experimental conditions of the softening-melting test.

TS(圧損が1.0 kPaに達する時の温度),TE(圧損が上昇後1.0 kPa以下となる時の温度),T50(収縮率が50%に達する温度),TD(最初の滴下を検知した温度),dT(TE-TS),S値(圧損の温度積分値),dPMAX(最大圧損値)を評価した。還元過程での液相率の変化を,FactSage(ver. 6.4)を用いて算出した。その際に,還元前の成分と,荷重軟化試験で実測された還元率から,温度毎の鉱石層の成分((CaO, SiO2, Al2O3, MgO, Fe2O3, FeO, Fe)を算出した。

3. 試験結果と考察

3・1 還元前の装入物の特性

Table 1に,本研究で使用した装入物の化学成分と気孔率,および各バスケットの化学成分を示す。2種のペレットは,いずれも焼結鉱と比べて低い全気孔率を示したが,200 µm以下の気孔量と,2 mm以下の水法気孔率は,むしろ,ともに高かった。オリビンペレットの方が,LFペレットよりも僅かに気孔率が高く,微細な気孔が多かった(Fig.2)。

Table 1. Chemical compositions and porosities of burden materials used in this study.
T.FeFeOCaOSiO2Al2O3MgOCaO/SiO2MgO/SiO2<200 µm
Pore volume
<2 mm
Porosity
Total
Porosity
True
density
Wt%Wt%Wt%Wt%Wt%Wt%mm3/g%%g/cm3
Sintered ore58.336.458.945.141.440.821.750.1635.717.029.74.30
Lime-fluxed pellet65.720.932.542.170.580.041.170.0288.621.026.14.81
Olivine pellet66.720.740.481.900.291.530.250.8091.022.627.54.75
50% sinter +50% LF pellet62.033.695.743.661.010.431.460.09
50% sinter + 50% Olivine pellet62.533.604.713.520.861.171.000.48
Fig. 2.

Pore size distributions of burden materials used in this study. (Online version in color.)

Fig.3に,LFペレットとオリビンペレットの中心部の還元前の組織を示す。いずれのペレットも,焼結鉱よりもやや多孔質かつ,均質な組織構造を呈していた。オリビンペレットはLFペレットと比べて,1)ヘマタイト粒子が細かい,2)1200°C付近での焼成中に,低粘度の融液が生成した事を示す,球形の気孔が多い,3)未滓化のオリビン粒子が点在する15),の特徴があった。

Fig. 3.

Microstructures of the cores of lime-fluxed pellets and olivine pellets before reduction. (Magnification ×50 (left), ×200 (right)) Hem: hematite, GS: glassy silicate, Oli: relict olivine. (Online version in color.)

3・2 EBFから回収された試料の解析

3・2・1 回収試料の状態

Fig.4に,回収されたバスケットの高炉の高さ方向の位置を示す。全てのバスケットが回収され,最上層からの層数で試料名を付与した。13-2のみ,比較的高炉の中心付近(距離0.2 m)に位置しており,その他のバスケットは中間部,あるいは周辺部で回収された。EBFでは,コークス中心装入を実施しており,解体調査でも中心コークス層が観察された。よって,13-2は他のバスケットよりも高温条件であったと推定される。全てのバスケットセットの端部間の高さの差異は89 mm以下であり,高さの差異の影響は比較的小さい。Fig.5に,バスケットから回収された融着物の割合を示す。13-2で融着物が多かったが,これは中心部に位置していた影響である。中間部,周辺部におけるEBFの融着帯は,第13層から第18層の間に位置していたと考えられる。なお,融着物の割合をバスケットBとCで比較すると,その多少は13-2層,第18層,第23層で異なっており,同一の傾向は見られなかった。これは,採取位置(温度)の影響がある事と,試料量が少なく評価精度が小さい事,が原因と推定される。

Fig. 4.

Locations of excavated baskets in the vertical direction of the EBF. Numerical values denote the average depth of basket sets from the stock-line.

Fig. 5.

Changes in the cohesive mass ratios of excavated backset samples with depth from the stock-line of the EBF.

3・2・2 低温域での塊状物

Fig.6に,第5層,第7層(EBFの塊状帯)での塊状物の<10 mm割合(a)と,圧壊強度(b)を示す。バスケットAの<10 mm割合は,バスケットB,Cに比べて常に高かった。さらに,同一セットで比較すると,バスケットBの方が,バスケットCよりも<10 mm割合が高かった。同様に,圧壊強度も,オリビンペレットが最も高く,次いでLFペレット,焼結鉱の順であった。これらの結果から,塊状帯での還元粉化量は高い順に,焼結鉱>LFペレット>オリビンペレットであった。

Fig. 6.

The <10 mm fraction (a) and crushing strength (b) of samples in the lumpy zone in the EBF.

Fig.7に,塊状物の還元率(a)と,還元率65%以下の試料の<10 µm 気孔量 (b)を示す。第5層と第7層の試料の還元率は,いずれも約30%であったので,このゾーンはEBFの熱保存帯である。よって,<10 µm気孔量に差異があっても,ほぼ同一の還元率であったと考えられる。13-2は,中心付近にあり,高還元率を呈した。第18層と第23層で特に観察された,同条件のバスケット試料間の大きな還元率の差異も,同様に回収位置の差異によるものである。全ての領域で,LFペレットとオリビンペレットの還元率の差異は僅かであった。還元前(Fig.3)と同様に,焼結鉱の<10 µm 気孔量は,常にペレットよりも少なかった。第13層までは,オリビンペレットの<10 µm気孔量は,LFペレットよりも高かったが,第18,23層では低下した。

Fig. 7.

Reduction degree (a) and <10 µm pore volume (b) of 'lumpy' sintered ores, lime-fluxed pellets and olivine pellets as a function of the depth from the stock-line. Pore volumes of samples with reduction degree below 65% are shown.

3・2・3 高温域での融着物

Fig.8に,第18層で回収された融着物の外観写真を示す。Fig.9に,第18層と第23層で観察された融着物のマクロ組織を示す。併せて,融着物の還元率の測定結果も示す。第18層では,バスケットBの方が,バスケットCよりも粒子間距離が短く,融着が進行していた。さらに18-1-Bのバスケットの中(LFペレット)と外(100% オリビンペレット)を直接比較すると,LFペレットの方が融着が進行している傾向があった。同様に,第23層のバスケットBの中と外を直接比較すると,いずれのペレットも融着が進行し,ウスタイト核の一部の流出が観察されるものの,バスケットの中の方がより融着が進行しており,特にLFペレットの荷重による潰れが顕著であった。このLFペレットとオリビンペレットの融着挙動の差異については,3・3節と3・4節にて検証,考察する。Kaushik and Fruehan6)は,80%に予備還元したオリビンペレットのN2中の昇温過程で,アルカリによる低温でのスラグ浸出を観察している。本研究では,還元率が65%までと低かったために,オリビンペレットのウスタイトコアの流出は観察されなかった。

Fig. 8.

Cohesive masses found in the18th layer. (Online version in color.)

Fig. 9.

Macro photos of cohesive materials found in the 18th and 23rd layers. RD denotes the reduction degree. A is closely observed in Fig.10.

Fig.10に,第18層の近接した位置(Fig.9中A図)に存在していた装入物のミクロ組織を示す。ペレットは,焼結鉱に比べて粒子内部まで還元が進行していた。LFペレットは,表層のメタル層が多孔質であり,還元が中心部まで進行していたものの,中心部には島状の未還元ウスタイト相が観察された。対してオリビンペレットは,表層に微細で緻密なメタル層を形成し,内部は酸化鉄層が存在し,よりトポケミカルな還元様式を呈していた。Fig.7(b)で観察された,オリビンペレット中の<10µm気孔量の低下は,この酸化鉄層の緻密化によるものと推定される。このような還元後組織の差異は,還元前の気孔構造(Fig.2)と,ヘマタイト粒子径(Fig.3)の差違に起因し,より高温域での融着挙動にも影響を与えると推定される。特に,メタルシェルの物理的な性状の差異は,コアからのスラグ浸出挙動にも大きな影響を与えると考えられる6)

Fig. 10.

Differences in reduction behaviors among the burden materials in area A of Fig.9 in the 18th layer. (Online version in color.)

3・2・4 焼結鉱とペレットの界面

Fig.11に,13-2の焼結鉱とペレットの界面の組織を示す。バスケットB, Cは,中心部付近に存在していたため,これらの還元率はそれぞれ,98.4%,98.8%と,高かった。LFペレットと焼結鉱の界面には,スラグが生成していたのに対して,オリビンペレットと焼結鉱の界面のスラグ量は少なった。Goldringら16)も,実機高炉のN2冷却による解体調査で,LFペレット(C/S; 0.7, MgO; 0.3 wt%)と焼結鉱(C/S; 1.6, MgO; 1.6 wt%)の界面で含FeOスラグの形成を観察している。

Fig. 11.

Interface between sintered ores and lime-fluxed pellets (B) and between sintered ores and olivine pellets (C) in the 13th layer. M: metal, S: slag, P: pore. (Online version in color.)

Chaigneauら9)は,高塩基度焼結鉱とオリビンペレットの混合使用による,高温性状改善の相乗効果を報告しているが,その機構のひとつとして,このような異種界面での浸出スラグの混合によるスラグ性状変化が考えられる。

Nogueira and Fruehan7)は,酸性ペレットの高い収縮性が,ドロマイトペレットとの混合により改善される事を観察し,その原因を浸出スラグの粘度上昇としている。さらに,Kaushik and Fruehan6)は,2種のペレットの混合時の溶融段階を,1)固相メタルの焼結,2)融液の初期生成,3)浸出スラグの同化,4)コアの同化と纏め,浸出スラグ同化の因子を,メタルシェルの構造と融液粘度としている。本研究でも,焼結鉱とペレットの界面において(Fig.11),メタル相の存在が観察されたので,この界面での同化現象は,ペレットのメタルシェルを介した融液の浸出,同化が関連するものと考えられる。

3・3 荷重軟化試験での融着挙動

Fig.12に,バスケットA, B, Cと同一試料条件の荷重軟化試験結果を示す。高温性状の特性値をTable 2に纏めた。単味評価では,オリビンペレットのTSは,LFペレットよりも高く,既報の結果と一致した11)。焼結鉱へのペレット混合によって,TSの上昇とTE,TDの低下が見られ,この結果によりdTが低下した。S値,最大圧損値は,ともに低下した。これらの改善効果は,オリビンペレット使用時に大きかった。圧損が上昇するまでのガス還元は,LFペレット混合時とオリビンペレット混合時で差異はなかったが,圧損上昇後の溶融還元は,LFペレット混合時の方が急速に進行した。dPMAXは,1200°C以上での液相率と鉱石層の空隙構造に依存する。液相率は,化学成分と還元率で決定される。異種原料混合による空隙の増加は僅か8)であるので,焼結鉱とオリビンペレットの混合時の低いdPMAXは,低脈石量が主要な要因である。

Fig. 12.

Results of softening-melting tests. (Online version in color.)

Table 2. Specific values for evaluating reduction behaviors of burden materials in the softening-melting tests.
SinterLF PelletOlivine pelletSinter +
LF Pellet
Sinter +
Olivine pellet
TS°C12381232132012441280
TE°C14821509135613671382
dT°C24427736123102
T50°C14111364133513551362
TD°C14871394135513801383
dPMAXkPa19.424.71.912.78.5
S-valuekPa・min23632228847

Fig.13に,1300°C中断試料の比較を示す。単味および焼結鉱との混合時でも,LFペレットは,メタルシェルを残して,コア部のスラグとウスタイトが浸み出した結果,空洞となっていた。これに対して,オリビンペレットは,コア部のウスタイト相が未溶融で残存していた。

Fig. 13.

Cross sections of samples quenched at 1300°C during the softening-melting tests. (Online version in color.)

3・4 焼結鉱との混合時のペレットの融着挙動

Fig.14に,Table 2に示す各水準の,液相率の温度変化の計算値を示す。Fig.9-11の観察結果から,焼結鉱との混合使用においては,低温域では個々の装入物の挙動に依存し,高温になるに従って,焼結鉱との完全混合後の挙動に近づく8),と仮定した。融液生成温度は,オリビンペレット<LFペレット<焼結鉱の順に低く,過去の測定結果とほぼ一致した17)。オリビンペレットで観察された,コア酸化物の低温域での緻密化(Fig.7(b),10)は,この低い溶融開始温度が原因と推定される。しかし,その後の液相率の増加の程度は,装入物によって大きく異なり,1300°Cでの液相率は,オリビンペレットが最も低かった。この挙動は,既報でも報告されており24,15),fayalite slagと共存ウスタイトの融点上昇によるものである。いずれのペレットも,焼結鉱への混合により,高温での液相率を低下させ,特にオリビンペレット使用時の低下が大きかった。1300°Cでの融液の粘度は,焼結鉱で0.134 Pa・s,LFペレットで0.06 Pa・s,オリビンペレットで0.04 Pa・sと評価された18)。よって,LFペレット混合使用時は,多量の低粘度スラグが浸出すると考えられる。この推察は,これまでの結果(Fig.11-13)と良く一致した。

Fig. 14.

Calculation results of the liquid ratio to sum of oxides for various burden conditions as a function of sample temperature. (Online version in color.)

Fig.15に,これまでに得られた結果から推定された,焼結鉱とペレット混合時の還元過程での融着挙動を,模式的に示す。LFペレット混合時は,焼結鉱から多量のスラグが浸出するとともに,LFスラグからも多量のスラグが浸出する。LFペレットからの融液粘度は低く,容易に多孔質なメタルシェルを通過できる。浸出スラグが同化した後も,液相率は高い状態が維持される。一方で,オリビンペレット混合時は,オリビンペレットからは少量の低粘度スラグが焼結鉱からの融液と同化する。その結果,液相率が低下し,界面の融着が抑制される。塩基性焼結鉱50%とペレットを組み合わせた試験高炉での操業結果でも,オリビンペレット50%使用時の方がオリビンペレットとLFペレット併用時よりも安定したと報告されているが10),その一因として,このような融着挙動の差異が考えられる。

Fig. 15.

Schematic explanation of the melting behavior of the mixed burden comprising with sintered ores and pellets during reduction (Online version in color.)

4. 結言

LKAB社のEBFでバスケット評価試験を実施し,低MgO焼結鉱,LFペレット,オリビンペレットからなる混合試料の炉内融着挙動を解析した。以下の知見を得た。

(1)LFペレットとオリビンペレットは,ともに焼結鉱よりも<200 µm気孔が多かった。オリビンペレットは,微細な気孔が多く,へマタイト粒子が細かい特徴があり,還元挙動へ影響を与えた。

(2)塊状帯では,焼結鉱に比べてペレットの方が還元粉化量は低く,特にオリビンペレットは小さかった。 還元中のオリビンペレットの<10 µm気孔量は,LFペレットよりも高かったが,高温域では酸化物コアの緻密化に伴って減少した。

(3)融着帯では,オリビンペレットよりもLFペレットの方が融着が進行した。LFペレットは,焼結鉱との界面でスラグを多量に生成した。一方で,オリビンペレットの焼結鉱との界面でのスラグ量は少なかった。荷重軟化試験でも,オリビンペレットと焼結鉱との混合により,高温性状が大きく改善された。

(4)オリビンペレットは,還元過程での初期融液生成温度は低いものの,その後の高温域での液相率の増加は小さく,低MgO焼結鉱との混合において,浸出スラグの量が低減した。

文献
 
© 2021 The Iron and Steel Institute of Japan

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