2021 Volume 107 Issue 6 Pages 439-446
Iron ore sintering process occupies approximately 3% of CO2 emission of Japan because a large amount of coke breeze was used as a main agglomeration agent. Therefore, its suppression has been required. One of the promising methods is to replace coke breeze with biomass char and iron-bearing materials. In this study, the effect of the utilization of metallic iron with coke or biomass char (PKS char) as an agglomeration agent on its oxidation behavior was examined by series of experiments using a sintering simulator. The use of PKS char leads to a larger decrease in pressure drop difference of the sintering bed compared to the case using coke. The oxidation rate of metallic iron was larger in the case using PKS together than that using coke. It was considered that the oxidation of metallic iron was promoted because the bed-temperature was increased faster and higher in the former case.
焼結鉱は主に粉鉱石,石灰石をコークス粉と共に混合・造粒し,コークスの燃焼熱によって塊成化処理した高炉装入原料であり,日本国内では年間約8000万トン生産されている1)。焼結プロセスにおいて,コークス燃焼により発生した二酸化炭素は,日本における人為的発生量の約3%を占めており,その削減が求められている。焼結プロセスの低炭素化については,これまで多くの研究および技術開発が進められてきた。例えば,主な凝結材であるコークスの一部を代替する原料として,金属鉄や低級酸化鉄の酸化熱を利用する鉄系凝結材やカーボンニュートラルであるバイオマスチャーなどが挙げられる。
鉄系凝結材の有効利用に関する研究として,圧延工程から排出されるミルスケール2,3)やスクラップであるスチール缶チップ4)の焼結原料としての検討がなされてきた。ミルスケールを30%まで添加した場合においても焼結鉱の製造が可能であり,コークス比を低減できることが報告されている。これら鉄系凝結材は酸化反応後も焼結層内に残留するため,コークスに比較して通気性が悪化し,生産性が低下することが知られている5)。さらには,酸化反応が十分に進行しないため焼結鉱中のFeO濃度が増加し,結果的に被還元性の低下をもたらす6,7)。一方で,金属鉄およびウスタイトの周囲にCaOを配置すると,低温で溶融反応が進行し,酸化反応が促進されることが報告されている8)。このように,鉄系凝結材の使用によるコークス比を低減した焼結プロセス実現の可能性が示唆されているが,様々な課題がある。
コークスからバイオマスチャーへの置換率を増大させると通気性が増加するため焼成時間が短くなり,生産性が向上9)することが報告されている。しかし,焼結鉱の歩留まり低下が報告10)されており,返鉱の増加も懸念される。これは,バイオマスチャーの密度がコークスのそれよりも小さいため,コークスを同じ発熱量のバイオマスチャーで代替すると,焼結完了帯の空隙が増加することが原因の一つと考えられている。
以上のように,鉄系凝結材,およびバイオマスチャーを単独で使用する場合,それぞれ焼結層の通気性悪化や焼結鉱の被還元性低下,および焼結鉱の歩留まりや強度低下が懸念される。一方,鉄系凝結材使用時の通気性悪化はバイオマスチャーとの併用により改善できる可能性も指摘できる。そこで本研究では,鉄系凝結材と炭素系凝結材(コークスおよびバイオマスチャー)を併用する焼結原料を想定し,使用する炭素系凝結材の種類が焼結層内における各凝結材の反応に及ぼす影響について検討した。
鉄系凝結材試料として金属鉄試薬(純度99.9 mass%),炭材試料としてコークスおよびPalm Kernel Shell Char(以下,PKS炭)をそれぞれ1.0~2.0 mmに篩分して使用した。Table 1に各炭材試料の工業分析値を示す。また,焼結原料を混合・造粒した疑似粒子をモデル化したAlumina Cored Pellet(以下ACP)8)を以下のように調製し,焼結実験に供した。ACPは,球形アルミナ粒子(2 mm)の周囲にヘマタイト試薬(純度99.9%)と炭酸カルシウム試薬(純度99.5%)の混合粉を,水分を適宜加えながら造粒し,得られた造粒物を粒径2.38-2.80 mmに篩分けして作製した。混合粉はCaOとヘマタイトの重量比がFe2O3: CaO= 80%: 20%となるよう調製したACPは,ACP-20のように表記する。Table 2に金属鉄と炭材の混合条件を示す。各試料名は「炭材凝結材名-鉄系凝結材(Fe)」に発熱量のうち金属鉄の占める割合(百分率)を付記し,金属鉄とコークスのそれぞれの発熱量比が25%:75%の試料をCoke-Fe25のように表記する。
Sample | Fixed Carbon | Ash | Volatile Matter | Moisture |
---|---|---|---|---|
Coke | 86.7 | 12.2 | 1.2 | 1.0 |
PKs char | 60.46 | 32.83 | 6.71 | 4.62 |
Sample | CaO source | ACP (g) | Coke (g) | PKS char (g) | Metallic Iron (g) |
---|---|---|---|---|---|
Coke-Fe25 | ACP-20 | 29 | 1.0 | 0 | 1.4 |
Coke-Fe50 | ACP-25 | 26 | 0.75 | 0 | 2.9 |
Coke-Fe75 | ACP-30 | 23 | 0.40 | 0 | 4.4 |
PKS-Fe25 | ACP-20 | 29 | 0 | 1.1 | 1.4 |
PKS-Fe50 | ACP-25 | 27 | 0 | 0.83 | 2.9 |
PKS-Fe75 | ACP-30 | 23 | 0 | 0.50 | 4.4 |
Fig.1に微分型焼結シミュレータの概略11)を示す。内径35 mmのアルミナ製反応管内に混合した凝結材とACPを充填し,厚さ約20 mmの試料層とした。試料層上部にはガスを予熱するため,試料層下部には溶融試料の滴下を防ぐためにアルミナ粒子(直径2 mm)充填層を設けた。凝結材の酸化反応を防止するため少量のN2ガスを流通させながら昇温し,その後,ガスの線速度を0.45 Nm/sに調整した。層内温度が設定した予熱温度付近で定常になった後,同一流量に制御したN2-21%O2ガスに切り替え,実験を開始した。ガス切り替え後は,試料層中心部および試料層下部とアルミナ球充填層の境界の位置に挿入した熱電対による層内温度(それぞれ試料層中心温度,試料層下部温度と呼称),差圧計による反応管出入口間の圧力損失を連続的に測定した。また,赤外線吸収法により排ガス中のCO, CO2, O2の濃度も連続的に測定した。
Schematic diagram of the sintering simulator. (Online version in color.)
炭材と鉄系凝結材が共存する際の燃焼反応で発生するCOおよびCO2は炭材の燃焼に由来し,鉄系凝結材は酸素消費のみを進行させる。そこで,炭材の燃焼反応に由来する酸素消費量を排ガス中のCO,CO2濃度から以下の式により算出した。
(1) |
ここで,vCO(mol/s),vCO2(mol/s)は各条件で測定されたCOおよびCO2濃度からそれぞれ算出した酸素消費速度,MC(mol)は炭材がCO2として完全に酸化した場合に必要な総酸素消費量である。vCO,vCO2はそれぞれ以下の式により算出した。
(2) |
(3) |
ここで,CCO2(vol%),CCO(vol%)は測定されたCOおよびCO2濃度, Q(L/s)は流量,P(atm)は大気圧,R(L・atm/(K・mol))は気体定数,T(K)は室温である。
金属鉄の酸化反応による酸素消費速度は,Blank条件と実験で測定された酸素濃度変化の差として得られる総酸素消費速度と,コークス燃焼による酸素消費速度との差から求めた。この値を,金属鉄の完全酸化を仮定した総酸素消費量で割り,さらに添加した金属鉄量の相違を補正(MFe)することにより算出した。なお,Blank条件は,凝結材を使用せずアルミナ級のみを充填した試料層を用いて,焼成実験と同様の操作を行うものとした。
(4) |
ここで,vBlank(mol/s)はBlankでの酸素濃度から導出した酸素濃度変化速度,vmea(mol/s)は各条件で測定された酸素濃度から導出した酸素消費速度,vc(mol/s)はCOおよびCO2濃度変化から算出される炭材の酸素消費速度,MFe (mol)は金属鉄が完全に酸化するために必要な酸素量である。
また,Coke-Fe50,PKS-Fe50は,予熱温度を800, 850, 900°Cの3条件に変化させ,同様の実験を行ったものである。
予熱温度900°Cで金属鉄,炭材の割合を変化させた際の試料層中心温度をFig.2に示す。試料層温度は反応開始直後に急激に上昇し,最高温度に到達後,緩やかに減少する。鉄系凝結材を50%混合した条件においてPKS炭を使用した場合は,コークス使用時に比較して最高温度および温度上昇速度が高く,他の混合比の試料に関しても同様の傾向を確認した。これは,炭材の燃焼特性の相違によるものであると考えられる。
Changes in temperature at the center of sample bed as agglomeration agent with time at the preheating temperature of 900ºC. (Online version in color.)
各焼結条件における実験前後の圧力損失差をFig.3に示す。ここで圧力損失差は反応前のガスを切り替えた直後と反応終了後の共に900°Cにおける値の差として評価した。また,その値はそれぞれ2回の実験の平均値である。本図においてマイナスの圧力損失差は,反応後通気性の改善を示すものであり,PKS炭使用時はコークス使用時に比較して改善の程度が大きいことがわかる。PKS炭の密度がコークスよりも小さいため,同一熱量基準ではPKS炭体積が大きく,燃焼反応後の試料層中に多くの空隙が形成されるためと考えられる。
Effect of replaced ratio of metallic iron on pressure drop difference of sample bed before and after sintering at the preheating temperature of 900ºC. (Online version in color.)
排ガス中の酸素濃度変化をFig.4に示す。各条件の酸素濃度変化とBlank条件との差は,凝結材の反応で消費される酸素量と見なすことができる。コークス使用時の酸素濃度は反応開始から5 sまで急激に増加し,その後は緩やかな増加に変わる。初期の酸素濃度がBlankに沿って増加していることから,ガス切り替え直後の凝結材の反応速度はあまり大きくないことがわかる。一方,PKS炭使用時は,コークスのような急激な立ち上がりは認められず,酸素濃度が緩やかに増加しており,ガス切り替え直後から反応が進行することがわかる。なお,反応開始後15 s以降の酸素濃度変化には両者の違いは認められない。
Changes in O2 concentration in outlet gas using metallic iron and carbonaceous material as agglomeration agent with time at the preheating temperature of 900ºC. (Online version in color.)
実験終了後コークスおよびPKS炭の反応率を,測定した排ガス中のCOおよびCO2濃度に基づき以下の式により算出した。
(5) |
RCは炭材の反応率,MC,mea(mol)はvCO(mol/s),vCO2(mol/s)から導出した測定値の炭材の酸素消費量である。また,金属鉄の反応率に関しても以下の式を用いて算出した。
(6) |
RFeは炭材の反応率,MFe,mea(mol)は測定値から導出された金属鉄の酸素消費量である。ここでは,金属鉄が全てヘマタイトに酸化した場合の反応率を100%とする。Fig.5にPKS炭の反応率と金属鉄比率の関係を示す。炭材の反応率は,混合比および炭材種による有意な差は認められず,いずれも約90%程度である。どの条件においても10%程度の炭素の残留を示唆しているが,実験後試料のXRDからは炭素は同定されなかった。金属鉄の反応率に着目すると,金属鉄比率が50%以下では,PKS炭使用時の方が金属鉄の反応率は高い。一方,金属鉄比率が75%の場合は,炭材種による差が認められない。
Effect of Fe content in agglomeration agent on reaction ratio of agglomeration agent at the preheating temperature of 900ºC. (Online version in color.)
コークスとPKS炭の反応挙動を考察するために,炭材および金属鉄の反応率を反応開始から試料層中心部が最高温度に到達するまでを「昇温時」,最高温度到達後から反応終了までを「降温時」に分けて計算し,金属鉄比率50%の場合についてFig.6に示す。昇温時の炭材の反応率は,PKS使用時の方が高い。これは前述したようにPKS炭の方が高い反応性を示すためであり,Fig.2に示した試料層最高温度がコークスよりも高くなる結果とも整合する。両炭材とも全反応率はFig.5にも示したように90%程度であり,降温時はコークスの方が多く反応することを示唆する。また,昇温時の金属鉄の反応率はPKS炭使用時の方が高い。昇温時の酸素濃度はFig.4に示したようにPKS炭の方が低い一方,試料層温度はPKS炭使用時の方が高い。すなわち,PKS炭燃焼により酸素分圧が低下しているにもかかわらず,高い層内温度により金属鉄の酸化反応が促進されたものと考えられる。
Changes in reaction of ratio agglomeration agent for the case of 50% Fe addition, (a) PKS char (carbonaceous material), (b) Coke (carbonaceous material), (c) PKS char (metallic iron), (d) Coke (metallic iron). (Online version in color.)
Coke-Fe50およびPKS-Fe50の反応開始後10 sおよび反応完了後の試料層下部の断面写真をFig.7に示す。図中の濃灰色球がアルミナ核粒子,その周囲の淡灰色領域は溶融した外殻層,白色は未反応の金属鉄である。反応開始から10 s後の試料では,金属鉄および炭材が肉眼でも確認できる大きさで残存している。融液生成量が少なく,焼結が進行しなかったため,試料取り出しの際に未反応の金属鉄,コークスおよびACPは脱離したが,観察できた未反応の金属鉄は生成した融液内に取り込まれているものが多く,また,金属鉄粒子の外側には酸化物層が確認できる。また,両試料ともに炭材と融液の界面に金属鉄微粒子が僅かに認められるが,これは酸化鉄の熱炭素還元により生じたものと考えられる。反応完了後は試料層下部において生成した融液がアルミナ充填層に浸透している。
Vertical cross-sectional view of the sample beds of Coke-Fe50 and PKS-Fe50 sintered after 10 s and after sintering at the preheating temperature of 900ºC. (Online version in color.)
予熱温度800ºCおよび850ºCにおける試料層中心温度の変化をFig.8に示す。コークス使用時の試料層温度は予熱温度が低くなるにつれて昇温速度が小さくなり,最高温度が低下する傾向が認められる。一方,PKS炭を使用した場合,試料層温度の立ち上がりに対する予熱温度の影響は小さい。PKS炭使用時の最高温度はFig.2に示した予熱温度900°Cの場合に最高値を示したが,予熱温度の影響はコークス使用時に比較して小さい。試料層の温度上昇速度,最高温度はPKS炭使用時の方が高く,コークス使用時との差は低予熱温度ほど顕著になる。反応後期の温度低下速度は予熱温度が低下するにつれて大きくなる。
Changes in temperature at the center of sample bed with time using metallic iron and carbonaceous material at the different pre-heating temperature (PHT). (Online version in color.)
各条件で得られた排ガス中O2濃度の経時変化をFig.9に示す。コークス使用時の酸素濃度はガスを切り替えた後,Blank条件とほとんど同一の挙動を示して増加し,その後低下する。予熱温度が低いほど反応初期の濃度上昇が大きく,予熱温度800°CではBlank条件のカーブにほとんど一致し,酸素が消費されていないことがわかる。一方,PKS炭使用時は,反応初期から酸素濃度が小さく,炭材および金属鉄の反応が進行することを示す。
Changes in O2 concentration in outlet gas with time using metallic iron and carbonaceous material as agglomeration agent at different pre-heating temperature (PHT). (Online version in color.)
排ガス中のCOおよびCO2濃度から算出した炭材の酸素消費速度をFig.10に示す。コークス燃焼に伴う酸素消費速度は,高予熱温度ほど反応初期の立ち上がりが急で,ピーク値も高い。また,予熱温度800°Cの場合の反応終了時間は900°Cに比較して25 s程度長い。PKS炭使用の場合,反応初期の酸素消費速度の立ち上がりおよび反応終了時間には予熱温度の影響が認められない。
Changes in O2 consumption rate of carbonaceous material with time at the different pre-heating temperature (PHT). (Online version in color.)
Fig.11に各予熱温度条件における金属鉄の酸化反応による酸素消費速度の時間変化を示す。コークス使用時は,反応初期の酸素消費速度の立ち上がりは予熱温度によらず同様の変化を示す。予熱温度800°Cおよび850°Cでは,5 s後に急激な低下が認められ,その後は低い値を示す。反応終了時間に対する予熱温度の影響は小さい。一方,PKS炭使用時の反応初期の酸素消費速度の立ち上がりも一致しており,予熱温度によらず5 sでピークを示す。その後,酸素消費速度は低下していくがコークス使用時よりも高い。PKS炭の燃焼反応に対する予熱温度の影響は小さく,いずれの条件においても試料層温度がコークス使用時よりも高くなっており,金属鉄の酸化反応は高い試料層温度により促進されるものと推測される。
Changes in O2 consumption rate of metallic iron with time at different pre-heating temperature (PHT). (Online version in color.)
Fig.6と同様,炭材および金属鉄の反応率を昇温時と降温時に分けて導出した結果をFig.12および Fig.13に示す。炭材の全反応率はコークス,PKS炭ともに予熱温度が高くなるにつれ僅かに減少する。これは,以下に示すようにACPに含まれる炭酸カルシウムの熱分解によって発生したCO2が影響していると考えられる。本研究において炭材の反応率は測定した排ガス中のCOおよびCO2より算出しているため,低予熱温度の場合,残存する炭酸カルシウムの熱分解により発生したCO2が影響する可能性がある。例えば予熱操作において,試料層が900°Cに到達する直前(870°C程度)に排ガス中CO2濃度は0.04%程度を示しており,実験終了後は検出下限に戻る。反応開始数分前の試料層温度が730°C付近から少量のCO2の発生が確認でき,低予熱温度条件ではガス切り替え時以降,分解せずに残留する炭酸カルシウムの熱分解によりCO2濃度が増加する可能性を指摘できる。すなわち,低予熱温度条件における炭材の全反応率の増加分は,反応開始時に残留する炭酸カルシウムに由来し,炭材の反応率に対する予熱温度の影響は小さいものと考えられる。一方,昇温時のコークスの反応率は,予熱温度の低下に従って減少する。そのため反応初期の発熱量が小さくなり,試料層の温度上昇が緩やかになったものと考えられる。PKS炭使用の場合,昇温時の反応率は50%程度で一定値を示す。前述したとおり,初期のPKS炭の反応に対する予熱温度の影響は小さいため,試料層温度に対する予熱温度の影響も顕著ではないと推測される。
Reaction ratio of coke and PKS char during heating and cooling at different pre-heating temperature. (Online version in color.)
Reaction ratio of metallic iron with coke and PKS char during heating and cooling at different pre-heating temperature. (Online version in color.)
コークスを使用した場合,金属鉄の全反応率は予熱温度の低下とともに減少する。昇温時の金属鉄の反応率も20%以下と全体的に低く,予熱温度の低下とともにわずかに減少する。PKS炭使用時の金属鉄の全反応率も同様に低下するが,昇温時の反応率は,コークス使用時よりも高く,30%程度で予熱温度によらずほぼ一定値を示す。一方,降温時の金属鉄の反応率は両者とも予熱温度の低下とともに減少している。特にコークス使用時においては予熱温度850°C以下で,PKS炭使用時においては800°Cで著しく低くなっている。金属鉄を凝結材として使用する場合,低温では表面に固体酸化物層が形成されることによって反応速度が低下することが報告されている12)。上記のような予熱温度850°C以下での試料層温度では,金属鉄の内部まで酸化するために十分な高い温度に達しなかったと考えられる。
以上のことから,PKS炭と金属鉄を同時使用することにより,金属鉄の酸化促進が図れることが明らかになった。
焼結プロセスの二酸化炭素排出量削減を目的として,バイオマスチャーや鉄系凝結材の使用が検討されている。しかし,それぞれ成品焼結鉱の強度低下や返鉱増加,および焼結層の通気性悪化や焼結鉱の被還元性低下が懸念される。本研究では,これら2種類の凝結材の併用による課題解決を目指し,粉コークスおよびPKS炭と金属鉄共存下の各酸化反応挙動について検討し,以下の結論を得た。
(1)PKS炭を使用した場合,燃焼開始前後の充填層の圧力損失差が粉コークス使用時よりも高くなる。これは,PKS炭の方が粉コークスよりも見かけ密度が小さいためである。
(2)金属鉄と粉コークスを熱量換算で50%:50%とした条件では,予熱温度の低下により試料層温度が低下する。一方,PKS炭使用時は,粉コークスよりも試料層温度が高く,予熱温度800~900ºCでは試料層温度が一定値を示す。これはPKS炭の燃焼性が高いため,燃焼速度に対する予熱温度の影響が小さいことが理由と考察した。これにより,金属鉄の酸化反応が促進され,粉コークス使用時よりも高い反応率を示す。
(3)PKS炭使用時の金属鉄の反応率は粉コークス使用時よりも高い。これはPKS炭使用時では予熱温度によらず昇温時の反応率が30%程度で維持されるためである。一方で,降温時の反応率は予熱温度の上昇とともに反応率が増加する。
本研究の一部は(一社)日本鉄鋼協会の「資源環境調和型焼結技術創成研究会」の支援によることを記し,ここに謝意を表する。