Tetsu-to-Hagane
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Review Article
Life Cycle Assessment for Evaluating Materials
Ichiro Daigo
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2022 Volume 108 Issue 11 Pages 811-822

Details
Abstract

Life cycle assessment (LCA) has been developed for evaluating the environmental impacts associated with a product through its life cycle. LCA is used in product environmental footprint programs. In carbon neutrality, greenhouse gas emissions associated with a product and an organization are of great interest, where methodologies and databases developed for LCA are used. Thus, LCA has become an essential tool for the zero-emission society and circular economy. However, when LCA is applied to materials, a material life cycle may contain several product life cycles due to its recycling. Therefore, evaluation methodologies for consuming secondary raw materials and for recovering them should be seriously considered. This article provides basic knowledge of LCA and advanced knowledge for recycling effects. As basic knowledge, the difference between attributional LCA and consequential LCA and their selection depending on the purpose of assessment are described. As for the recycling effects, characteristics of three possible modeling approaches, cut-off, portioning, and avoided burden approaches, are introduced. In the avoided burden approach, the allocation factor between two product life cycles that secondary raw materials are supplied from and demanded by should be determined. Although the fundamental concept for defining the allocation factor is widely accepted, the methodology for that is still under discussion. Based on the state-of-the-art methodologies, two major applications of LCA in material industries are described, such as evaluating the environmental impacts avoided by new materials or technologies and comparing different materials in terms of environmental impacts through a product life cycle.

1. はじめに

ライフサイクルアセスメント(life cycle assessment, LCA)は,ライフサイクル分析(life cycle analysis)としても知られる手法であり,製品やサービスを評価対象とし,対象製品のゆりかごから墓場まで(cradle-to-grave)の環境影響を評価する技法として発展してきた1,2)。LCAの歴史の中で,最初の評価は米国飲料メーカが1969-1970年に実施したと言われている3)。この有名な評価では,環境にとって望ましい飲料容器を選択することを目的として実施された。LCAは,狭義にはISO1,2)で説明される製品やサービスを対象とした評価手法と認識されることもあるものの,広義には製品やサービスを対象とする評価にとどまらず,例えば社会で使用される自動車全体4)など,さまざまな評価対象システムに対してライフサイクル思考に則った評価手法として用いられる。特にリサイクルが見込まれる材料にとっては,製品の「墓場」は二次資源の回収であり,材料が「墓場」にたどり着くまでには複数の製品の「墓場」を経ることになる5,6)。一般に,先述の「製品やサービス」には材料も1つの製品として包含されるものの,この材料のリサイクル性を考慮した評価は,製品LCAでは今まで課題とされてきている7,8)。これに対して,本稿で後述するconsequential LCAとして,近年のmaterial flow analysis(MFA)分野の研究によって得られている成果を,製品LCAにフィードバックすることが期待されている。

1990年代にISO規格が成立し,最終製品のライフサイクルでの環境影響を評価する技法として知られるようになったLCAは,興味深いことに,先述のその発端では材料選択を目的として実施されていた。そして,その比較評価の結果は,現在の知見をもってしてもいまだ明確な結論が示せないのが実態である9)。本稿では,LCAに対する現在の社会的なニーズも踏まえた上で,材料に関連する種々の評価の目的に応じた手法について,それら手法論の考え方から具体的な算定方法を解説し,手法における現在の課題について論じることを目的とする。

2. LCAに対する期待

ISO1,2)において,LCAの実施の最初には,評価の目的が設定される。これは,目的に応じてLCAの評価対象とする機能単位,システム境界,用いるべきインベントリデータ等が異なることが考えられるためである。例えば,日本で生産される製品を評価することを目的としておきながら,欧州平均や世界平均のバックグラウンドデータが搭載された欧州のデータベースを用いるのは望ましくない。他には,多くの家電製品において使用段階の電力消費に伴う温室効果ガス排出量が支配的であることが知られている中で,家電製品のライフサイクルでの地球温暖化の影響評価を目的とし,使用頻度はユーザごとに異なるため使用段階は評価に含めないとシステム境界を設定するのは望ましくない。

現在の気候変動の抑制に対する社会的要請から,多くのLCAで地球温暖化の影響評価事例が多く見られるものの,LCAは酸性化,資源消費など様々な環境影響領域に対する影響評価を実施する手法として開発されてきた10,11)。ライフサイクルを通した温室効果ガス排出量は,カーボンフットプリント(carbon footprint)としても認識されている。温室効果ガス排出量の他にも,水消費のウォーターフットプリント(water footprint)なども評価されており,それら種々の環境影響領域の製品フットプリントの総称として製品環境フットプリント(product environmental footprint, PEF)と呼ばれる。これらは,製品のLCA結果に対する別称とも言え,特に消費者視点で製品を選択する際の有用な環境情報になる。このようにフットプリントとして公開される数値は,消費者から比較されることがあるため,製品環境フットプリントプログラムでは,製品種ごとの算定方法として(product category rule, PCR)が定められるところに特徴がある。製品環境フットプリントプログラムごとに,それぞれの評価対象製品と環境影響領域の特徴に合わせたPCRが公開されている12,13)

また,近年では,気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures, TCFD)やCDPを理由に,企業活動の気候変動に対する取組みや実績の把握あるいは外部公表に際して,GHGプロトコル(greenhouse gas protocol)に則った算定ならびに報告をしている企業が多い。GHGプロトコルは,企業が事業活動に伴うGHG排出量を算定,報告するための国際的な基準を2001年に初版,2004年に改訂版を公表し,2011年にはScope 3としても認識されている企業バリューチェーン(corporate value chain)の算定基準を公表した14)。同様に,組織のGHG排出量の算定および報告のISO 14064-115)ならびに,その具体例を示すISO/TR 1406916)が発行されている。

一方,温室効果ガスに限らないLCAの手法としても,製品のLCA規格を基に組織を対象としたLCAに関する規格17)が策定された。さらには環境プリントにも,PEFと同様に組織の環境フットプリント(organization environmental footprint, OEF)に関する指針18)が公表されている。組織のLCAでは,企業活動のバリューチェーンを算定に含めるということになり,その企業の生産した製品のライフサイクルでの環境影響を評価することとも言い換えられよう。しかしながら,ISOや欧州委員会が「製品の評価」の延長に「組織の評価」があるとしているのに対して,GHGプロトコルでは「製品」と「組織」の評価方法を別に考えているようだとの見方もある19)。このように,LCAは,現在,やや性質が異なる製品と組織を評価対象としたニーズがある。その性質の違いから,結果の解釈や用い方については違いがあることが想定される20)ものの,その手法論や用いるデータは,どちらを対象とした評価であっても共通していると考えられる。

3. LCAの手法論

LCAの具体的な手法論について説明するに際して,はじめに,LCAといっても一意に評価の手法は決まらないことを理解する必要がある。LCAには,アプローチの違いによるattributional LCA(帰属的LCA)とconsequential LCA(帰結的LCA)の2種類があり,それにより用いるデータや,併産プロセスに対するモデリングの方法が異なる。これら2つの異なるLCA手法に対して,さまざまな定義が試みられてきており,ここではなるべく近年の幅広く受け入れられている定義を紹介する。

Attributional LCA(ALCA)は,ライフサイクルでの環境に関わる物理的な入出力フローを記述することを目的としたLCA手法である21)。ALCAは,評価対象の製品に属する環境影響を定量することができる22)。これは,評価対象製品の現在のライフサイクルにおける環境属性を可視化させる手法であると言える23)。換言すれば,地球全体の環境負荷のうち,評価対象の製品に属する部分を切り分ける推計する手法とも理解できる22)。そのため,ALCAでは,製品ライフサイクルを評価のシステム境界とし,評価する地理的時間的な平均データを用い,併産プロセスに対しては経済価値や物理量の基準により配分する。製品システムに帰属する環境属性を推計するため,そのシステム境界は製品ライフサイクル(あるいはその一部)であり,システム境界に含まれるプロセスについて,そのすべての入力に対して上流プロセスを資源採取などの自然圏からの入力まで遡り入出力を計上する。

Consequential LCA(CLCA)は,可能な意思決定によって変化する環境に関わるフローを記述することを目的としたLCA手法である24)。CLCAは,生産され使用された製品によって影響を受けた環境影響を定量することができる22)。これは,現在のライフサイクルに変化を加えた時に起こる変化を可視化する手法であると言える23)。換言すれば,評価対象の製品の生産と使用によって影響を受けた地球全体の環境負荷を推計する手法とも理解できる22)。そのため,CLCAでは,影響を受けるすべてのプロセスを評価のシステム境界に含め,変化によって想定される影響を反映したデータを用い,併産プロセスに対してはシステム拡張により配分を回避する。変化による結果を推計するため,用いるデータに対する限界分析や,システム拡張の方法など,さまざまなモデリングが可能である25)。ただし,例えばシステム拡張をすることが望ましい場合であっても,その定量のためのデータが入手できなければ適用できない。そのため,システム拡張に代わる手法を選択せざるを得ないこととなる。このように,目的や対象,さらにはデータの入手可能性に応じて,モデリングを含めた算定手法は決められることとなる。

ここまでの定義からは,ALCAは過去や現在のデータに基づいて,CLCAは将来に起こる変化を評価するようにも受け取られるが,これら2つの手法とも,過去にも,現在にも,将来にも適用可能であり,ともに平均の分析にも限界分析にも適用可能で,製品にも意思決定にも適用可能との議論もある25)。これらALCAとCLCAの考え方や手法論については,本分野においてもまだ議論中の事項であり,本稿ではここまでとしたい。ここで,明確にしておくべきは,LCAでは,評価の目的が異なると手法も異なるということである。ISOにおいても,LCAを構成する4つの手順の1番目に「目的と範囲の設定(goal and scope definition)」が記されている1)。LCAの目的を定義し,それに従って評価の範囲ならびにシステム境界が定義づけられる26)。アプローチの選択は,バックグラウンドデータとして整備されているインベントリデータベースとしてのプロセスデータを用いる際にも,留意すべきである。材料に関しては,ある材料を1 kg生産するあたりのプロセスデータが整備されている。もともとのプロセスデータには,attributionalアプローチかconsequentialアプローチかの区別はなく,その製品1単位に対する対象の地域と時期におけるプロセスの平均的な入出力が記される。しかしながら,材料生産で生じる問題の1つに,共産物(co-products)があり,必ずしもプロセスからの製品(産物)が1つとは限らない。その場合,各データベースには配分(allocation)に対するそれぞれの考え方があり,複数の製品(共製品)の間で,入力ならびに出力が配分された後のプロセスデータが提供される。例えば,日本の代表的なインベントリデータベースであるIDEA(Inventory Database for Environmental Analysis) v3.1.027)においては,電解プロセスによる電気銅の製造(製品コード:231112000pJPN)が整備されており,ここでの共産物としては,電気銅,銅スライム,硫酸ニッケル,硫酸銅の4つが考慮されている。データベースには,配分後のデータであることが明記されており,その配分の基準についても「純分質量基準」であることが明記されている。さらに,バックグラウンドデータとしてこのデータベースを利用する際には,一般的にLCAソフトを用い,その入力項目の生産プロセスを上流に接続して,採掘や伐採など最上流のプロセスから当該産品1単位の生産までの,いわゆるcradle to gate(C to G)の入出力データを生成する。当該材料に共産物がなくとも,その上流で接続されるプロセスに共産物があった場合は,そのC to Gのインベントリデータは,attributionalアプローチに基づいた配分後のデータと認識できる。一般に,インベントリデータベースでは,その使い勝手ならびにユーザの多くがattributionalアプローチを用いる現状から,attributionalアプローチに基づいたデータベースが整備されている。ConsequentialアプローチでのLCA実施では,バックグラウンドデータとして用いるプロセスデータについても留意が必要である。

このように,LCAの中にも異なるアプローチやモデリング手法があり,その目的に応じて用いるべきバックグラウンドデータにも違いがある。そのため,本稿においては,評価の目的に応じたLCA手法について,5・1項では開発した(する)材料を評価することを目的とした場合,5・2項では材料代替をした(する)製品を評価することを目的とした場合について,手法論の考え方から具体的な算定方法を解説する。ただし,それらを解説する前に,材料の評価において重要なリサイクル効果については,論点が多く,その後の解説に不可欠な要素であることから,次節において詳述する。

4. LCAにおけるリサイクル効果

4・1 カットオフ手法(attributionalアプローチ)

先の共産物に対する配分の他に,もう1つ使用済み製品から回収される二次資源(金属生産においては金属スクラップ)も製品システムから提供される1つの機能と考えられ,その多機能性(multi-functionality)を扱うためのモデルについて解説する。なお,この二次資源は,使用済み製品からの回収だけでなく,その原料としての入力にも関係する。

Attributionalアプローチを採用した一般的なLCAにおいては,回収される金属スクラップの提供する機能は考慮しない。また,金属スクラップの消費に対しては,C to Gの算定において,金属スクラップを供給するプロセスには遡らない。これは,金属スクラップを回収し,供給するプロセスは,当該製品の製品システムではなく,他の製品の製品システムに属するプロセスとの認識からである。すなわち,金属スクラップの供給プロセスと消費プロセスとは切り離されており,二次資源の取扱いにおける議論ではカットオフ手法(cut-off approach)と呼ばれている。

4・2 分割手法(attributionalアプローチ)

Attributionalアプローチにおいても,モデリングによりリサイクルをカットオフせずに考慮することは可能である。分割手法(partitioning approach)と呼ばれ,Fig.1のように材料のライフサイクルに評価のシステム境界を拡張し,その中に含まれる複数の製品ライフサイクルに,システム全体での材料の生産・リサイクル・廃棄にかかる環境負荷を分割する手法である7,28)。材料のライフサイクルがN回の製品ライフサイクルを包含していたとすると,1回の天然資源からの材料生産,N-1回の二次資源からの材料生産,1回の最終処分が含まれる。それぞれの1単位あたりのプロセスの環境負荷誘発量をXprXreXwとすると,材料のライフサイクルでの環境負荷誘発量は,Xpr+(N-1)Xre+Xwとなる。ここでは,リサイクルのたびにプロセス歩留りにより材料量が減耗することは無視することとする。さらに,1回の製品ライフサイクルごとで材料が発現する機能量が異なるとし,機能量を基準として配分することを考える。k回目の使用で発現する機能量をQkとして,k回目の製品ライフサイクルに分割される材料1単位あたりの環境負荷誘発量XLCIは,式(1)と表される7)

  
XLCI=Qki=1NQi×{Xpr+(N1)Xre+Xw}(1)

Xpr:1単位あたりの天然資源からの材料生産プロセスの環境負荷誘発量

Xre:1単位あたりの二次資源からの材料生産プロセスの環境負荷誘発量

Xw:1単位あたりの最終処分プロセスの環境負荷誘発量

N:材料のライフサイクルに含まれる製品ライフサイクルの数

Qk:k回目の製品ライフサイクルにおける使用で材料1単位が発現する機能量

Fig. 1.

Schematic diagram of a material lifecycle including multiple product lifecycles. For the sake of simplicity, this figure supposes that this material is used N times in total without any loss in every process.

ここで,鉄鋼材においては,トランプエレメントの影響はあるものの,製鋼における炭素濃度のコントロールとその後の熱処理により,何回リサイクルされても意図した機能が発現できると考えられ,N回のすべてにおいて同じ機能量と考えられている。これを簡単には,鉄鋼材は水平リサイクル(閉ループリサイクル)であると表現されることも多い。また,金属スクラップにおいては,リサイクルされずとも意図して廃棄される最終処分プロセスは想定が困難で,散逸プロセスが妥当と考えられ,散逸に対して追加的な環境負荷はないと考えられるため,Xwは無視できる。この条件では,式(1)式(2)と表される。

  
XLCI=1N×{Xpr+(N1)Xre}(2)

さらに,先ではわかりやすさのため無視したリサイクルごとの歩留りであるが,実際にはリサイクルごとに目減りすることも考慮した上での平均的な使用回数がN回と定義できる5,6)。1回の製品ライフサイクルを経るごとの使用済み製品からの回収率をRR,製鋼時の歩留りをYとすると,Nは,1/(1-RRY)と表すことができ,式(2)はさらに式(3)に変形される。

  
XLCI=(1RRY){Xpr+(11Y1)Xre}=XprRRY(XprXre)(3)

RR:使用済み製品からの材料回収率

Y:製鋼時の歩留り

式(3)の最後の項は,使用済み製品からのスクラップ回収に対して単位あたりY(Xpr-Xre)の回避効果が考慮されたと理解される。なお,回避効果については次項で詳述する。ここで,材料生産時の原料に占めるスクラップの比率をS,その投入比で材料を生産した際の実プロセスでの環境負荷誘発量をXとすると,Xprは投入したスクラップが負う環境負荷分として単位あたりY(Xpr-Xre)の負荷をXに加えたものと表現でき式(4)が成り立つ。これより,式(3)式(5)と変形できる。この式(5)は,鉄鋼業にて規格化された手法2932)における表現と同じとなる。

  
Xpr=X+SY(XprXre)(4)
  
XLCI=X+SY(XprXre)RRY(XprXre)=X(RRS)Y(XprXre)(5)

X:実際の材料生産プロセスでの環境負荷誘発量

S:材料生産時の原料に占めるスクラップの比率

4・3 回避効果手法(consequentialアプローチ)

次に,consequentialアプローチでの,金属スクラップの消費に対する考え方と扱い方を解説する。リサイクルにおいては,先述のように,前の製品の製品システムにて使用済み製品の処理プロセスから二次資源が回収され,次の製品の製品システムにて二次資源を用いて材料生産される。これら異なる製品システムを異なる色としてFig.2(a)に示す。Consequentialアプローチでは,リサイクルが実施された結果としてのシステム全体での変化を考慮するため,リサイクルされなかった場合を想定して,リサイクルによる変化分を同定する。リサイクルされなかった場合,Fig.2(b)に示すように,2つの製品システムは独立しており,使用済み製品は処理され,最終処分される一方,材料生産には天然資源が消費される。ここで,リサイクルしたときと比較し,Fig.2(a)に戻ると,最終処分と天然資源採取から材料生産のプロセスが回避され,二次資源を用いた材料生産プロセスが追加されることがわかる。これら2つのプロセスが回避されたことがリサイクルによる「回避効果」と呼ばれる8)。この回避効果は,リサイクルしなかったと想定したときと比較して生じる効果であり,実際はリサイクルされているため,その効果は2つのうちのどちらかの製品システムが享受している。図からわかるように,カットオフ手法では,最終処分の回避効果は,前の製品の製品システムが,天然資源からの材料生産プロセスは,次の製品の製品システムが享受している。ここでは簡便のため,リサイクルのために追加的に必要なプロセスについては無視した。

Fig. 2.

Schematic illustration of (a) the processes and flows related to recycling and the processes avoided by recycling and (b) the processes and flows related to unrecovered materials and production of materials when recycling is not performed. The two processes indicated by the boxes with dotted line show avoided processes derived from the recycling.

つづいて,定量的な説明のために,フロー量ならびにプロセスの環境負荷物質誘発量を想定する。フロー量はFig.2の中に黒文字で,環境負荷物質誘発量は白文字で記した。Fig.2(a)に記したように,1単位の二次資源がリサイクルされ,材料生産プロセスの歩留りがYで,Y単位の材料を提供する。先と同じように二次資源を用いた1単位の材料を生産するプロセスの環境負荷物質誘発量をXreとし,このプロセスでの誘発量がYXreとなる。一方,リサイクルしなかったときは,最終処分プロセスの環境負荷物質誘発量Xwが前の製品システムでの誘発量となり,天然資源を用いた1単位生産あたりの天然資源採取から材料生産まで(C to G)の誘発量をXprとし,YXprが次の製品システムでの誘発量となる。これらの誘発量を用いて,1単位のリサイクルによる環境負荷回避効果LCIavoidは,式(6)で表される。ここで,先述と同様に金属スクラップにおいては,Xwは無視でき式(7)と表される。このように,分割手法にて回避効果とみなせると先述した項が導かれた。

  
LCIavoid=Xw+Y(XprXre)(6)
  
LCIavoidmetal=Y(XprXre)(7)

この回避効果を用いたconsequentialアプローチに基づく手法は,回避効果手法(avoided burden approach)と呼ばれる。ここで評価にとって重要になるのは,この回避効果を二次資源供給側であるリサイクル前の製品システムと二次資源需要側であるリサイクル後の製品システムの間での配分方法である。リサイクルは,二次資源の供給と需要があって実施されるものであり,リサイクルを促進する際に,二次資源が発生物であるため供給に制約があることが考えられる。一方,供給はできるものの,それを用いる需要が不足していることも考えられる。ここでは,前者のような状況を供給側の制約,後者を需要側の制約と考え,回避効果の配分手法において,リサイクル制約側の製品システムに回避効果を配分する7,8)。これにより,制約側の製品システムの意思決定がリサイクル量の増加に寄与し,それがシステム境界全体の環境負荷を小さくすることに繋がると考えられる。

カットオフ手法との違いとして簡単に説明するならば,一般に二次資源の利用に伴う環境負荷がゼロと評価されているのは,上述の回避効果のうちの天然資源の生産回避の効果を判断なしに二次資源利用側(需要側の製品システム)が,最終処分の回避効果を二次資源供給側(供給側の製品システム)が獲得していると考えることができる。金属の場合は,最終処分にかかる環境負荷Xwを無視しているので,カットオフ手法において回避効果のすべてを二次資源利用側に配分しているようにも見える。回避効果を二次資源利用側への配分する手法は,既存研究7)の命名に従うとwaste mining(WM)法(waste mining method)を選択したこととなる。この命名に従って,回避効果を全て二次資源の供給側に配分する手法をend-of-life recycling(EoLR)法(end-of-life recycling method),またそのどちらにも決まらない場合に供給側と需要側に半分ずつ配分する手法を50:50法(50:50 method)と呼ぶ。

手法選択については後述するが,鉄鋼材ではEoLR法が採用されており,Fig.3に示すリサイクルに関わるフロー量を想定すると,生産時のスクラップ比率がS,使用済み製品からのスクラップの回収率がRRであり,実プロセスでの環境負荷誘発量Xに,スクラップ消費に伴う負荷SLCIavoidを足し,スクラップ回収に伴う回避RRLCIavoidを引いて,式(8)が成り立つ。これに,式(7)を代入すると式(5)と同じ式となり,鉄鋼業にて規格化された手法31,32)における表現と同じとなる。なお,Fig.3では,前の製品ライフサイクルから当該製品ライフサイクルへのリサイクルも,当該製品ライフサイクルから次の製品ライフサイクルへのリサイクルも,同じリサイクルであり同じ配分係数が適用されると仮定した。

  
XLCI=X+SLCIavoidmetalRRLCIavoidmetal=X(RRS)Y(XprXre)(8)
Fig. 3.

Schematic diagram of three product life cycles: the previous product life cycle from which secondary raw material is supplied for the current product, the current product life cycle, and the next product life cycle by which secondary raw materials recovered from the current product is demanded. The allocation factor for the avoided burden is shown as the parameter A. The recycling flows are supposed to be the same recycling scheme.

4・4 リサイクル効果の一般式と配分係数

ここまで紹介してきた手法論は,次の項でその評価における実装の事例を紹介するものの,まだ多くの適用例がないのが実態である。そこで,著者らは,複数の材料に対してリサイクル効果を考慮した評価を実施した33)。理論的には先述の記載で十分であるものの,算定実施に際しては,二次資源が天然資源に代替するプロセス(point of substitution)の明確化が1つの課題として挙がった。それに伴い,材料メーカからの出荷後,最終製品組立に至るまでの材料加工時の歩留まりMを考慮することが,いままでの定式では不足していたものと考えられた。上で紹介した各手法に対する著者ら33)の提案する評価式を式(9)から(12)に記す。

  
カットオフ手法: XLCIcut=(1SY)Xpr+SYXre+M(1R)Xw(9)

回避効果手法

  
WM法: XLCIWM=Xpr+MXwS[Y(XprXre)+Xw](10)
  
EOLR法: XLCIEoLR=Xpr+MXwMR[Y(XprXre)+Xw](11)
  
50-50法: XLCI50=Xpr+MXw12S[Y(XprXre)+Xw]12MR[Y(XprXre)+Xw](12)

M: 材料加工時の歩留まり

さて,ここで配分係数の選択のために,供給側と需要側のどちらが制約となっているか判断するための方法論が必要となる。従来の提案されてきた方法は,二次資源価格や価格弾力性を用いた方法であった7,8,34)。しかしながら,価格に基づく方法では,評価時点によって判断がにわかに変化することがあり得る。そこで,評価時点による変化の小さな配分手法の選択のための方法論の開発が期待される。著者らの研究グループでは,現在,技術的な情報に基づいた手法を開発中である35)。1つには,MFAによってリサイクルにかかわる物質フローが明確になるとともに,二次資源の供給ポテンシャルならびに需要量を推計することができるため36,37),それらのフロー量を参照する方法である。リサイクルに関わるフローの実態の把握により,リサイクルに制約を生じていることが供給側と需要側の要因であるか判明することがある。それで判明しない場合は,さらには,二次資源に含まれる可能性のある不純物成分により,材料特性に問題が生じるかどうかなどの,材料の化学組成と材料特性との関係38)に基づき,それを供給側あるいは需要側で回避することが技術的に可能かどうかにより配分係数を選択することを検討している。

4・5 リサイクル効果の実装事例

ここまで記してきたように,ようやくリサイクル効果の評価手法の整理が進んできているものの,リサイクル効果の配分の問題に課題が残っている。しかしながら,一部の規格,評価ツール,評価プログラムにおいては,既にリサイクル効果が考慮されているため,本項において紹介する。

1つは,前項まででも紹介した鉄鋼材を対象とした規格31,32)である。日本においては,この規格に則って,鉄鋼材のリサイクル効果を考慮したインベントリデータが整備されており,日本鉄鋼連盟から入手可能である39)

世界鉄鋼協会(world steel association)の自動車分科会であるWorld Auto Steel(WAS)は,自動車の構造用材料に用いる材料によるライフサイクルでのGHG排出量を比較評価するモデル(UCSB Energy & GHG Model)を開発し,そのモデルに基づく算定ツールを配布している40)。本モデルの第4版では,リサイクル効果は,分割手法に基づくmulti step recycling法と回避効果手法に基づくconsequential system expansion法が選択できると説明されていたものが,第5版では,分割手法に基づく評価はその前提に不備がある可能性があるため,回避効果手法に基づく評価に限っている41)。先述したように,分割手法で考慮すべき材料のライフサイクルは長期にわたるため,その不確実性を危惧したものと考えられる。

欧州においては,PEFのPCRを策定するためのガイダンスとしてProduct Environmental Footprint Category Rules Guidance(PEFCR)を発行している42)。そのガイダンスの中でも,リサイクルによる多機能性(multi-functionality)を扱うためのモデルを採用しており,その算定式として循環フットプリント式(circular footprint formula,CFF),ならびに,PCRごとに配分係数を提示している12,42)。CFFは,材料リサイクル,熱回収,処分の3つから成るが,ここでは,材料リサイクルに関してのみ式(13)に紹介する。

  
XLCI=(1R1)Ev+R1(AErec+(1A)EvQSinQp)+(1A)R2(ErecEoLEv*QSoutQp)(13)

R1:製品に投入された材料のうち,前のシステムからリサイクルされた材料の割合

R2:製品を構成する材料のうち,次のシステムにリサイクル(リユース)される材料の割合

Ev:(機能単位あたりの)資源採掘からの環境負荷

Erec:(機能単位あたりの)二次材料のリサイクルにかかる環境負荷(回収,選別,運搬を含む)

Ev*:二次材料によって代替されると考えられる(機能単位あたりの)資源採掘からの環境負荷

ErecEoL:(機能単位あたりの)使用済み製品処理におけるリサイクルにかかる環境負荷(回収,選別,運搬を含む)

QSin:利用した二次材料の品位

QSout:回収した二次材料の品位

Qp:一次材料の品位

A:負荷と回避効果に対する二次材料の供給側と需要側の間での配分係数

最初の項がattributionalアプローチでのC to Gの生産の環境負荷であり,次の項が二次材料を用いたことによる負荷あるいは回避効果,最後の項が二次材料を回収することによる負荷あるいは回避効果である。このように,CFFでは回避効果手法を採用しており,配分係数をAファクター(A factor)としている。先の手法との対応では,Aが1であればWM法,Aが0.5であれば50:50法,Aが0であればEoLR法となる。ここで,PEFCRでは,CFFで用いるAファクターは0.2以上,0.8以下が妥当であるとし,Aには0.2,0.5,0.8のどれかが設定されている12,42)

PEFでは,先述のようにPCRが作成されおり,Aファクターは,PCRごとに当該製品に用いられる各材料に対して定めされることとなる。ただし,材料ごとに二次材料の市場は同じであることから,多くの場合製品種に関わらず材料ごとに同じAファクターが設定されている。金属材料にはほとんどA=0.2が設定されている。これは,鉄鋼材のリサイクル効果に関する規格31,32)がEoLR法を採用していることに類するものの,ガイドラインにおける理念としてAを0.2以上としたことから0ではなく0.2と設定されていると考えられる。

5. 目的に応じたLCA

5・1 材料開発のためのLCA

LCAのインベントリ分析では,機能単位あたりでインベントリデータがデータベースとして整備されている。材料において,その機能単位は重量がほとんどである。これは,製品の評価に端を発するLCAの歴史によるものと考えられる。材料メーカと製品や部品の製造メーカとの取引において,材料の売買が重量あたりであり,製品の構成材料も重量基準で整備されている。そのため,材料メーカにおいて,高機能材料を開発し,それを製造するために追加的な資源やプロセスが必要になると,むしろ重量あたりの環境負荷は大きく評価される。材料は,そのほとんどの用途において,重量のみが要求される機能であることはなく,種々の材料特性が要求されている43)。要求特性が複数あることが多いため,単純に機能量基準での評価が困難であることは理解できるものの,高機能化によって材料生産プロセスの負荷が大きくなるという評価だけでなく,機能量あたりで評価すると材料生産プロセスも負荷削減になっていると主張できよう。環境主張のための評価基準としての複数の要求特性を統合した機能量の定量化手法が期待される。

製品LCAにおいては,先述の構成材料や購買した材料の重量を用いて評価することになり,やはり重量あたりの環境負荷のインベントリデータが用いられる。そのため,材料生産プロセスの負荷が大きくなることもあるものの,その材料機能を発現する製品の中で,その高機能化による貢献が評価に反映できることになる。開発した高機能材料は,省エネや輸送機器軽量化に寄与するなどによる製品使用段階での環境負荷削減効果の源泉である。そのため,材料開発の現場におけるLCAの目的の1つとしては,開発した高機能材料が貢献する製品ライフサイクルでの環境負荷削減効果の定量が考えられる。社会におけるカーボンニュートラルの達成に向けて,材料の高機能化は必須であると考えられる。材料開発による環境負荷削減効果の定量は,材料特性の開発目標の設定に寄与することや,開発プロジェクトの取捨選択の指標,さらには開発する企業の貢献としての対外的な主張につながる。材料の開発による効果は,当該開発がなかった場合に対しての削減効果であり,consequentialアプローチが望まれる。製品のGHG排出量の影響の比較に関する算定と報告(Estimating and Reporting the Comparative Emissions Impacts of Products)44)においても,特に対外的な主張には,consequentialアプローチを推奨しており,attributionalアプローチはconsequentialアプローチの代替であり,やむを得ない場面でのみ利用するとされている。

開発材料が,従来材料と同じ用途で同じ機能を発現し,その機能が向上した場合には,その効果の定量は比較的容易であると考えられる。ここでは,比較すべき従来材料の設定が重要であり,十分な論拠を持つことが求められるものの,それ以外の評価においては従来材料を用いた場合との差分で定量可能である。しかしながら,材料の高機能化とともに,最終製品においてモデルチェンジがおこなわれるなど,必ずしも従来材料と開発材料を単純比較できない場合も考えられる。つまり,開発材料のほかの技術要素の寄与もあり省エネに貢献した場合では,省エネによる環境負荷削減効果のうちの一部が開発材料の寄与分であり,その寄与率の設定が困難となる。いまのところ,寄与率の科学的な決定方法は提案されてきていない。

また,開発材料によって,現在のシステムから大きな変化が起こりうるような場合20),その変化したあとのシステムを想定し評価のためのデータを整備することが困難になることがある45)。特に,小規模に生産される新材料を対象に,将来の大規模生産を想定することは難しい。新たに社会実装される材料種では,その生産プロセスに限らず,部品への加工プロセス,さらには端材や回収材料のリサイクルシステムやリサイクル技術が未整備であることがある。そのため,新興技術を対象とした評価においては,(1)技術の比較可能性,(2)データの可用性と品質,(3)スケールアップの課題,(4)評価結果の不確実性が大きな課題として指摘されている46)。しかしながら,そのニーズから,プロスペクティブライフサイクルアセスメント(Prospective Life Cycle Assessment)というLCA手法が提案されている47)

さて,ISO-LCAには,比較主張(comparative assertion)に対して厳しい制約が課せられている。先述の従来材料との比較,あるいは従来システムとの比較によって削減効果が主張されるため,場合によっては比較主張にあたると考えられる。比較主張は,ISO1,48)において「ある製品と同一の機能をもつ競合の製品に対する優越性又は同等性に関する環境主張」と定義されている。そのため,市場での競合材料や競合製品との比較ではなく,開発前の自社の従来材料との比較であれば,比較主張にはあたらないと考えられる49)。特に,開発による「効果」を評価するためには,その比較から得られる差分を定量することが目的であり,不必要に比較を恐れる必要はないと言えよう。ただ,常に気を付けて比較対象を選定しなければならないことは留意が必要である。特に温室効果ガス排出量に関する削減貢献量評価に対する産業のニーズは高く,削減貢献量評価の手法や削減効果量の使い方については,著者らの解説記事50)に詳しい。

5・2 材料間比較のためのLCA

部品や最終製品の設計において,構成材料を選択するために,LCAにより複数の異なる候補材料を用いた場合のライフサイクルでの環境負荷を比較することが考えられる。例えば,自動車の軽量化を目的とした構造材料として,ハイテン,アルミニウム合金,マグネシウム合金,CFRPのどれを選択するのがライフサイクルでの環境負荷がより小さくなるのか知りたいという疑問である。ここでは,設計者が実施するのであれば,前節のように機能に関しての議論は回避でき,各材料を想定した設計において,それぞれの材料の必要量が同定できると考えられる。ただし,ここでも同様に,材料開発者が評価を実施する場合は,従来材料に対して,開発した新材料でどれほど軽量化できるか,その材料機能の面から考慮する必要がある。

この材料間比較の評価においては,各候補材料の比較をするため,前節と同様にconsequentialアプローチが望ましい。特に材料の比較であるため,そのリサイクル性の違いによる回避効果の影響が大きいと考えられる。先に例として挙げた自動車の軽量化は衆目のトピックでもあり,材料間比較の論文が過去に多く発表されている33)。それらのLCAにおけるリサイクル効果の扱い方をTable 1に整理した。比較的以前の報告ではカットオフ手法が多く,近年のものでは回避効果手法が多く採用されている傾向がわかる。分割手法を用いているものはなかった。これは,自動車に使用された材料のスクラップが回収された前の製品や,使用済みとなったあとに回収されるスクラップの後の製品を同定することが困難であるためであると考えられる。また,回避効果手法における配分手法として,すべてEoLR法が採用されており,WM法や50:50法は見られなかった。これら文献で評価対象とされていた材料は,鉄鋼材,アルミニウム合金が多かったものの金属材料に限らず,CFRPやGFRPも評価対象とされていたものの議論なしにEoLR法が採用されていた。4・4で記したように,理論的には,比較評価において対象材料に同じ配分係数を与えるのではなく,材料ごとに配分係数は決定されるべきものである。

Table 1. Summary of previous studies on light-weighting vehicles classified by selected approaches and allocation methods for the recycling effects.
ApproachesArticlesArticles
Allocation methods(only on metals)(including non-metallic materials)
Cut-off approachRefs. 51-53Ref. 54
Partitioning approachNoneNone
Avoided
burden
approach
Waste mining (WM) methodNoneNone
50:50 methodNoneNone
End-of-life recycling (EoLR) methodRefs. 55-58Refs. 59-62

著者らは,電気自動車の構造材料に用いられる従来鋼材を超ハイテンあるいはアルミニウム合金に代替することで軽量化するケースを想定し,鉄鋼材とアルミニウム合金の回避効果手法の配分方法の選択により軽量化による効果がどのように変わるか検証した。前提条件の詳細は文献33)に詳しいが,その結果をFig.4に示す。どちらの配分係数の場合に対しても従来鋼材自動車に対してライフサイクルでの温室効果ガス排出量の削減効果は見られたものの,その2つの材料の比較においては,選択する配分係数によって,削減効果の大きさが2つの材料間で反対になることがわかる。つまり,リサイクル効果の配分係数の選択によって,実際に意思決定の結果が変わることがあると言える。配分係数の選択は,いまだにその方法が未整備でることも理由と考えられるが,比較の結果に与える影響を考えると,議論なしに配分係数を選択すべきではないと考えられた。

Fig. 4.

Change of greenhouse gasses (GHG) emissions through the lifecycle of a battery electric vehicle (BEV) when 1 kg of mild steel is substituted by advanced high tensile strength steel (AHSS) or aluminum alloy in different two allocation methods, i.e., waste mining (WM) method and end-of-life recycling (EoLR) method.

6. おわりに

本稿では,材料の環境影響評価を目的としたLCAについて,その考え方ならびに手法論を解説した。はじめに,その理解に必要なLCAの材料評価に限らない知識として,attributional LCAとconsequential LCAの違いを解説した。その違いに立脚し,特に,材料リサイクルに対するモデリングについて詳述した。その中で,現在ではconsequentialアプローチに基づいた回避効果手法が一般的に用いられるようになってきたものの,リサイクル効果の配分係数の決定において,依然として共通した決定手法がなく,議論が続いていることを示した。最後に,材料分野でLCAを用いる目的として大きく2つ考えられたため,それぞれの目的に応じた評価の手法ならびに留意点を解説した。特に材料間比較において,リサイクル効果の影響が大きいため,配分係数を決定する共通手法の開発が期待される。

謝辞

本稿の内容は,日本鉄鋼協会サステナブルシステム部会(当時:環境・エネルギー・社会工学部会)研究会I「革新的LCAによる鉄鋼材料の社会的価値の見える化」主査:醍醐市朗(2017.3-2020.2)の成果,国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の成果,ならびに,日本鉄鋼連盟鋼構造研究・教育助成事業として助成を受けた成果を含んでいます。

文献
 
© 2022 The Iron and Steel Institute of Japan

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