Tetsu-to-Hagane
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ISSN-L : 0021-1575
Special Issue on Friction Welding Technologies for Steel
Inhomogeneity of Microstructure along the Thickness Direction in Stir Zone of Friction Stir Welded Duplex Stainless Steel
Takayuki Yamashita Kohsaku UshiodaHidetoshi Fujii
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JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2022 Volume 108 Issue 12 Pages 966-978

Details
Abstract

Inhomogeneity in microstructures along the thickness direction in the stir zone of a duplex stainless steel (SUS329J4L) welded at rotational speeds of 275 rpm, 400 rpm, and 800 rpm were investigated using the electron back scattered diffraction method. The changes in volume fractions and average grain sizes of ferrite and austenite along the thickness direction may reflect the temperature gradient along the thickness direction. However, near the top surface, significant grain refinement occurred presumably due to the introduction of the additional strain by the shoulder. The KAM values in the stir zone exhibited a higher value in austenite than in ferrite through all the thickness direction, which is inferred to be related to the difference in dynamic recrystallization behavior governed by stacking fault energy; i.e., lower in the austenite phase than in ferrite phase. The layer thickness per unit length of the layered structure became smaller than that of base metal as the rotational speed of FSW was reduced to 275 rpm, which implies that new grains nucleate during FSW. Furthermore, some ferrite grains nucleated at austenite/austenite grain boundaries were confirmed to satisfy the Kurdjumov-Sachs orientation relationship. FSW is assumed to promote the nucleation of new grains with different phases probably owing to the stirring effect of elements by FSW. In a duplex structure formed in the stir zone of FSW, a linear relationship between the ferrite and austenite grain sizes was found to hold irrespective of rotational speeds.

1. 緒言

摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding: FSW)は,ツールと呼ばれる工具を用いて摩擦や加工発熱による入熱と攪拌による塑性流動で材料を固相状態で接合する技術である1)。このとき,攪拌された領域(攪拌部)に形成される微細組織は動的再結晶により非常に微細な結晶粒から構成される24)。この微細組織は強加工と熱処理を受けたものと捉えることもできるため,攪拌部に形成される微細組織の形成機構を調査することは材料のさらなるポテンシャルを引き出す上で重要な知見となる。FSWでは,接合方向に対してツール回転方向が同一となる領域(Advancing Side: AS)と逆となる領域(Retreating Side: RS)があることから,接合方向に垂直な継手断面から見た微細組織は接合線を挟んで左右非対称な不均一なものとなる。そのため,FSWの継手断面の微細組織の評価は攪拌部の中心に加えてAS,RSに対してもなされていることが多い46)。加えて,板厚方向ではツールのショルダによる攪拌の影響を受けた領域とツールのプローブのみで攪拌された領域が存在するとともに,熱源であるツールに近い試料表面と試料裏面では温度差が生じる。そのため,板厚方向に微細組織は不均一となるが,板幅方向と比較して研究例は少ない。

典型的な二相合金である二相ステンレス鋼は,BCC構造のフェライト(α)とFCC構造のオーステナイト(γ)から成り,機械的特性や耐食性に優れる鋼である。この二相ステンレス鋼の種々の特性には各構成相の体積率や強度が重要となる7,8)。加えて,二相ステンレス鋼の機械的特性には微細組織の分散状態が影響する。一般的には層状構造を呈するものを調和組織(コアシェル構造)とすると強度を大幅に向上させられることが報告されている9,10)。二相ステンレス鋼に対するFSWでは,攪拌部において母材と同程度のγ量が得られ,高強度な接合部が得られることが知られており11),FSWは種々の特性を劣化させずに接合できる手法として期待されている。また,二相ステンレス鋼は結晶構造の異なる二相が含まれていることで,その積層欠陥エネルギーの違いから相ごとに熱間での復旧過程が異なり,攪拌部では複雑な微細組織が形成される。そのため,接合部の機械的特性を支配する微細組織を制御する上で重要となる攪拌部やHAZに形成される微細組織の形成挙動1217),集合組織1416),攪拌部や継手の機械的特性1720),不純物相の形成挙動21,22)など様々な報告がなされている。いずれの研究においても,二相ステンレス鋼の攪拌部に形成される結晶粒は動的再結晶により数μm程度の非常に微細な結晶粒となることが述べられている。動的再結晶により微細組織が形成されているのであれば,板厚方向に沿った温度やひずみ速度の違いにより,その微細組織は板厚方向に沿って不均一であると推察される。二相ステンレス鋼の板厚方向に沿った微細組織の不均一性についてはEmamiら16)とCaoら17)が報告している。Emamiらは,攪拌部中心に対して上部,中心,下部の3ヶ所に対して電子線後方散乱回折(Electron Back Scattered Diffraction: EBSD)測定を行っている。その結果,上部の方が下部よりも各構成相の平均結晶粒径はわずかに粗大であること,上部ではプローブだけでなくショルダによるひずみの導入があるために中心や下部とは集合組織が異なることを指摘している。しかし,機械的特性に影響する構成相の体積率に関しては議論していない。Caoらは,攪拌部を板厚方向に沿って4つの領域にわけて,微細組織とその機械的特性の調査を行っている。板厚方向に沿った構成相の結晶粒径は,攪拌部の下部から試料表面側にかけて粗大となっていくが,試料表面近傍では,ショルダによる加工に起因した微細化が認められている。また,試料表面側では著しいγ量の増大が生じていること,それ以外の領域では母材よりもγ量は減少すること,そして,板厚方向に沿って微細組織が不均一であるために,試料表面側と試料裏面側では機械的特性が異なることを報告している。しかし,FSWによる攪拌効果により層状組織の形態の変化や動的再結晶の後に生じる結晶粒成長の挙動の評価はなされていない。二相ステンレス鋼のFSWにより形成される微細組織の制御を目指す上で,各構成相の結晶粒径や形態を支配する因子は不明瞭なままである。加えて,FSW中に生じる可能性のある新粒の形成に相変態が関わっているか否かについても検討されていない。

そこで本研究では,市販の二相ステンレス鋼に対して種々の回転数でFSWを行った。得られた継手断面の微細組織を板厚方向に沿って観察することで,攪拌部に形成された微細組織のサイズや形態の構成相間における違いおよび板厚方向に沿った不均一性について検討を行い,二相ステンレス鋼の攪拌部に形成される微細組織の形成機構に関する知見を得ることを目的とした。

2. 実験方法

供試鋼は市販の二相ステンレス鋼JIS SUS329J4L(Fe-25Cr-6.5Ni-3.0Mo-0.02N(in mass%))である。被接合材として厚さ2 mm,長さ200 mm,幅50 mmの板材を用いて長手方向が圧延方向(Rolling direction: RD)に平行となるようにした。FSWのツールには,プローブ径4 mm,プローブ長1.8 mm,ショルダ径12 mmのWC超硬合金製のツールを採用し,接合方向がRDに平行となるように2枚の板を突き合わせたFSWを実施した。接合条件は,接合速度は150 mm/minで一定,回転数は275 rpm,400 rpm,800 rpmの3種類,ツールの前進角は3°,ツールの押し込み荷重を15 kNに保った荷重制御とした。裏板としてSiN製の板材を使用した。以降,各回転数のFSWで得られた試料をそれぞれ275 rpm材,400 rpm材,800 rpm材と呼称する。なお,本研究ではFSW中の温度測定は実施していないが,WC超硬合金製のツールを用いて2 mm厚の二相ステンレス鋼に対してFSWを行ったEmamiらの報告では,接合中の最高到達温度は試料裏面側において回転数800 rpm,接合速度50 mm/minの条件で1273 K程度であり,接合速度を150 mm/minとすると973 K程度まで低下すること,回転数400 rpm,接合速度50 mm/minの場合では873 K程度であることが示されている15)。そのため,本研究における接合中の最高到達温度は1273 K以下であると予測される。

FSW後の継手から接合方向に垂直な断面(WD面)の微細組織の観察に用いる試料を,ワイヤカット放電加工機により採取した。得られた試験片の接合方向に垂直な断面を♯4000までの耐水研磨紙と粒径1 μmのダイヤモンドペーストを用いて研磨した。その後,コロイダルシリカを用いて表面を鏡面に仕上げた。研磨した試料に対し,EBSD測定およびエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy: EDS)を実施した。EBSD測定は,母材では板厚方向100 μm×板幅方向100 μmの領域に対して実施した。FSW後の試料に対するEBSD測定は,攪拌部の中心付近で試料表面から板厚方向に沿って試料裏面側までの領域に対して実施した。板厚方向に沿ったEBSD測定から取得した結果を,板厚方向100 μm×板幅方向35 μmとなるようにトリミングすることで各解析点とした。各領域に対するEBSD測定はStep sizeは0.15 μmで行い,Confidence Index(CI)値が0.05以下の測定点はノイズとして除外した。また,攪拌部内の特定の領域に対しては,板厚方向30 μm×板幅方向30 μmとなる範囲に対してStep sizeを0.05 μmとしてより詳細な測定も実施した。EDS測定は母材とFSW後の試料攪拌部におけるEBSD測定を実施した領域を含む視野に対して実施した。平均結晶粒径は方位差が15度以上の高角粒界から構成される結晶粒を対象として算出した。なお,γ粒内で認められた双晶境界も15度以上の高角粒界として取り扱った。

3. 結果と考察

3・1 初期組織

Fig.1(a)に母材の相マップの一例を示す。母材は圧延に起因したRDと板幅方向(Transverse direction: TD)に沿った板面法線方向(Normal direction: ND)に垂直な層状組織を有していた。αおよびγの体積率はそれぞれ57.1%と42.9%であった。また,αおよびγの平均結晶粒径はそれぞれ5.4 μmと2.3 μmであった。両相ともに典型的な圧延集合組織を有していた。

Fig. 1.

EBSD and EDS measurements of base metal: (a) EBSD phase map of base metal and elemental maps of (b) Fe, (c) Cr, (d) Mo, and (e) Ni. Dotted square regions represent the EBSD measurement region. (Online version in color.)

Fig.1(b)~1(e)Fig.1(a)の相マップに対応する領域を含むEDS測定により得られた母材の主要な添加元素の濃度マップを示す。なお,Fig.1(b)~1(e)の各図中の黒点線で囲んだ領域がFig.1(a)に対応する領域である。Fig.1(b)に示すFeは視野中に均一に分布していたが,Fig.1(c), 1(d), 1(e)にそれぞれ示すCr,Ni,Moは濃度分布が不均一であった。Fig.1(a)のEBSDの相マップと比較すると,α安定化元素であるCrおよびMoはαが存在する領域で濃度が高く,γ安定化元素であるNiはγが存在する領域で濃度が高くなっていることが認められた。

3・2 FSW後の微細組織の接合条件および板厚方向での変化

Fig.2に各回転数のFSWで得られた継手攪拌部中央の代表的な組織として,試料表面から100 μm, 500 μmおよび1200 μmの領域近傍で得られた相マップを示す。いずれの視野においてもTDに沿った層状組織が確認された。母材におけるα粒とγ粒はFig.1(a)に示したようにTDに伸張した形態であったが,FSW後では比較的等軸な形態となっていた。Fig.2(d)内に青矢印で示したα/α界面上に生成したγα/α)粒,または白矢印で示したγ/γ界面上に生成したαγ/γ)粒が各回転数でFSWを施した後のいずれの視野でも見受けられた。TDから観察される結晶方位はいずれの回転数のものにおいても板厚方向の観察位置によらず両相ともに顕著な方位の集積は見受けられなかった。Fig.2(a)に示した275 rpm材の表面から500 μmの領域における主要元素の分布をFig.3に示す。FSW後でも各元素は層状組織に対応するように分布しており,CrとMoはαが存在する領域に,Niはγが存在する領域にそれぞれ濃化していた。FSWには塑性流動に伴う攪拌効果が期待されるが,ツールの周方向に沿った塑性流動が主に生じ,板厚方向に沿った塑性流動は少ないものと考えられる。そのため,一部のγα/α)粒やαγ/γ)粒の存在は認められたものの,多くのα粒はαが存在する領域のα/α界面もしくはα/γ界面から,γ粒はγが存在する領域のγ/γ界面もしくはα/γ界面においてそれぞれ生成したものと示唆される。

Fig. 2.

EBSD phase maps and inverse pole figure maps at a distance from top-surface of 100 μm, 500 μm, and 1200 μm of the joints welded at different rotational speeds of (a) 275 rpm, (b) 400 rpm, and (c) 800 rpm. (d) Magnified Phase map and IPF maps of α and γ of the locations are indicated as a dotted square in (b). (Online version in color.)

Fig. 3.

EBSD and EDS measurements at a distance of 500 μm from the top-surface of the duplex stainless steel joints welded at a rotational speed of 275 rpm: (a) EBSD phase map of base metal and elemental maps of (b) Fe, (c) Cr, (d) Mo, and (e) Ni. Dotted square regions represent the EBSD measurement region. (Online version in color.)

Fig.4Fig.2に示した解析点から得られたFSW前後のα/α粒界およびγ/γ粒界の方位差の頻度分布を示す。なお,各図中の点線はランダムな方位の立方晶多結晶体における粒界の方位差分布(Mackenzie distribution)を示している23)。母材では,αは方位差が5度以下の低角粒界の割合が,γは焼鈍双晶に起因すると考えられる方位差が約60度の高角粒界がそれぞれ多かった。Fig.4(a)に示す275 rpm材では,αの方位差が5度程度の低角粒界とγの方位差が約60度の高角粒界がそれぞれ低下するとともに,γでは方位差が5度程度の低角粒界が増大していた。また,FSW後では両相ともにランダムな粒界の方位差分布へと近づいていた。これはFSWにより動的再結晶が生じ,ランダムな方位の新粒が形成されたことに起因すると考えられる。また,板厚方向に沿った各位置における粒界の方位差分布を比較すると,両相ともに試料表面の方が,方位差が5度程度の低角粒界がわずかに多い傾向にあった。FSWにより動的再結晶が表面側でより頻繁に生じたことでランダムな方位分布へと変化したと推察される。FSW後でランダムな粒界方位差の分布へと近づく傾向はFig.4(b)および4(c)に示した400 rpm材および800 rpm材でも同様であった。400 rpm材では,板厚方向に沿った位置による粒界方位差の分布には大きな差はない。800 rpm材では板厚方向に沿って表面から500 μm程度の位置でαの低角粒界が最も多く,γは60度程度の粒界の割合が試料裏面側ほど多くなっていた。これは,試料表面側と試料裏面側における温度や導入されたひずみ量の差異により生じた可能性が考えられる。

Fig. 4.

Misorientation angle distribution of ferrite and austenite in the stir zone at different positions from the top surface shown in Fig. 2: rotational speeds of (a) 275 rpm, (b) 400 rpm, and (c) 800 rpm. (Online version in color.)

次に板厚方向に沿った各構成相の体積率と平均結晶粒径の変化についてより詳細に調査を行った結果について述べる。

3・2・1 板厚方向に沿った各構成相の体積率の変化

Fig.5に各回転数のFSWで得られた継手攪拌部に対して,試料表面側から板厚方向に沿った距離に対するαおよびγの体積率の変化を示す。各図中の一点鎖線は母材のα量とγ量を表している。また,各図中の点線で表した直線は,体積率の変化の傾向を把握するために得た最小二乗法で求めた近似直線である。Fig.5(a)に示す275 rpm材では試料最表面近傍で最もα量が多かった。試料表面側から試料裏面側にかけて,α量が減少していき,γ量が増大する傾向が見られた。Fig.5(b)に示す400 rpm材では,試料表面側でα量が高く,試料裏面側にかけてγ量は増大していたが,その変化量は275 rpm材と同様に小さい。Fig.5(c)に示す800 rpm材では,試料最表面側や試料裏面側の一部の領域でγ量の増大が認められたが,試料表面側でα量が高く,試料裏面側にかけてγ量が増大する傾向は他の回転数の結果と同様であった。本実験で用いた二相ステンレス鋼は,Fe-Cr-Ni擬二元系状態図24)から,常温付近から1300 K付近の温度範囲ではα+γの二相から成り,それ以上の高温ではα単相である。なお,800 K~1073 K程度の温度域ではα相とγ相に加えてσ相も存在する。FSWを施すことでσ相の生成が促進されること21)や,接合速度が非常に遅い場合(例えば25 mm/min)にはFSW中でもσ相が生成すること25)が確認されているが,本研究の接合速度(150 mm/min)ではFSW中でのσ相の析出は報告されておらず,本研究の組織観察でもσ相は認められなかった。約1073 Kからα単相域となる1300 K付近までの温度域では,高温ほどα分率は増加する。α単相域まで昇温されていた場合,γは冷却過程で析出することとなるため,その体積率は母材よりも大きく低下する可能性がある。加えて,一般的な優先核生成サイトであるα/α粒界上で析出すると予想されることから,Fig.2に示すような層状組織ではなくなると推察される。そのため,本研究におけるFSWの最高到達温度の範囲はいずれの回転数においてもα単相域まで昇温されることはなく二相域内であったと示唆される。二相域の約1073 K以上の温度では,高温ほどα分率が多くなる。試料表面側には熱源であるショルダがあるため,試料表面側の方が試料裏面側よりも温度は高いと示唆される。そのため,板厚方向に沿った各相の体積率の違いは,板厚方向に沿った温度履歴の違いを反映しているものと考えられる。加えて,試料表面側では,ショルダによる加工も付与されるため,試料裏面側と比較して導入されるひずみ量は多くなると予想される。二相域でγに大ひずみの加工を加えると動的α変態が生じ,α分率が増大することが知られている26,27)。本研究において,板厚方向に沿った体積率が板厚方向の位置によらずαでは母材よりも高く,γでは母材よりも低くなる傾向を示した理由は,板厚方向に沿った温度履歴の違いと二相域における大ひずみ加工に伴う動的α変態が関わっている可能性が考えられる。

Fig. 5.

Changes in volume fraction of ferrite and austenite in the stir zone of the duplex stainless steel joints welded at rotational speeds of (a) 275 rpm, (b) 400 rpm, and (c) 800 rpm as a function of distance from top-surface along the thickness direction. Dotted-dashed lines indicate the grain sizes of base metal. (Online version in color.)

800 rpm材では試験片表面近傍で著しいγ量の増大が見受けられた。Fig.6に800 rpm材の試験片表面から100 μm程度の領域における相マップと元素分布を示す。この領域では,相マップ上でCI値が0.05以下となる領域(図中黒色の領域)が多数確認された(Fig.6(a))。Fig.6(b)より,この領域にFeは存在せず,Fig.6(c),6(d),6(f)に示すようにCr,Mo,Wが検出された。Wはツールの主成分であることから,ツールの摩耗によりその構成元素が試料側へと取り込まれたものと示唆される。高温ではツールの摩耗が生じること28)やそのツールの構成成分が試料内へ取り込まれることは既に報告がなされており,組織制御プロセスとしての検討もなされている29)。また,Fig.6(e)に示すようにγの領域ではNiの濃度が高くなっていた。Wが検出された領域以外では,このようなγ量の著しい増大は認められなかったことから,ツールのバインダとして使用されていたと考えられるNiが試料へと取り込まれたことで,γ量の増大をもたらしたと考えられる。ツールの構成元素が試料側へと取り込まれなかった場合では,275 rpm材や400 rpm材と同様に試料表面側の方が試料裏面側と比較してγ量が少なく,α量が多くなると思われる。

Fig. 6.

EBDS analysis of the duplex stainless steel joints welded at a rotational speed of 800 rpm: (a) EBSD phase map overlapped secondary electron image, and elemental distributions of (b) Fe, (c) Cr, (d) Mo, (e) Ni, and (f) W. (Online version in color.)

板厚方向に沿って体積率の変化を詳細に検討した例はなく,試料表面側から試料裏面側にかけて体積率がどのように変化しているかは明確でなかった。本研究より,おおよそ直線的に試料表面側から試料裏面側にかけてαは減少し,γは増大していくこと,その変化はわずかであることが明確化された。

3・2・2 板厚方向に沿った結晶粒径の変化

Fig.7に275 rpm材,400 rpm材および800 rpm材の攪拌部の板厚方向に沿った試料表面からの距離に対するαおよびγの平均結晶粒径の変化を示す。各図中の一点鎖線は母材における各相の平均結晶粒径を表している。Fig.7(a)に示す275 rpm材では,母材と比較して両相ともに非常に微細となっていた。試料表面側に最も近い解析点では,αおよびγは最も微細となっており,その平均結晶粒径は1.14 μmと0.47 μmであった。両相の粒径が最も大きくなった解析点は,試料表面から570 μmの位置であり,αとγの平均結晶粒径はそれぞれ2.03 μmと0.79 μmであった。板厚方向に沿ったいずれの位置でもαの方がγよりも大きな結晶粒径を示した。Fig.7(b)に示す400 rpm材では,275 rpm材と同様に試料表面に近い解析点で両相はともに最も微細となり,試料表面から480 μmの解析点で最も大きくなった。αとγの平均結晶粒径は,試料表面に最も近い点で2.42 μmと0.79 μmで,試料表面から480 μmの位置で4.31 μmと1.23 μmであった。 板厚方向に沿ったいずれの位置においてもαはγよりも大きな粒径を有していた。また,両相の粒径は試料表面から500 μm付近までは増大し,500 μmから試料裏面側にかけては減少していた。275 rpm材と比較すると,両相の平均結晶粒径は275 rpm材よりも大きな値を示すが,αの方がγよりも平均結晶粒径は増大していた。Fig.7(c)に示す800 rpm材では,両相ともに他の試験条件のものよりも大きくなった。両相は他の回転数のものと同様に試料表面近傍で最も微細となり,表面から500 μm付近で最大となる傾向を示した。αとγの平均結晶粒径は,試料表面に最も近い点でそれぞれ2.73 μmと1.50 μmで,試料表面から450 μmの位置ではそれぞれ6.28 μmと1.95 μmであった。試料表面近傍を除くとα粒径は母材と同程度まで粗大化していた。

Fig. 7.

Changes in grain sizes of ferrite and austenite in the stir zone of the duplex stainless steel joints welded at rotational speeds of (a) 275 rpm, (b) 400 rpm, and (c) 800 rpm as a function of distance from the top-surface along the thickness direction. Dotted-dashed lines indicate the grain sizes of base metal. (Online version in color.)

各試験条件の試料表面側における微細化は,試験条件によらず試料表面から500 μmの領域で生じており,試料表面から500 μm程度の領域にかけて次第に結晶粒径は増加していた。このことは,試料表面から500 μm程度までの領域ではショルダによる加工の影響で微細化が生じたことをと示唆しており,試料表面から離れるほどショルダによる加工の影響は小さくなったと考えられる。また,試料表面から500 μm程度の位置から試料裏面にかけて見られた両相の粒径の減少は,板厚方向に沿った温度履歴の違いを反映したものであると思われる。仮に,ショルダによる加工の影響がなく,板厚方向に沿った温度履歴の違いのみの影響であれば試料表面側が最も結晶粒径は大きくなると考えられる。そのため,試料表面から500 μm程度の領域は,ショルダによる加工の影響を受けなくなる境界であり,回転数によらず試料表面から500 μm程度の位置で各構成相の平均結晶粒径は極大値を示したものと推察される。

過去の板厚方向に沿った結晶粒径の変化に関する調査16,17)は板厚方向に沿っていくつかの領域に着目した測定から得られた結果を基として議論していたため,ショルダによる加工の影響や板厚方向に沿った結晶粒径が連続的であるか否かに関しては不明瞭であった。板厚方向に沿った結晶粒径の分布では,ショルダによる加工の影響と板厚方向に沿った温度履歴の違いが重要である。

3・3 FSWによる微細組織の形成について

Fig.8にαとγのKernel Average Misorientation(KAM)マップの一例として,回転数275 rpmで得られた継手断面の試料表面から500 μm近傍の領域から取得したものを示す。なお,図中の黒実線は高角粒界を表している。αではほぼ全ての粒内でKAM値は低い値を示した。図中に赤点線で囲んだ領域のように一部のα粒では低角粒界に対応した局所方位差が見受けられた。一方で,γ粒内の方位差はα粒と比較して顕著に高かった。二相ステンレス鋼を高温で加工した際に生じる動的再結晶挙動では,BCC構造であるαは積層欠陥エネルギーが高く,動的回復が支配的で連続動的再結晶を生じ,積層欠陥エネルギーが低いFCC構造のγは不連続動的再結晶を生じることが知られており30,31),FSWを施した場合でもαでは連続動的再結晶,γでは不連続動的再結晶が生じることが報告されている13,14,16,17)。本研究のFSW後における各相の平均KAM値がαで低く,γで高い値を示したことは積層欠陥エネルギーの違いによる動的再結晶挙動の差異に起因するものと示唆される。厳密な動的再結晶挙動の議論には,冷却中に生じる復旧過程や粒成長の影響を極力取り除いた評価を行う必要があり,今後の課題である。

Fig. 8.

Kernel average misorientation maps of (a) ferrite and (b) austenite at a distance from top-surface of 500 μm of the joints welded at 275 rpm. (Online version in color.)

Fig.9に各回転数のFSWで得られた継手の板厚方向に沿ったαとγの平均KAM値の変化を回転数ごとに示す。Fig.9(a)に示す275 rpm材では,γの平均KAM値は板厚方向に沿ったどの位置においてもαよりも高い値を示した。また,γの平均KAM値は板厚方向に沿った方向ではほぼ同程度の値を示していたが,αの平均KAM値は試料表面で最も高く,試料表面から試料裏面にかけてわずかに減少していた。Fig.9(b)の400 rpm材でもγの方がαよりも平均KAM値は大きな値を示したが,γの平均KAM値は275 rpm材よりも低くなっていた。一方で,αの平均KAM値は275 rpm材と同程度であった。両相ともに試料表面側で平均KAM値が高く,試料裏面にかけてその値は減少する傾向にあった。Fig.9(c)の800 rpm材では,他の回転数のものよりもγの平均KAM値はさらに低下していたが,板厚方向のいずれの位置でもαの平均KAM値より高い値を示した。αの平均KAM値は他の回転数よりもわずかに低いがほぼ同程度の値を示した。800 rpm材においても試料表面側の方が試料裏面側よりも平均KAM値は高い傾向にあった。動的再結晶は,試料表面でも試料裏面でも生じるが,試料表面ではショルダによる加工により導入されたひずみ量が大きく温度も高いため,より動的再結晶が生じやすいと推察される。しかし,動的再結晶ではひずみの導入と再結晶が同時に生じるために,導入されたひずみ量の大きな試料表面側の方がKAM値は高くなったものと考えられる。回転数の増大に伴うγの平均KAM値の低下は,回転数の大きなものほど接合温度が高いために,主に動的再結晶が進行したことに起因するものと思われる。

Fig. 9.

Changes in average KAM values of ferrite and austenite in the stir zone of the duplex stainless steel joints welded at rotational speeds of (a) 275 rpm, (b) 400 rpm, and (c) 800 rpm as a function of distance from top-surface along the thickness direction. (Online version in color.)

3・4 FSWによる層状組織の破壊

FSW前においてNDに垂直な層状組織を有していた二相ステンレス鋼は,FSW後の攪拌部においてもNDに垂直な層状組織を呈した。そこで,FSW前後における層数と層厚がどのように変化したかを検討する。層数(nii=α,γ)は板厚方向に沿ったEBSD測定の各解析点において,板厚方向に平行となるように直線を3本引き,その直線がαとγを通過した回数を数えることで,各直線上における層数niを求めた。各直線上における層厚(tii=α,γ)は,EBSD測定の各解析点の板厚方向に沿った長さ(100 μm),各相の体積率(fii=α,γ)および層数niを用いて以下の式から算出した。

  
ti=100×fini(i=α,γ)(1)

各直線において得られた層厚tiの平均値をEBSD測定の各解析点における各相の平均層厚とした。Fig.10に板厚方向に沿った試料表面からの距離に対するαおよびγの平均層厚の変化を示す。図中の一点鎖線は母材に対して板厚方向に沿ったEBSD測定を行い,19点の解析点から得られた平均層厚を表している。275 rpm材では,αとγはともに板厚方向のどの位置においても母材よりも平均層厚は小さい。平均層厚が母材以下であるということは,母材よりも単位長さあたりの層数が増加したことを意味する。Fig.2(a)の青矢印で示したようなγα/ααγ/γのような結晶粒の存在から,このような粒が生成したことで層数が増大したことが示唆される。275 rpm材よりもより高温であったと思われる400 rpm材では,γは母材よりも小さな平均層厚を示したが,αは母材と同程度の層厚であった。また,最も高温であったと示唆される800 rpm材では,αとγはともに母材よりも層厚は大きくなっていた。400 rpm材および800 rpm材においてもFig.2(b)と2(c)においてγα/ααγ/γが見受けられたことから,275 rpm材と同様に層数の増加は生じているが,温度が比較的高く動的回復および動的再結晶の促進やその後の結晶粒成長により平均層厚は減少したものと推察される。その一方で,Fig.3に示したように各相の安定化元素はFSW後でもαまたはγへとそれぞれ濃化しており,層状組織と対応するような元素分布となっていたことが確認できた。FSW中では基本的に板厚方向に沿った塑性流動は少なく,母材の層状組織を維持した状態で攪拌されたものと考えられる32)。そのため,275 rpm材で見られた層数の増加に寄与したγα/ααγ/γの形成は,(1)FSW中の塑性流動により局所的な攪拌効果が生じた,もしくは(2)相変態によりα/α界面もしくはγ/γ界面において異なる相が生成した可能性が挙げられる。Fig.11(a)に275 rpm材の表面から500 μm程度の領域における相マップを示す。(1)に関して,母材ではγ粒は層状組織で連続的に存在しているが,図中の黒破線で囲んだ領域に存在するγ粒は不連続な状態で存在していた。このような粒は複数の解析視野で確認されている。これは塑性流動中に局所的な攪拌により分断されたことを示唆していると考える。このようなγ粒は,(2)に関して,相変態による新たな相の生成であれば,界面エネルギーを下げるために周りの結晶粒と何らかの結晶方位関係をもって析出していると考えられる。二相ステンレス鋼中のαとγの間にはKurdjumov-Sachsの方位関係(K-S関係)が成り立つことが知られている33)。そこで,Fig.11(a)中のγα/αやαγ/γに対してK-S関係が成立しているかを調査した。Fig.11(a)の青矢印で示したγα/αおよびαγ/γとその隣接結晶粒から極点図を得た。Fig.11(b)Fig.11(a)中のα1粒,γ1粒から得られた{011}αに{111}γを,<111>αに<110>γをそれぞれ重ね合わせたものである。また,Fig.11(c)はα2粒,γ2粒に対して同様の極点図を得たものである。α1粒とα2粒にはFig.11(b)と11(c)において黒矢印で示すようにそれぞれγ1粒とγ2粒との間にK-S関係を満足していることが確認できたが,Fig.11(a)に示すα3粒やγ3粒においては隣接する異相とのK-S関係は認められなかった。しかし,K-S関係を満足している結晶粒が複数存在していることから,相変態により異なる相の新しい粒がK-S関係を満足してα/α界面もしくはγ/γ界面に形成されたと考えられる。一方で,K-S関係が認められなかった粒についても,対象としているFSW中の現象は大きなひずみが付与された状態での複雑な界面からの相変態挙動であることから,必ずしもK-S関係とはならなかった可能性も考えられる。層数の増加に寄与したγα/αやαγ/γの形成は塑性流動中に生じる局所的な攪拌効果と相変態による新粒の形成であると推察される。

Fig. 10.

Changes in the layer thickness of (a) ferrite and (b) austenite in the stir zone of the duplex stainless steel joints fabricated at different rotational speeds. (Online version in color.)

Fig. 11.

(a) EBSD phase map at a distance from the top surface of 500 μm of the joints welded at 275 rpm. (b) pole figures of {011}α, {111}γ, <111>α, and <011>γ were obtained from α1 grain and γ1 grain in this figure (a). (c) pole figures of {011}α, {111}γ, <111>α, and <011>γ were obtained from α2 grain and γ2 grain in this figure (a). The dotted lines in (b) and (c) indicate 001 traces of α (red color) and γ (green color). (Online version in color.)

3・5 FSW時の結晶粒成長挙動

微細組織中に第二相粒子が存在する場合,主相の結晶粒はピン止め力を受けながら成長していく。第二相粒子によるピン止め効果を考慮した際の主相の平均結晶粒径は,以下に示すZenerの関係が成り立つ34)

  
D¯=βd¯fV(2)

ここで,Dは主相の平均結晶粒径,dは第二相の平均結晶粒径,fVは第二相の体積率,βは定数である。定数βの値については様々な報告がなされており,Zenerは4/334),Gladmanは0.045~0.2635),Ashbyらは2/3~4/336),Hellman and Hillertは4/937)であるとそれぞれ推定しており,現在では2/9~4/3の範囲の値をとることが認められている38)。二相ステンレス鋼では,体積分率の多いαを主相,γを第二相としてZenerの関係が成り立つと仮定して,静的加熱時39)や高温超塑性変形中40)の結晶粒成長挙動が報告されており,おおよそβ=4/9であるとされている。Takayamaら38)は二相鋼において主相がαの場合,第二相のγ粒径は体拡散律速型のオストワルド成長機構で3乗則に従って成長し,主相のα粒径は第二相によるピン止め効果により3乗則に従うことを報告している。

本研究においてもZenerの関係が成り立つと仮定して,Fig.12に,式(2)に従って,各回転数でFSWを施した継手の板厚方向に沿ったEBSD測定から得られた各解析点のα粒径を,各解析点のγ粒径をγ体積率で除した値との関係で整理したグラフを示す。なお,図中の一点鎖線および点線はそれぞれZenerとHellman and Hillertがそれぞれ提唱した比例係数βの直線である。275 rpm材,400 rpm材,800 rpm材の各プロット点は,回転数や試料表面からの距離に依らず直線近似できたことから,FSWのプロセス中に形成される攪拌部の主相αの平均結晶粒径は副相γの平均結晶粒径に依存し,動的再結晶粒の形成と粒成長が生じていると考えられる。しかしながら,各プロット点はZenerの提唱したβ=4/334)の傾きを持つ直線上に存在していた。静的加熱時39)や高温超塑性変形中40)の二相ステンレス鋼の比例係数βに関する報告例はβ=4/9であることから,FSWにより形成される結晶粒の粒成長の挙動は異なることが示唆された。この要因として,以下のようなことが考えられる。

Fig. 12.

Relation between grain size of α and grain size of γ in the stir zone of the duplex stainless steel welded at rotational speeds of 275 rpm, 400 rpm, and 800 rpm. (Online version in color.)

・第二相によるピン止め効果の理論は等軸粒が均一分散していることを前提としているが,FSW後ではTDに沿った層状組織を有している。結晶粒の分散状態によっては第二相の体積率fVfVmとし,最適なmの値で整理する必要があることが報告されている41)。FSWにより形成された複雑な微細組織の形態がβの値に影響している可能性がある。

・γ粒はFig.9に示したようにKAM値が高いことから,α粒と比較して転位密度が高いと示唆される。粒成長の駆動力として界面エネルギーだけでなく転位密度差が挙げられることから,α粒はγ粒の方へと成長しやすく,粒成長の挙動が不均一となっている可能性が考えられる。

・第二相によるピン止め効果の理論において,二相合金の場合では粒界エネルギーを考慮する必要があることが指摘されている42)。加えて,より厳密な議論には粒界性格の分布状態として,集合組織やγ内に存在する双晶境界も考慮する必要がある。

また,本研究で得られた比例係数βの妥当性について議論する上では,3次元的な微細組織の形態を把握する必要があり41),現時点では困難である。しかしながら,板厚方向のいずれの位置における主相のα粒径と副相γの粒径をγ体積率で除した値の間には直線関係が成り立っており,両相の動的再結晶粒の粒成長が生じていることは明らかである。そのため,α粒をより微細化するためには,γ粒を微細化する必要がある。例えば,Zener-Hollomonパラメータとして知られるZ因子を大きくするためにFSW中のひずみ速度を上げる,温度を下げることや活性化エネルギーを増大させる合金元素を添加することが有効であると思われる。加えて,層状組織であることも影響している可能性が考えられることから,FSW中の板厚方向への塑性流動を促進させることも効果があると期待できる。

4. 結論

本研究では,二相ステンレス鋼SUS329J4Lに対してFSWを行い,その攪拌部に形成された微細組織を板厚方向に沿って観察し,微細組織の不均一性,相変態挙動および結晶粒成長挙動について検討した。その結果,以下の結論を得た。

(1)板厚方向に沿った構成相の体積率と結晶粒径の分布は不均一であった。体積率と結晶粒径のいずれも板厚方向に沿ったわずかな温度分布を反映していたが,試料表面側の概ね300 μm以下の領域ではショルダによる加工の影響により著しい微細化が生じていた。

(2)FSW後の継手断面の各相の局所方位差(KAM値)は,板厚方向に沿ったいずれの位置においてもαよりもγの方が高い値を示した。これは,積層欠陥エネルギー差に起因した動的再結晶挙動の違いによるものと推察された。

(3)FSW後では継手断面において板幅方向に沿った層状組織は局所的に不連続となっていた。層状組織の単位長さあたりの層厚は回転数の低いものほど小さく,275 rpm材では母材よりも低い値を示した。新たな層の形成はFSW中の塑性流動に伴う層の分断と相変態により異なる相の新しい粒がα/α界面またはγ/γ界面から析出したためであると考えられる。

(4)FSWにより形成された主相α粒径と副相γ粒径をγ体積率で除した値の間には直線関係が成立していた。

謝辞

本研究成果は,日本学術振興会,科研費(21K14418)の支援および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務により得られたものである。ここに謝意を表する。

文献
 
© 2022 The Iron and Steel Institute of Japan

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