2023 Volume 109 Issue 1 Pages 33-41
Aluminum deoxidation equilibrium of molten Fe-Co alloy was experimentally measured using a chemical equilibrium method and numerically assessed using a sub-regular solution model based on Darken’s quadratic formalism and a Redlich-Kister type polynomial at 1873 K. It was found that the degree of oxygen content reduction by Al-deoxidation decreased with increasing cobalt concentration in the alloy, peaking at around 40 to 60 mass% Co, and then improved with further increase in cobalt concentration. The following binary interaction parameters between cobalt and aluminum were derived in this study:
0ΩCo-Al = −387360 [J⁄mol], 1ΩCo-Al = 309420 [J⁄mol]
It was also found that the above binary interaction parameters can accurately determine Al-deoxidation equilibrium of pure liquid cobalt. Finally, the critical point at which Al2O3 and CoO∙Al2O3 coexist throughout the whole composition range of the alloy was also estimated from the experimental results in this study.
近年需要が増加しているFe-Co系合金は,その優れた磁気特性と良好な機械的強度から現代産業に広く使用されている。特に,Fe-Co合金は強磁性体の中でも非常に高い飽和磁化を示し,組成の単純な変化によって軟磁性体としても硬磁性体としても機能するという特性を有している。したがって,Fe-Co合金は磁性材料として航空宇宙および電力用途向けのモーターおよび発電機の開発に広く使用されている1)。しかしながら,酸素存在下では,透磁率の低下と保持力の増加によって,Fe-Co合金の特性が低下してしまうことが知られている2)。
加えて,一般的にマルエージング鋼と呼ばれるNiと合金化したFe-Co鋼は,延性を損なうことなく優れた強度と靭性を示すため,着陸装置や燃料ロケットのチャンバーのような航空宇宙用途に適した構造材料である。このような高い安全性が求められる産業では,欠陥の生成を防ぐために鋼の組成を制御することが重要となるため,製鋼過程における二次精錬の段階で脱酸が行われる。脱酸によって凝固前の合金中の酸素を可能な限り取り除き,空隙や酸化物系介在物の生成を防ぐことができる。
以上のことから,脱酸によるFe-CoあるいはFe-Ni-Co合金中の溶存酸素量の制御は高品質の磁性材料および構造材料の製造に不可欠であるといえる。脱酸プロセスでは鉄よりも酸素に対して高い親和性を持つ元素を添加し,溶融合金から除去される酸化物を生成することによって行われる。製鋼過程において最も一般的に使用される脱酸剤は,酸素との高い親和性をもつAlである。したがって,Fe-CoあるいはFe-Ni-Co合金の磁気的および構造的特性を改善するために,溶融Fe-CoあるいはFe-Ni-Co合金中のAlと酸素間の熱力学的関係を理解することが必要になる。この関係が分かれば,Al脱酸による酸素含有量の減少割合を推察することができる。溶融Fe-Ni合金系のAl脱酸平衡はすでに広く調査されているが3–11),溶融Fe-Co合金のAl脱酸平衡はAleksandrov and Dashevskiiによってのみ報告されている2)。彼らは,熱力学的評価を通じて,溶融Co含有量の増加に伴ってAl脱酸効率は向上し,Al含有量が低いほど最小酸素溶解度も小さくなることを示した。しかしながら,実験データや参考データが不足しているため,彼らの結果は多くの仮定に基づいており,さらなる実験調査が必要である。
さらに,溶融Co中のAl脱酸平衡はIshiharaらによってのみ報告されている。彼らはAl2O3るつぼを使用して,溶融Co中のAl脱酸平衡を1873 Kから1973 Kまでの範囲で測定し,この温度範囲におけるAl2O3生成の温度依存性を決定した12)。しかしながら,Al2O3は通常Al脱酸時に脱酸生成物として生成されるが,高酸素下でAl添加量が少ない場合にはコバルトアルミネート(CoO・Al2O3)が生成されること場合もある。
したがって,高品質なFe-Co基合金を製造する重要性を考えて,本研究では,1873 KにおけるAl2O3あるいはCoO・Al2O3共存下での溶融Fe-Co合金におけるAl脱酸平衡を調査した。Al脱酸実験は溶融Fe-10, 20, 30, 40, 60,と80 mass% Co合金試料で行った。続いて,本研究結果と参照値を使用して,Darkenの2次式13)とRedlich-Kister型多項式14,15)に基づく準正則溶体モデルを用いて熱力学的評価を実施した。本研究で用いた分析の詳細は,すでにいくつかの論文16–20)で述べられており,特に高合金系における脱酸平衡の計算において適切であることがわかっている。
本研究では,Fig.1に示す高周波誘導加熱炉(積水化学工業(株)MU-1700D)を用いて1873 KにおいてAl脱酸実験を行った。反応管(60×50×500 mm)には透明石英管を用いており,炉内温度は放射温度計(日本センサー株式会社FTK9S)を用いて測定した。放射温度計の放射率は,Fe-Co合金の状態図21)から読み取った合金の液相線温度と,1873 Kから冷却した際に最初に固相が現れる温度を比較することによって較正した。
Al-deoxidation experiment set-up.
試薬等級の電解Fe(純度99.9%)と電解Co(純度99.9%)を用いて,様々な組成(10, 20, 30, 40, 60, 80 mass% Co)の約25 gのFe-Co合金を調製した。粒状のFe3O4(純度99.5%)を酸素源として使用し,純Al(純度99.99%)を脱酸剤として使用した。加熱実験では,熱的スポーリングを防ぐために,試料を装入したAl2O3の内坩堝(21×17×100 mm)を,MgOサンドを充填したMgOの保護坩堝(40×30×100 mm)に入れて用いた。
まず,電解Fe,電解Coおよび粒状Fe3O4を目的組成となるように秤量し,炉に装入した後,反応管内を2.0 L min-1の高流量のArガスで完全にAr置換した。20分後,Arガスの流量を1.0 L min-1まで下げて試料を溶かすため徐々に加熱した。製鋼温度である1873 Kで温度が安定し,試料の完全溶融を確認したうえで,投入管よりAlを添加した。予備脱酸実験においてAl添加後40分で平衡に達することが確認されたため,本実験では1873 Kで50分間保持した。最後に,炉の電源を切り,Arガス急冷によって室温まで冷却した。
2・2 試料の分析空隙を取り除き,冷却した試料の化学組成を以下の方法で測定した。まず,濃HClと濃HNO3を3:1の割合で混合して調製した王水を用いて約0.5~1.5 gの試料を溶解し,誘導結合プラズマ発光分析装置(島津製作所ICPS-8100)を用いてCoとAlの濃度を測定した。Co濃度が高い試料の場合,濃HNO3で十分に溶解した。
続いて,不活性ガス・赤外線吸収法(LECO-ONH836元素分析装置)によって酸素濃度を測定した。ファインカッターを用いて約0.5~1.0 gの合金を切り出し,#600までのSiC研磨紙を用いて研磨した。各研磨後にエタノール溶液中で超音波洗浄を行った。最後に,試料表面の酸素吸着を防ぐため,研磨した試料は分析まで無水エタノール溶液中で保管した。誘導加熱によるピンチ効果により,この方法で測定された酸素含有量は,メタル相の溶存酸素濃度に対応すると予想される。試料中のFe濃度は,Co,AlおよびOの測定値を引いた残りとして求めた。
カーボンフィラー樹脂で熱間埋込をしたAl2O3るつぼをSEM-EDS(JEOL JSM-6510; Oxford INCA Energy 250XT)を用いることで,合金とるつぼの界面を観察した。金属とるつぼ界面の元素マッピングとポイント分析は,加速電圧(AV)15 kV,作動距離(WD)15 mm,スポットサイズ(SS)60 nmで行った。
Table 1に1873 KでのFe-10, 20, 30, 40, 60および80 mass%Co試料における金属相組成と平衡相となる酸化物を示す。溶融状態における平衡相となる酸化物は,ほとんどすべての試料で無視できる程度のFeOを含有したAl2O3であることがわかった。酸化物相のFeO含有量は非常に低いことが確認されたため,Al2O3の活量を数値評価において1と仮定することができる。このことについては,次の章で詳しく説明する。ただし,試料26では代わりに青色の物質がメタル/るつぼ間に生成しており,異なる酸化物相が生成していることがわかる。SEM-EDSマッピングとポイント分析によって,コバルトアルミネート(CoO・Al2O3)の生成が示唆された。この分析の詳細については,3・3節で後述する。
Sample No. | Composition, (mass %) | Equilibrium Oxide | ||
---|---|---|---|---|
[Co] | [Al] | [O] | ||
Fe-10 mass% Co | ||||
1 | 10.581 | 0.001 | 0.065 | Al2O3 |
2 | 10.156 | 0.001 | 0.038 | Al2O3 |
Fe-20 mass% Co | ||||
3 | 20.154 | 0.515 | 0.030 | Al2O3 |
4 | 20.269 | 0.384 | 0.011 | Al2O3 |
5 | 19.968 | 0.180 | 0.025 | Al2O3 |
6 | 20.055 | 0.001 | 0.029 | Al2O3 |
7 | 20.106 | 0.385 | 0.025 | Al2O3 |
8 | 20.209 | 0.000 | 0.035 | Al2O3 |
9 | 20.423 | 0.062 | 0.028 | Al2O3 |
10 | 20.351 | 0.106 | 0.020 | Al2O3 |
Fe-30 mass% Co | ||||
11 | 32.308 | 0.265 | 0.013 | Al2O3 |
12 | 31.681 | 0.086 | 0.023 | Al2O3 |
13 | 32.948 | 0.091 | 0.006 | Al2O3 |
14 | 32.556 | 0.015 | 0.008 | Al2O3 |
15 | 31.675 | 0.004 | 0.061 | Al2O3 |
16 | 32.163 | 0.004 | 0.069 | Al2O3 |
Fe-40 mass% Co | ||||
17 | 41.744 | 0.088 | 0.006 | Al2O3 |
18 | 39.910 | 0.087 | 0.098 | Al2O3 |
19 | 39.928 | 0.380 | 0.012 | Al2O3 |
20 | 39.912 | 0.624 | 0.021 | Al2O3 |
Fe-60 mass% Co | ||||
21 | 59.926 | 0.055 | 0.113 | Al2O3 |
22 | 60.278 | 0.062 | 0.034 | Al2O3 |
23 | 59.407 | 0.128 | 0.018 | Al2O3 |
24 | 58.963 | 0.252 | 0.041 | Al2O3 |
25 | 59.668 | 0.378 | 0.023 | Al2O3 |
Fe-80 mass% Co | ||||
26 | 80.005 | 0.029 | 0.086 | CoO∙Al2O3 |
27 | 80.130 | 0.031 | 0.017 | Al2O3 |
28 | 80.009 | 0.074 | 0.062 | Al2O3 |
29 | 80.404 | 0.205 | 0.014 | Al2O3 |
30 | 79.710 | 0.304 | 0.015 | Al2O3 |
前述の通り,Redlich-Kister型多項式を用いた準正則溶体モデルを使用して,溶融Fe-Co合金のAl脱酸平衡を数値的に評価した。Wagnerの式は最もよく使われる式の一つだが,本来,希薄溶液にのみ利用可能な式であるため,高合金へ適用するには多くの難点が存在する。今回のモデルでは,凝縮相については純物質を標準状態(Raoultian 標準状態)とし,酸素については101325 Pa(1 atm)の気体酸素と平衡状態にある溶融物内の溶存酸素を標準状態とした。この場合,酸素溶解反応は式(1)で表し,ギブスエネルギー変化はゼロのため式(3)が成り立つ。
(1) |
(2) |
(3) |
ここで,Rは気体定数(8.314 J/mol・K),Tは絶対温度,Kは平衡定数,aOは酸素の活量,PO2は酸素分圧(Pa),P0は標準圧力(Pa)である。このことから,平衡状態の酸素の活量および分圧は,金属溶媒の種類に依存しない。
一方,Al脱酸反応は次のように表される。
(4) |
さらに上記の式は次の二つの式に分けることができる。
(5) |
(6) |
式(5)のギブスエネルギー変化は,Al2O3生成のギブスエネルギー(
(7) |
ここで,ai, γiおよび Xiは,それぞれ成分iの活量,活量係数およびモル分率である。前述のように,脱酸生成物は試料26を除いて純粋な固体Al2O3であるため,Al2O3の活量は1とみなせる。
続いて,Fe-Co-Al-Oの4成分系における混合の過剰ギブスエネルギー変化(ΔGMex)は,Redlich-Kister型多項式を用いて式(8)のように表せる。
(8) |
ここで,Xiは成分iのモル分率であり,nΩi-jは成分i-j間のn次の二元系相互作用パラメーターである。このことから,Co,AlおよびOの部分モル過剰ギブスエネルギーは次のように表せる。
(9) |
(10) |
(11) |
最後に,式(10)と式(11)を式(7)に代入することで,次式のようなAl2O3と平衡状態にある溶融Fe-Co合金のAl脱酸の数値解析の基本式を得ることができる。
(12) |
Table 2に利用可能な二元系相互作用パラメーターの文献値をまとめた。一方,Al2O3生成のギブスエネルギーはNIST-JANAF Thermochemical Tablesの値を用いた。ここで,上記の式をさらに式変形することで,既知の二元系相互作用パラメーターが式の左辺に,未知の二元系相互作用パラメーターが式の右辺となるような次の関係を得ることができる。
(13) |
Value [J/mol] | Reference | ||
---|---|---|---|
Fe-Co | Ω0Fe-Co | 9939 − 3.29 T | 22) |
Ω1Fe-Co | 1713 − 0.91 T | ||
Ω2Fe-Co | −1271 | ||
Fe-O | Ω0Fe-O | −41500 + 142.4 T | 10) |
Ω1Fe-O | 298300 − 117.8 T | ||
Fe-Al | Ω0Fe-Al | −275700 + 106.9 T | 10) |
Ω1Fe-Al | 79940 − 35.85 T | ||
Co-O | Ω0Co-O | −92260 + 10.35 T | 18) |
Ω1Co-O | 30750 − 3.45 T | ||
Co-Al | Ω0Co-Al | −387360 | Present Study |
Ω1Co-Al | 309420 | ||
Al-O | Ω0Al-O | 856300 − 1497 T | 10) |
−1682300 + 324.15 T | 23) |
YCo(Al)を縦軸,
(14) |
(15) |
Determination of 0ΩCo–Al and 1ΩCo–Al from the experimental values at 1873 K.
これらの値を用いることで,Al2O3と平衡状態にある溶融Fe-Co合金および純CoのAl脱酸平衡を表すことができる。予測される1873 Kにおける溶融Fe-Co合金中のAl-O平衡関係を,本実験データと共にFig.3に示す。また,本研究で得られた溶融Fe-Co合金におけるAlのみかけの脱酸平衡積を,本実験データと共にFig.4に示す。Fig.3より,合金中のCo濃度の増加に伴ってAl脱酸力は減少するが,40~60 mass%Co周辺でピークに達した後は,Co濃度の増加に伴いAl脱酸力も増加することがわかった。さらに,Alの脱酸効率は,約0.5 mass%Alの高Al濃度で低効率となり,約0.1 mass%AlのAl濃度で大幅に増加することがわかった。しかしながら,Al濃度をさらに約0.02 mass%Alまで低減させることは,脱酸にほとんど影響を及ぼさないことがわかった。これらの結果から,Fe-30 mass%CoからFe-80 mass%Coの場合,単純なAl脱酸では酸素濃度を十分に下げることができず,複合脱酸が必要になることが示唆された。
Al-O equilibrium relationship in Al-deoxidized molten Fe-Co alloy at 1873 K.
Relationship between Co concentration and Al-O solubility product at 1873 K.
加えて,導出された二元系相互作用パラメーター0ΩCo–Alと1ΩCo–Alを用い,式(12)にXFe=0を代入して,純粋な溶融CoにおけるAl-O平衡関係を計算し,Ishiharaらによって報告された1873 Kにおける値と比較したものをFig.5に示す12)。この結果より本研究の数値評価で得られた二元系相互作用パラメーターを使用して,純粋な溶融CoのAl脱酸平衡も正確に求められることがわかった。したがって,本研究結果によって,溶融Fe-Co合金と純CoのAl脱酸平衡を高精度で定量的に表すことができるとわかった。このことは,高品質のFe-Co合金ベースの磁性および構造材料の製品において非常に重要である。
Al-O equilibrium relationship in pure liquid cobalt metal at 1873 K.
前章で述べたように,溶融Fe-Co合金と平衡状態にある酸化物相はほとんど全ての試料においてAl2O3であることがわかった。しかしながら,80 mass%Coの試料26の場合,平衡相としてCoO・Al2O3が生成されることがわかった。金属とるつぼの界面のSEM-EDSマッピングをFig.6に示す。ポイント分析により,AlとCoのモル比はおおよそ2:1になることがわかり,CoO・Al2O3の生成が確認された。この場合,Al2O3の代わりにCoO・Al2O3が生成されるため,平衡脱酸反応は次の式に変化する。
(16) |
Elemental mapping of the metal and crucible interface indicating the formation of cobalt aluminate (CoO∙Al2O3). (Online version in color.)
また,上記の式の平衡定数
(17) |
前述した同じ評価方法で,式(9),(10)および(11)を上記の式に代入すると次の関係が得られる。
(18) |
上記の式は,CoO・Al2O3と平衡状態にある溶融Fe-Co合金のAl脱酸の数値解析の基本式である。さらに,Fe-80 mass%Co合金におけるAl脱酸実験の実験結果を用いることで,1873 KでAl2O3とCoO・Al2O3が共存する臨界点を推定することができる。Table 1に示すように,試料27の平衡相はAl2O3であるが,試料26の平衡相はCoO・Al2O3であるため,臨界点は0.029<[mass% Al]<0.031かつ0.017<[mass% O]<0.086の範囲にある必要がある。したがって,式(18)を用いると,この範囲を満たすCoO・Al2O3生成のギブスエネルギー変化は-1268~-1269 kJ/molになる。Aleksandrov and DashevskiiとHinoらが報告した値を組み合わせることによって,CoO・Al2O3生成のギブスエネルギーは-1203 kJ/molと見積もることができるが,これは実験によって得られた値とほぼ一致する2,10)。
溶融Fe-Co合金のAl脱酸の基本方程式,式(12)および(18)から,1873 KでAl2O3およびCoO・Al2O3と平衡状態にあるAl-O関係をFig.7に示すように推定できる。Al2O3とCoO・Al2O3が共存する臨界点は,合金中のCo濃度が40~60 mas%程度になるまで増加するにつれて,より高いAl含有量にシフトすることがわかった。さらに,Fig.5に示すAl2O3飽和条件下でのIshiharaらの実験結果は,純粋な溶融Coの計算された臨界点の位置とよく一致し,今回の評価精度が有効であることが確認されている12)。また,約10 mass%Coの組成をもつマルエージング鋼の場合,酸素濃度を約13 ppmまで十分に低下できることがわかった。これは,欠陥のない構造材料を製造する上で非常に重要である。
Al-O relationship in molten Fe-Co alloy saturated with Al2O3 or CoO∙Al2O3 at 1873 K.
本研究では,1873 Kにおける溶融Fe-Co合金と純CoのAl脱酸平衡を調査した。本研究結果およびDarkenの2次式とRedlich-Kister型多項式に基づいて導出された二元系相互作用パラメーターを使用して,Al-O平衡関係を定量的に表した。また,Fe-80 mass%Co試料の実験データを用いて,Al2O3とCoO・Al2O3が共存する臨界点を求め,CoO・Al2O3のギブスエネルギーを推定した。典型的なマルエージング鋼の組成であるFe-10 mass%Co合金では,酸素含有量は十分に低減できることがわかった。しかしながら,Co濃度が高い合金(Co濃度が40~60 mass%)の場合,単純なAl脱酸では酸素濃度を十分に低減することができないため,複雑な脱酸が必要となる場合がある。最後に,Al2O3とCoO・Al2O3が共存する臨界Al濃度および臨界O濃度は,約60 mass%Coで最大となることがわかった。