Tetsu-to-Hagane
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In-situ Observation of Sintering Interface between Al2O3 Particle / Single Crystalline Al2O3 Plate through Single Crystalline Al2O3 Plate
Masashi Nakamoto Toshihiro Tanaka
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2023 Volume 109 Issue 11 Pages 847-856

Details
Abstract

In a continuous casting process, the clogging of the immersion nozzle with inclusions occurs as a result of the adhesion, agglomeration, and coalescence of inclusions. The most effective way to understand the behavior of inclusions, i.e. oxide particles, in a liquid steel is the in-situ observation. To our knowledge, however, there is no research on the in-situ observation of the behavior of oxide particles in a liquid steel. In the present work, therefore, the in-situ observation method for sintering interface between Al2O3 particle / single crystalline Al2O3 plate by laser microscope through single crystalline Al2O3 plate is proposed. First, the in-situ observation of sintering interface between Al2O3 particle and single crystalline Al2O3 in Ar atmosphere is conducted to verify the observation method for the interface through single crystalline Al2O3 plate. Then, the in-situ observation of sintering interface between Al2O3 particle and single crystalline Al2O3 in a liquid Ag is challenged. The observations for sintering interface between Al2O3 particle and single crystalline Al2O3 plate in Ar gas atmosphere and a liquid Ag are achieved by our proposed method. It is verified that the growth of sintering interface in liquid Ag is faster than that in an Ar gas atmosphere. This finding indicates that the non-wetting by liquid Ag of alumina particles promotes the growth of sintering interface in liquid Ag.

1. 緒言

連続鋳造において溶鋼中のAl2O3系介在物などがAl2O3-C質ノズル内壁へと付着,堆積することによって生じるノズル閉塞は,操業自体を阻害するとともに,集積した介在物クラスタの剥離・凝固シェル内混入による鋼品質の低下を招いてしまうため問題となっている1,2,3,4。そのため,ノズル閉塞を防止するための方法の開発が多数行われてきており,例えば,ノズル上部からのArガス吹込み5や,浸漬ノズルの材質や形状の変更(Al2O3–MgOのスピネル材質6,高Al2O37,ノンカーボン材8,ねじり羽根の挿入8など),電流の印加9が報告されている。一方で,更なる改善のため溶鋼中Al2O3介在物の生成,付着,堆積のメカニズムの研究が継続して進められている。浸漬ノズルへのAl2O3系介在物の付着メカニズムは明確には分かっていないが,一般にはAl2O3粒子が浸漬ノズル内壁へ接近する第一段階,Al2O3粒子が内壁に接触する第二段階,Al2O3粒子が壁面に付着する第三段階,Al2O3粒子同士が焼結して成長する第四段階で生じると考えられている2。このAl2O3の焼結を促進する要因として,介在物や浸漬ノズルを構成するAl2O3と溶鋼との濡れ性の悪さが考えられており,従来から様々な観点から研究が実施され,多くの知見が得られている9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22。著者ら18もFe-C液体中でのAl2O3ボールの焼結がArガス中での焼結よりも速いことを実験的に実証するとともに,濡れ性の悪さに起因する毛管現象に基づく力を考慮した焼結モデル式を導出し,濡れ性の悪さが焼結を促進することを示唆する結果を見出している。しかしながら,従来実施されてきた研究開発は主として冷却後の試料の観察に基づくものであり,高温での溶鋼中におけるAl2O3介在物の凝集・焼結挙動に関する知見は,冷却・凝固後の観察からの推測に留まっているのが現状である。より深い理解のためには高温状態での溶鋼中の現象をその場観察する手法の開発が望まれる。高温状態での介在物の現象の観察としてはレーザー顕微鏡を利用した研究があり,溶鋼上の介在物の凝集挙動の観察が報告されている12,23,24,25,26,27。また,同手法を高温液体中の観察に応用し,溶融スラグ層を透過させて溶鋼/スラグ間界面での介在物の凝集挙動を観察する試みもなされている28,29。一方,可視光透過性の固体材料を通して高温での界面現象を観察する手法が報告されており,SiCやAlN/α-Al2O3を通してレーザー顕微鏡や光学顕微鏡により固/液界面での結晶成長のリアルタイムでの観察を実現している30,31,32。このように,可視光透過性の材料を利用した界面の観察は高温におけるその場観察への高い可能性を秘めた手法と言える。

そこで本研究では溶鋼中アルミナの焼結挙動の解明を目指して,可視光透過性を有する単結晶Al2O3板を通して液体金属中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板の焼結界面をレーザー顕微鏡によりその場観察する手法を提案する。まず,Al2O3粒子と単結晶Al2O3板の焼結界面の単結晶Al2O3板を通した観察の可能性を検証するため,Arガス中においてAl2O3粒子と単結晶Al2O3板の焼結界面の観察を実施した。また,Al2O3への濡れ性が悪い液体Ag33を用いて,液体Ag中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板の焼結界面の観察を試みた。さらに,単結晶Al2O3板を通した本観察手法において焼結の速度に影響する因子に関して,同手法に対する焼結モデル式を導出することにより議論した。

2. 実験

2・1 Arガス中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面の観察

Al2O3粒子として,平均粒径約75 µm,純度99.9%のAl2O3粒子 (日鉄ケミカル&マテリアル株式会社: AZ75-150)を63 µmのステンレスふるいで整粒し,実験に用いた。整粒前後のAl2O3粒子の光学顕微鏡による観察結果をFig.1に示す。整粒前は数µm程度の小さい粒子から数十µm程度までの粒子が混在しており,粒度分布の広い粒子となっている一方で,整粒後の粒子は約50 µm以上と粒径が整っている。5 mmϕ×2 mmのAl2O3るつぼ(純度99.5%)に整粒したAl2O3粒子を数十個入れ,その上に2.8×2.8×0.5 mmの単結晶Al2O3板(CRYSTAL GmbH: C(0001)両面鏡面,透過波長域(150–7,000 nm))を設置し,試料とした。なお,Fig.1(b)においてAl2O3粒子が接触しているが,実験時にはAl2O3粒子同士の凝集等は確認されず,同接触は確率的なもので,あり,実験において帯電等による焼結への影響はないと考えられる。観察実験の模式図をFig.2に示す。試料を加熱ステージ内に設置し,Arガス(純度:99.9999%)を流通しながら昇温速度50 K/min(1173 K以下),20 K/min(1173–1273 K),10 K/min(1273 K以上)で昇温した。走査型レーザー顕微鏡(He–Neレーザー: 波長632.8 nm)を用いて,単結晶Al2O3板を通してAl2O3粒子と単結晶Al2O3板との界面の観察を試みた。走査型レーザー顕微鏡のHe–Neレーザーの波長は単結晶Al2O3板の透過波長域内であり,単結晶Al2O3板を通した観察が可能である。このとき,Fig.2に示すようにAl2O3粒子と単結晶Al2O3板との焼結の進行が,焼結界面の増大として観察されることを期待した。

Fig. 1.

Al2O3 particles (a) before sieve and (b) after sieve.

Fig. 2.

Schematic diagram of (a) observation experiment of sintering interface between Al2O3 particle and single crystal Al2O3 plate through single crystal Al2O3 plate under Ar atmosphere and (b) observed sintering interface.

2・2 液体Ag中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面の観察

2・1と同様のAl2O3粒子,単結晶Al2O3板,Al2O3るつぼを使用した。また,液体試料としてAg(純度 99.98%)を用いた。液体Ag中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3の焼結界面の観察の模式図をFig.3に示す。Arガス中とは異なり,液体Ag中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3の焼結界面の観察では以下の3点を考慮した。1つ目は,液体Agの安定した保持である。るつぼの材質である酸化物のAl2O3とAgは濡れ性が悪いため33,Al2O3るつぼ内でAgを溶融した際にるつぼ底面での液体Agの接触面積が小さくなり,液体Agの上部に設置する単結晶Al2O3板を安定させることができなくなることが予想される。そこで,Agと濡れ性が良く34,かつ,Agとの相互溶解度が小さい金属としてNiを選択し34,35,液体Agの安定保持を目的としてるつぼ底部に2.8×2.8×0.05 mmのNiシート(純度99%)を設置した。2つ目は,Ag中に溶解しているガス成分の除去である。Ag中溶解しているガス成分は,温度の上昇による溶解度の低下で液体Ag中から放出され,気泡が発生する。この発生した気泡は単結晶Al2O3板と液体Agの界面に留まり,界面観察が困難となる。そのため,Ag中の溶解ガス成分の除去を目的として,観察前に別途液体Agに対して真空引きを実施した。単結晶Al2O3板上に2.8×2.8×0.1 mmのAgシートを2枚設置し,Arガス中,1100°CでAgを溶融させ,真空引きを行った。その後,真空状態のまま冷却し,Agを凝固させた。冷却後の単結晶Al2O3板とAgは密着していた。3つ目は,Al2O3粒子の液体Ag中への取り込みである。上述のようにAl2O3粒子と液体Agの濡れ性は悪く33,Al2O3粒子を液体Agに取り込ませることは困難である。そこで,Al2O3粒子の液体Agへの濡れ性を向上させて,液体Ag中への取り込みを容易にするためにAl2O3粒子にPt-Pd蒸着処理を行った。Ag-Pt系,Ag-Pd系状態図35から最終的にPt, Pdは液体Agへ溶解すると予想される。Al2O3るつぼ底面に2.8×2.8×0.05 mmのNiシートを敷き,その上にPt-Pd蒸着Al2O3粒子を数十個置き,さらにAgを事前溶融・真空引きした単結晶Al2O3板をAgが下になるように設置した。Arガスを流通しながら昇温速度50 K/min(1173 K以下),20 K/min(1173–1273 K),10 K/min(1273 K以上)で昇温し,走査型レーザー顕微鏡を用いて,単結晶Al2O3板を通してAl2O3粒子と単結晶Al2O3板との界面の観察を試みた。

Fig. 3.

Schematic diagram for (a) setup of observation experiment of sintering interface between Al2O3 particle and single crystal Al2O3 plate in liquid Ag through single crystal Al2O3 plate and (b) situation after melting Ag.

3. 焼結速度モデル式

3・1 気相中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結

気相中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結への単結晶Al2O3板の荷重の影響について焼結の速度式を用いて評価した。一般的な焼結速度式に基づき,Nakamotoら18は気相中におけるAl2O3粒子焼結の速度式の係数を決定し,x:焼結ネック半径(m),t:時間(s)として以下のような式を報告している。

  
x = 10 6 ( a n K γ S V 0 D R T ) 0.228 ( t 3600 ) 0.228 , ( a n K γ S V 0 D R T ) 0.228 = 15.6 at 1773 K (1)

ここで,a:粒子半径(m),n, K:定数,γS:固体Al2O3の表面張力(N/m),V0:モル体積(m3),D:自己拡散係数(m2/s),R:気体定数(m2·kg/s2·K·mol),T:温度(K)である。一方で,本研究で提案する単結晶Al2O3を通した焼結のその場観察手法では,Fig.2のようにAl2O3粒子の上部に単結晶Al2O3板を配置するため,単結晶Al2O3板の荷重がAl2O3粒子との接触界面にかかり,焼結が促進される可能性が考えられる。そのため,Coble36の焼結速度に対する圧力の影響の考え方に基づき,単結晶Al2O3板の荷重の影響を考慮した以下の式を導出した。

  
x = 10 6 ( a n K γ S V 0 D R T ) 0.228 { 1 + m g N π x 2 a γ S π } 0.228 ( t 3600 ) 0.228 (2)

ここで,m:単結晶Al2O3板の重量(kg),g:重力加速度(m/s2),N:接触している粒子数である。ただし,ここでは焼結のメカニズムはNakamotoら18が式を導出した際の体積拡散と同じと考え,指数0.228,nは変化しないものとした。また,上述の式(1),(2)は粒子同士の焼結の際の式であり,本実験での粒子と平板との焼結と異なるが,荷重の影響の相対的な大小については同じと考えられるため,式(1),(2)をそのまま解析に利用した。

3・2 液体金属中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結

液体金属中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結へのAl2O3粒子に働く浮力の影響について焼結の速度式を用いて評価した。Nakamotoら18は,液体金属中におけるAl2O3粒子の焼結の速度式を以下のように導出している。

  
x = 10 6 ( a n K γ S V 0 D R T ) 0.228 { 1 + ( 4 a γ L cos θ x 2 ) a π γ S } 0.228 ( t 3600 ) 0.228 (3)

ここで,γL:液体金属の表面張力(N/m),θ:Al2O3と液体金属の接触角(°)である。式(1)と比較すると,粒子と液体金属の濡れ性の悪さに起因して生じる液体の排出での毛管力により粒子間に働く圧力を考慮した項が追加されている。一方で,本研究で提案する単結晶Al2O3を通した液体金属中の焼結のその場観察手法では,Fig.3のように液体金属中において液体金属とAl2O3粒子の密度差によりAl2O3粒子に働く浮力がAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間に押し付けあう力として働き焼結を促進する可能性が考えられる。そのため,上述と同様にCoble36の焼結速度に対する圧力の影響の考え方に基づき,浮力の影響を考慮した項を追加し,以下の式を導出した。

  
x = 10 6 ( a n K γ S V 0 D R T ) 0.228 { 1 + ( Δ ρ V g π x 2 4 a γ L cos θ x 2 ) a π γ S } 0.228 ( t 3600 ) 0.228 (4)

ここで,∆ρ:液体金属とAl2O3粒子の密度差(kg/m3),V:Al2O3粒子の体積(m3)である。ただし,焼結のメカニズムはNakamotoら18が式を導出した際の体積拡散と同じと考え,指数0.228,nは変化しないものとした。また,気相中と同様に上述の式(3),(4)は粒子同士の焼結の際の式であり,本実験での粒子と平板との焼結と異なるが,浮力の影響の相対的な大小については同じと考えられるため,式(3),(4)をそのまま解析に利用した。

4. 結果と考察

4・1 Arガス中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面の観察

Arガス中におけるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の界面のその場観察の結果をFig.4に示す。昇温過程におけるa)1273 K(0 min),b)1323 K(5 min),c)1473 K(10 min)での結果を示している。ここでは1273 Kを時間0 minとしている。各像の中央付近で直径約2-3 µmの黒い領域が存在し,この黒い領域が時間の経過とともに拡大することが確認された。この黒い領域はAl2O3粒子と単結晶Al2O3板の焼結界面と推測される。また,黒い領域の周囲を取り囲むように白い縞模様が存在している。これはAl2O3粒子が球面であるため,単結晶Al2O3板間との光路差で生じる干渉縞と考えられる。観察された黒い領域がAl2O3粒子と単結晶Al2O3板の焼結界面であることを確認するため,別途焼結実験を実施した。単結晶Al2O3板上にAl2O3粒子を複数個設置し,Arガス中,1873 Kで2 h焼結した。Fig.5に焼結後のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板との接触界面をa)単結晶Al2O3板を通してレーザー顕微鏡で観察した結果,b)横方向からSEMにより観察した結果を示す。Fig.5 a)のレーザー顕微鏡による観察ではFig.4と同様の黒い領域が約20 µmϕ程度の大きさで存在している。一方で,同じ接触界面を横からSEMで観察したAl2O3粒子と単結晶Al2O3板の接触領域はほぼ一致している。つまり,レーザー顕微鏡で単結晶Al2O3板を通して観察された黒い領域はAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面であることが分かる。以上の結果より,Al2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面を単結晶Al2O3板を通して黒い領域として観察することが可能であることが分かった。また,その焼結界面の増大をリアルタイムで観察することに成功した。

Fig. 4.

Observed interface between Al2O3 particle and single crystal Al2O3 plate under Ar gas atmosphere. a) 1273 K (0 min) , b) 1323 K (5 min) and c) 1373 K (10 min).

Fig. 5.

Observation results for interface between Al2O3 particle and single crystal Al2O3 plate by a) laser microscope through single crystal Al2O3 plate and b) scanning electron microscope.

4・2 液体Ag中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面の観察

Fig.6に液体Ag中におけるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の界面のその場観察の結果を示す。昇温過程におけるa)1273 K(3 min),b)1293 K(5 min)and c)1333 K(9 min)での結果を示している。ここでは,観察実験においてAgの溶融が確認された1243 Kを0 minとしている。図中で全体的に広がっている白い領域は単結晶Al2O3板と接触している液体Agの界面で,液体Agによるレーザーの強い反射光により白く観察されたと考えられる。各像の中央付近で数µmの黒い領域,その周囲に白い縞模様が存在した。このような観察像はFig.4に示したArガス中でAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間での像と類似しており,黒い領域は液体Ag中におけるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面,白い縞模様は干渉縞であると言える。また,黒い領域であるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面が時間の経過とともに拡大している。一方で,液体Ag中の観察においては干渉縞の外側に黒い領域が存在した。同領域は液体AgとAl2O3粒子もしくは単結晶Al2O3板との濡れ性が悪いことに起因する液体Agの焼結部分からの毛管力による排出によって生じた空隙18,19,37と考えられる(Fig.7)。ここで,この空隙が毛管力に起因して生じたものとして妥当であることを検証するため,その大きさについて検討した。Yaminskyら37によると,濡れ性の悪い液体中の球と平板の間に生じる空隙の半径x0(m)は式(5)で与えられる。

  
x 0 = 2 a ( γ S γ SL ) Δ P (5)
Fig. 6.

Observed interface between Al2O3 particle and single crystal Al2O3 plate in liquid Ag. a) 1273 K (3 min), b) 1293 K (5 min) and c) 1333 K (9 min).

Fig. 7.

Schematic diagram of contact area of Al2O3 particle and single crystal Al2O3 plate in liquid Ag.

ただし,a:球の半径(m),γSL:固液の界面張力(N/m),∆P:毛管力(液体圧力と空隙圧力の差)(Pa)である。式(5)にYoungの式γSγSL=γL cos θを代入すると,式(6)が成立する。

  
x 0 = 2 a γ L cos θ Δ P (6)

a=37.5×10-6 m,γL=0.886 N/m38θ=約120°33,∆P=1.013×105 Pa(空隙内は真空と仮定)を代入すると,x0=21×10-6 mが得られ,直径42 µm程度の真空空隙が形成されると推定される。ただし,Yaminskyら37が導出した式(5)は球の半径aに対して,真空空隙の半径x0が十分に小さい条件で成り立つ近似式である。算出されたx0=21×10-6 mは球の半径a=37.5×10-6 mと比較してやや小さい程度であり,式(5)は本研究においては適用できないと考えれる。そこで,近似を用いない式を導出し,真空の空隙のサイズについて検討した。真空空隙が形成される場合,濡れないことによる毛細力は次の式で表される18

  
Δ p = 2 γ L cos θ z (7)

zは真空空隙の端部の単結晶Al2O3とAl2O3粒子との距離(m)である。ここで,zは幾何学的関係から球の半径a,真空空隙の半径x0

  
z = a 2 ( a 2 x 0 2 ) (8)

の関係がある。式(7)(8)より

  
x 0 = a 2 ( a + 2 γ L cos θ Δ p ) (9)

上述の値を用いて計算した結果,x0=26×10-6 mが得られ,直径52 µm程度の真空空隙の形成が推測される。一方,本研究で観察された空隙はFig.6より直径約45 µmである。従って,式(9)に基づいた数値と概ね一致しており,本実験において観察された空隙は毛管力に起因して形成された真空空隙であると推測される。このように焼結界面,真空空隙が観察されたことは,Al2O3粒子表面のPt-Pdの蒸着膜が液体Agに溶解したことを示唆していると考えられる。つまり,Pt-Pdの蒸着膜が存在する場合,液体Agと濡れ性が良いため,液体Agが焼結部から排出される傾向にはならず,真空空隙は形成されない。加えて,Pt-Pdの蒸着膜が存在すると液体Agと濡れるため,単結晶Al2O3板と接触せず,焼結界面が現れないと推測される。これらのことから,Pt-Pd蒸着Al2O3粒子は液体Agに取り込まれた後,表面のPt-Pd蒸着膜は液体Agに溶解し,Al2O3粒子が単結晶Al2O3板と接触して焼結が進行したと考えられる。

焼結界面,干渉縞と考えられるFig.6で観察された黒い領域と白い縞模様に関して,実際にAl2O3粒子が存在しているか検証するため,冷却後の試料の同箇所において形状計測を実施した。形状計測には3Dレーザー顕微鏡を使用した。なお,冷却後の試料において液体Agと単結晶Al2O3板とが密着して分離できなかったため,単結晶Al2O3板を通して本計測を実施している。Fig.8 a)に3Dレーザー顕微鏡により得られた観察像を示す。黒い領域,干渉縞が鮮明に観察できている。この干渉縞を利用して,粒子のサイズを算出した。Fig.8 a)においてx軸,y軸の2方向の干渉縞の情報に基づき獲得した輪郭座標データをFig.8 b)に示す。同図には同輪郭座標データに粒子が真球と仮定して近似した円も示している。獲得できた輪郭データは上面の一部分のみであるが,上手く円で近似できており,それぞれの円の直径は56, 55 µm,単結晶Al2O3とAr粒子の焼結のネック半径は8 µm程度であった。Fig.1(b)に示したふるい後のAl2O3粒子には同じようなサイズの粒子が存在しており,観察で対象とした領域にはAl2O3粒子の存在があったものと確認できた。以上より,本研究で提案した手法により液体Ag中におけるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面をリアルタイムで観察可能であることがわかった。

Fig. 8.

a) Observed image for sample after high temperature observation by laser microscope and b) obtained profile data and circle fitting.

4・3 モデル計算結果

単結晶Al2O3板を通したAr中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結の観察において,導出した気相中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結のモデル式(式(2))を用いて単結晶Al2O3板の荷重の焼結速度への影響について検討した。単結晶Al2O3板の質量m=15×10-6 kg,重力加速度g=9.8 m/s2,Al2O3粒子の半径a=37.5×10-6 m,固体Al2O3の表面張力の文献値γS=0.9975 N/m39式(2)に代入し,1373 Kにおける時間tと焼結ネック半径xの関係をN=1,2,10,100と単結晶Al2O3板の荷重の影響を考慮しないもの(式(1))について計算した。また,式(1),(2)中の第1項の温度依存に関しては,a:粒子半径,D:自己拡散係数,T:温度の比を用いて計算し18,以下の値を得た。

  
( a n K γ S V 0 D R T ) 0.228 = 1.4 (10)

ただし,ここでnの値は不明なため体積拡散の範囲である1~2の中間の値1.5を用いた。時間tと焼結ネック半径xの関係の計算結果をFig.9に示す。図より粒子が少ない場合は,単結晶Al2O3板の荷重が集中し,圧力が高くなるため焼結の進行が速くなっているものの,粒子が増えるにつれて荷重の影響を考慮しない時と同じような焼結速度になっている。したがって,提案しているその場観察手法においては,単結晶Al2O3板と接する粒子が少ない時に焼結は促進されることになる。実際の実験条件下において,Al2O3粒子は単結晶Al2O3板の下に数十個配置しているが,観察時に何個単結晶Al2O3板の下に存在するかを厳密に知ることは難しい。また,Al2O3粒子は様々な粒径をもつため,単結晶Al2O3板に存在していたとしても単結晶Al2O3板と接触していない粒子も存在している可能性もあり,接触する粒子についての詳細な議論は困難である。以上のことから,単結晶Al2O3板の荷重の影響はAl2O3粒子の個数に依存し,Al2O3粒子の個数が少ない場合に焼結速度を促進し,一方で,Al2O3粒子の個数が多い場合にはその影響が小さくなる,つまり,観察におけるAr中の焼結の結果は単結晶Al2O3板の自重により増加している可能性があり,荷重の影響を受けないAr中の焼結の結果が観察におけるAr中の結果よりも小さいことが推測される。

Fig. 9.

Calculated result of effect of particle number on neck radius at sintering interface between Al2O3 particle and single crystal Al2O3 plate under Ar gas atmosphere.

次に液体Ag中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結の観察において,導出した液体金属中のAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結のモデル式(式(4))を用いて液体Ag中のAl2O3粒子に働く浮力の焼結速度の影響を検討した。液体Ag,固体Al2O3の文献値の密度40,41から計算した密度差Δρ=ρAgρAl2O3=5.34×103kg/m3, g=9.8 m/s2, a=37.×10-6 m,液体Agの表面張力γL=0.895 N/m38,固体Al2O3の表面張力γS=0.9975 N/m39を代入し,時間tとネック半径xの関係を計算した。また,比較のため浮力の影響を考慮していない式(3)についても時間tとネック半径xの関係を計算した。ここで,式(3),(4)中の第1項の温度依存に関しては式(7)と同じ値を用いている。計算した結果をFig.10に示す。図より,式(3)(4)の計算結果はほぼ同じであり,単結晶Al2O3板を通した焼結挙動のその場観察手法において,液体金属とAl2O3粒子の密度差に起因する浮力の焼結への影響は小さいことが分かる。

Fig. 10.

Calculated result of effect of buoyancy force on neck radius at sintering interface between Al2O3 particle and single crystal Al2O3 plate in liquid Ag.

4・4 焼結速度への濡れ性の影響

Arガス中におけるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結ネック半径の時間依存性,液体Ag中におけるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結ネック半径の時間依存性の比較をFig.11に示す。Arガス中については3つの実験の結果を示している。液体Ag中の観察は最大120 minまで実施したが,23 min以降はAgの蒸気により観察窓が曇ったため,23 min以降は粒子径の計測に適切な観察像が得られなかったことから実験結果として22 minまでの結果を示している。図より,液体Ag中のネック半径は22 minで4.5 µm程度である。Fig.8 a)の冷却後の観察では8 µm程度のネック半径を示しているが,これは23 min以降の保持により焼結が進んだためと推測される。一方で,Arガス中のネック半径は20~30 minで2~3 µm程度であり,液体Ag中のネック半径の時間変化はArガス中よりも大きい結果となっている。Figs.9 and 10で示したようにArガス中では単結晶Al2O3板の荷重により焼結が促進される可能性があり,液体Ag中では浮力による焼結の促進の影響が小さいことが分かっている。つまり,Arガス中では単結晶Al2O3板の荷重により焼結が促進される可能性があるにも関わらず,浮力による焼結の促進の影響がほぼない液体Ag中の方が焼結の進行が速い結果となっている。この結果は液体Ag中の焼結において,液体Agと単結晶Al2O3板やAl2O3粒子が濡れないことにより焼結が促進されていることを意味している。このように,本研究では提案した手法を用いて実施した焼結のその場観察において,濡れ性が悪いことにより焼結が促進されることを示唆する結果を得た。また,Ar中のネック半径の時間変化は大きくばらついている。これは上述のように単結晶Al2O3板に接触するAl2O3粒子の数に焼結速度が大きく依存するといったFig.9の計算結果に基づくと,実際に単結晶Al2O3板に接触していたAl2O3粒子の数が3つの実験で異なっていたことが推察される。

Fig. 11.

Experimental results of time dependence of neck radius at sintering interface between Al2O3 particle and single crystal Al2O3 plate under Ar gas atmosphere and in liquid Ag.

5. 結論

本研究では単結晶Al2O3板を通して液体金属中におけるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板との焼結界面をレーザー顕微鏡で観察する手法を提案し,Arガス中および液体Ag中におけるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板間の焼結界面のその場観察を試みた。また,同観察手法に対する焼結速度モデル式を導出した。その結果以下の知見を得た。

単結晶Al2O3板を通して,Arガス中および液体Ag中におけるAl2O3粒子と単結晶Al2O3板との焼結界面を黒い領域としてリアルタイムで観察できることが分かった。また,焼結速度モデル式の計算結果から,気相中では単結晶Al2O3板の荷重が大きく焼結速度に影響する一方,液体金属中の焼結では浮力は焼結速度にほとんど影響しないことが明確となった。さらに,液体Agと単結晶Al2O3板やAl2O3粒子が濡れないことにより焼結が促進されていることが示唆された。

謝辞

本研究は一般社団法人 日本鉄鋼協会 第28回鉄鋼研究振興助成を受けて実施したものである。また,本研究の実施にあたり大阪大学の古野圭起氏,前田尚輝氏に実験で協力を得た。ここに感謝の意を表する。

文献
 
© 2023 The Iron and Steel Institute of Japan

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