Tetsu-to-Hagane
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Effect of Parallel Granulation with Inclined Mixing of Limestone on Melt and Assimilation Behavior
Koji Osuga Takero AdachiShintaro YamazakiKazuya Miyagawa
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2023 Volume 109 Issue 5 Pages 355-364

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Abstract

Sinter plant is becoming ‘‘a waste eater’’ that actively recycle the raw materials generated in the steelworks. Especially, the recycling demand of slags in steelmaking processes has been increasing. These slags, which contains substances with a high melting point, is well known to reduces the fluidity of the melt. We recognized that mixture of two types of granulates, a donor of melt (High CaO/Fe2O3) and a receptor of melt (Low CaO/Fe2O3), formed a homogeneous sinter cake when using parallel granulation process. By adjusting the adhesive layer components of two types of granulates, the melt from donor moves to receptor and assimilation can be promoted. So, we have developed the granulation method with inclined mixing of limestone that has improved both productivity and sinter strength even when using steelmaking slag. The promotion of melt assimilation state has been proved by using SEM with mineral phase analysis function and X-ray CT.

1. 緒言

製鉄所における焼結工場は,粗鋼を生産する際の副産物に含まれている資源物質を回収・利用(リサイクル)するWaste Eaterとしての役割を持つ1)。発生品の中でも,製鋼工程で生じるスラグのリサイクル需要が特に高まっている。製鋼スラグは,既に一度滓化しているため,比較的溶融しやすい2)とされる一方で,高融点のAl2O3,MgOの含有量が多く,生成する融液の流動性が低い。また,溶融の起点となる石灰石の代替として使用されることが多いため,鉱石層の通気性を悪化させ,生産性を低下させることが知られている3)。加えて近年では,主要な粉鉱石の品位が低下し,Al2O3等の不純物含有量が増加している。そのため,焼結鉱の成品Al2O3が上昇傾向にあり,生産性の低下および歩留・強度,耐還元粉化性の悪化4)に加え,高炉スラグ比増加,排滓性悪化が懸念されている。

安定した高炉操業を維持するためには,焼結鉱の安定生産および品質改善が必須であり,新たな低Al2O3鉄源として,高品位の微粉鉱石(ペレットフィード)が注目5)された。ペレットフィードは選鉱過程で粉砕されるため微粉が多く,造粒時に強度の弱い粗大粒を形成6)し,焼結機への装入時に粉化して通気性を悪化させる。弊社では焼結プロセスでの微粉鉱石多配合に向けて,並列造粒設備の片系統で2層構造ミニペレットを製造する造粒法7)を開発した。このとき,微粉鉱石と返鉱核から形成されるミニペレットは,CaO/Fe2O3(以下,C/F)が低く,融液生成が少ないにも関わらず,従来型の石灰石を含む高C/Fの擬似粒子から生成する融液と同化し,均質な焼結ケーキを形成する知見を得た。これは,高C/Fと低C/F擬似粒子を混合焼成することで,局所的な溶融促進と融液移動に伴って同化が促進され,生産性と焼結強度を共に向上し得る可能性を示唆する。

既往研究では,擬似粒子内で化学組成の偏在を狙った造粒法8,9)や,原料を分割造粒して化学組成を制御する手法10,11)が考案されている。さらに,特定原料のバイパス添加により造粒原料内での賦存状態を制御することで,造粒強化や炭材燃焼制御をする各種各様の造粒法1215)が開発されてきた。しかし,並列造粒設備における最適な配合造粒設計は,使用する鉱石配合条件や設備構成によって異なり,未だ明らかとは言えない。

本報では,異なる成分の造粒物を作り分けることが可能な並列造粒設備の利点を活かし,転炉スラグ配合下で,2種類の異なる機能を有する擬似粒子を混合して焼成する石灰傾斜配合造粒の有効性を確認した。石灰傾斜配合造粒では,高C/Fの融液供与体(Donor)と低C/Fの融液受容体(Receptor)の混合焼成によって,融液流動に伴う通気パスの形成促進による通気改善と造粒物間の同化促進による焼結強度向上の両立を図る(Fig.1)。また,鉱物相分析機能付きSEMで造粒物間のミクロな溶融同化挙動の観察とX線CT分析1618)でマクロな焼結ケーキ構造変化の評価を試みた。

Fig. 1.

Conceptual image of granulation with inclined mixing of limestone.

2. 実験方法

2・1 転炉スラグの物性評価試験

製鋼スラグの中でも転炉スラグはCaOや鉄分を多く含有し,比較的リンなどの不純物が少ないため,焼結原料の石灰石代替としてリサイクルを行うメリットが大きい。実験に用いた転炉スラグの化学成分をTable 1に示す。粗粒部(5-10 mmm)はAl2O3やFree-CaOを比較的多く含有し,造粒物の付着層となる微粉部(0-1 mm)にもFree-CaOが多く含まれている。5-10 mmの粗粒転炉スラグを樹脂埋めした後,断面組織をSEMおよびEDXで観察して鉱物相を特定した。

Table 1. Chemical composition of LD converter slag.
Particle sizeT.FeM.FeFeOSiO2MgOAl2O3CaOFree-CaOP
0 − 1 mm19.43.013.410.56.91.243.911.70.7
1 − 3 mm24.63.315.011.26.11.344.310.10.8
3 − 5 mm22.14.516.210.95.81.443.910.30.8
5 − 10 mm23.11.616.312.06.51.448.011.60.8

次に,鉱石との溶融同化性を評価するため,φ5 mmのアルミナ坩堝の底に鉄鉱石粉(-250 µmの南米系鉱石)を敷き詰め,1-2 mmサイズの石灰石粒または転炉スラグ粒を載置したものを,ゴールドイメージ炉を用いて焼成した。加熱条件は,100°Cまで100°C/minで余熱し,1250°Cまで300°C/minで昇温した。1250°Cに到達した後,試料は炉内で冷却した。取り出した試料を縦方向に切断し,融液と鉄鉱石との溶融同化状態を観察した。

2・2 拡散対試験

異なるC/F組成の擬似粒子間での融液同化挙動を評価することを目的とし,タブレットを2層に重ねた拡散対で溶融同化界面の現象を観察した。タブレット原料は,融液供与体と融液受容体の付着層を模擬し,後述する鍋試験で用いた造粒原料の1 mm以下のものを使用して配合した。なお,ここで用いた石灰石(-1 mm)中の0.5 mm以下の粒子割合は51 mass%である。融液供与体を模擬した上部タブレットは,φ10 mm,高さ10 mmになるように20 kNで加圧成形した。また,融液受容体を模擬した下部タブレットは,流動した融液が流れ落ちないように一回り大きく,φ20 mm,高さ10 mmになるように40 kNで加圧成形した。融液供与体と融液受容体への石灰石の傾斜割合は,Table 2のようにCase1-1均等配合(50/50)からCase1-5全量片寄配合(100/0)まで変化させた。融液供与体の溶融性を示す石灰石由来のCaOとFe2O3の質量比(C/F)は,均等配合の0.10から最大0.20まで増加した。さらに融液受容体のCaO源の粒度影響を調査するため,Case1-3傾斜配合条件(75/25)において,石灰石中の0.5 mm以下の割合を0 mass%,50 mass%,100 mass%と変化させた。このとき,融液供与体の石灰石粒度およびC/Fは一定とした。転炉スラグは,近傍の融液量を増加させて固相率を下げる狙いで,高C/Fとなる融液供与体に配合した。

Table 2.

Blending condition of diffusion pair test.

成形したタブレットは,融液受容体のタブレットの上に融液供与体のタブレットを重ねた状態で高周波電気炉内に静置し,大気中かつ500°Cで3分保持した後に,1250°Cで3分保持して焼結層内と同等の熱履歴を与えた(Fig.2)。なお,石灰石粒度を変更した実験では,融液同化挙動の差を際立たせるため,1250°Cでの保持時間を2分とした。冷却後の試料を取り出し,樹脂埋めした後,縦方向に切断して断面観察を行った。鉱石の溶融特性を評価する方法として,タブレット内への融液の浸透距離を測る手法が報告されている19)。本実験では,タブレット内の広い範囲に融液の流動による浸透が見られたため,断面の浸透面積から同化率を求めた。ここでの同化率は,融液受容体組成のタブレット断面積に対する融液浸透部の占める割合とした。さらに,鉱物相解析機能付きSEM(機種名:FEI製MLA650F)を用いて,浸透界面の融液流動に伴う同化状態を観察した。このとき,初期の融液浸透挙動を観察するため,1250°Cの保持時間を0.5分に短縮した試料を観察した。MLA650Fでは,予め登録したEDXのスペクトルデータベースを元に鉱物相の分類を行う。カルシウムフェライト組成は,SiO2,Al2O3などのスラグ含有量で区別できるように分けてデータベースに登録した。

Fig. 2.

Experimental equipment and heating condition of diffusion pair test.

2・3 焼結鍋試験

石灰傾斜配合造粒の焼成影響を評価するため,焼結鍋試験(底面280 mm×280 mm×高さ590 mm)を実施した。鍋試験に供した融液供与体と融液受容体の分割造粒における原料配合をTable 3に示す。鉄鉱石は,豪州産,南米産の粉鉱石Ore A,Bおよび北米産の微粉精鉱Ore Cを使用した。副原料は,成品塩基度が2.1,SiO2濃度が5.4%となるように配合した。ベース条件は,石灰石および転炉スラグを均等に配合した。合計の原料配合は一定とし,Case2-1~Case2-8では,融液供与体と融液受容体への石灰石傾斜割合を均等配合(50/50)から片寄配合(90/10)まで変化させた。なお,鍋試験用の石灰石(-3 mm)は,1 mm以下の粒子割合が43%,0.5 mm以下の粒子割合が22%のものを使用した。転炉スラグは10 mm以下に篩ったものを使用し,拡散対試験と同様の理由で融液供与体に配合した。このとき,融液供与体のC/Fは,均等配合の0.12から最大0.25まで増加した。ここでのC/Fは,生石灰,石灰石由来のCaOのみを考慮し,難溶融性の転炉スラグ中のCaOは計算に含めていない。

Table 3.

Blending condition of sintering pot test.

造粒原料は,ドラムミキサ(直径820 mm,幅80 mm)で別々に造粒した後,融液供与体が焼成する原料全体の35 mass%となるように融液受容体と混合した。焼成は吸引圧一定(1600 mmAq)で行い,排ガス中のCO2濃度が0.5%以下となった時点を焼成完了とした。焼成後のシンターケーキは,高さ方向に3分割して2 mの高さから4回落下させたものを篩分け,10 mm以上のものを成品とした。篩分けた成品全量をさらに2 mの高さから4回落下させ,落下強度を測定した。落下強度は,試験後の10 mm以上の成品残留割合とした。また,成品の一部を電気炉での還元試験に供し,耐還元粉化性(RDI)と試験時の到達還元率を測定した。さらに,焼結構造の変化を調査するため,島津製SCT-7800を使用してシンターケーキの内部構造を3D撮影した。シンターケーキは,同じ配合条件で小型鍋(φ130 mm×高さ350 mm)を用いて焼成し,樹脂埋めしたものを底面から150 mmの位置で切断して上下に分割した。中心部の断面画像の焼結部と気孔部を2値化処理し,気孔構造に着目したブランチ解析20)で気孔の向きと太さを評価した。

3. 結果および考察

3・1・転炉スラグの溶融同化特性

転炉スラグの凝固相を観察した結果をFig.3に示す。画像から各組織の面積率を算出すると,濃い灰色部のC2S組織が約50%で最も多く存在していた。次いで,薄い灰色部のAl2O3等を溶解したSFCA(4元系カルシウムフェライト)組織が約37%,白色部の高融点である(Fe,Mg)O固溶体(マグネシオウスタイト)が約13%共存していた。他にも金属鉄や未滓化の石灰石などが一部で確認された。

Fig. 3.

Microstructure of LD converter slag.

石灰石と転炉スラグの鉱石との同化試験結果をFig.4に示す。石灰石は鉄鉱石と完全に同化していたが,転炉スラグの大部分は同化せずに残留していた。石灰石は鉄鉱石との接点で低融点の融液を生成し,周囲に流動して合体しながら同化が進む。転炉スラグは部分的に溶融するが,高融点の物質を含有するため生成した融液の構造粘性が高く,融液の流動性が低いため同化が停滞したものと考えられる。即ち,転炉スラグの溶融同化を促進し,焼結鉱組織に取り込むためには,近傍での融液生成を促進し,固相率を低減することが有効であると考えられる。

Fig. 4.

Comparison of melting and assimilation behavior limestone and converter slag.

3・2 擬似粒子間の溶融同化性評価

拡散対試験において,融液供与体と融液受容体への石灰石の傾斜割合を変えたときの同化率をFig.5に示す。均等配合(50/50)や片寄配合(100/0)と比較して,傾斜配合(25/75)で同化率が向上した。均等配合では,上部の融液供与体のタブレットが原型を保っており,融液の生成量が少なく流動しなかったため,融液受容体への浸透が少なかったものと考えられる。一方で,片寄配合では,融液供与体が溶融により変形しており,融液の流動が大きいにも関わらず,同化率が低かった。融液の浸透挙動には,融液受容体の空隙率も影響する。融液受容体の空隙率は約24 vol%であるが,各配合条件でわずかな差が生じる。意図的に5 vol%の気孔率変化を与えて同様の試験を行ったが,同化率に有意な差が認められなかったことから,本拡散対試験における同化率の変化は,融液受容体への融液浸透挙動の差によるものと考えられる。

Fig. 5.

Effect of limestone inclination ratio on assimilation rate.

同化率の異なる拡散対の融液浸透界面をMLA650Fで観察した(Fig.6)。均等配合(50/50)では,融液供与体からの滴下融液が少なく,タブレット境界での同化は進行していなかった。融液受容体の石灰石粒の近傍で生成した高CaO融液は,鉱石と完全に同化せずに残留している様子が確認された。傾斜配合によって,融液供与体からの滴下融液の増加に伴い,タブレット境界での同化が認められた。さらに,同化率の高い傾斜配合(75/25)では,CaO濃度の高いCaO・2Fe2O3(CF2)組成の融液が粗大な鉱石粒子間を櫛歯状に浸透していた。一方で,同化率の低い片寄配合(100/0)では,融液の浸透界面がAl2O3やSiO2等の脈石成分を溶解した低流動性の融液21)に変化し,タブレットの浅い部位で浸透が停止していた。このことから推察される融液の浸透挙動は,次のように考えられる(Fig.7)。傾斜配合(A)では,融液受容体で生成する融液がCaOの補給源となり,高流動性を維持した融液が局所的に深く浸透したものと推定される。片寄配合(B)では,融液受容体での融液生成が少なく,平面状に脈石や鉱石を溶解しながら浸透したため,融液が流動性を失って浸透が浅い位置で停止したものと推定される。

Fig. 6.

Mineralogical phasis map of cross-sections of the diffusion pair.

Fig. 7.

Schematic diagram of permeation behavior of the melt.

3・3 石灰石粒度影響評価

前節で示した融液浸透挙動から,融液受容体の石灰石にはCaOの補給源として作用する適正な粒度があるものと考えられた。石灰石粒度を変化させた拡散対試験の結果をFig.8に示す。0.5 mm以上の石灰石粒割合が多いほど同化率は高くなった。融液受容体での融液生成挙動を観察するため,上側のタブレットを融液が生成しない鉄鉱石に変えて拡散対試験を行い,断面をMLA650Fで観察した(Fig.9)。0.5 mm以下の微細な石灰石粉は,分散する融液ひとつひとつの量が少なく,周囲の脈石を溶解して高融点組成となっていた。一方,0.5 mm以上の石灰石粒では,融液が局所的に偏在したまま,低融点の高CaO組成を維持していた。浸透する融液の流動性を再生するには,浸透でつながる距離に高CaO融液が存在する必要がある。石灰石が細かい場合,粒子数が増えて距離が近くなるがCaO濃度は低くなる。このことから,融液受容体に点在する融液が,融液供与体から浸透してきた融液の流動性を再度引き上げて同化を促進するには,0.5 mm以上の石灰石粒の存在が必要と考えられる。

Fig. 8.

Effect of particle size of limestone to assimilation rate.

Fig. 9.

Mineralogical phasis mapping of the melt receptor.

以上の拡散対試験の融液浸透挙動から,2種類の異なる組成の擬似粒子間の溶融同化促進には,融液受容体でも融液生成が必要であり,石灰傾斜配合造粒において石灰石の傾斜割合に適正範囲が存在すると推測された。また,融液の浸透は高CaO濃度のCF2組成が主体となり進行していることから,融液供与体の付着層組成のC/FはCF2の平衡組成に近い0.175付近が適しているものと考えられる。さらに,融液受容体のCaO源は0.5 mm以上の粒を含む石灰石が適していることが分かった。

3・4 石灰傾斜配合による焼成挙動変化

焼結鍋試験において,融液供与体と融液受容体への石灰石の傾斜割合を変えたときの焼成結果をFig.10に示す。図中の破線はベース条件の焼成結果を示す。焼成時間は,低C/F領域でのバラつきが大きいが,C/F=0.18以上では安定してベース条件よりも低下した。一方,歩留はC/Fの増加に対して,C/F=0.15~0.17で極大を示した。この結果,焼成時間の低下と歩留の向上を両立できるC/F=0.17付近において,生産性が最大化したと推定される。

Fig. 10.

Productivity improvement at pot test. (a) Productivity (b) Sintering time (c) Sinter yield

また,焼結品質に関する焼成結果をFig.11に示す。落下強度は焼結歩留と同様にC/F=0.15~0.17で極大を示した。この変化は前述した拡散対試験における同化率の変化と一致する。すなわち,石灰石の傾斜割合が高すぎると,融液受容体で浸透の起点となる高CaO融液の生成量が減少し,擬似粒子間の同化が不十分になるものと考えられる。一方,耐還元粉化性(RDI)は,落下強度が低下するC/Fの範囲で改善したが,落下強度が改善する範囲ではベースに対して非悪化レベルであった。このときの還元率はほとんど変化していないことから,RDIの変化は鉱物組織の存在形態による影響であることが推測される。すなわち,擬似粒子間の溶融同化を促進すると,高C/F組成のカルシウムフェライト主体の組織と低C/F組成のヘマタイト主体の組織が密に共存した構造となり,被還元性の違いによる還元時の構造変化で亀裂が入りやすく,還元後の基質強度が低下したためと考えられる。相反する焼結強度と被還元性状の両立は困難であり,要求される焼結品質に応じ,生産性を最大化し得る条件で擬似粒子の成分を設計する必要がある。

Fig. 11.

Quality of sinter product improvement at pot test. (d)Shatter strength (e) RDI (f) Reduction degree

3・5 シンターケーキ構造変化の評価

焼結鍋試験のシンターケーキの構造変化をFig.12に示す。融液供与体への石灰石の傾斜割合が高くなるにつれ,空隙率が増加した。融液の流動による気孔の再配列が促進されたものと考えられる。X線CTの断面像から,充填層の通気性に影響する縦向き,且つ,太い気孔の合計長さをブランチ解析で求めた。気孔の向きが45°のとき,垂直と水平方向のガス流れが同等となるため,より鉛直方向に近い気孔が通気性向上に有利と考えられる。また,幅10 mm以下の気孔は,層内を貫通しておらず閉気孔であることが多かった。そこで,鉛直方向から±30°の気孔を縦向きとし,幅10 mm以上の気孔の長さを抽出した。

Fig. 12.

X-ray CT image of sinter cake.

焼成時間が短縮した石灰石の傾斜条件では,シンターケーキ上部の鉛直方向の気孔が増加していた(Fig.13)。特に融液供与体への石灰傾斜割合が60%(C/F=0.14),75%(C/F=0.18)で鉛直方向の気孔長さが大きく増加したが,90%(C/F=0.25)で減少に転じた。擬似粒子間の同化が最大化した融液供与体のC/F=0.17付近では,生成した融液がシンターケーキの骨材となる融液受容体へ浸透し,同化が進行することで鉛直方向の通気パスが形成されるものと考えられる。石灰石の傾斜割合が高すぎると,生成した多量の融液が融液受容体へ浸透せず,粒子間の隙間に留まった結果,鉛直方向の気孔を閉塞したものと推測される。上層部の構造変化は,焼成前半から末期までの鉱石層の通気性に強く影響を及ぼしたもの考えられる。一方,シンターケーキ下部は,明確な鉛直方向の気孔長さの変化が見られなかった。上層部と比較して下層部は,高温保持時間が長いため,融液の流動範囲が広く,擬似粒子毎の成分差による溶融同化性への影響が表れなかったものと推測する。

Fig. 13.

Effect of inclined mixing of limestone on vertically void length. (a) Upper part (b) Bottom part

石灰傾斜配合造粒における溶融同化挙動を模式的にFig.14に示す。従来の均等配合造粒では,全ての擬似粒子が同じような溶融挙動となるため,局所的な融液の流動による気孔の再配列が生じにくい。石灰傾斜配合造粒では,高C/Fの融液供与体が優先的に溶融して流動化することで大気孔が導入され,融液受容体への同化が進行することで,鉛直方向の貫通気孔が形成されやすいものと考えられる。さらに,擬似粒子間の同化が促進される条件であれば,融液生成の乏しい融液受容体も融液供与体からの融液と同化し,高強度かつ均質な焼結ケーキを形成するものと考えられる。

Fig. 14.

Schematic diagram of effect of melt and assimilation promotion. (Online version in color.)

4. 結言

難溶融性の転炉スラグ配合下において,並列造粒設備における石灰傾斜配合造粒は,造粒物間の同化促進と通気パスの形成促進を両立し,生産性を最大化することができた。さらに,融液の供与体と受容体間の溶融同化挙動を調査した結果,以下の知見を得た。

(1)鉱物相解析機能付きSEM(MLA650F)の観察結果より,造粒物間の接点において,融液は供与体から受容体へと,受容体中の石灰石粒を起点として櫛歯状に浸透する。

(2)X線CTによるシンターケーキの構造評価より,溶融同化を促進すると通気に有利な鉛直方向の太い気孔が焼結体の上層部に多く形成される。

文献
 
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