2024 Volume 110 Issue 12 Pages 899
鉄鋼分野において,品質管理の高度化,生産の高効率化,省コストの観点から,非破壊分析やオンサイト分析に対する要求が近年,高まってきています。また,これらの分析技術は,使用されている鉄鋼材料のモニタリングにも応用できるため,橋梁や建築物などのインフラや配管などの生産設備の安全性の向上にも貢献することができます。さらに,日本鉄鋼協会学術部会ロードマップにおける2021年研究会設立の重点領域では,「鉄鋼製造の省エネルギー・省資源化に資する分析・解析技術 特に,オンサイト・オンライン分析法の製造ラインへの適用技術」が,また,評価・分析・解析部会のロードマップでは今後の課題として,「実環境下・超真空を用いない分析の実用化」が掲げられていることからも,非破壊分析やオンサイト分析の重要性がわかります。過去の日本鉄鋼協会の講演大会や関連するシンポジウムなどでは,小型全反射蛍光X線装置を用いた鉄やクロムの微量分析,発光現象を利用した非金属介在物・スラグ中の遊離CaO・耐熱鋼被膜の非破壊分析,テラヘルツ波を用いた鉄筋コンクリートの非破壊分析,酸素センサーを用いた耐熱鋼被膜の成長過程の観察,小型残留応力測定装置を用いた金属材料の残留応力の測定,電磁浮遊を利用した液体金属の物性測定など様々な非破壊分析やオンサイト分析に関する研究発表が数多くありましたが,それぞれの研究者が独自の視点から研究を行っていました。
そのような背景の中,鉄鋼に関連する材料について,非破壊分析やオンサイト分析を行ってきた研究者や技術者が集い,最近の鉄鋼産業が必要とする非破壊分析やオンサイト分析の提案を行おうとしたのが,2021年に発足した日本鉄鋼協会「鉄鋼関連材料の非破壊・オンサイト分析法」研究会になります。本研究会では,「プロセス分析(耐火物の非破壊分析)」,「被膜分析(酸化スケールのモニタリング,非破壊分析)」,「製品分析(使用中の鋼材の非破壊分析)」,「要素開発(非破壊オンサイト分析が可能な技術の探索)」の4つのテーマを設定し,それぞれのテーマについて各研究者が研究活動を行ってきました。そして,最終的には,全5回の研究会および日本鉄鋼協会講演大会において3回の予告セッションを開催することができました。今回の鉄と鋼の特集号「鉄鋼関連材料に関連する非破壊 / オンサイト分析法」は,これらの成果をまとめることが主な目的でありましたが,それ以外の鉄鋼関連材料に適用できる非破壊分析技術やオンサイト分析技術に関する投稿も募りました。その結果,11報の論文を集めることができました。興味を持っていただいた諸学者の方に,本特集号をご拝読頂き,ご意見やご提案などをして頂けますと大変ありがたく存じます。頂いた貴重なご意見などは,本研究会の研究者の今後の研究の大いなる発展につながることは間違いありません。
最後に,本特集号の執筆の依頼をご快諾頂いた著者の皆様および本特集号企画の実施に関してご尽力いただいたた日本鉄鋼協会編集グループと編集委員会の皆様に対して心より厚く感謝申し上げます。