Tetsu-to-Hagane
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Rapid Identification of Crystal Structure of Alumina Scale on Heat-resistant Alloy
Susumu Imashuku
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2024 Volume 110 Issue 12 Pages 918-924

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Abstract

Identifying a crystal structure of alumina (Al2O3) scale is critical for evaluating the performance of heat-resistant alloys because α-Al2O3 is stable and protective against high-temperature oxidation and corrosion but θ- and γ-Al2O3 provide poor oxidation resistance. Conventional methods to identify crystal structures of Al2O3 scales are time-consuming. Herein, the author proposes a method to rapidly identify crystal structures of Al2O3 scales on β-NiAl by obtaining their cathodoluminescence (CL) spectra. α-, θ-, and γ-Al2O3 can be identified by detecting a sharp peak at 695.8 nm and 686.3 nm, and a broad peak at around 700 nm, respectively, in CL spectra. Concentrations of α-, θ-, and γ-Al2O3 scales can be determined roughly from intensities of these peaks. This method can be applied to areas ranging from the millimeter to micrometer scale, and the acquisition time for the CL spectra was less than 10 s. The results indicate that obtaining CL spectra contributes to the identification of crystal structures of Al2O3 scales on heat-resistant alloys and a reduction in time to evaluate the performance of heat-resistant alloys.

1. 諸言

耐熱合金は航空機,発電用ガスタービン,化学プラント,ボイラなどに使用されている産業上重要な材料である1,2,3,4,5,6,7)。耐熱合金が使用されている高温腐食環境下では,その表面に熱力学的に安定で融点が高いα-Al2O3,Cr2O3あるいはSiO2の緻密で均一な被膜(スケール)が形成されることで,耐熱合金のさらなる高温腐食の進行を防ぐ1,6,8)。これらの被膜中で,α-Al2O3は高温腐食に対して最も安定であるので,α-Al2O3を形成する合金は,900°Cを超える厳しい環境下で使用される3,5,7,9,10)。α-Al2O3を形成する合金は,1200°C以下では,α-Al2O3が形成される前にθ-Al2O3やγ-Al2O3といった準安定相が酸化初期に形成される。これは,α-Al2O3の成長速度がθ-Al2O3やγ-Al2O3よりも小さいためで,例えば,900°Cでは,α-Al2O3の成長速度はθ-Al2O3やγ-Al2O3より2桁程度小さい4,6,11,12,13)。この成長速度の違いが原因で,Al2O3の結晶構造が異なると,被膜の形態が異なる。α-Al2O3は成長速度が小さいために,緻密な被膜を形成する。一方,θ-Al2O3やγ-Al2O3は成長速度が大きいために,針状あるいはウイスカー状の被膜を形成する4,6,11,12,13,14,15)ので,高温腐食の進行を防ぐことができない。したがって,耐熱合金に形成されたAl2O3スケールの結晶構造を同定することは,耐熱合金の性能を評価する上で重要である。

Al2O3スケールの結晶構造の同定には,一般的に斜入射X線回折が利用されているが,測定に1時間程度の時間がかかる。顕微ラマン分光法を用いれば,数秒間の測定で,α-Al2O3とθ-Al2O3を識別することが可能である16)が,1回の測定で直径数µmの領域しか測定できないので,広い領域の情報を得るには,時間がかかる。そこで,比較的広い領域でAl2O3スケールの結晶構造を迅速に同定できる手法があれば,Al2O3スケールを形成する耐熱合金の評価にかかる時間を短縮することができる。

著者は,Al2O3スケールの結晶構造を迅速に識別する方法として,カソードルミネッセンス(Cathodoluminescence:CL)法に着目した。CL法は,電子線照射によって価電子帯の電子が伝導帯,欠陥準位あるいは不純物準位に励起されることで,価電子帯に正孔が生じ,この電子と正孔が再結合あるいは,伝導帯の電子が不純物準位や欠陥準位の励起状態に落ち込み,脱励起する際に発生する紫外から赤外領域域の光を測定する方法である17,18,19,20)。著者らは,耐熱鋼(Fe-Cr-Al合金)表面に形成されたα-Al2O3スケールは,CLスペクトルにおいて,695 nmに強いピークを持つことを過去の研究によって示した21,22,23,24,25)。また,695 nmの鋭いピークを検出することでα-Al2O3を同定でき,その発光強度からα-Al2O3スケールの膜厚を推定することができることを示した。一方,θ-Al2O3は685 nmにピークを持ち26),γ-Al2O3は700 nm付近を頂点とするブロードなピークを持つ26,27)ことが報告されている。著者らは,過去に,高分解能の分光器を用いて,CLスペクトルのピーク波長から耐熱合金(β-NiAl)表面に形成されたα-Al2O3とθ-Al2O3を識別できることを示した28)。α-Al2O3とθ-Al2O3のピーク波長が近いことから高分解能の分光器を用いた。一方,γ-Al2O3のピーク強度はα-Al2O3の100分の1以下である26)ために,高分解能の分光器では,感度が不十分であったために,耐熱合金表面に形成されたγ-Al2O3のピークを検出することができなかった。

本研究では,高感度の分光器を用いてCLスペクトルを取得することで,耐熱合金表面に形成されたγ-Al2O3のピークの検出を目指した。しかし,分光器の感度を向上させれば,波長分解能を犠牲にすることになるので,α-Al2O3とθ-Al2O3のピークを識別できない可能性がある。そこで,この分光器を用いて,α-Al2O3とθ-Al2O3を識別できるかについても調査した。これら結果をもとに,本研究では,Al2O3スケールのCLスペクトルから,耐熱合金表面に形成されたAl2O3スケールの結晶構造を同定する手法を確立する。ここでは,様々な温度および保持時間でβ-NiAl酸化することで形成されたAl2O3スケールを測定対象とした。β-NiAlは,1600°Cを超える融点を有し,Ni基超耐熱合金表面のコーティング材などに利用されている重要な耐熱合金である29)

2. 実験方法

今回測定に用いたβ-NiAlはアルミニウム(純度99.9%, 株式会社平野清左衛門商店)とニッケル(純度99.9%, 株式会社平野清左衛門商店)の小片をアルミナ坩堝に入れ,高周波誘導炉を用いて,溶解することで作製した。作製したβ-NiAlの形状は,直径11 mmの棒状であり,その組成は,蛍光X線分析装置(ZSX Primus II, 株式会社リガク)によってNiとAlがそれぞれ,73.0 massおよび27.0 mass%であることを確認している。棒状のβ-NiAlはダイヤモンドカッターを用いて,厚さ1 mm程度のディスク状に切り出し,その表面を600, 1200, 2400番の研磨紙を用いて研磨し,粒径1 µmのダイヤモンドスラリーで鏡面に仕上げた。その後,大気中で所定の温度(1100, 1000, 800°C)および所定の保持時間(1, 4, 10 時間)で熱処理を行うことで,ディスク状のβ-NiAl表面にAl2O3スケールを形成させた。各試料の熱処理温度と保持時間をTable 1に示す。

Table 1. Sample names, heat-treatment conditions of temperature and holing time, and identified phases via grazing incidence X-ray diffractometry (GIXRD) and CL spectra.

Sample name Heat-treatment condition Identified phase
Temperature [°C] Holding time [h] GIXRD CL spectra
A 1100 10 α-Al2O3 α-Al2O3
B 1000 1 θ-Al2O3 θ-Al2O3, NiO
C 1000 4 α-Al2O3, θ-Al2O3 α-Al2O3, θ-Al2O3, NiO
D 800 1 n.d. γ-Al2O3
E 800 10 n.d. θ-Al2O3, γ-Al2O3, NiO

n.d. indicates not detected

CLスペクトルの測定は,Fig.1に示す装置を用いた。装置の詳細はすでに報告30,31,32,33,34)しているので,ここでは概略を述べる。電子源には,走査型電子顕微鏡(Scanning electron microscopy:SEM)(Mighty-8DXL, テクネックス工房)の電子銃を用いた(SEM-CL法)。試料室に直径5 mmの穴を開けた放物面ミラーを導入し,試料からの発光を集光した。集光した光は,先端に平凸レンズを取り付けた光ファイバーを通して,25 µmのスリットを取り付けた高感度小型分光器(QE65Pro, Ocean Optics)に導入して,発光スペクトルを取得した。この高感度小型分光器の波長分解能は3.16 nm FWHM(full width at half maximum)であり,過去の研究で用いた高分解能の分光器と比較して,3.5倍となっているが,感度は20倍高い28)。電子銃のフィラメントによる光が分光器に検出されないように,対物絞りの中心が電子線の中心軸からずれるようにした。CLスペクトルは,電子線を0.058 mm2(0.27×0.21 mm)の領域に照射しながら取得した。SEMの加速電圧は17 kVとした。

Fig. 1.

(a) Photograph and (b) schematic illustration of the SEM–CL system for acquiring CL spectra. (Online version in color.)

β-NiAl表面に形成されたAl2O3スケールの結晶構造は,Cu K線の入射角を1.0°に設定した斜入射X線回折装置(SmartLab, 株式会社リガク)によっても測定を行った。また,SEM(TM3030 Plus, 株式会社日立ハイテクノロジーズ)によるAl2O3スケールの表面の観察も行った。

3. 実験結果および考察

3・1 β-NiAl表面に形成された酸化スケールの斜入射X線回折測定

熱処理を行ったβ-NiAl表面の斜入射X線回折測定を行い,形成されたAl2O3スケールの結晶構造を調べた。その結果をFig.2に示し,同定された結晶相をTable 1に示す。1100°Cで10時間熱処理を行った場合(試料A),酸化被膜は,α-Al2O3のみが検出され,1000°Cで1時間熱処理を行った場合(試料B),酸化被膜は,θ-Al2O3のみが検出され,1000°Cで4時間熱処理を行った場合(試料C),酸化被膜は,α-Al2O3とθ-Al2O3が検出された(Fig.2)。しかし,800°Cで熱処理を行った場合(試料D, E),熱処理時間が1時間でも10時間でも斜入射X線回折測定では,酸化被膜に由来するピークは検出されなかった。しかし,この熱処理条件では,γ-Al2O3やθ-Al2O3が形成されることが過去に報告されている11,13,14)。ピークが検出できなかった原因は,形成された酸化被膜の膜厚が小さ過ぎる,あるいは酸化被膜の結晶性が悪いことによるものと考えられる。

Fig. 2.

XRD patterns of β-NiAl heated at 1000 °C for 1 and 4 h and at 1100 °C for 10 h28).

3・2 β-NiAl表面に形成された酸化スケールのCLスペクトル測定

ここでは,様々な条件で熱処理を行ったβ-NiAl のCLスペクトルを測定することで,α-Al2O3, θ-Al2O3およびγ-Al2O3に由来するピークの特徴を調べ,CLスペクトルからそれぞれの結晶相を同定できるか調査した。1100°Cで10時間熱処理を行ったβ-NiAl(試料A)のCLスペクトルを取得したところ,695.8 nm に鋭いピークが検出された(Fig.3(a))。このピークは,過去に報告されているα-Al2O3のピークと一致しており,α-Al2O3中のAl3+サイトを置換したCr3+に由来する16,35,36,37,38,39)。この695.8 nm のピークは,α-Al2O3中のCr3+の濃度が数ppmであっても,検出されることが報告されている35)。今回,作製したβ-NiAlにはCrが86 ppm含まれていたことを蛍光X線分析によって確認している。したがって,試料Aのα-Al2O3スケール中のCr3+は,β-NiAlを作製する際に用いた原料のAlとNiに不純物として含まれているCrによるものと考えられる。1000°Cで1時間熱処理を行った場合(試料B)のCLスペクトルは,686.3 nmと689.9 nmにピークが検出された(Fig.3(b))。このピークは,過去に報告されているθ-Al2O3のピークと一致しており,θ-Al2O3中のAl3+サイトを置換したCr3+に由来する16,26,40)。さらに,701.0 nmにもピークが検出され,このピークは,Co–Ni–W–Al–Cr–Ta合金を1100°Cで1時間酸化させた際にθ-Al2O3とともに検出されたNiOに由来するピークと一致していた16)

Fig. 3.

CL spectra of β-NiAl heated at (a) 1100 °C for 10 h (Sample A), at 1100 °C for (b) 1 h (Sample B) and (c) 4 h (Sample C), and at 800 °C for (d) 1 h (Sample D) and (e) 10 h (Sample E). Acquisition time for the CL spectra was 0.5 s.

1000°Cで4時間熱処理を行ったβ-NiAl(試料C)のCLスペクトルをFig.3(c)に示す。試料Bで検出された686.3 nm,689.9 nm,701.0 nmのピークに加え,695.8 nmにピークが検出された。この695.8 nmのピークは,α-Al2O3中のCr3+由来のピークであり,斜入射X線回折の結果と同様に,CLスペクトルからも試料Cには,α-Al2O3とθ-Al2O3が存在していることがわかった。このように,α-Al2O3とθ-Al2O3が共存していても,CLスペクトルからα-Al2O3とθ-Al2O3を区別して検出できる。過去の我々の研究で,α-Al2O3とθ-Al2O3に由来する最も強い発光線をそれぞれ用いることで,α-Al2O3とθ-Al2O3の濃度を推定できることができた28)ので,ここでは,α-Al2O3由来の695.8 nmのピークとθ-Al2O3由来の686.3 nmのピークを用いて,試料C中のα-Al2O3とθ-Al2O3の存在量を推定する。同じ量であれば,α-Al2O3の発光強度はθ-Al2O3の発光強度の10倍程度であること26)および,α-Al2O3とθ-Al2O3の発光強度はそれぞれの存在量に比例すること21,22,25)を考慮すると,θ-Al2O3の濃度Cθは,

  
C θ = I 686.3 nm I 686.3 nm + 0.1 I 695.8 nm (1)

で表すことができる28)。ここで,I686.3 nmおよびI695.2 nmはそれぞれ,686.3 nmと695.8 nmのピーク強度を表す。Fig.3(c)のピーク強度から式(1)を用いると,試料C中のθ-Al2O3の濃度は,92 at.%となり,この値は過去の研究において,斜入射X線回折のピーク強度比から算出した試料C中のθ-Al2O3の濃度95 at.%28)と非常に近い値であった。したがって,α-Al2O3とθ-Al2O3がAl2O3スケールとして共存する場合,α-Al2O3とθ-Al2O3に由来するCLスペクトルのピーク強度からそれぞれのおおよその濃度を求めることができる。

800°Cで1時間熱処理を行ったβ-NiAl(試料D)のCLスペクトルは,700 nm付近を頂点とするブロードなピークが検出された(Fig.3(d))。このピークは,過去に報告されているγ-Al2O3のピークと一致しており,γ-Al2O3中のAl3+サイトを置換したCr3+に由来する26,27)。800°Cで10時間熱処理を行ったβ-NiAl(試料E)のCLスペクトル(Fig.3(e))は,試料Bと同様に686.3 nm,689.9 nm,701.0 nmにピークが検出されたが,試料BのCLスペクトル(Fig.3(b))と比較すると,高波長側に尾を引いたようなピークになっていた。このことは,試料Eにはθ-Al2O3に加えて,γ-Al2O3が存在していることを示唆している。試料DのCLスペクトルの強度を30倍にして,試料EのCLスペクトルと重ねると,高波長側のスペクトルと一致したことから,試料Eにはγ-Al2O3が存在していることがわかる。次に,試料C中のθ-Al2O3の濃度を式(1)を用いて推定した場合と同様に,試料E中のγ-Al2O3の濃度Cγを推定する。過去の報告より,同じ量であれば,θ-Al2O3の発光強度はγ-Al2O3の発光強度の10倍程度である26)ので,式(1)と同様にして,Cγ

  
C γ = I 700.0 nm I 700.0 nm + 0.1 I 686.3 nm (2)

と表すことができる。ここで,I700.0 nmおよびI686.3 nmはそれぞれ,700.0 nmと686.3 nmのピーク強度を表す。Fig.3(e)のピーク強度から式(2)を用いると,試料E中のγ-Al2O3の濃度は,94 at.%と推定できた。

斜入射X線回折では,1100°Cおよび1000°Cで熱処理した場合だけ,β-NiAl上に形成されたα-Al2O3とθ-Al2O3を検出することができた。一方,CLスペクトルを測定した場合,α-Al2O3とθ-Al2O3だけでなく,γ-Al2O3も検出することができた。また,斜入射X線回折測定において,Fig.2の各回折パターンを得るためには,1時間程度の時間がかかるのに対して,Fig.3の各CLスペクトルは1秒以内で取得することが可能である。したがって,本研究で示したCLスペクトル測定法は,耐熱合金上に形成されたα-Al2O3,θ-Al2O3およびγ-Al2O3のスケールを迅速に同定できる手法と言える。

3・3 微小領域におけるθ-Al2O3とγ-Al2O3の識別

CL測定は,電子線を試料に照射するため,微小領域における測定も可能である。一般的に,耐熱合金表面に形成されるスケールは,不均一な場合が多いので,耐熱合金の耐酸化性を評価する際,微小領域における結晶相を調査することも重要である。過去の研究28)で,微小領域におけるα-Al2O3とθ-Al2O3の識別はCLスペクトルを取得することで可能であることを示したので,ここでは,微小領域におけるθ-Al2O3とγ-Al2O3の識別が可能かどうかについて調べる。測定には,θ-Al2O3とγ-Al2O3が検出された試料Eを用いた。Fig.4(a)に示した領域IおよびII(面積:17.5×13.0 µm)について,CLスペクトルを測定した。領域Iはγ-Al2O3による700 nm付近に頂点をもつブロードなピークだけが検出された(Fig.4(b))のに対して,領域IIはγ-Al2O3によるブロードなピークに加えて,686.3 nmおよび689.9 nmにθ-Al2O3によるピークが検出された(Fig.4(c))。領域IIについて,式(2)を用いて,CLスペクトルからγ-Al2O3の濃度を推定すると,65 at.%となった。また,それぞれの領域のCLスペクトルの取得時間は10秒であった。以上の結果から,CLスペクトルを取得することで,微小領域においても,θ-Al2O3とγ-Al2O3の同定およびそれぞれの存在量を迅速に推定できることがわかった。

Fig. 4.

(a) SEM (backscattered) image of β-NiAl heated at 800 °C for 10 h (Sample E). CL spectra of (b) area I and (c) area II in (a). Acquisition time for the CL spectra was 10 s.

4. 結言

本研究では,耐熱合金表面に形成されたAl2O3スケールの結晶構造(α-Al2O3, θ-Al2O3, γ-Al2O3)をCLスペクトルから同定する方法を提案した。β-NiAl上に形成されたγ-Al2O3は斜入射X線回折測定では検出できなかったが,高感度の分光器を用いて表面のCLスペクトルを取得することで,γ-Al2O3に由来するピークを検出することができた。また,この手法を用いて,β-NiAl上に形成されたα-Al2O3とθ-Al2O3およびθ-Al2O3とγ-Al2O3を,ピークの波長あるいはピークの形状から同定できることがわかった。17.5×13.0 µmの微小領域においても,θ-Al2O3とγ-Al2O3をCLスペクトルから同定できた。さらに,α-Al2O3, θ-Al2O3およびγ-Al2O3に由来するピーク強度から,それぞれの濃度を推定できた。0.27×0.21 mmの領域では1秒以内,17.5×13.0 µmの領域では10秒間,CLスペクトルを測定することで,α-Al2O3, θ-Al2O3およびγ-Al2O3を同定できるので,本研究で示した手法は,耐熱合金上に形成されたAl2O3スケールの結晶構造を迅速に同定する手法として有望であると言える。

謝辞

本研究は日本鉄鋼協会「鉄鋼関連材料の非破壊・オンサイト分析法」研究会の援助により行われた。

文献
 
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