2025 Volume 111 Issue 15 Pages 909-916
CO2 methanation over Ni-based catalysts was studied under conditions simulating steelworks off-gas with trace H2S. Sulfur in the feed gas deactivated the catalyst, but high-pressure operation suppressed the deactivation. Highly crystalline Ni formed under these conditions may enhance sulfur tolerance. High-temperature calcination also improved crystallinity and durability.
カーボンニュートラル社会の実現に向け,産業部門におけるCO2排出削減は喫緊の課題である1)。中でも鉄鋼産業は,我が国全体のCO2排出量の約15%を占めており,脱炭素化に向けたプロセス転換が強く求められている2)。特に高炉-転炉法を主体とする従来の製鉄プロセスでは,鉄鉱石還元に用いられるコークス由来の炭素から多量のCOおよびCO2が排出される。これらは製銑副生ガスや転炉ガスとして回収されるものの,依然としてその多くは燃料として燃焼利用され,CO2として大気中に放出されているのが現状である3)。
一方,鉄鋼プロセスから回収される副生ガスには,CO2の他にH2やCOが一定量含まれており,これらを有効に活用することで,炭素循環型の新たな製鉄プロセスの構築が期待されている4)。特に近年注目されているのが,CO2とH2を反応させてメタンを合成するCO2メタネーション(Sabatier反応)である。この反応は以下のように表される。
この反応は発熱反応であり,適切な触媒と温度条件下で高効率にCH4を生成できるため,副生ガス由来のH2とCO2を用いて都市ガス等に転換するPower-to-Gas(PtG)技術の中核反応として位置づけられている5,6)。加えて,生成されたメタンは既存のガスインフラとの親和性が高く,グリーンガスとしての利活用も見込まれることから,鉄鋼業における炭素循環やカーボンリサイクルの一環として大きな期待が寄せられている7,8)。
本反応における触媒としては,ニッケル(Ni)を活性成分とする酸化物担持型Ni系触媒が広く研究されている。Niは比較的安価でありながら高いメタネーション活性を有し,また工業的スケールでの利用実績も豊富であることから,現実的な選択肢として多くの報告がある9,10,11)。しかしながら,Ni系触媒は硫黄(S)による被毒に非常に弱いという大きな課題がある12,13)。
鉄鋼プロセス由来の副生ガス,特にBFGには,石炭やコークス起源の微量な硫黄化合物(H2S,COSなど)が含まれており,これらがNi触媒に強く吸着することで活性を著しく低下させることが知られている14,15)。Ni表面への硫黄種の吸着は不可逆的であり,活性サイトを被覆することでCO2の還元反応が抑制されるだけでなく,反応初期での触媒失活や寿命低下を引き起こす16)。このような硫黄等の不純物による触媒被毒は,メタン改質反応やFT合成など他の高温反応系においても共通して報告されており,Ni触媒の耐硫黄性向上はPtG技術の社会実装におけるボトルネックとされている17,18)。
このような背景から,Ni系触媒の耐硫黄性を向上させるための研究が国内外で活発に行われている。これまでに報告されたアプローチとしては,(1)助触媒の添加によるNi表面の電子状態制御,(2)担体との強い相互作用(strong metal-support interaction)によるNi粒子の安定化,(3)貴金属との合金化によるS種吸着エネルギーの低減,などが挙げられる19)。また,ZrO2,CeO2,Al2O3などの酸化物担体との組合せにより,Niの分散性や表面酸塩基性を調整し,硫黄による被毒の影響を緩和する試みもなされている20)。
以上のように,鉄鋼プロセスから排出されるCO2を有効活用するCO2メタネーションは,製鉄業の脱炭素化に資する有望な技術であるが,実用化に向けてはNi系触媒の耐硫黄性向上が不可欠である。本研究では,Ni系触媒を用いたメタネーション反応において原料ガス中に含まれるH2Sの影響を観察するとともに,その耐硫黄性強化について検討した。
本研究では,Niを活性金属とし,担体として安定化ジルコニア(YSZ)を担体として用いた。触媒は含浸法(incipient wetness impregnation)により調製した。Ni前駆体として硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO3)2·6H2O, 試薬特級)を用い,担体へ所定量含浸後,室温で乾燥(110°C, 12 h)し,空気中で前焼成(450°C, 4 h)を行った。
また,再焼成を行う際は,前焼成後の触媒を空気中で所定の温度(500°Cまた800°C)で4時間焼成を行った。
2・2 触媒の構造解析 2・2・1 粉末X線回折(XRD)触媒の結晶構造を確認するため,粉末X線回折(XRD)測定を行った。使用機器は Rigaku製 SmartLab を用い,Cu-Kα線(λ=1.5406 Å)を用いて40 kV,15 mAの条件下で測定した。スキャン範囲は2θ=3°−90°,スキャン速度は1.25°/minとした。
2・2・2 蛍光X線分析(XRF)触媒中の元素組成は,蛍光X線分析(XRF)により定量した。分析には Rigaku製 NEX DE を使用し,標準試料による校正を実施した。
2・2・3 Ni分散度金属Niの分散状態の評価のため,CO吸着による比表面金属量を MicrotracBEL製 BELMETAL3により測定した。触媒は前処理として水素気流中で500°Cまで昇温し,1時間還元後,50°Cまで冷却し,10%CO/Heガスをパルス導入した。得られた吸着量より,NiとCOが1:1で吸着すものと仮定し,Ni分散度を算出した。
2・3 CO2メタネーション反応試験CO2メタネーション反応には,高圧用固定床流通式反応装置を用いた。ϕ1/2インチのSUS316管に所定量の粉末状触媒を充填し,常圧水素流通下で活性化のための前処理(400°C,6時間)を行った。その後,所定の反応温度まで降温し,CO2と水素を1:4のモル比で,リファレンスとして窒素を5%流通させて反応開始した。本SUS316管を用いた際,550°Cまでの温度においては触媒効果がないことを確認している。いずれの反応条件においても,反応開始後触媒層からの発熱で反応温度が上昇し,1時間程度で安定した。硫化水素を共存させる反応を行う場合には,局所的な加熱による劣化促進を抑制するため反応温度が安定した後に流通を開始した。生成ガスの分析にはマイクロGC(TCD検出器装備)を主に使用し,硫黄分の分析にはGC/SCDを用いた。反応終了後使用済み触媒を取り出す際,急激な酸化による発熱(発火を伴う場合あり)を抑制するため,N2雰囲気下で常温まで降温し,1.0%O2/N2気流下で触媒のパッシベーションを行い,触媒の表面のみ酸化させて大気中に取り出し,使用済み触媒のキャラクタリゼーション等に用いた。
Ni系メタネーション触媒に原料ガス中に含まれるH2Sがどの程度影響するかを検討するため,硫化水素濃度を変化(0–50 ppm)させて導入し,反応温度および圧力を変化させた際の触媒活性に及ぼす影響について評価した。反応条件は,触媒1 gに対しガス流量200 ml/min(H2/CO2/N2=38/152/10)とし,GHSV=21,600 h−1の加速的な条件で検討した。Fig.1に反応温度250°C(炉設定温度),反応圧力0.1 MPaまたは0.75 MPaの条件で評価した結果を示す。Y軸は,初期CO2転化率に対する反応時間毎に測定したCO2転化率の低下割合を示したものである。

Effect of Hydrogen Sulfide Concentration on CO2 Methanation Reaction at 250°C: (a) P=0.1 MPa, (b) P=0.75 MPa. (Online version in color.)
250°C,0.1 MPaで反応を行ったところ,硫化水素濃度の増加に伴い触媒の失活速度が徐々に増加し,硫化水素濃度が3 ppmを超えると急激な触媒活性の低下が観察された。更に硫化水素濃度が5 ppmを超えると一定時間程度でほぼ活性を示さなくなった。これは以下の原因が考えられる。反応初期では外部加熱で250°Cとしているが,触媒層の温度が約310°C程度まで発熱しているのが観察された。硫化水素を添加しない場合にはこの温度が保たれるが,硫化水素濃度の増加に伴い徐々に触媒層からの発熱が見られなくなり,約200°Cを下回ると急激な低下が見られ,活性を示さなくなった。
一方,反応圧力を0.75 MPaに増加させると,硫化水素濃度1 ppmまでは全く失活が見られず,反応圧力を増加させると硫黄被毒の抑制に効果があることが分かった。しかし,硫化水素濃度が3 ppm以上ではその逆の影響が観察され,触媒の失活が著しく加速されることが分かった。
続いて,Fig.2に反応温度を350°C,Fig.3に反応温度500°Cに上昇させた際の影響について検討した。反応温度を350°C,500°Cに上昇させたところ,250°Cで得られた結果と同様な傾向を示し,0.1 MPaで反応を行うと硫化水素濃度の増加に伴い,触媒の失活が加速された。一方,反応圧力を0.75 MPaへと上昇させると,硫化水素濃度1 ppmまではほとんど失活が見られないが,逆に5 ppmに硫化水素濃度を増加させると触媒の失活速度が大幅に加速された。また,反応温度による影響を比較すると,硫化水素が低濃度であれば大きな違いは見られないが,硫化水素濃度が高い場合にはより高温で失活が加速されているのが観察されており,触媒の失活および平衡転化率の観点からも,触媒層の温度を300°C程度の比較的低温に維持することが重要であると考えられる。

Effect of Hydrogen Sulfide Concentration on CO2 Methanation Reaction at 350°C: (a) P=0.1 MPa, (b) P=0.75 MPa. (Online version in color.)

Effect of Hydrogen Sulfide Concentration on CO2 Methanation Reaction at 500°C: (a) P=0.1 MPa, (b) P=0.75 MPa. (Online version in color.)
Table 1に今回行った各反応温度における失活速度を示す。Table 1から明らかなように,硫化水素濃度が1 ppm程度までは比較的低い失活速度を示しているが,3 ppm以上で急激に失活速度が増大していることが分かる。また,反応温度が高い場合に失活速度も速くなっている。硫化水素濃度1 ppmまでは線形近似が可能であるが,5 ppmまでを含めると2次で近似される。
| Catalyst deactivation rate (%/h) | |||
|---|---|---|---|
| 250°C | 350°C | 500°C | |
| 0.1MPa | |||
| H2S=0 ppm | 0.02 | 0.01 | 0.01 |
| H2S=0.5 ppm | 0.03 | − | − |
| H2S=1 ppm | 0.04 | 0.04 | 0.04 |
| H2S=3 ppm | 0.26 | − | − |
| H2S=5 ppm | 1.03 | 1.39 | 1.83 |
| 0.75MPa | |||
| H2S=0 ppm | 0.02 | 0.01 | 0.02 |
| H2S=0.5 ppm | 0.02 | − | − |
| H2S=1 ppm | 0.02 | 0.02 | 0.03 |
| H2S=3 ppm | 0.53 | − | − |
| H2S=5 ppm | 1.21 | 1.71 | 2.13 |
前項では,反応ガス中に硫黄分として硫化水素を0–50 ppm添加し,触媒失活への影響を検討してきた。本項では,未使用触媒および使用済み触媒のキャラクタリゼーションを行い失活の影響について検討する。
Table 2にCO吸着量測定より算出したNi分散度を示す。その結果,未使用触媒が1.89%であるのに対し,0.1 MPaで硫化水素未添加の使用済み触媒が1.73%とわずかに低下しているが,ほぼNi分散度を維持している。一方,硫化水素濃度を増加させるとNi分散度が著しく低下するのが観察された。これは反応終了時の触媒活性と良い相関が見られた。一方,0.75 MPaで反応を行った使用済み触媒では,硫化水素未添加では1.93%と未使用触媒に比べNi分散度が向上しているのが観察された。硫化水素濃度を増加すると,0.1 MPaと同様な傾向を示し,Ni分散度が著しく低下するのが観察された。以上の結果から,反応ガス中に硫化水素が共存するとNi分散度が低下し,活性サイトが減少することにより触媒の失活が生じていると考えられる。そこで,硫化水素共存化で実際にどのように触媒構造が変化しているかを観察するため,使用済み触媒の粉末X線回折(XRD)を行った。
| Ni dispersion (%) | Crystallite size (Å) | Sulfur content (%) | ||
|---|---|---|---|---|
| Ni(1,1,1) | Zr(1,1,1) | |||
| Fresh catalyst | 1.89 | 137 | 88 | 0 |
| 0.1 MPa | ||||
| H2S=0 ppm | 1.73 | 189 | 90 | 0 |
| H2S=1 ppm | 1.35 | 205 | 91 | 0.40 |
| H2S=5 ppm | 0.54 | 218 | 91 | 1.80 |
| H2S=50 ppm | 0.11 | 262 | 95 | 9.23 |
| 0.75 MPa | ||||
| H2S=0 ppm | 1.93 | 198 | 92 | 0 |
| H2S=1 ppm | 1.55 | 221 | 94 | 0.38 |
| H2S=5 ppm | 0.22 | 235 | 94 | 1.40 |
| H2S=50 ppm | 0.04 | 237 | 92 | 4.67 |
XRD測定の結果(Fig.4),主にNiおよびZrO2に由来する回折パターンが観察された。しかし,硫化水素濃度が5 ppm以下の条件では大きな違いは見られない。一方,50 ppmまで硫化水素濃度増加させるとNiSに由来する回折パターンが確認された。これは0.75 MPaで反応を行った際も同様な傾向が見られた。Table 2にXRD測定より算出されたNi(1,1,1)およびZr(1,1,1)の結晶子径を示す。その結果,反応に用いるとNi(1,1,1)の結晶子径の増大が確認され,更に硫化水素濃度が高い場合にNi(1,1,1)の結晶子径が増大した。一方,Zrに関しては,反応に用いることにより若干の結晶子径の増大が確認されるが,硫化水素濃度による大きな違いは見られない。同様に,反応温度を変化させて反応を行った使用済み触媒のXRD測定から算出した結晶子径をTable 3, 4に示す。いずれも高温で反応行うほど,Ni(1,1,1)の結晶子径の増大が確認されたが,硫化水素濃度5 ppm以下ではNiおよびZrO2に由来する回折パターンしか観察されず,NiS相等は観察されなかった。硫化水素共存化ではNiの結晶子の成長が観察されており,これがNi分散度低下に影響していると推察されるが,硫化水素濃度が3 ppm以上の結果とは整合性が見られない。XRD測定は触媒全体のバルク情報であることから,より表面状態の観察をする必要がある。

XRD patterns of the catalyst after reaction: (a) P=0.1 MPa, (b) P=0.75 MPa. (Online version in color.)
| Ni dispersion (%) | Crystallite size (Å) | ||
|---|---|---|---|
| Ni(1,1,1) | Zr(1,1,1) | ||
| 0.1 MPa | |||
| H2S=0 ppm | 1.69 | 202 | 90 |
| H2S=1 ppm | 1.21 | 212 | 91 |
| H2S=5 ppm | 0.44 | 222 | 92 |
| 0.75 MPa | |||
| H2S=0 ppm | 1.88 | 221 | 94 |
| H2S=1 ppm | 1.51 | 239 | 94 |
| H2S=5 ppm | 0.21 | 245 | 99 |
| Ni dispersion (%) | Crystallite size (Å) | ||
|---|---|---|---|
| Ni(1,1,1) | Zr(1,1,1) | ||
| 0.1 MPa | |||
| H2S=0 ppm | 1.53 | 251 | 100 |
| H2S=1 ppm | 1.12 | 265 | 101 |
| H2S=5 ppm | 0.21 | 283 | 103 |
| 0.75 MPa | |||
| H2S=0 ppm | 1.62 | 258 | 110 |
| H2S=1 ppm | 1.49 | 269 | 112 |
| H2S=5 ppm | 0.19 | 288 | 111 |
そこで,触媒表面構造の解析により有力なX線光電子分光(XPS)測定を行った(データ未掲載)。硫化水素未添加および硫化水素5 ppmを流通させて反応した触媒のXPS測定を行ったところ,いずれの触媒においても空気中に取り出した使用済み触媒であることから,NiO由来のピークが観察されたが,NiS由来のピークは観察されなかった。そこで,各触媒のArエッチングを行い深さ方向のXPS測定を行ったところ,Ni0由来のピークが観察され,触媒表層は酸化されてNiOであるが,触媒内部はNi0が保持されていることが観察された。反応後触媒のパッシベーションにより触媒表面上が酸化され,NiSが消失している可能性も考えられる。例えば,in-situのXPS測定等が可能となれば硫黄の吸着等を確認できる可能性はあるが,硫化水素濃度5 ppm以下で用いた触媒上に硫黄分の存在が確認することができなかった。
続いて,蛍光X線分析(XRF)により使用済み触媒の元素組成の同定を行った(Table 2)。その結果,未使用触媒,H2Sを流通していない使用済み触媒中のS濃度は0なのに対し,H2S濃度の増加に伴い使用済み触媒中に含まれるS濃度が高くなっているのが確認された。一方,0.75 MPaで反応を行った使用済み触媒は0.1 MPaで反応を行った使用済み触媒に比べ,硫黄濃度が低く保たれているのが観察され,活性との相関がみられた。
3・3 硫化水素による触媒の失活メカニズム反応中に硫黄分が存在することにより金属触媒が被毒されて活性を失うことは広く知られている。今回のメタネーション用触媒(Ni/ZrO2)も硫化水素存在下で活性が低下するのが観察されたが,反応圧力によりその影響に差異が見られた。この点について以下に考察する。
使用済み触媒のキャラクタリゼーションの結果から,0.75 MPa,硫化水素未添加で反応を行った触媒が0.1 MPa,硫化水素未添加で反応を行った触媒に比べNi分散度が高い。これは高圧の還元雰囲気下においてNi酸化物がより金属Niへと還元され,活性サイトが増加していると考えられる。また,高圧で反応を行った触媒はいずれも0.1 MPaで反応を行った触媒に比べNi結晶子径が大きくなっており,結晶性の高いNi相が形成されていることが分かる。Niの結晶性が高い程,耐硫黄性が高いと言われており21,22),高圧条件で反応を行うことにより,耐硫黄性が高いNi相が多く形成し,結果として低硫黄濃度において安定性した活性を示したと考えられる。
3・4 耐硫黄性強化したメタネーション触媒開発前項まで検討において,原料ガス中に硫黄分が存在することによりNi系メタネーション触媒は被毒され活性は低下するが,高圧条件下で反応することにより失活速度が低減することが観察された。高圧条件下で反応を行うことにより結晶子径の大きなNi金属が生成しており,このような結晶性の高いNi相が耐硫黄性強化に繋がっているのではないかと推察された。そこで本項では耐硫黄性触媒の開発を目的に触媒の焼成温度を変化させ,Niの結晶子径(結晶性)を変えることでH2S存在下での触媒活性への影響を検討した。
調製済みの触媒を再焼成することによりNiの結晶子径を変化させ,再焼成なしでは137Åに対し,500°C,800°C焼成することで252Å,302Åと結晶子径が増大した。これら触媒を用い,CO2メタネーション反応を行った結果をFig.5に示す。H2S未添加(H2S=0 ppm)では,再焼成をすることでCH4収率が低下し,高温で再焼成を行うことによりCH4収率は低下した。一方,H2Sを添加した場合(H2S=3 ppm),再焼成を行っていない触媒はCH4収率の低下が観察された。一方,高温で再焼成を行った触媒では失活の度合いが低減しており,800°C焼成を行った触媒ではほぼ硫化水素存在下でも失活が殆ど見られなかった。以上の結果から,Ni系触媒の結晶化度を変化させることで耐硫黄性の強化に繋がることが分かり,今後更なる高活性化が期待できる。

Evaluation of sulfur tolerance improvement via catalyst re-calcination: (a) H2S=0 ppm, (b) H2S=3 ppm. (Online version in color.)
原料ガス中に含まれるH2Sによるメタネーション触媒への被毒の影響ついて検討してきた。その結果,硫化水素はこれまで言われているように,金属触媒の被毒に大きく影響し,特に硫化水素濃度が3 ppm以上において本メタネーション触媒が急激に失活することが分かった。この影響は反応温度が高いとよりNiの硫化が加速され顕著となった。一方,反応圧力を高くすることで,低濃度の硫化水素による被毒が大緩和されることが示された。この原因として,高圧条件下で生成する結晶性の高いNi相が耐硫黄性を有するためではないかと推察された。そこで耐硫黄性触媒の開発を目的に,強制的に結晶性の高いNi相を形成させた触媒を調製したところ,耐硫黄性が向上することが分かった。
本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項は存在しない。
本研究の一部は,日本鉄鋼協会「鉄鋼CCU研究会」およびNEDO事業「次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/CO2有効利用技術開発」の支援によるものです。ここに記して謝意を表す。