2025 Volume 19 Pages 1-10
近年、聴力に問題はなく音は聞こえているのに聞き取れないといった症状が聞き取り困難症(LiD)や聴覚情報処理障害(APD)として注目されるようになってきた。本研究では、大学生における聞き取り困難の実態を調査し、その因子構造を確認するとともに、コミュニケーション・スキルへの影響について検討することを目的とした。実態として、環境や置かれた状況次第で顕在化する潜在的な聞き取り困難が多くいる可能性が示された。分析の結果、空間知覚、明瞭な音声聴取、複数人の音声聴取の3因子が抽出され、明瞭な音声聴取が心理的側面や自覚している困難感に影響していることが見出された。また、空間知覚と複数人の音声聴取がコミュニケーション・スキルに影響を及ぼしていることが示唆された。