THINK Lobby Journal
Online ISSN : 2758-6162
Print ISSN : 2758-593X
Research Note
Inquiry into the Structural Challenges of NGOs
~Through the study of “NGO Data book 2021” and RT at Japan Society for International Development's Conference~
Akitsugu TATEMasako HASEGAWA
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2023 Volume 1 Pages 41-54

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Abstract

This research note explores possible measures to address structural challenges facing Japan's international cooperation NGOs, based on a survey conducted for the “NGO Data Book 2021” and discussion at a Round Table at the 23rd Spring Conference of the Japan Society for International Development. In Chapter 1, looking back on the history of NGOs over the past 60 years and reviewing their current activities, we attempt to identify the future direction of NGOs that have entered a period of maturity and are enhancing their activities, while facing self-questioning about their own raison d'etre. In Chapter 2, we analyze the financial structure of NGOs, pointing out that the top 12 NGOs account for about three-quarters of the total amount of incomes, and that the expansion of NGOs' financial scale depends largely on grants and subsidies in addition to NGOs' own efforts. This paper was co-authored, with Chapter 1 written by Hasegawa and Chapter 2 by Tate.

Ⅰ.NGOの歴史・現状・課題からの考察

はじめに

本稿は、国際協力NGOセンター(JANIC)が2022年2月に発行した『NGOデータブック2021』1)とそれに伴う調査・分析、及び2022年6月に行われた国際開発学会第23回春季大会のラウンドテーブル(RT)2)における議論を踏まえた論考である。国際開発学会RTの議論は、『NGOデータブック2021』に加えて、大阪ボランティア協会ボランタリズム研究所が2022年3月に編集発行した『増補改訂版日本ボランティア・NPO・市民活動年表(以下『年表』)』の国際協力分野の増補改訂に伴う調査・分析にも依拠している。

日本では一般に、国際的な課題に取組む非営利組織をNGOと呼び、国内や身近な課題に取組むNPOと区別しているが、NGOに特化した登録制度や法人格が存在しないため、NGOの実態を把握するには個別の実態調査が必要とされる。そのためJANICでは、1994年にNGOの実態調査を開始し、『NGO data book:数字で見る日本のNGO』と題しその結果をまとめて発行し、その後も1996年、1998年、2006年と『NGOデータブック』を継続的に世に出しNGOの実態を発信してきた。2011年からは、調査を含むデータブックの発行が外務省の委託事業となり、前回2016年版を経て、本稿が依拠する『NGOデータブック2021』へと繋がってきている。

初代データブックから27年が経ち、7代目となる今回の『NGOデータブック2021』では、日本のNGOの成熟した姿とともに、社会課題に取組むアクターの多様化の中、NGOがその存在意義に悩み方向性を模索している様子がうかがわれた。

『NGOデータブック』の目的は、外務省はじめ様々なセクターとの連携や協働、支援や参加を促進するための情報提供とされるが、それ以上にNGOで活動する私たち自身が、NGOの現在地を知り、NGOを取り巻く状況を見据え、これまでの歩みを踏まえて、今後のチャレンジを考え語り合うための共通基盤を提示することにあると思われる。国際開発学会RTでは、小規模ながらもそのような議論を、日頃よりNGOに支援・連携したりアドバイスする立場の方々を交えて深めることができた。

そこで本稿では、上記国際開発学会RTの議論を踏まえ、今後のNGOの方向性やチャレンジについて考え対話を深める際の一つの共通基盤の提供を目的に論考を行う。本章の進め方としては、次節でまず『NGOデータブック2021』と『年表』によって整理されたNGOのこれまでの歩みを紹介し、続く3節で、『NGOデータブック2021』から明らかになったNGOの活動の進化や成熟の側面を紹介する。4節では筆者の捉えたNGOを取り巻く社会状況の変化を提示し、終節において、NGOとして今後必要とされる取組みについて国際開発学会RTの議論を参考に論じてみたい。

1.日本の国際協力NGOの歩み

日本のNGOの多くは、高度経済成長の時代に入った1960年代以降に設立されている。『NGOデータブック2021』では、1960年代から現在に至る約60年の間に生まれたNGOを、設立年代に従って「第1世代」から「第6世代」までの6つに分類しその特徴とともに紹介している。

日本のNGOの60年余の歩みを概観すると、NGOがその時代の国際的な問題に応える形で生まれ、その後活動を進化させていく様子が浮かび上がってくる。

注目すべき傾向としては、NGOの新規設立数が、1990年代をピークに減少の一途をたどっていることである(図1参照)。この動向をどう評価するかは議論の分かれるところだが、減少の背景には、国際開発における重点課題の変化や、国際課題に取組むアクターの広がりなどNGOに関わる直接的な要因とともに、国際情勢の変化に代表されるNGOを取り巻く社会状況の変化など間接的な要因も考えられる。NGOを巡る社会状況については3節で詳述する。

それでは、6つの世代区分に沿って、国際問題とその時代のNGOの特徴について振り返ってみたい。

図1:年代別NGO設立数及び累積団体数

「第1世代」(1960年代〜70年代前半)

60年代前半、日本のNGOの草分けは、キリスト教など宗教関係団体の慈善活動の流れや国際組織の要請から設立され、彼ら彼女らは主としてアジアの途上国の貧困層に対する直接的支援に取組んだ。「日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)」や「家族計画国際協力財団(現JOICFP)」などである。

70年代に入り、バングラデシュの独立や国連人間環境会議が開催され、南北問題や環境問題への関心が高まる中設立されたのが「シャプラニール=市民による海外協力の会」などである。

海外に本部を持つNGOの支部もこれ以降日本で活動を始めるようになり、「アムネスティ・インターナショナル日本」「世界自然保護基金(WWF)ジャパン」などが設立された。

「第2世代」(1980年前後)

1980年前後に大量のインドシナ難民が発生し国際問題化する中で多くのNGOが設立された。「難民を助ける会(AARジャパン)」「日本国際ボランティアセンター(JVC)」「曹洞宗東南アジア難民救済会議(JSRC)(シャンティ国際ボランティア会(SVA)の前身)」などである。

1979年はNGOの勃興期であることを象徴して「NGO元年」とも呼ばれている。この時期のNGOは、当初の現地の緊急支援や物資の提供から、中長期的な現地ニーズに対応して現地コミュニティの支援を目的とする開発協力に活動の重点を移行させていった。

「第3世代」(1980年代)

80年代は、アフリカの大規模干ばつに対する飢餓救援を契機に日本のNGOがアフリカに活動範囲を拡大した時期である。また、日本のNGOが増加する中で、「NGO活動支援センター(JANICの前身)」「関西国際協力協議会(関西NGO協議会の前身)」など、NGOの支援やネットワークづくりを担う中間支援のNGOが設立されたのもこの頃である。

さらに、1989年には外務省NGO事業補助金がスタートし、NGO草創期の60年代から30年近くが経過しNGOの数も活動も充実してくる中で、公的な資金援助が開始された。

「第4世代」(1990年代)

90年代は、ユーゴスラビア紛争やルワンダ虐殺など世界各地で民族紛争が起き、またフィリピンのピナツボ火山噴火など大規模な自然災害が起こる中、緊急人道支援を目的としたNGOの設立が数多く見られた。さらに、1992年に開催された地球サミットを機に地球環境問題をテーマとするNGOの設立も進んだ。

1995年には阪神淡路大震災が起こり、その際に正確な情報が得られなかった外国人に対する支援が、その後の多文化共生の活動に繋がっていく。阪神淡路大震災に全国から多くのボランティアが駆けつけたことを受け、1998年には「特定非営利活動促進法(NPO法)」が成立・施行され、上記の国際情勢とも相まってこの時期にNGO設立数はピークを迎えることになった。

「第5世代」(2000年代)

2000年に向けて沸き起こった最貧国の債務帳消しを求める世界的キャンペーン「ジュビリー2000」や地雷廃絶国際キャンペーン(ICBL)の流れを受け、グローバルイシューに関する提言やキャンペーン活動が活発化したのがこの時期である。サミットなどの国際会議に合わせてNGOが集まり社会に向けて声を上げていくことが以後常態化していく。

また、2000年代以降企業の社会的責任(CSR)への要請が高まり、一方で「BOP(Base of the(economic)Pyramid」に属する人々を市場とするビジネスが注目を集め、その流れの中から、ビジネス的な手法を用いて社会課題の解決に取組むNGOが登場し脚光を浴びた。

「第6世代」(2010年代)

2010年代は、2011年の東日本大震災を機に多くのNGOが国内の復興支援に携わるようになり、NGOとNPOの境界が曖昧になり始めた時期と言える。2000年代に設立された団体の流れを継いで、この世代は、ビジネス手法の活用や企業との連携を得意とし、VR等新しい技術の活用にも積極的な特徴が見られる。

2.日本の国際協力NGOの現状

以上、日本の国際協力NGOの60年余の歩みを振り返ったところで、次に、『NGOデータブック2021』のアンケート調査から明らかになった日本のNGOの活動の進化や成熟の側面を見ていきたい。浮かび上がってきたのは、支援ニーズに従って活動地域を広げ、パートナーシップにより現地化を進め、活動内容を深化させてきたNGOの姿であった。また、コロナ禍による負の影響は大きかったものの、その中でも、現地の緊急ニーズに応え、セーフティネットとして奮闘する様子が伺えた。

 

⑴ 現地化の傾向

国際協力活動では、従来より、現地オーナーシップの尊重と、現地や関係団体とのパートナーシップの重要性が唱えられてきた。近年では「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動やそこから遡った過去の植民地主義に対する見直しの広がりを背景に、「現地化(localization)3)」の議論が欧州を中心に進んでいる。

「現地化」が求める取組みは幅広いが、『NGOデータブック2021』から読み取れる海外事業の実施主体に限って見ると、現地カウンターパート主体の事業あるいは現地カウンターパートと連携して実施される事業が、前回2016年調査に比べ約1.5倍増加しており、日本のNGOにも「現地化」の進展がうかがわれる。この傾向は、海外の事業内容に「人材育成」や「パートナーシップによるプロジェクト支援」が多いことからもある程度支持されるものと思われる。

⑵ 活動地域:アジアの割合の減少とアフリカの増加

海外の活動地域としては、地理的な距離が近く社会・経済的にも繋がりの強いアジアの国々が多いという傾向は変わっていないが、前回2016年の調査に比べると、アジア地域で活動している団体の割合が14ポイント減少し、逆にアフリカで活動する団体の割合が11ポイント増加した(図2参照)。

アフリカ日本協議会の「アフリカで活動する日本のNGOデータベース」4)に掲載されている123団体を一覧すると、これまでアジアなどで活動していた団体が活動をアフリカに広げている様子がうかがわれる。このことから、日本のNGOが、地理的に遠くこれまで比較的繋がりの薄かったアフリカに新たなニーズを見つけ、活動の範囲を広げている姿が浮かび上がってくる。1993年に立ち上がった「アフリカ開発会議(TICAD)」の開催やそれへのNGOの関わりの深化、日本・アフリカ間の社会・経済的な結びつきの拡大なども、アフリカ支援数増加の背景にあると考えられる。アフリカ自らによる「Agenda2063=私たちが求めるアフリカ」5)が示すような、持続的・内発的発展に寄り添った支援を期待したい。

⑶ 海外活動分野は「人権」が増加、SDGsの取組みでも格差是正の増加が目立つ

海外の活動分野では、「教育・職業訓練」「開発・貧困」「保健・医療」「飢餓・災害」の多い傾向は変わらないが、「環境」を挙げた団体の割合が10.5ポイント減り、「人権」に取組む団体の割合が4.7ポイント増加している点が注目される。(図3参照)また、国内外の活動がSDGsのどの目標に該当するかでも、ゴール1:貧困根絶(11.2%)、ゴール4:質の高い教育の普及(10.8%)、ゴール3:健康・福祉の促進・普及(9.1%)の上位3つの目標に変化はないが、前回に比べ、ゴール10:不平等・格差の是正(9%)、ゴール17:パートナーシップ(8%)、ゴール16:平和で公正な社会(8%)が大きく回答を増やしたことが目を引く。グローバル化が進みナショナリズムの台頭や格差の拡大、社会の分断が進む中、多様性を尊重し様々なアクターとの連携によって、公正で持続可能な社会を目指し取組みを深化させているNGOの姿が現れているものと思われる。

図2:NGOの活動地域(2021年・2016年)
図3:NGOの海外活動分野(2021年・2016年)

⑷ コロナ禍の影響

最後に、2020年初頭に始まった新型コロナウィルス感染症のNGOに与えた影響を見ておきたい。アンケートからは、国際協力NGOの既存事業のほぼ全て(海外事業96.3%、国内事業96.9%)にネガティブな影響があり、調査時点(2022年10月)では、約半数で状況は好転していなかった。また、全体の約56%が前年に比べて収入の減少に直面しており、持続化給付金、家賃給付金等政府の助成制度を活用した団体も59%にのぼった。

一方、そのような困難な状況下においても多くの団体が、NGO・NPOの活動継続支援や、国内外の感染症対策関連事業(海外72、国内31)感染症対策関連以外(海外60、国内27)を新規に実施していた。具体的には、活動支援では、JANICによるコロナ対応のためのNGO・NPO向け情報発信など、感染症対策関連では、既存支援地域へのマスクや消毒用アルコール類の配給など、そして感染症対策関連以外では、ロックダウンや失業による物資不足や経済困窮に対する食料配布などが実施された。

組織運営では、コロナ禍をきっかけに、テレワークの導入(72%)、情報発信方法の工夫(60%)、内部承認・決済方法の変更(32%)等が進み、デジタル化・合理化が促進されたが、一方で情報セキュリティやガバナンスにおける新たな課題への対応が求められるようになってきている。

上記のように、日本のNGOは、草創期から60年間を経て成熟の時代を迎え、これまでの蓄積を踏まえながら新たなニーズを捉え、社会の意識の変化に応えながら地に足をつけて活動を深化させているように見受けられる。一方で『NGOデータブック2021』アンケートの自由記述欄には、NGOの存在意義を問うコメントや、マネージャー層の疲弊とともに世代交代の必要性を訴える声が複数寄せられた。次節では、NGOの存在意義に対する問いに応えるために、日本の国際協力NGOを取り巻く現在の国内外の社会状況について考えてみたい。

3.日本の国際協力NGOを取り巻く社会状況

NGOを取り巻く社会状況の変化は、NGOに、国際問題の現場で人々に寄り添った支援を行うのみならず、自らの役割を明確に自覚しより広い視点で活動することを求めるようになってきていると思われる。以下、社会状況の変化を挙げて考察してみたい。

⑴ 開発の課題に取組むアクターの多様化

従来は、国際機関や開発系政府機関、NGOなどに限られていた開発課題に取組むアクターが、近年になって増加し多様化してきている。2000年代から注目を集めるようになったソーシャルビジネスは新しいアクターの代表格と言えるが、ソーシャルを謳っていない一般企業においても社会貢献活動を超え、本業で社会課題の解決を目指すケースが増えている。また、自治体においても、人材育成や地域間連携を目的とした国際協力事業に取組んだり、大学や研究機関においても、技術協力や人材交流などが進められており、国際協力におけるNGOの存在感は相対的に薄まって見える状況となっている。

この変化に対し、国際協力NGOとしては危機感を感じる部分もあると思われるが、むしろ国際協力の裾野が広がる好機と捉え、多様なアクターとの連携を開拓し、パートナーシップによる活動の中でNGOの存在感を高めていくことが重要ではないだろうか。そのためには、他のアクターの目的や強みを把握するとともに、NGOならではのミッションや、開発に関する専門性や現地の人々への理解を踏まえた事業ノウハウなどの強みを改めて確認し、国際協力活動におけるNGOの役割を明確にすることが必要だと思われる。

⑵ 国際開発の課題の多様化

国際開発に携わるアクターの多様化とともに、NGOが取組む国際開発の課題も近年多様化してきている。2節⑶の海外活動分野にあったような、教育支援や農村コミュニティ開発などの従来からの支援分野に加え、グローバル化を背景とする国内の外国人労働者やサプライチェーン上の人権・労働問題、貧困や格差から生まれる少年兵の問題や、文化的要素の絡む児童婚や月経衛生対処なども含むジェンダーの問題など、開発課題が広範かつ複雑になってきている現状がある。また、外国人やサプライチェーンの問題に顕著なように、海外と国内で切り離すことのできない「社会課題のボーダーレス化6)」も進んでいる。

課題の多様化や複雑化は、もはやNGOだけでは解決のできない問題の増加を表しており、ここでも、様々なアクターとの連携の必要性が示されているように感じられる。NGOには、今後、開発のアクターをつなぐコーディネート力やアクターを束ねて活動を推進するマネジメント力が問われていくように思われる。

⑶ 市民社会スペースの縮小

国際協力NGOが国内外で自由に活動するためには、表現や結社の自由など市民の基本的権利の保障が前提となる。今世紀に入り権威主義が拡散する中で、民主主義の原則的な価値が脅かされ、NGOを含む市民社会組織の活動にも影響を及ぼしている。

世界の民主主義の状況を、世界中の研究者の協力の下、データと指標により測定している“V-Dem Institute”の『Democracy Report 2022』によれば、2021年は、過去最高の35カ国で表現の自由が著しく後退し、反対意見の尊重や話し合いの重視も32カ国以上で悪化するなど社会の分断の進む様子が示されている7)

同種の指標に、市民社会組織の国際ネットワークCIVICUS8)が提供する「CIVICUS Monitor」の「市民社会スペース指標」がある。CIVICUSでは、市民社会スペースを「人々が自由に何の障害もなく互いに団結し参加しコミュニケーションし、そうすることで周囲の政治、経済、社会構造に影響を与えうる、普遍的に受け入れられている一連のルール」とし、それは、「市民社会を保護する国家の義務に裏付けられた、集会、結社、表現の自由のための政策と実践の尊重である」9)と位置付けている。

CIVICUSの「市民社会スペース指標」は、市民社会の状況をOpenからClosedまでの5段階で評価しているが、最新の2021年11月時点では、世界の197カ国・地域のうちの117カ国、人口にすると世界の88.5%の人の住む国・地域が、深刻な状況とされる下位3段階にレィティングされている。この指標においても、上記V-dem同様市民社会を取り巻く環境は悪化しており、前回2020年の報告書以降13カ国で市民社会スペースが狭まり、その前の2019〜20年間でも11カ国の縮小が報告されている10)

国際社会において民主主義が後退し、市民社会スペースが縮小しつつあることにNGOの活動も影響を受けざるを得ない。この状況に対してCIVICUSを始め多くの市民社会組織が提言を出しているが、日本のNGOも国内外のNGOや市民社会と連携し、声を上げていく必要があるだろう。国際的に認められた人権の尊重をベースに、公正な社会を目指す働きかけはNGOならではの役割であり、それは、脆弱な人々の人権を守ることの延長線上にある使命と捉えることができるのではないだろうか。

今後に向けて

ここまで、日本の国際協力NGOの約60年の歩みと現在の活動内容を概観し、NGOがその時代の国際社会のニーズに応えて誕生し社会の要請に合わせて活動を深化させてきた姿を描きだそうと試みた。その上で、NGOを取り巻く社会状況の変化を挙げ、成熟期に入り活動を充実させつつも、自らの存在意義への自問を抱えるNGOの今後の方向性を模索した。

国際開発学会RTでは、OECD-DAC (経済協力開発機構 開発援助委員会)による「開発協力と人道支援における市民社会の実現に関する勧告(以下、同勧告)11)」への言及があった。同勧告は、DAC諸国等が出した「市民社会組織とのパートナーシップに関する初めての国際基準」として画期的とされている12)。同勧告では、市民社会組織を「SDGsの重要な貢献者」と呼び、「特に、SDG16の平和で包摂的で透明性の高い制度を持つ社会と民主主義を守り強化するための中心的な存在」であると13)位置付けた上で、市民社会スペースの縮小に対し、DAC諸国や国際機関として取組み、市民社会を支援し対話し、市民社会の援助効果と透明性や説明責任を強化することを掲げて14)、その取組みをメンバー諸国に呼びかけている。同勧告のNGOに対する大きな期待に応えるためには、支援や活動の質の向上とともに、透明性や説明責任など組織としての社会的責任を向上させ、NGOを取り巻く社会に対してもっと働きかけていく必要があるだろう。

第3節でも触れたように、これからのNGOは、開発アクターや開発課題の多様化の中で、そのミッションを明確にするとともに専門性を向上させ15)、自らの目的や強みを明らかにした上で、多様なアクターとの連携において存在感を示し、脆弱な人々の視点や公益的な観点からのコーディネートやマネジメントを通したリーダーシップを発揮していくことが期待される。

また、市民社会スペースの縮小に対しては、国内に加え海外のNGOとの連携による情報発信、提言、アドボカシーが必要であろう。そしてそのような活動が市民に届くためには、日頃からの市民による理解や応援が重要であり、それを支える現場に根付き人々に寄り添うひたむきな活動と、わかりやすい発信が必要になると思われる16)。質の高い提言やアドボカシーを行っていくためには、NGOや市民社会の研究力の向上とその活用が不可欠であり、NGOや市民社会を対象として新たに設立されたシンクタンク「THINK Lobby」の今後の活躍が期待される。

次章では、『NGOデータブック2021』の調査から明らかになった日本の国際協力NGOの財務構造の特徴を論じ、NGO及びNGOに関わるステークホルダーに向けて、NGOの財務面からの組織運営の議論に対して客観的根拠を提示する。

Ⅱ.NGOの財務構造とその展望

はじめに

本章では、日本の国際協力NGO(以下、NGO)の財務構造に焦点をあてる。NGO業界では、1983年から発行された『NGOダイレクトリー』や1994年から発行の『NGOデータブック』を通して、調査年毎に業界規模がまとめられてきた。2022年3月に発行された『NGOデータブック2021』では、1992年からの業界規模推移を図4の通りまとめている。

図4の通り、業界規模は増加傾向にある。この増加背景には、NGO自身が社会へ積極的に寄付や会費、マンスリーサポーターの呼びかけ、フェアトレード商品の取り扱い、クラウドファンディングの活用などに加え、他セクターによる支援がある。例えば、政府・関係省庁による支援として、1989年に外務省が「NGO事業補助金」と「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を開始したのを皮切りに、91年には郵政省(当時)の「国際ボランティア貯金」、2002年には外務省「NGO連携無償資金協力(N連)」やジャパンプラットフォーム(JPF)の設立、JICAの「草の根技術協力」などがある。また地方自治体では、2008年からのふるさと納税を通したNGO支援や佐賀県が代表例として挙げられる事務所誘致などがある。その他にも、宗教団体や助成財団等による支援、企業によるCSR活動、ESG投資、コレクティブアクションの文脈での連携や支援が挙げられる。

これらNGOへの支援の中で、図5の通り、助成・補助金が顕著に増加している。その要因には、上述のN連、JPF、草の根技術協力がある。2002年の支援実績を見ると、JPFを通した支援が6.1億円、N連が5.9億円(草の根は実績なし)と12億円であったが、2009年には、65.8億円(JPF:28.4億円、N連:24.9億円、草の根:12.5億円)、2019年には131.1億円(JPF:55.4億円、N連:56.0億円、草の根:19.7億円)と、NGOの業界規模の拡大とそれに伴う活動の拡大に貢献している17)

業界規模は継続した伸びがあり、その背景にはNGO自身の努力と多セクターによるNGOへの支援があることを述べてきたが、図6の通り、その実態は、上位10団体が全体の6割強を占める二極化構造にある。特に、その傾向は、2004年から鮮明になってきている。また寄付金の伸びも顕著であるが、これも最大規模のNGO1団体によるものが大きく、本業界規模の伸びは、上位10団体の成長が牽引している実態にある。

もちろんNGOは、収入規模の大小や成長によってのみ評価されるものではないが、NGOを経営するマネジメント層にとっては、自組織を取り巻く環境動向の把握や、収入規模毎の財務の特徴を知ることは、自組織を経営する上で、捉えておきたい関心事の1つであろう。

本章では、『NGOデータブック2021』で使用された財務データを提供した、筆者が代表を務める㈱EMAが構築する最新の財務データベースを基に、NGO業界の財務構造や収入規模毎の特徴を明らかにする。

図4:NGO業界規模の経年推移(億円)
図5:業界推移の内訳(億円)
図6:二極化傾向にあるNGOの財務構造(億円)

1.NGOの財務構造や成長に関する先行研究

日本のNGOの財務に関する調査は、上記の通り『NGOデータブック』で継続して行われてきた。一方で、日本のNGOの財務構造や成長に関する研究は少なく、筆者が2019年に収入規模上位15団体の成長戦略を博士論文としてまとめたものが最新となる。ただし、日本のNPO法人を対象とした財務構造や財務の成長、安定に関する研究は、2007年に山内らが日本全国のNPO法人の財務情報をデータベース化(Website)18)したことをきっかけに、活発に進められてきた19)。上記データベースを用いた財務構造に関する研究は、まず石田(2007・2008)が、財源の多様性と団体の自律性について分析し、田中・栗田・粉川(2008)はNPO法人のキャッシュ・フローを基に組織の持続性について分析を行った。また馬場・石田・奥山(2010)は、収入戦略と財務持続性について分析を行い、馬場・山内(2011)も、NPO法人の収入構造と成長パターンについて分析を行っている。ただし、いずれも単年度データの分析に留まる為、成長プロセスに関する検証が十分に行われていないといった課題がある。次に、複数年度のパネルデータを活用した分析では、愛知県県民生活部(2007)が、愛知県内のNPO法人の1999年度から2004年度までの6年間の財務データベースを構築し、その構造を分析した。また中島・馬場(2012)は、愛知県県民生活部(2007)が使用したデータベースに2007年までの3年間の財務データを追加し、分析を行っている。そして田中・馬場・渋井(2010)及び田中・奥山(2011)は、東京都所管のNPO法人を抽出し、複数年度のデータベースを構築・分析をした。

これら単年度及び複数年度のデータベース共に、「保健・医療・福祉」分野の占める割合が大きい20)。同分野は、介護保険制度による事業収入が総収入に占める割合が大きく、結果、組織規模の拡大は、事業収入による貢献が大きく、寄付や会費、補助金の獲得が組織規模の拡大にあまり貢献しないとの結果が示されている。ただし、田中(2008)らは、分野毎に主な収入源も異なる為、分野別の分析を進めることを今後の課題に挙げている。

この課題に対応し分析を行ったのが、馬場(2009)及び馬場・山内(2011)である。分野を「保健・医療・福祉」「国際協力」「その他」の3つに分け比較研究を行っている。ここで「国際協力」が比較対象となった理由として、山内ら(2007)のデータベースにおける「国際協力」分野の収入が、会費・寄付・補助金の3つの収入源で総収入の約7割を占めており、他分野と大きく財務構造が異なる点を挙げている。

2.2020年度現在のNGOの財務構造

⑴ 対象団体と使用データ

NGOの財務構造とその特徴を明らかにしていく上で、まず本章が対象とするNGOの範囲は『NGOデータブック2021』の対象団体424団体である。前節で挙げた単年度及び複数年度のデータベースを活用した先行研究では、特定非営利活動促進法(通称:NPO法)施行以降にNPO法人格を取得した団体のみを対象としているが、本章のNGOは、NPO法人以外の法人格や法人格を持たない任意団体も含まれる。尚、提供された2020年度の財務データベースは、424団体の内、任意団体や一般法人のため財務情報を入手できなかった団体を除く224団体である21)。本章では、この224団体の財務データを使用し、分析を進める。

最後に、使用するデータベースの構築方法とデータの限界について触れる。まずNGOの財務データベースは、活動計算書または正味財産増減計算書と貸借対照表(以下会計書類)22)に記載されている財務情報を基に構築されている。データベースの構築は、㈱EMAが運営する「Social map」23)で使用するために、2011年度からの会計書類を収集している。会計書類の収集方法は、内閣府が運営する「NPO法人ポータルサイト」及び所轄庁である各都道府県のホームページに公開されている会計書類(電子媒体)を収集した。また所轄庁は、過去3年度分の会計書類のみWeb上で公開している場合が多く、それ以前のものは、所轄庁に公開請求を行い会計書類の収集を行った。公益法人では、内閣府及び都道府県公式の総合情報サイトである「公益法人Information(Website)」を用いて会計書類を取得した。任意団体と一般法人では、各団体が運営するウェブサイトに会計書類が公開されている団体のみ、収集・反映している。山内ら(2007・2008)が、データベースを構築した際に指摘した、貸借対照表と収支計算書(現:活動計算書または正味財産増減計算書)が整合しないケースの存在は、現在も少数ではあるが確認される。こうした限界のあるデータベースを基に、分析を行っていることを予め指摘しておく。

⑵ データベースからみるNGOの財務構造

対象とする224団体の収入合計は、596.8億円で、平均値は2億6,644万円、中央値 が3,514万円である。この数値は、内閣府(2021)が行う全国のNPO法人7,307団体を対象とした調査結果の平均値(認証NPO法人2,198万円、認定・特例認定法人9,599万円)と中央値(認証NPO法人348.9万円、認定・特例認定法人2,354万円)を比較しても高い値である。また図7では、収入規模別の団体数を示したが、500万円未満から5千万円の団体で全体の60%を占め、1億円未満では73%を占める。特徴は、5千万未満で1つのボリュームゾーンを形成する点と1億円台で団体が再増加している点である。田中ら(2008、2010)は、収入規模に「2千万円の壁」の存在を指摘したが、NGOでは「5千万円」と「1億円」にも壁が存在する可能性がある。

次に、収入規模別に収入合計をまとめたのが図8である。前述した1つのボリュームゾーンを形成する5千万円未満の134団体は、全団体の60%を占めるが、収入合計では、22.5億円と全体収入の3.8%しか占めない。また1億円未満の160団体(71%)で41.9億円(7.0%)、5億円未満の212団体(94%)で161.4億円(26.1%)である。5億円以上60億円以下の11団体で全収入の50.7%、100億円台の1団体で全体の23.2%を占め、この上位12団体で全体の4分の3に近い73.9%を占めるのが、NGOの財務構造の実態である。

図9は、収入規模別に収入に占める収入源の割合を表したものである。ここで収入規模を500万円未満、500万円以上2千万円未満、2千万円以上4千万円未満、4千万円以上1億円未満、1億円以上5億円未満、5億円以上の6つの区分を設定した。この区分は、先行研究の田中ら(2008)を参考にしつつ、先行研究では1億円以上として一括りにされていたものを、本章では1億円以上5億円未満と5億円以上に分けた。これは前述の1億円台に団体が再増加する点に、何かしらのシグナルが発生していると考えたからである。

図9から読み取れる特徴は、まず500万円未満と2千万円未満の2つのクラスでは、会費・寄付で全体収入の50%を占めるが、2千万円を超えてから、会費・寄付による収入割合が下がり、代わりに事業収入の割合が高くなる。これは田中ら(2011)も指摘するように、2千万円未満の団体では、いわゆる身内による支援が多く、規模の拡大に向け、他の収入源を求めた結果、会費・寄付の割合が相対的に下がったと考えられる。また先行研究で示された事業収入による規模の拡大の関連性をNGOでも示唆しているが、介護保険制度関連の事業収入ではなく、スタディツアーや講演会、フェアトレード商品等によるものであろう。その後、4千万円以上から5億円未満では、助成・補助金の占める割合が高くなる。これはNGOへの支援で挙げたN連等へリーチした結果と推察できることからも、NGOの収入規模の拡大は、必ずしも事業収入によるものではないと考えるのが妥当である。これは、山内ら(2007)が国際協力分野の収入源は、寄付・会費・補助金で総収入の約7割を占めると述べた通り、図9でも、全区分で同様な傾向が見られることからも言える。

最後に、図10では、NPO会計に沿って4つの経常支出区分を基に、収入規模別の支出内訳をまとめた。2千万円未満では、事業費と管理費の人件費合計の割合が30%以下であるが、これは正規・非正規職員数名が雇用できるギリギリのラインである。その後2千万円から1億円未満で人件費割合は40%前後と増加する。2千万円を超えた辺りが、職員数の増加や待遇改善といった組織体制を整備するタイミングにある可能性が高いと推察できる。尚、5億円を超えるまでの各クラスの人件費割合が、約30%から45%の間で推移することを明確に示したのは、本稿独自の成果である。

図7:収入規模別団体数
図8:規模別収入合計と累積団体数
図9:収入規模別収入源割合
図10:収入規模別の支出内訳

⑶ 財務指標から見るNGOの財務構造の特徴

NGOを含む非営利組織全体で、利益を求めてはならないという誤った認識もまだ存在するが、組織として継続的に活動を行うには、収益を出し、将来のリスクに対応するための資金の蓄積が不可欠である。NGOの収益状況に関して、6つの収入区分毎に収益率を計算し、まとめたのが図11である。いずれの区分も、3・4割の団体はマイナスにある状態だが、逆の見方をすれば、6・7割の団体は収益を出し、資金を蓄積できている状況にある。特徴的なのは、収入規模が上がるにつれ、収益率20%以上の割合が減少している点である。

上記の収益率では、将来発生しうるリスクへの対応や投資の資金源となる資金を、単年度でどれほど生み出し、蓄積できているかを確認した。図12では、仮にリスクが発生した際に、保有している資金で、何ヶ月分の支払手段があるかを示している。支払可能期間が1ヶ月未満しかない場合、翌月の支払いの対応もままならない可能性もある、ということである。図12の通り、支払可能期間が1ヶ月未満の団体は、500万円未満で11%、5億円以上では、15%であったが、それ以外の区分では0~5%未満である。各区分の9割近い団体は、1ヶ月以上は支払いが可能ということを示す。また図内の点線は6ヶ月以上の支払可能期間を持つ団体の割合の境界線である。5億円以上の団体の内23%の団体のみが、6ヶ月以上の支払可能な資金を保有し、その他の区分では、7、8割近くの団体が有する結果であった。馬場(2009)は、現実的に考えれば、数ヶ月の余裕を持つことが望ましいと述べていたが、NGOの多くは6ヶ月以上の支払可能期間を有していることからも、これまで長年の活動の中で、資金の蓄積がされてきたと考えられる。

ただし、2千万円未満の団体には、一定の収入がある一方で、支出が少なく活動がどれほど積極的に行われているかわからない団体が存在する。このような団体は、図11の収益率、図12の支払可能期間ともに良好に見える場合があるため、あくまで傾向である点に留意する必要がある。加えて、本来給与を含む待遇の向上に向けた支出をせず、蓄積に回わしている可能性も否めない点を付け加える。

最後に、団体収入が、1つの財源に集中するのか、それとも多様な財源から得ているのか、収入多様性指標を基に確認する。本章では、会費・寄付・事業収入・助成/補助金・その他の5つの収入区分を使用しており、これら5つの収入源の内、1つの収入源からのみ収入を得ている場合は、最大値の1.0を示し、5つの収入から均等に得ている場合は最低値である0.2を示す。つまり、収入源が1つに集中しているほど、値が1.0に近く、多様な収入源から収入を得ているほど、0.2に近い値となる。6つの規模区分の結果は、図13の通りである。特徴的なのは、収入規模が4千万円未満までは、収入規模の拡大に伴い、多様性が向上するが、4千万円以上では、収入規模が拡大するにつれ、1つの収入源に集中していく傾向にある点である。この背景には、図9の収入規模別収入源割合で、収入規模が拡大するほど、NGOへの支援として挙げたN連やJPF、草の根技術協力といった助成・補助金が占める割合が高まる。また、これらの1件あたりの受託金額が大きいために、このような傾向になったと推察できる。

図11:収益率(経常収支/総収入)
図12:支払可能期間(流動資産/(総支出/12ヶ月))
図13:収入多様性指標(∑(ri/R)2

おわりに

本章では、2020年度の財務データベースを基に、NGOの財務構造とその特徴を確認した。上位12団体で全体の約4分の3を占める二極化構造にある点やNGOの業界規模の拡大は、NGO自身の努力だけでなく多くのステークホルダーの支援を受け、その中でも助成・補助金の貢献が大きい点を、収入規模別団体数や収入内訳など詳細に数値化し概観してきた。

また収入規模を6つの区分に分け、収入規模毎の特徴を、財務指標を交え分析した結果、先行研究で述べられてきた事業収入による収入規模の拡大ではなく、NGOは、寄付や助成・補助金による規模の拡大が示された。ただし、本章はあくまでも財務構造と収入規模毎の特徴からの推察の域にとどまる。

そこで、最後に、今後の課題を挙げる。まず本章では、単年度データを基に、財務構造とその特徴を見てきたが、相関関係、因果関係などの分析を行うことが必要である。2点目に、より詳細に特徴を捉えるためにも、複数年のパネルデータを用いた分析が必要である。3点目に、先行研究とは異なった特徴の1つに、5千万円と1億円に収入の壁が存在する可能性が確認された点である。これについての分析も必要である。今後、財務データベースは㈱EMAと(特活)JANICの協働により定期的にアップデートされる環境が整いつつある。上記の課題を含め継続した調査・研究を行っていきたい。

脚注

  1. 1)調査対象は、これまでのデータブックがそうだったように、日本のNGOの基本情報が掲載されている「NGOダイレクトリー」を踏まえつつ、複数のプロセスを経た上で424団体に限定し、その中から約56%にあたる236団体から回答をいただいた。有効回答は前回2016年の2倍近くにのぼる216団体(約51%)であった。調査内容は、前回との継続性にも配慮しながら、この5年間で変化が著しいと想定される 1) SDGsの普及による他セクターとの連携拡大、2)組織運営におけるデジタル化の現状、及び 3)コロナ禍の影響の項目を追加した。膨大な調査項目にも関わらず、多くのNGOの皆さまが忙しい時間を割いて回答してくださったことに心から感謝申し上げたい。

  1. 2)2022年6月18日(土)に福岡県立大学を開催校としてオンライン(Zoom)で開催された国際開発学会第23回春季大会のC1.ラウンドテーブル。「日本の国際協力NGOの過去、現在、そして挑戦NGOデータブック2021と市民活動年表(国際協力分野)の調査・執筆から見えてきたこと」をタイトルに据え、企画責任者・司会に大橋正明氏(聖心女子大学)、発表者に長谷川雅子(CSOネットワーク)と楯晃次(㈱EMA)、 討論者として重田康博氏(宇都宮大学)、日浅(平井)美和氏(JICA国内事業部市民参加推進課)、 高杉真奈氏(国際開発センター社会開発部次長)、高柳彰夫氏(フェリス女子大学)が登壇した。

  1. 3)現地化は、現地組織、現地アクター主導の人道支援対応/活動へ転換していく過程を意味する。2016年の世界人道サミットで採択された「グランドバーゲン」の中でその推進が打ち出された。

  1. 4)アフリカ日本協議会ウェブサイト「アフリカで活動する日本のNGOデータベース(50音順)」

  1. 5)アフリカ連合(AU)の前進であるOAU(アフリカ統一機構)の結成50周年にあたる2013年に決定され、2015年のAU首脳会合で採択されたアフリカ大陸全体の長期計画。50年先のアフリカに関する7つの「大志(aspiration)」を掲げている。

  1. 6)若林・大橋(2021)265-266頁。

  1. 7)V-Dem Institute(2022)p.6.

  1. 8)1993年設立の世界の市民社会組織と活動家のアライアンス。175カ国以上、9,000人以上の会員を擁する。本部はヨハネスブルグ。 https://www.civicus.org/

  1. 9)「CIVICUS Monitor」ウェブサイト。

  1. 10)2020年12月に発行された「攻撃されるピープルパワー2020 People Power Under Attack 2020」以降、14カ国で市民社会スペースの評価が変わり、13カ国で悪化、1カ国のみで改善している。また、2019年12月から2020年の間では、11カ国が悪化、2カ国のみが改善した。

  1. 11)2021年7月にOECDで採択された“DAC Recommendation on Enabling Civil Society in Development Co-operation and Humanitarian Assistance”。

  1. 12)高柳(2022)129頁。

  1. 13)OECD(2021)P.3.

  1. 14)OECD(2021)P.4.

  1. 15)国際開発学会RTにおける、重田康博氏(宇都宮大学)のコメントから。

  1. 16)国際開発学会RTにおける、高杉真奈氏(国際開発センター社会開発部次長)のコメントから。

  1. 17)これらの数字と図5を見る上で次の点に注意いただきたい。本来JICAの草の根技術協力事業は、会計上、受託事業として計上すべきだが、補助金に計上する団体がある。またN連では、補助金に計上する団体もあれば、受託事業に計上する団体もあるなど、統一されておらず、受託事業額が増減している。尚、会計区分が統一されていないことが今後の課題の1つである。

  1. 18)全国のNPO法人12,504団体(2003年度)をデータベース化。同データベースの詳細は山内ら(2007・2008)を参照。

  1. 19)財務指標を用いた研究は主に米国で進められている。その背景には、「ガイドスター(Website)」など、非営利組織の財務情報がデータベース化され、広く研究に活用されている。

  1. 20)山内ら(2007)では、全体の38.9%、東京都のデータは、53.2%、愛知県のデータは未記載であった。

  1. 21)『NGOデータブック2021』で使用した財務データは、2021年8月時点で公開済みの財務データを対象としており、会計年度が2019年度と2020年度が混在する。

  1. 22)2012年4月1日より施行された改正特定非営利活動促進法によって、NPO法人が作成すべき計算書類の内、「収支計算書」が「活動計算書」に変更されたが、一部団体においては、未だ「収支計算書」を提出している。

  1. 23)「Social map」( https://socialmap.jp)は、㈱EMAが運営する日本最大のNGOデータベースである。現在国際協力NGOセンター(JANIC)の公式ウェブサイトでも公開している。

引用文献
 
© Japan NGO Center for International Cooperation
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