2023 Volume 1 Pages 73-75
2023年5月に広島で開催されるG7サミット(主要国首脳会議)は、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7か国に加え、欧州連合(EU)が参加する年次の国際会議である。自由、民主主義、人権などの基本的価値を共有するG7首脳が、世界経済、地域情勢、気候変動、国際保健などさまざまな地球規模の課題について、意見交換を行い、首脳宣言を採択する。日本での開催は2016年のG7伊勢志摩サミット以来7年ぶり、7回目となる。
サミットに際してステークホルダーと対話し、その意見を反映させることは、過去のG7議長国が取り組んできた「伝統」だと言える。2022年にドイツ政府が議長国を務めた際には、ビジネス・コミュニティ(Business7)、市民社会(Civil7)、労働組合(Labour7)、科学(Science7)、シンクタンク(Think7)、女性(Women7)、若者(Youth7)という7つのエンゲージメント・グループが設置された。エンゲージメント・グループは自律的かつ独立的に組織されており、議長国の非政府代表によって担われる。通常、それぞれのエンゲージメント・グループの代表者は、G7議長国によって任命される。エンゲージメント・グループは、独自のプロセスを経て、G7の主要課題に関するポジションペーパーや政策提言書を作成し、首脳会合開催前にG7議長に提出する。
市民社会によるエンゲージメント・グループであるCivil7(以下、C7)は、2022年5月4日と5日にベルリンで開催されたC7サミットにおいて、気候・環境の正義、経済正義と変革、国際保健、人道支援と紛争、開かれた社会の諸課題に関する政策提言書をまとめた「C7コミュニケ」を、ドイツG7議長であるオラフ・ショルツ首相に手渡した。ショルツ首相は、これに対し以下のように述べた。「G7は、自由民主主義の価値観と目標に基づいた強力なグローバル・アライアンスであり、民主主義には活気ある市民社会が必要です。あなた方が必要なのです。特に今は。市民社会の専門知識、助言、経験がこれまで以上に必要とされているのです。特に、ロシアだけでなく世界中で、市民社会の関与の範囲がいかに制限されているかを目の当たりにしているからです。特に権威主義的な国家においては、『市民社会スペースが縮小している』という話を耳にします。ドイツは、G7議長国として、これに反対する明確なシグナルを送りたいのです。そのため、私たちは人権擁護者、学者、ジャーナリスト、芸術家の保護プログラムを強化しています。また、市民社会の関与は、個人間、社会グループ間、そして国境を越えた垣根を取り払うことができます。私たちは、世界の主要な課題に取り組むために、市民社会からの支援を必要としています。現在進行中の新型コロナウイルス感染症のパンデミック、人為的な気候変動、食料およびエネルギーの安全保障、そして経済移行がその一例です。」
C7としても、ドイツから日本への引き継ぎが行われた。日本のC7は、2022年5月に設立された「G7市民社会コアリション2023」(以下、コアリション)が担当する。コアリションは、日本で開催されるG7サミット首脳会議および関連閣僚会議に、市民社会の声が反映され、2030アジェンダが掲げる「誰ひとり取り残さない社会」の実現に貢献できるよう、日本政府を含むG7各国政府に働きかけることを目的とし、2023年2月現在、113の団体会員、70名の個人会員が参加して活動している。国際協力NGOセンターは、コアリションの幹事団体(計14団体)を務め、また、SDGs市民社会ネットワークとともに共同事務局を担当している。
C7はグローバルな市民社会による政策提言の場であり、G7各国以外からも幅広い市民社会が関わっている。こうしたグローバルな動きに、開催国である日本の市民社会の関与を促し、円滑な情報共有や能力強化の機会を提供することもコアリションの役割である。G7広島サミットに向けて、以下の6つの活動を実施している。
1)日本国内外の市民社会と協力したG7関連会合に対する政策提言
2)日本政府との面会およびサミット関連の情報収集
3)他のエンゲージメント・グループとの連携構築
4)グローバルな市民社会が開催する「C7サミット」への協力
5)首脳会合開催地の市民社会との連携および「市民社会サミット」の開催
6)市民社会による活動の広報や啓発キャンペーン
2023年1月以降、日本のC7プロセスが本格化し、運営委員会や分野別ワーキンググループの設置、キックオフイベントの開催、分野別ワーキンググループへの参加登録呼びかけ、国内・国際コーディネーターを中心とした政策提言書作りに向けた議論、G7シェルパとの対話、C7サミットの開催、首脳会合の開催地である広島の市民社会と連携した「市民社会サミット」の開催、国際メディアセンターにおける記者会見やG7首脳宣言の評価、そして2024年の議長国であるイタリアの市民社会への引き継ぎなどの活動を予定している。
活動一覧(2022年1月~12月)
時期 | 活動内容 |
---|---|
1月20日 | ・日本各地のネットワークNGOを招いた準備会合開催(オンライン、12名参加) |
3月16日 | ・日本の市民社会に対する活動への呼びかけ説明会開催(オンライン、79名参加) |
5月10日 | ・「G7市民社会コアリション2023」設立総会開催(オンライン、団体会員72団体・個人会員17名参加) |
5月18日 | ・「G7市民社会コアリション2023」第1回幹事会開催(オンライン、16名参加) |
6月1日 | ・鈴木浩G7シェルパ(外務省外務審議官)、中村和彦 G7サブシェルパ(外務省経済局審議官)と面会(外務省、8名参加) |
6月24日 | ・「G7市民社会コアリション2023」第2回幹事会開催(オンライン、13名参加) |
7月8日 | ・G7市民社会コアリション2023設立記念イベント「G7広島サミットに向けて:変革の時代における市民社会の提言」開催(オンライン、129名参加) |
7月23日 | ・中國新聞「今を読む」に「G7市民社会コアリション2023」共同代表の松原裕樹(ひろしまNPOセンター事務局長)が寄稿 |
7月25日 | ・「G7市民社会コアリション2023」第3回幹事会開催(オンライン、16名参加) |
7月28日 | ・「第39回民間NPO支援センター将来を展望する会」にて活動報告(大阪府堺市、54名参加) |
7月31日 | ・「あどぼのプラットフォーム会議2022」にて活動報告(北海道札幌市、30名参加) |
8月10日 | ・「SDGsネットワークおかやま定例会」にて活動報告(オンライン、21名参加) |
8月24日 | ・「G7市民社会コアリション2023」第4回幹事会開催(オンライン、16名参加) |
9月12日 | ・「G7広島サミット公式ロゴマーク選定についての要望」をG7広島サミットロゴマーク審査委員長、外務大臣、G7広島サミット事務局長宛に提出 |
9月22日 | ・小野啓一G7シェルパ(外務省外務審議官)と面会(外務省、7名参加) |
9月30日 | ・「G7市民社会コアリション2023」第5回幹事会開催(オンライン、20名参加) |
10月11日 | ・インド市民社会と面会(オンライン、7名参加) |
10月12日 | ・ドイツT7を担った「The Global Solutions Initiative」と面会(オンライン、2名参加) |
10月24日 | ・ドイツC7「開かれた社会」ワーキンググループ関係者と面会(オンライン、8名参加) |
10月27日 |
・「G7市民社会コアリション2023」第6回幹事会開催(オンライン、17名参加) ・ドイツC7からの引き継ぎ勉強会開催(オンライン、93名参加) |
10月31日 | ・「C20 Asia Forum 2022」にて活動報告(オンライン、64名参加) |
11月1日 | ・C7ドイツ主催「世界規模での市民社会スペースの強化と保護:G7の役割と機会」にて活動報告(オンライン、46名参加) |
11月2日 | ・コアリション会員を対象とし日本C7で設置すべきワーキンググループに関するアンケートを実施(11月15日締め切り、18件の回答) |
11月11日 | ・日本W7関係者と面会(オンライン、4名参加) |
11月14日 |
・日本T7を担うアジア開発銀行研究所(ADBI)と面会(オンライン、4名参加) ・人道支援ワーキンググループに関する勉強会開催(オンライン、26名参加) |
11月15日 | ・G7閣僚会合開催地の市民社会情報交換会(第1回)開催(オンライン、23名参加) |
11月16日 |
・ピースボート主催勉強会「【世界を学ぼう】G7へ市民社会の声を届ける」にて活動報告(オンライン、20名参加) ・人道支援ワーキンググループに関する打ち合わせ開催(オンライン、12名参加) |
11月17日 | ・強制労働撤廃に向けた政策提言を行うNGOとの会合にて活動報告(オンライン、12名参加) |
11月21日 |
・ドイツC7代表者3名が来日、引き継ぎに関する打ち合わせを実施(東京都新宿区、6名参加) ・SDGs市民社会ネットワーク開発ユニットと面会(オンライン、15名参加) ・外務省国際協力局民間援助連携室と面会(外務省、8名参加) |
11月24日 |
・ドイツC7から日本C7への公式引継ぎ式開催(世界銀行東京事務所、対面24名、オンライン61名参加) ・世界銀行駐日特別代表と面会(世界銀行東京事務所、9名参加) ・経済ワーキンググループに関する打ち合わせ開催(東京都千代田区、8名参加) ・山田美樹環境副大臣と面会(環境省、6名参加) |
11月25日 |
・「G7市民社会コアリション2023」第7回幹事会開催(東京都中野区、18名参加) ・JICA国内事業部市民参加推進課と面会(JICA本部、5名参加) |
11月28日 | ・インド市民社会と面会(オンライン、3名参加) |
11月29日 |
・フランクフルト平和研究所からのインタビュー実施(オンライン、2名参加) ・ドイツG7食料安全保障作業部会へのオブザーバー出席(オンライン、1名参加) |
11月30日 | ・インドC20事務局関係者と面会(オンライン、8名参加) |
12月7日 | ・日本T7を担うアジア開発銀行研究所(ADBI)と面会(オンライン、10名参加) |
12月12日 |
・広島で活動する市民社会メンバーと面会(広島県広島市、19名参加) ・広島サミット県民会議担当者と面会(広島県広島市、7名参加) ・広島市役所にて記者会見実施(NHK、中國新聞、読売新聞、毎日新聞に掲載) |
12月13日 | ・「G7 Global Advocacy Taskforce」にて活動報告(オンライン、66名参加) |
12月16日 | ・ICVA事務局長との会合にて活動報告(東京都千代田区、11名参加) |
12月21日 | ・G7閣僚会合開催地の市民社会情報交換会(第2回)開催(オンライン、19名参加) |
12月22日 | ・「Monthly Webinar on Advocacy Calendar on Asia」にて活動報告(オンライン、46名参加) |
12月23日 |
・中村和彦G7サブシェルパと面会(外務省、11名参加) ・「G7市民社会コアリション2023」第8回幹事会開催(東京都渋谷区、17名参加) |