遺伝学雑誌
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十字花科植物の交配試驗、特に性的和合性並に傾母遺傳に就て (豫報)
柿崎 洋一
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1925 年 3 巻 2 号 p. 49-82

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抄録

多くの十字花科植物には自家不和合及び廣範なる交配和合の現象あることは、從來より知らるゝ處なり。自家不和合の現象は、生物學的見地より興味あるのみならず、實際的農業上に至大の關係を有す、而して交配和合の範圍及び程度を知るは、之等作物の採種裁培上特に重要のことなりとす。更に、之が雜種の遺傳現象如何は、遺傳學上のみならず實際的品種改良及び採種裁培上、亦以て注意を要する問題なり。然るに、從來の研究は甚だ不充分にして未だ遺憾の點多し。依つて著者は之等の點に就きて貢獻する處あらんとし、1922年、諸種の十字花科植物を材料とし、授粉試驗及び雜種の遺傳研究に着手せり、而して目下繼續試驗中に屬すれども、爰に昨夏までの成績を取纒めて報告せり。其概要次の如し。
(1) 供試材料 白菜 (Brassica campestris, Pe-tsai)、〓薹 (B. c. oleifera)、小松菜 (B. c. Komatuna)、壬生菜 (B. japonica)、甘藍 (B. oleracea, capitata)、球莖甘藍 (B. o., caulo-rapa)、葉芥菜 (B. nigra)、大芥菜 (B. juncea)、大根 (Raphanus sativus)。
(2) 稔度の測定 今 Rc=結莢數に依る稔度、Rs=結實種子數に依る稔度、c=百花より生ぜる結莢數、s=同上種子數、C=同一株標準授粉方法に於ける百花より生ぜる結莢數、S=同上種子數とせば、各授粉方法に於ける稔度は、Rc=c/C、Rs=s/Sに依りて計算す。而して、本實驗に於ては自然授粉を以て標準授粉方注とせり。尚ほ、RcRsとを比較せば、稔度を表はす上に後者が前者よりも正確なること當然なり。特に、稔度比較的低く一子房中の胚珠數多き場合に於て然りとす。

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