日本救急医学会雑誌
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症例報告
右冠動脈起始異常により心室細動(VF)から心停止に至った若年者の1例-前駆症状としての失神発作の重要性-
田口 博一太田 祥一大高 祐一織田 順三島 史朗行岡 哲男
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2010 年 21 巻 4 号 p. 172-176

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抄録
冠動脈起始異常は,生来健康な若年者に突然発症することが多いので,突然死の前に医療機関を受診することは少なく,たとえ受診したとしても無症状時の一般的な心電図や心臓超音波検査などで所見が得られにくい。これらの理由から本症が心停止前に診断されることは稀である。今回我々が経験した症例は,生来健康な22歳男性でバスケットボールのクラブ活動中に発症,心肺停止で搬送された。剖検で右冠動脈起始異常が確認され,死因として疑われた。本症例は既往に2回の失神があった。失神は救急外来では比較的頻度の高い症候であるが,受診時に本症のような致死的な原因を鑑別することは必ずしも容易ではない。若年者とくにスポーツ愛好者の反復する失神は,本症を積極的に疑い,マルチスライスCTを行うことで心停止前に本症が診断でき,若年者の突然死が予防できる可能性が示唆された。
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© 2010 日本救急医学会
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