日本救急医学会雑誌
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原著論文
敗血症性DIC症例に対する遺伝子組み換えトロンボモデュリンの凝固・炎症反応への影響
矢田 憲孝西尾 健治關 匡彦福島 英賢瓜園 泰之畑 倫明奥地 一夫
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2011 年 22 巻 9 号 p. 749-757

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抄録

目的:DIC治療薬遺伝子組み換えトロンボモデュリンα(rTM)の敗血症性DIC患者への効果をDIC重症度・凝固・炎症反応への影響を通して分析すること。方法:対象は2007年9月から2010年1月に入院し急性期DIC診断基準を満たした敗血症性DIC症例で,来院時アンチトロンビン(AT)が70%以下でAT製剤を投与された患者を対象とした。rTMを投与されたグループをTM群,rTMを投与されていないグループを対照Control群とした。他のDICに対する薬も同じものとした。両者の重症度・凝固・炎症反応の経過をそれぞれのマーカーから比較し,rTM投与の効果を分析した。結果:TM群は12名,Control群は16名であった。両群間で発症時全ての項目で有意差はなかった。急性期DICスコアは薬剤投与前と比較するとTM群で5日目,Control群では7日目で平均4点未満と有意に低下し,rTMのDIC改善期間短縮効果を認めた。また発症時上昇していた可溶性フィブリン(SF)とTATはTM群のみで有意に3日目で低下し,SFでは3日目と7日目においてTM群はControl群より有意に低値を示していた。3日目でのこれらの低下は,その時点でのトロンビン量の減少を示し,rTM投与によりトロンビン産生が阻害されているものと推察された。またAT活性は両群共に発症時低値であったが,3日目においてTM群ではControl群に比し有意に上昇し,rTMのAT温存効果が確認され,トロンビン産生低下によるものと推察された。炎症反応のマーカーであるTNF-α,IL-6,HMGB1はTM群で薬剤投与前より3日目に有意に低下し,HMGB1では3日目にはTM群でControl群より有意に低下していた。これらの反応はトロンビン産生低下やHMGB1吸着作用を介したrTMの抗炎症作用によるものと推察された。考察:rTMは敗血症性DIC患者においてDIC改善期間短縮効果を示し,トロンビン産生抑制作用により凝固・線溶反応を抑制し,AT温存効果を示し,更に炎症反応をも抑制していることが推察された。結語:rTMはその抗凝固および抗炎症作用により敗血症性DICに対し,有効であると考えられた。

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