石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
石炭および液化油の構造解析法
吉田 忠
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1992 年 35 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

核磁気共鳴法と質量分析法による, 石炭および液化油の構造解析法について概説した。固体高分解能CP/MAS13C-NMRは石炭の炭素分布の直接測定を可能にし, その構造特性を明らかにした。石炭の炭素と酸素分布に基づいて算出した構造単位の構造指数から, 低石炭化度炭の平均芳香族環数は1~3環, 高石炭化度炭のそれは3~5環であることが示された。また, 石炭の低温空気酸化と加熱処理による化学構造の変化およびその反応特性を調べた結果, いずれもメチレン基炭素の著しい減少が見られた。一方, 液化油の分析には, 溶液13C-NMR法による平均構造解析法と, FI-MS法による構造分布解析法が有効であった。13C-NMR法では, 芳香族部分の炭素分布から平均化学構造の構造指数が直接求められ, 1H-NMR法による解析結果と比較した。また, FI-MS法におけるFI相対イオン感度に及ぼす分子量と化合物タイプの影響を調べた結果, この方法が従来のEI-MS法より定量性に優れ, 液化油の構造分布解析に適していることが明らかになった。これらの解析法を用いて, 石炭の解重合反応におけるエーテル結合とメチレン架橋の開裂の役割について検討した。

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