サルコイドーシス/肉芽腫性疾患
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拡張型心筋症を呈する心臓サルコイドーシス
左室縮小形成術 (バチスタ手術) 症例を中心に
寺崎 文生北浦 泰
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2004 年 24 巻 1 号 p. 21-30

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抄録

心臓サルコイドーシス (心サ症) はサルコイドーシスによる死因の多くを占め, 治療開始時期が予後を左右するため早期診断が極めて重要である. 本研究は循環器内科の立場から観た心サ症患者の診断・治療・予後に関する現状と問題点を検討することを目的として行われた. 臨床的に拡張型心筋症と診断され, 心筋組織所見より心サ症が明らかになった患者10例 (左室縮小形成術切除心筋6例, 生検心筋2例 (うち1例は手術中の生検), 剖検心筋2例) を対照の特発性拡張型心筋症患者10例 (左室縮小形成術施行例) と比較検討した. 結果は心サ症患者において, 1) 心臓以外の臓器病変が臨床的に明らかでないため拡張型心筋症と誤診されている症例が多くみられた. 2) 拡張型心筋症と診断された心サ症患者は, 中高年発症で非虚血性心筋症の病態を呈すること, 高度房室ブロックや局所的心室壁運動異常 (心室瘤, 心室中隔菲薄化など) が先行するなどの特徴が認められた. 3) 経過は慢性進行性のものが多いが, 一部に若年発症し急性激症の経過をとるものがみられた. 4) 分子生物学的および免疫組織学的検索で特異的な炎症性サイトカインの発現亢進が認められ, 多くが1型ヘルパーT細胞 (Th1) 関連サイトカインであった. また, これらについて代表症例を挙げて問題点を指摘した. 以上より, 心臓以外の臓器病変が明らかでない場合は心サ症を拡張型心筋症または原因不明の心筋症と誤診することが多い. 心サ症の疫学, 病因, 病態 (活動性), 治療, 予後などに関して明らかにされていない点が多く, 心サ症に対する感度および特異性が高い診断法, 的確な活動性の評価法の確立のみならず病因・病態の解明が待たれる.

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© 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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