抄録
部分けん化ポリビニルアルコール (P-PVA) の有機溶媒中におけるクロミズムを調べた. P-PVAはそれとほぼ同じ屈折率をもっ有機溶媒中で色づいた. 残存酢酸ビニル単位基量の多いP-PVAほど有機溶媒中で顕著に発色し, 透過光の極大波長は長波長側に現れた. その透過光と散乱光は補色の関係にあった. これより, 有機溶媒とP-PVAの両分散曲線の交点が可視光領域にあって, その交点の波長の光が透過し, その他の波長の光が散乱したと解釈できた. これは有機溶媒の屈折率が低くなるほどP-PVAの透過光の極大波長が短波長側へ移動することからも実証できた. 一方, 高屈折率の有機溶媒へ低屈折率のメタノールを添加した場合, P-PVAの透過光の極大波長はメタノールの添加が少量の範囲ならば短波長側から長波長側へ, 過剰の添加範囲ならば逆に長波長側から短波長側へと移動した. この興味ある現象は, P-PVAが混合溶媒からメタノールを選択的に吸着して自体の屈折率を低下したことと, メタノールの添加で混合溶媒の屈折率が低下したこととの競合であることが確認された.