1996 年 57 巻 6 号 p. 1398-1402
症例は, 52歳の男性.腹痛,下痢を主訴として当院を受診した.右下腹部に小児手拳大の腫瘤を認め,同部に圧痛を認めた.腹部超音波検査にてpseudo kidney sign, multiple layer signを呈し,腹部CT検査では同心円状の層状構造を認めた.ガストログラフィンによる注腸検査にて回盲部の腸重積症と診断し,手術を施行.手術所見では,回盲弁より38cm口側の小腸腫瘍を先進部とした回腸回腸結腸型(5筒性順行性)腸重積症であった.用手的に重積を解除した後,小腸腫瘍摘出術を施行した. 4×3×1.5cm大の亜有茎性のポリープであり,表面は分葉結節状であった.病理組織学的には腺管絨毛腺腫と診断された.
回腸腺腫は極めて稀な疾患であり,文献的報告例で記載が明らかなものは7例をみるにすぎない.自験例を含む8例の本邦集計成績を中心に文献的考察を加えた.