NHK 放送文化研究所では,全国の学校現場におけるメディア環境の現状を把握するとともに,放送,インターネット,イベントなどNHKの教育サービス利用の全体像を調べるために,1950年から定期的に学校を単位として,あるいは教師個人を対象として全国調査を行ってきた。全国の小・中学校で「児童生徒向けの1人1台端末」と「高速大容量の通信ネットワーク」を一体的に整備するGIGAスクール構想の本格的な運用が始まった2021年度は、小学校の教師個人を対象とした。
「GIGAスクール構想」前の2018年度の結果と比べると、タブレット端末を利用できる環境にある教師が大幅に増加し(63%→96%)、インターネットを利用できる環境にある教師も増えていた(87%→98%)。
また、1人1台ずつ児童に配付されたパソコンやタブレット端末(GIGAスクール端末)を授業で児童に利用させている教師は、全体で9割を超えた。さらに「GIGAスクール端末」を児童に利用させている教師でみると、そのうち7割以上が週3~4回以上の高い頻度で利用させるとともに、ほぼ半数が家庭に持ち帰らせて学習利用をさせていた。
授業でのメディア教材の利用についてみると、NHKの学校放送番組あるいはNHKデジタル教材のいずれかを利用していた「NHK for School教師利用率」が、2018年度の67%から88%に大きく増加した。また、「学習者用のデジタル教科書」は、「GIGAスクール端末」とともに授業で利用させている教師が一部にみられ、少数ではあるが、家庭の学習でも児童に利用させている教師が存在した。
教師が児童の家庭学習にどのような支援を行っているのかを尋ねたところ、「市販ドリルやプリント教材の利用」と「教科書の利用」が6~7割で多かったが、児童が家庭でインターネットを利用して行う「NHK for Schoolのウェブサイトや公式アプリの利用」や、「同時双方向型のオンラインの指導」も行われていた。また、ビデオ会議や資料共有、コミュニケーション機能などがある、授業や家庭学習のための「学習支援ツール」は、86%の教師が利用していた。
GIGAスクール構想の実現で、教室のメディア環境は大きく変わった。今後、家庭のメディア環境の差などの課題が解決されると「オンライン学習」も進み家庭学習も変化すると考えられる。「学習者用のデジタル教科書」や「学習支援ツール」の利用も含め、学校と家庭の両方を見渡した学習支援のトータルデザインを考える必要があるだろう。
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