日本救急医学会雑誌
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症例報告
rt-PAを使用し, 完全回復した小児脳梗塞の1例
高柿 尚始西村 茂恩田 純原田 薫雄高安 武志
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2007 年 18 巻 12 号 p. 803-809

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抄録

脳梗塞急性期の治療として2005年10月よりrecombinant tissue plasminogen activator (以下rt-PA) の静脈内投与が本邦においても保険適応として許可され, 脳梗塞の新たな治療法として注目されている。しかしながらrt-PAの使用には出血性合併症を考慮し, 脳梗塞発症から3時間以内に投与しなければならないという厳格な基準が設けられている。今回われわれは, 突然発症した13歳男子の右内頸動脈閉塞に伴う脳梗塞に対しrt-PAを投与し良好な結果を得ることができたので若干の文献的考察を加え報告する。患者は13歳の男子。学校の部活中に突然, 気分不良を訴え, 意識障害, 左片麻痺出現したため当院へ救急搬送された。来院時, 意識レベルJCS20, 左片麻痺 (左上肢MMT0/5, 左下肢MMT0/5), NIHSS (National Institutes of Health stroke scale) 31点。頭部CTでは明らかな異常は認めなかった。MRI拡散強調像にて右側頭葉に高吸収域を認め, 頸部MRAにて右内頸動脈の完全閉塞, 頭部MRAにて右内頸動脈は描出されていなかった。集中治療室に入室後, 発症から2時間48分で経静脈的にrt-PAの投与を開始した。翌日の午前4時頃, 意識レベルはJCS1まで改善し, 左片麻痺も改善しMMTは左上肢4/5, 左下肢4/5となった。翌日の頭部CTでは出血性合併症は認めなかった。MRI拡散強調像にて右前頭葉及び側頭葉皮質下, 大脳基底核部に高吸収域の拡大を認めたが, 頸部MRAでは右内頸動脈は再開通していた。頭部MRAでは右内頸動脈及び中大脳動脈の描出は鮮明ではなかった。その後の経過は良好であり, リハビリテーションにて左片麻痺は完全回復し, 頭部MRAにて右内頸動脈及び中大脳動脈の描出も鮮明となり, 第14病日後遺症なく退院した。rt-PA使用に関しては, 小児であっても厳重な管理を行えば有用であると考えられた。

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© 2007 日本救急医学会
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