日本臨床免疫学会会誌
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総説
皮膚科的な視点からみた血管炎症候群
—皮膚症状から発症機序まで—
川上 民裕
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2007 年 30 巻 3 号 p. 156-164

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抄録

  一般に血管炎症候群の分野で,皮膚科が関連するのはChapel Hill Consensus Conferenceにおける小血管レベルの各疾患と中血管レベルの結節性多発動脈炎(特に皮膚型結節性多発動脈炎)である.過去に経験した血管炎症候群の症例を振り返り,その皮膚症状,特に病初期における,を検討した.まず,ANCA関連血管炎では,顕微鏡的多発血管炎でリベド症状,Churg-Strauss症候群で下肢のしびれを伴う紫斑が注意すべき病初期の皮膚症状といえる.Wegener肉芽腫症を含めた3疾患では,頻度は少ないが肘の小結節をみ,組織像でpalisading granuloma像を呈する.免疫複合体の関与する血管炎症候群では,Henoch-Schönlein紫斑病で“palpable purpura”(隆起する紫斑)が特徴的かつ診断価値が高い.こうした疾患特有の皮膚症状を意識しておくことは,早期発見への手がかりとなる.一方,クリオグロブリン血症性血管炎で血栓像と壊死性血管炎像が併存した症例を経験した.これをヒントとし,血管炎症候群,特に免疫複合体関連血管炎では,血栓形成が重要なキーワードと考え,リン脂質関連抗体との関係につき臨床研究を行った.Henoch-Schönlein紫斑病では抗カルジオリピン抗体IgAが上昇し,皮膚型結節性多発動脈炎では抗ホスファチジルセリン・プロトロンビン複合体抗体IgMが有意に上昇しており,それらの病因との関連を示唆した.

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© 2007 日本臨床免疫学会
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