經營學論集
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日本経済と販売会社(日本的経営の諸問題)
*瀬戸 廣明
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p. 175-180

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抄録

(1)商業資本は産業資本に対して二つの機能を有する。一つは産業資本の生産物の価値を実現する機能であり、今一つは産業資本に対する資本投下機能すなわち自らの責任で産業資本の生産物を買い取る機能である。産業資本の販売部門でも前者の機能を果すことはできるが、後者の機能はこれを果すことができない。寡占的産業資本の流通過程支配は必然的にマーケティングチャネルの構築に向かうが、このことは商業資本の排除を必然的にともなう。商業資本の排除は商業資本の有する資本投下機能の産業資本による享受を妨げる。もし寡占的産業資本がこの機能の享受を失わないような手段がとれるとすれば、それが販売会社である。(2)販売会社と販売金融会社は寡占的産業資本の商品資本と貨幣資本の商品取扱資本と貨幣取扱資本としての自立形態である。役割はどちらも寡占的産業資本の流通時間の短縮にある。形態のちがいはそれぞれの資本主義における、(イ)、取引の決済方法の差違、(ロ)、(イ)の基礎にある個別の資本の力の強弱と、(ハ)、そこからくる国家の役割の差違に求められる。(3)わが国における高度の経済成長が販売会社を生みだしたのであるが、この販売会社はまた経済成長に無視すべからざる影響を及ぼす。一九七〇年初めに販売会社の資本投下機能が失われたとすれば、同年の経済成長率は一〇・四%から八・三%に縮小する。(4)経済の高度成長期に果す販売会社の役割、すなわち親メーカーの資本の回転期間を短縮し、それによって新規投資額を軽減するという役割は当然のことながら停滞期には変化する。

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© 1978 日本経営学会
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