ソニー創業者の盛田昭夫が「モットー」と呼び、人的資源管理の基本理念としていたソニーの「実力主義」の内容について先行研究では詳しく分析されていない。そのため、「実力主義」が人間本位の理念であるとともに、日本的雇用慣行を強く意識していたことは明らかにされてこなかった。本研究は、第一に「実力主義」が日本経営者団体連盟の提唱した「能力主義」と同じく人間尊重を基盤とすることを明らかにした。第二に「能力主義」が集団主義の長所を補強すると論じられるように、盛田の「実力主義」もソニーの経営理念である運命共同体と連結されていることを明らかにした。第三に「実力主義」は年功序列と終身雇用を強く意識する点で「日本的能力主義」に近いことを明らかにした。検証の結果、ソニーは1960年代から日本的な人的資源管理を推進していたことを導いた。