主催: 日本経営学会
会議名: 日本経営学会第89回大会
回次: 89
開催地: 熊本学園大学
開催日: 2015/09/02 - 2015/09/05
p. 37-46
現代資本主義は1980 年代以降,新自由主義的経済政策やイデオロギーによって導かれてきた。しかし,その下部構造は産業革命以来,生産性革命とマネジメント革命によって知識集約化が進んだ。その結果,企業は利潤追求の貨幣資本循環や組織中心の生産資本循環ではなく,顧客創造の商品資本循環を中心に経営されるようになった。それが市場主義的な経済の再生をもたらした。しかし,革新を生み出す知識集約的な経済に決定的な要素は,多様な調達が可能になった資本ではなく,付加価値を生み出すさまざまな知識やアイディア,技術である。したがって,株式会社の資本集中機能の重要性は独占化の段階よりも弱くなる。それは株式会社の証券化という資本の動化が成功し,一般化した結果でもある。そのため,株式会社の課題は資本集中ではなく支配集中をいかに正当化するか,つまり企業統治をどうするかにかかってくる。顧客を創造する革新的な生産力体系に相応しい新たな企業統治のシステムやイデオロギーが,新自由主義に代わって現れなければならない。