經營學論集
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第86集 株式会社の本質を問う-21世紀の企業像
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サブテーマ① 株式会社の原理を問う
現代資本主義と株式会社
――個別資本の3循環と企業統治――
*高橋 公夫
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p. 37-46

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抄録

現代資本主義は1980 年代以降,新自由主義的経済政策やイデオロギーによって導かれてきた。しかし,その下部構造は産業革命以来,生産性革命とマネジメント革命によって知識集約化が進んだ。その結果,企業は利潤追求の貨幣資本循環や組織中心の生産資本循環ではなく,顧客創造の商品資本循環を中心に経営されるようになった。それが市場主義的な経済の再生をもたらした。しかし,革新を生み出す知識集約的な経済に決定的な要素は,多様な調達が可能になった資本ではなく,付加価値を生み出すさまざまな知識やアイディア,技術である。したがって,株式会社の資本集中機能の重要性は独占化の段階よりも弱くなる。それは株式会社の証券化という資本の動化が成功し,一般化した結果でもある。そのため,株式会社の課題は資本集中ではなく支配集中をいかに正当化するか,つまり企業統治をどうするかにかかってくる。顧客を創造する革新的な生産力体系に相応しい新たな企業統治のシステムやイデオロギーが,新自由主義に代わって現れなければならない。

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© 2016 日本経営学会
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