1990年代までは中国国有企業を対象とした調査・研究の多くは専ら低効率・低収益ということを問題にしていた。また,そのような調査結果から国有企業の民営化等の解決策も提案されてきた。しかしながら,2000年代以降は国有企業の収益性は決して低くはないとする調査が多数公表された。さらに,米金融危機以降の2000年代後半から現在に至るまで,中国国内および米国での調査・研究の多数が国有企業の低迷ではなく伸張を問題とするようになった。つまり,過去20年足らずで国有企業の研究の方向が全く逆になってしまった。本稿では中国国内および米国において近年の国有企業の伸張を問題とした批判と,更にその批判に基づいた調査・研究について検討した。国有企業の存在感が大きいか,或いは,存在感が増大したか否かといった問題は産業毎にかなり異なっており,特に近年の研究では,産業特性に着目した国有企業研究が盛んになりつつあることを指摘した。これらを通じて,今後の中国企業研究に対する留意点を提供することを本稿は目的としている。