日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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ネックレール位置が搾乳牛の牛床内横臥位置および角度に及ぼす影響
竹内 美智子森田 茂影山 杏里奈春田 哲平島田 泰平干場 信司
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2006 年 42 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

ネックレールの位置がフリーストール牛舎における搾乳牛の牛床内横臥状況に及ぼす影響を、横臥位置(前膝位置および座骨端位置)および横臥角度から検討した。調査は酪農学園大学附属農場フリーストール牛舎において実施した。牛床は2列対頭式であり、計42であった。牛床は全長236cm、幅120cmであり、牛床前方から60cmの位置にブリスケットボードが設置されていた。乳牛は起立動作時に、頭を前方へ出すことが出来る牛床構造であった。全ての牛床のネックレールの位置を順次変更し、3つの処理区に分けて調査を実施した。調査開始時のネックレールの高さは110cm、ネックレールの位置は牛床前方から60cmであった(処理区1)。次にネックレールの高さを変えず、前方45cmの位置へ移動した(処理区2)。さらにネックレールを牛床前方から75cm、高さ128cmの位置へ移動した(処理区3)。対象としたホルスタイン種泌乳牛は、延べ230頭であった。牛床内での乳牛の横臥の様子をデジタルカメラにより3.3m上方から撮影し、横臥角度を調べた。また、牛床前端から前膝までの距離および牛床後端から座骨端までの距離を計測した。平均前膝位置は、処理区1で64±7cm、処理区2で61±4cm、処理区3で61±2cmであり、有意な差は認められなかった。出現頻度の比較においても、処理区間に有意な差はみられなかった。すなわち、いずれの前膝位置もブリスケットボードのすぐ後ろである60〜69cmの範囲で最も多かった。横臥角度は、出現頻度の比較では処理区間に有意な差はみられなかった。しかし平均横臥角度は、処理区1で19±11度、処理区2で20±12度、処理区3で16±10度であり、処理区1と処理区2に比べ、処理区3で有意(p<0.05)に小さかった。平均座骨端位置は、処理区1で-2cm、処理区2で-5cm、処理区3で5cmであり処理区1と処理区2に比べ処理区3で有意(p<0.05)に後方へ移動した。また、座骨端位置の範囲は処理区1と処理区2に比べ処理区3で狭くなった。これらのことから、ネックレールの位置により前膝位置は変化しなかったが、ネックレールを後方へ移動し高くすることで横臥角度が減少したことから、座骨端位置が後方へ移動することが示された。ネックレールを後方へ移動し高くしたことによる横臥角度の減少は、前方のヘッドスペースが確保されるため、側方への頭の突き出しが減少するためと推察された。以上のことから、ネックレールの位置は横臥角度に影響を通じて座骨端位置に影響を及ぼすことが示された。

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