日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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都心と郊外のトラップで捕獲されたハシブトガラスの月別捕獲数とその構成の比較
吉原 正人鈴木 馨梶 光一
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2015 年 51 巻 2 号 p. 73-80

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抄録

東京都は2001年からカラスの捕獲と生ゴミ対策事業を実施しており、その被害軽減に努めている。この事業では急速に数を減らすことが優先され、カラスの生活史は不明なままである。そこで著者らは都心公園内に位置する上野動物園(2001年5月〜2003年3月、1,330羽)と、郊外雑木林内にある雪印こどもの国牧場(2003年4月〜2005年3月、3,496羽)で捕獲されたハシブドガラス(Corvus macrorhynchos japonensis)を用いて、月別捕獲数とその構成(成幼、性別)を比較し、カラスの生活史解明の一助とした。月別捕獲数は、上野では9月を高いピークとする1峰性の変動が見られた。一方こどもの国では4月のピーク後、5〜7月に減少、8月以降再び増加する傾向を示した。上野の9月のピークはほぼ全て幼鳥が占め、成鳥の捕獲は年間を通じて少なかった。対照的に、こどもの国の4月のピークは大半が成鳥で、幼鳥は成鳥がほとんど捕獲されなくなる8〜11月に多数捕獲された。全捕獲個体の成幼比は、上野で成鳥20.9%:幼鳥79.1%、こどもの国で成鳥43.9%:幼鳥56.1%と、明らかな地域差が見られた(x^2=170.3、P<0.01)。捕獲カラスの性比(100×♂/♀)は上野(77.6)、こどもの国(97.5)ともにメスが多かったものの、上野のほうがその偏りが大きかった(x^2=12.6、P<0.01)。都心(上野)では、成鳥は豊富な餌資源(生ゴミ)と確立したなわばりからトラップにかかりにくく、親から自立し始めた幼鳥、特に競争に弱いメスが捕獲されやすいことが推測された。一方郊外(こどもの国)では、自立過程の幼鳥とともに、繁殖期の成鳥も多数捕獲できることが示唆された。このように都心と郊外では捕獲効果が異なることから、地域(生息地)特性を生かした管理計画が有効であると思われる。

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© 2015 日本家畜管理学会・応用動物行動学会
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