抄録
植食性ダニの優占種とその密度に及ぼすカブリダニの影響を検証するため,新植リンゴ園において殺虫剤散布を停止した後の連続する5年間の植食性ダニ類とカブリダニ類の個体群動態を調査した.カブリダニは,2005年から2008年には主に秋に発生し,2009には顕著な2山型の発生を示した.5年間に10種のカブリダニが採集されたが,優占種と種構成は年次により異なった.植食性ダニ類は,2005年には秋に発生したが,翌年以降,発生ピークのタイミングと密度は徐々に変化した.カブリダニの発生量と種構成から判断して,ナミハダニの発生はカブリダニ群集によって抑制されなかった.リンゴハダニは殺虫剤散布の影響を受けていたが,殺虫剤無散布体系ではナミハダニの発生に影響を与えていたかもしれない.最終的に,ナミハダニは抑制され,リンゴハダニとリンゴサビダニの発生量は少なくなった.直接的な影響は強くないが,フツウカブリダニは殺虫剤を省略したリンゴ園におけるダニ群集の安定性の重要な役割を担っている.