日本ダニ学会誌
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個体群生態学,生物的防除および害虫管理における基礎としての日齢−齢期両性生命表とその応用
後藤 哲雄齊 心
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2019 年 28 巻 1 号 p. 33-44

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抄録

本稿では,ダニや昆虫の生命表計算における雌と日齢だけを対象とした生命表(female age-specific life table; 以下,「従来の生命表」という)の問題点を改善した日齢−齢期両性生命表(age-stage, two-sex life table)について,概略を紹介する.

生命表は個体群生態学や害虫管理における重要なツールであるが,従来の生命表は雄個体を無視し,かつ昆虫の変態を正確に描写できないため,国内外の研究者はこれらを考慮できる日齢−齢期両性生命表を使うようになってきている.本稿ではこれから生命表を用いた研究をしようとする日本の研究者のために,日齢−齢期両性生命表の基本原理を説明したい.この生命表は従来の生命表解析に比べて,1.個体群の齢期分化(stage differentiation)を正確に描写できる,2.個体群増殖に及ぼす性比の影響を研究できる,3.総産卵前期間(total preoviposition period, TPOP)と成虫産卵前期間(adult preoviposition period, APOP)を区別できる,4.産卵期間 (oviposition period)と産卵日数 (oviposition days)を区別できる,などの利点がある.また,日齢−齢期両性生命表の分析技術として,1.日齢−齢期両性生命表と捕食速度分析表を連結することによって純繁殖率(net reproductive rate, R0)から純捕食率(net predation rate, C0)への餌転換効率(transformation rate, Qp)を正確に得ることができる,2.平均産子数(fecundity, F)と純繁殖率(R0)との関係を正確に得られる,3.個体群成長(population growth)の不確実性(uncertainty)を示すことができることを紹介する.最後に,日齢−齢期両性生命表の応用として,1.個体群成長と防除適期の予測ができる,2.天敵生物の捕食速度や害虫の摂食速度を正確に分析できる,3.捕食速度分析表と併せて,天敵の個体群変動と潜在的な捕食能力を予測できる,4.天敵の大量飼育についての情報を提供できることを紹介する.

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