日本ダニ学会誌
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フタトゲチマダニの雄性生殖付属腺と精包の由来に関する組織学および組織化学的研究
松尾 智英毛利 孝之白石 哲
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1997 年 6 巻 1 号 p. 1-10

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抄録
フタトゲチマダニにおける雄性生殖付属腺の外部形態と吸血・交尾に伴う組織学的変化,および組織化学的手法による雄付属腺分泌物と精包各部の比較検討を行った。雄性生殖付属腺は,射精管につながりダニの腹側を後方へと伸びる集合管から単独および対をなして突出する複数の葉から構成されていた。単独の葉は集合管の後端に直接開口して背側前方へ屈進する背中葉と,集合管の腹側前方に開口する中腹葉の2葉,対をなす葉は集合管の左右に突出する5対,すなわち前方から前腹葉,側腹葉,背側葉,後側葉および後腹葉であった。これら各葉の上皮細胞は吸血に伴って多様な分泌顆粒を生産し,交尾とともにそのほとんどを放出するという,吸血と交尾に同調したきわめて大きな形態変化を示した。これらの変化は,雄付属腺分泌物が精包を形成することを示唆している。この雄性生殖付属腺分泌物とそれらによって形成される精包の組織化学的観察によれば,外精包外層が前腹葉,外精包内層が背側葉および後側葉,精包内の3タイプの顆粒が中腹葉,後腹葉および側腹葉にそれぞれ由来することが示唆された。
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