抄録
富山県,立山山岳地帯から得られたコバネダニ科の3種は,いずれも新種,新亜種と判断された.ブナ林やハイマツ低木林から採集されたCyrtozetes(シラネコバネダニ属)のササラダニ,C.denaliensis Behan-Pelletier,1985に極めて似ているものの,体型がはるかに小さいことや槍状突起(custodium)の長いこと,第III 脚腿節(femur)の毛が2本であることなどから別亜種と判断し,新亜種Cyrtozetes denaliensis minor subsp.nov.(タテヤマコバネダニ)と命名し記載した.高山帯のミヤマハンノキ林から得られたGhilarovizetes(新称,ジラロフコバネダニ属)の4番目の種をGhilarovizetes maruyamai sp.nov.(マルヤマコバネダニ)と命名, 記載した.小さくえぐられたような吻,丸形に近い後体部,体長,背毛(C1-C3)の配列の違いなどから既知種と区別できる.黒部湖畔タンボ平のダケカンバ林から得られたササラダニは,幅広い帯状の横桁と縦桁,14対の背毛,5対の生殖毛,線状の側盾板(tutorium),前方が幅広いお椀形の後体部,短い翼状突起などの特徴を合わせ持ち,コバネダニ科の既知属のどれにも該当しない.そこで,新属Gephyrazetes gen.nov.(オビコバネダニ属)を創設し,Gephyrazetes fasciatusgen.nov.et sp.nov.(オビコバネダニ)と命名,記載した