抄録
大腸癌に対してUFTならびにTegafurの術前投与を行い,組織内5Fu濃度およびTS阻害率を比較検討するとともに,薬剤非投与例をコントロールとして,抗癌剤投与による組織内TSの変動についても検討を加えた.
[対象と方法]大腸癌切除症例48例を対象とした.37例は薬剤投与例(UFT投与群20例,Tegafur投与群17例)であり,術前7日間おのおの600mg,分3とし経口連続投与を行った.手術時,腫瘍組織,正常部粘膜,リンパ節(1群領域)を採取し,凍結保存ののち各組織における5Fu濃度,TS量,TS阻害率を測定し,UFT群とTegafur群を比較した.また,11例の薬剤非投与例についても各組織のTS量を測定し,薬剤投与群と比較した.
[結果]薬剤投与群における5Fu濃度の比較では腫瘍組織においてUFT群がTefagur群に比し,有意に高値であった.また,TS阻害率についてもUFT群で有意に高い阻害率を示した.各組織におけるTS量については,UFT群,Tegafur群とも薬剤非投与群に比較し,有意に高いTS量を示し,UFT群でより顕著であった。腫瘍組織におけるTS量とTS阻害率の関係をみると,TS量に関係なく,TS阻害率は50∼60%の値であった.
[考察]術前1週間連投による組織内5Fu濃度およびTS阻害率の検討を行い,腫瘍組織においてUFT群でTegafur群に比し有意に高い値を示し,大腸癌に対してもUFTがより強い抗腫瘍効果を期待しうる因子を備えていると考えられた.抗癌剤による組織内TSの変動については,腫瘍組織において非投与群にくらべUFT群で3.3倍,Tegafur群で2.4倍,正常粘膜でもおのおの3.2倍,2.3倍のTS誘導が生じていた.しかしながら,TS量に関係なくTS阻害率は50∼60%に留まっていた,この程度の値が臨床投与量におけるUFT単独投与の限界とも考えられる.
最近の知見にて,5FuとCDDPあるいはLeucovorin併用効果のメカニズムが解明されている.5FuのDNA合成障害に最も重要となるFdUMP-TS-met-hylen hydrofolate (Me-THF)のternary complex形成の上で不足したMe-THFがCDDP代謝過程で補れることにより,ternary complex形成が促進され相乗効果を発揮することが証明されている.今回のTS量が増えても,阻害率に反映しないという結果もその原因をMe-THF枯渇に求めることもできるが,今後TSだけでなく,Me-THFの検索が必要であろう.
大腸癌は胃癌にくらべ,TSにより強く依存し,TS阻害により感受性が高いとも考えられており,薬剤側因子からみて大腸癌に対してもTegafurにくらべTSの誘導が強いUFTの効果が期待されるところである.