Annals of Cancer Research and Therapy
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Usefulness of Sequential Post-Surgical Tumor Markers Monitoring
Prediction of Remaining Cancers by Calculating Dissociation from a Half Life Period Line
Yutaka TakahashiMasayoshi Mai
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1993 年 2 巻 1 号 p. 87-89,80

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抄録
より早期に術後の癌の遺残,ひいては再発の存在を診断する,あるいは癌の化学療法の効果を予測する目的で,治療後のCEAの推移を指数関数的に観察し,半減期直後からの解離から癌の遺残を予測する方法を考案したので報告する.
[対象と方法]教室において手術がなされた胃癌,大腸癌のうち,術前の血清CEAが高値を呈した44例を対象とし,これらの症例を術後1年内に再発がみられた19例とみられない25例に分類した.
これらの症例の術後の腫瘍マーカーの推移を,術前CEA値を片対数グラフにプロットし,正常範囲に下降するまで,または画像診断などで再発が発見されるまで観察した.
[成績]1年以上経過し再発がみられない25例では,ほとんどの症例で術後CEAは正常域に達するまで指数関数的に下降し,半減期は4日から5日であった(図1).これに対し,再発がみられた19例では,正常域に達したのは13例であり,他の6例は著明に下降したものの正常域に達しなかった.さらにCEAの推移を指数関数的に観察すると,6例を除く13例では,最初のCEAの指数関数的下降が,正常域に達する前に徐々になだらかとなり,矢印に示す半減期直線からの解離としてとらえることができた(図2).
[考察]腫瘍を完全に摘除した場合,腫瘍マーカーは理論的に一定の半減期で減少するとされているが,今回のCEAによる検討でも4∼5日であることが示された.これに対して1%の腫瘍が遺残した場合,理論的には図4のAに示した99%の腫瘍摘除による腫瘍マーカーの減少とBで示した1%の遺残した腫瘍の増大を加えたものが術後の推移となる.つまり腫瘍マーカーの推移は最初は,99%の腫瘍摘除による腫瘍マーカーの減少に比し,1%の遺残腫瘍の影響が少ないため,指数関数的に下降するが,徐々に遺残腫瘍の影響が大きくなるため,しだいに指数関数的下降から離れ,いいかえれば半減期直線から解離する形をとる.つまり,この解離を指摘することにより,癌の遺残,ひいては再発を予測できると考えられる.今回の検討でも,1年以内に再発が認められた19例中,13例においてCEAの半減期直線の解離を指摘することが可能であり,この理論を支持するものと考えられた.特に,正常域に達した15例のなかにも,解離を指摘しえたことは,注目に値するものと考えられた.
以上本法は,癌治療の効果をより早期に予測することが可能であり,換言すればリアルタイムの効果判定が可能と考えられた.今後さらに他の腫瘍マーカーにおいても同様に検討し,本法を数多くの症例に応用すべきと考えられた.
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© by The Japanese Society of Strategies for Cancer Research and Therapy
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