Annals of Cancer Research and Therapy
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Rat Model of Bone Metastasis Obtained by Mammary Cancer Transplantation
Akishige OhtaTakashi MatsubayashiHitoshi TakaharaMineko UemaeShigenobu Nakayama
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1993 年 2 巻 2 号 p. 193-198,169

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抄録
骨転移に対する放射線の照射効果を実験的に調べるための動物モデルをつくることを目的として,近郊系のラットに発癌物質で発生させた乳癌細胞を骨髄腔に移植し,形態学的•X線学的検索を行い,骨転移ラットモデルの性質について検討した.
[対象と方法]乳癌(腺癌)は,近郊系雌性のFischer-344系のラットに7,12-dimethylbenz (a) anthracene (DMBA)を経口投与して発生させた.この乳癌を同系のラット皮下に移植して継代維持のできる移植性乳癌を得た.この移植性乳癌細胞を同系ラットの骨髄腔に注入して転移性骨腫瘍の動物モデルを作成した.
本研究では,乳癌細胞をラットの膝の部位から大腿骨の骨髄腔に移植した時の動物の生存率の測定,X線写真および組織病理学的検索を行った.また,乳癌細胞を移植した大腿骨に対するX線照射の影響も調べた.
[結果]本実験で使用したラット移植性乳癌細胞は,同系のラットの皮下あるいは骨髄腔に移植すると,移植したラットの全例に生着した.
100万個の乳癌細胞をラットの皮下および骨に移植したときの生存日数は,それぞれ47±24日と21±11日であった.乳癌細胞を移植された骨では,移植後約7日目頃からX線写真上に骨膜反応が認められた.
組織学的には移植後,内膜および骨膜表面の休止期の扁平な骨芽細胞層の近傍から多数の骨芽細胞と破骨細胞が発生した.腫瘍組織の増大に伴って,既存骨および新生骨の両部位における破骨細胞による骨溶解と腫瘍細胞による骨損傷が進行して,最終的に骨折や骨破壊が起こって動物は死に至る.乳癌細胞を骨に移植したラットでは,全例に乳癌の肺への転移が起こった.一方,同様に皮下に移植したラットでは,乳癌の肺への転移は認められなかった.乳癌細胞を移植した部位の骨をX線で照射するとラットの寿命は延長した.
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© by The Japanese Society of Strategies for Cancer Research and Therapy
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