2013 年 4 巻 1 号 p. 2-9
背景と目的:外傷後ストレス障害(PTSD)は,否定的な認知的評価が発症を予測することが示されている。本研究では,日本においても同様の知見が得られるかについて検討した。方法:交通外傷患者のコホート研究より,本研究で用いる調査項目を完遂した88名を対象とした。認知的評価は外傷後認知尺度を用い,PTSD症状は外傷後ストレス障害臨床診断面接尺度を用いて評価した。解析は,6カ月時点でのPTSDおよび部分PTSDを含むPTSD症候群を従属変数とし,独立変数は外傷後認知尺度の得点および調整変数を用いてロジスティック回帰分析を行った。結果:交通事故後1カ月時点の否定的な認知的評価は事故後6カ月時点でのPTSD症候群を予測した(オッズ比,1.48; 95%信頼区間,1.09–1.99; p=.011)。結論:事故後早期の否定的な認知的評価は,慢性的なPTSD症候群発症の予測因子であることが示された。