抄録
市民参加型技術アセスメントが影響力を高めつつある現代においては,原子力対話場の設計と運用ルールをどのように定めるべきかが重要な課題となる.これまで原子力の分野では様々な講演や討論の場が設けられてきた.しかし場の設計や運用ルールはアドホック的に定められてきている段階にあり,根本に立ち返った検討が必要である.筆者らはこの課題について,人文社会科学分野の専門家と連携しつつ「討議倫理」という切り口から検討を試みている.本年度は,科学哲学,応用倫理学,科学技術社会論,政治哲学などの専門家と原子力分野で対話活動に参加してきた実践者とが一堂に会する機会を設けて,多面的な視点から意見交換を行ってきた.討議倫理学と普遍化法則,双方向対話の要件,技術ガバナンスの定義,NIMBY概念と環境正義など多岐にわたるトピックスが論じられており,設定された課題に関する多くの示唆が得られている.