抄録
原子力発電所の冷却水や放射線医療などでは水の放射線化学が重要である。水やアルコールに代表される極性溶媒に放射線が照射されるとイオン化によって電子が生成し、電子は周囲の溶媒分子を配向させて溶媒和して安定化することが知られている。我々はフェムト秒パルスラジオリシス(最高時間分解能240fs)を開発し、水中の水和電子生成過程(~1ps)やアルコール中の溶媒和電子生成過程(~10ps)の観測に成功した。また溶媒和電子の前駆体である溶媒和前電子の観測にも成功した。しかながら、イオン化された電子が溶媒和前電子を経て溶媒和電子へ変化する過程は未だ明らかになっていない。そこで、アルコールを融点以下に冷却し、粘性の高いガラス状態にすることで、ナノ秒時間分解能で光吸収スペクトルの時間挙動を詳細に測定することに成功した。低温アルコールでの光吸収スペクトルの時間挙動を解析し、溶媒和前・溶媒和電子の生成メカニズムについて報告する。