抄録
福島第一原子力発電所では、東日本大震災に伴い、冷却機能の低下した使用済み燃料プールを含む原子炉建屋を緊急に冷却するため海水の注入が行われた。海水に浸漬した燃料集合体の健全性評価に資するため、照射後のジルカロイ-2燃料被覆管について高温の人工海水への浸漬試験及び引張試験を実施している。前報では、使用済み燃料プール水の模擬として2倍に希釈した人工海水を用いた浸漬試験を行ったが、浸漬前後において試料表面近傍の腐食層や強度特性に顕著な変化は見られなかった。
そこで、より厳しい浸漬条件として、希釈なしの人工海水を用い、浸漬時間を1,000時間まで延長した浸漬試験を行い、浸漬後の表面近傍の組織観察及びリング引張試験を実施した。本報告では、これらを前報の試験結果と併せて評価することで、塩化物イオン濃度等がジルカロイ-2被覆管の腐食挙動や強度特性に及ぼす影響を検討した結果について報告する。