2003 年 59 巻 2 号 p. 117-130
大気中のCO2濃度上昇に伴う気候変化の予測には, 地球の気候をシミュレートする大気·海洋循環結合モデル(A-O GCM)が用いられている.しかしながら, 現在稼働しているモデルの空気分解能は緯度·経度方向ともに3°から6°程度と粗く, 温暖化が農業および自然生態系へ及ぼす影響の評価には, A-O GCMが出力する大スケールの気候状態を小スケールの気候状態へ還元したデータが必要である.我々は, 距離の逆数で重み付けした線形内挿法を, 最新のA-O GCMによる温暖化シナリオに適用して, 日本付近の気候変化を表すメッシュデータ(気候変化メッシュデータ)を作成した.使用した温暖化シナリオは, ECHAM4/OPYC3(ドイツ), CGCM1(カナダ), CSIRO-Mk2(オーストラリア), CCSR/NIES(日本)のA-O GCMによるものである.気候変化メッシュデータは, 経度方向7.5′, 緯度方向5′(約10km四方)の空間分解能で, 将来100年間における10年ごとの平均的な気候変化を表している.本文では, 気候変化メッシュデータの作成方法とその内容について述べ, その特徴を示すために, 主要作物の栽培期間に相当する5月から9月までの積算気温, 積算降水量, および平均日射量の空間分布の過渡的変化を図示した.