抄録
土壌の乾燥およびクラストによる出芽の遅れが,ダイズの生育(出芽から開花までの発育速度および個体当たり子実収量)に及ぼす影響を評価した。土壌表面のクラストを木板で再現した圃場試験(2006年)と,実際に土壌のクラストを生じさせたポット試験(2007年)を行った。ダイズ品種トヨムスメ,ツルムスメ,ユキホマレを用い,対照区,乾燥区,クラスト区は北海道での標準的な時期に播種し,遅播き区はその13日遅れ(2006年)あるいは14日遅れ(2007年)で播種した。乾燥によって出芽が遅延した個体の開花日は,乾燥ストレスを受けていない同日出芽の個体と比べて早まったか同等であった。また,クラストによって出芽が遅れた個体の発育速度は,出芽の遅れが11日以内であれば,クラストによる出芽抑制を受けていない同日出芽の個体に比べて早まった。これらの結果は,乾燥やクラストによる出芽遅延によって開花の遅れが予測されても,播き直しによる挽回は望めないことを示す。